事業承継を成功に導くためにとるべき行動 | Part1

【執筆者】
税理士 / 中小企業診断士 藤本 江里子
税理士法人新宿総合会計事務所

・保有資格等
税理士、中小企業診断士
FBAAファミリービジネスアドバイザー認定資格保持者

・略歴等
奈良県出身。大学卒業後、メガバンクに就職したあと、税理士に転身。中小企業のあらゆる悩みに応えられるようにと中小企業診断士、FBAAファミリービジネスアドバイザー認定資格を取り現在に至る。
2018年~多摩大学大学院MBA客員教授

・得意分野
事業承継・相続・M&A支援や組織再編成、補助金申請サポートなど。
複雑な話をわかりやすく説明することを心掛けてサポートを行う。


本シリーズは二部制で、上記の動画は「Part.1」です。

▼ シリーズ動画一覧

目次

事業承継でよくある話

この動画をご覧になっている皆様は経営者の方が多いと思いますが、事業承継を税理士に相談したが、立ち消えになったことはないでしょうか?

顧問税理士に相談したが、「ところで後継者はどなたになるのですか」、「自社株式はどのようにする予定でしょうか」といろいろ質問をされ、即答できず、そのまま事業承継の話が立ち消えになったというような話はよくあります

経営者からすると、「後継者や自社株の話をいろいろ聞かれるが、まずはそこからアドバイスしてほしい」と思う一方、顧問税理士は「いやいや、そこの方針をまず決めていただかないと、こちらからは何も提案できません」と思っており、この2者は永遠にすれ違ってしまうということが起こります。

事業承継は積極的・計画的に

事業承継は、よほど計画的、積極的に行わないと進みません

なぜなら、「重要かつ緊急」という2つの軸で4象限で考えた場合、事業承継が重要だと頭の中では理解していても、緊急性がある否かはわかりません。

それは、自分がいつまで経営者でいられるかは寿命の問題もあり、いつ病気になるかわからないからです。「それなら今やらなくていいか」ということで後回しになってしまうことが非常に多いのです。

よって、重要性は高いけれど、緊急性がないと判断されてしまうようなゾーンにプロットされるテーマについては、意識的に取り組まないと進みません

事業承継対策は生前に

経営者に何か起きた後に、事業承継を行えばよいと考えがちですが、

「対策は生前に行っていただきたい」と強くお伝えします。

なぜなら、事後では時間も費用も余計にかかってしまうからです。

実際に下記の2点にご注意してください。

税制優遇措置の適用

1点目は、税制優遇措置の適用は相続が発生した後では受けられないことがある、ということです。

小規模宅地等の特例を聞いたことがあるでしょうか。

生活に必要な土地、あるいは事業に必要な土地について、多額の税金を掛けてしまうと、その負担のために土地を売却することになります。

生活が危ぶまれる可能性があるので、相続税を減額するという措置がこの特例です。しかし、こちらも適用要件がいろいろありますので、あらかじめ要件を満たしているか確認しないと税制優遇措置が使えないおそれがあります。

また、事業承継税制という言葉がここ数年の間で聞かれるようになりましたが、こちらも多くの要件がありますので、適用を受けられるか事前に確認する必要があります

加えて、配偶者の税額軽減で、亡くなった方の配偶者に関しては、世代が比較的近いこともあり、一緒に生活をしていたということで、相続税を大幅に軽減できる措置があります。

しかし、事前に準備をしておかないと、こちらの適用も受けられないことがあります。税制優遇措置が受けられないことは大きな損失になります。

相続前後の親族間の関係性

2点目は、今後、経営者にとってはあまり好ましくない状況になると思われる点になります。

相続が起きると親族間の関係性が現在よりも変化します。

場合によっては話し合いが全くまとまらず、誰がどの財産を受け取るのか揉めてしまい、最悪の場合、お互いが弁護士を代理人につけ、裁判に至るという事例が後を絶ちません。

「うちは仲がいいので大丈夫だよ」という経営者がいますが、そういうご家族に限って、その経営者がいるから関係性が良好なのであって、亡くなった瞬間にその関係性が急変することが本当に多いのです。

ご家族に何らかの禍根を残さないためにも、やはり生前のうちに全員が納得のいくような形で財産を分ける方向を考えておくとよいと思います。よって、対策は絶対に生前に行ってください

事業承継を成功に導くための目的とゴール

事業承継を成功に導くための「目的」と「ゴール」をここでお伝えします。

まず目的は、事業承継を成功に導くためにとるべき行動を理解していだだきたいと思います。

事業承継を進める手順を具体的に理解し、行動に移すことが重要です。

例えば、顧問税理士に「このように事業承継を行おうと思っているから、この場合はどのように税負担を軽減していけばよいか」と相談できるようになって頂きたいと思います。

顧問税理士から的確な回答を引き出せるようになれば、今回の内容は皆様のお役に立てたと判断できます。

事業承継を成功させる秘訣とは

早速ですが結論から申し上げると、事業承継を成功させる秘訣として税理士に相談する前に2つやっておきたいことがあります。

まず、1つ目は「利害関係者全員と円滑なコミュニケーションがとれる状態になっているか」、2つ目は「事業承継の方針が明確になっているか」です。

この2点ができるようにとお伝えしても、なかなか実行するのは難しいのが通常です。

実行するために6つのプロセスで事業承継を進めていけば、円滑なコミュニケーションと方針の明確化ができると私は考えています。

事業承継の6つのプロセス

ステップ1は「事業承継の目的とゴールを設定する」ことです。

ステップ1が終わりましたら、ステップ2で「現状の把握と分析」を行います。

ステップ3は、ステップ2で現状分析が終わっていますので、「事業承継は当社でできるのか、あるいはM&Aで売却できるのか」について、考えていただきます。(事業承継/売却可能性の検討)

どちらも可能性がない場合、廃業を検討していくことになります。

ここで注意する点は、「ウチは後継者もいないし、売れるはずないからもう廃業しかないよ」と諦めてしまう方がいます一方、他者から見たら、「その会社に非常に魅力がある」、「強みがある」というケースがあります

是非ご自身だけで考えず、周りに相談するなり、専門家に入っていただくなり、会社の価値を診てもらえればと思います

ステップ1~3が終了し、事業承継あるいはM&Aということでなれば、ステップ4で「経営権は誰に渡すのか」、「自社株式は誰に渡すのか」をそれぞれ検討します。(経営権と自社株式の承継先の検討)

「誰に」が決まりましたら、ステップ5で「どういう方法で承継していくのか」、「何年かけて承継していくのか」と計画を策定します(承継方法の計画策定)

計画を立てたら、ステップ6で事業承継計画の実行という流れになります。

事業承継とは、「何をするか」より、「どのようなプロセスで、そこに誰が参加して、どういう発言があって、誰がどういう思いの中でそれを決めていったのか」ということが非常に重要です。

このステップを飛ばさず、順を追って行うことが非常に重要となります。

事業承継がうまくいかなかった事例

ステップを飛ばすとどうなるのか、事例で3つ紹介します

長子相続と兄弟の不仲

事例の1つ目です。いきなり計画を立てるところから入ってしまったケースをご紹介します。タイトルをつけますと「長子相続と兄弟の不仲」です

創業家一族には暗黙のルールで長子相続の考えがありました。長男が家を継ぐべきだという考え方で、今も多い考え方だと思います。

長男に自社株式を贈与したのですが諸事情があり、長男ではなく三男が社長に就任することになりました。そうなると次第に長男と三男の折り合いが悪くなり、三男への株式の集約が難航します。

創業家一族の暗黙のルールで、何となく、それに従って贈与をしているものの結局、「長男が継げなくなったときどうするのか」、「株式はそもそも誰が承継するのか」、事業承継の方針が明確になっていなかったことで、最終的に株式集約が難航したというケースになります。

やはり方針の明確化が必要だったということです。

望まぬ廃業

事例の2つ目です。経営権と自社株式の承継先の検討から入るケースで、「誰に」をいきなり決めてしまっているケースです。タイトルをつけるなら「望まぬ廃業」です。

後継者候補と思っていた親族外、血のつながりのない従業員に対し、特に意思確認はしないまま社長一人で事業承継の計画を立てていました。実務上、こういったケースは非常に多いです。「本人を継いでほしい」、「継ぎます」というお互いの意思確認していないケースです。

経営が悪化し、社長がその従業員に「もう言うしかない」と思い、「継いでくれるか」と聞いたところ、経営の悪化もあり「いやいや、私には経営なんてできません」と言われ、廃業の選択肢しかなくなった、ということがあります。

意思確認をしなかったことが問題でした。本来であれば後継者とコミュニケーションを早いうちから取っておく必要がありました、ということになります。

早すぎた暦年贈与

事例の3つ目です。タイトルをつけますと「早すぎた暦年贈与」です。

日本は諸外国に比べて税金負担が非常に重い国なので、節税には常に頭を悩まされます。

節税目的で社長は複数の子供と孫、計10人全員に株式を毎年約110万円の範囲で贈与をしていました。これでは株式が分散してしまいます。

その後、後継者候補が決まり、自分で議決権100%保有したいと考えるようになりました。そこから株式を保有する10人と交渉を始めましが、「私は贈与に応じません」「金で買ってもらわないと納得いかない」など、買い戻すのに苦労をしたという事例です。

目的が節税になってしまったことが一番の問題だと思います。

事業承継の目的が何か考えておかないと、事例のようなことが起こり得ます。

目的をしっかり決めておかないと、本来手段であるはずの節税が目的になってしまいますので、それは回避しなければなりません。



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この記事を書いた人

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・保有資格等
税理士、中小企業診断士
FBAAファミリービジネスアドバイザー認定資格保持者

・略歴等
奈良県出身。大学卒業後、メガバンクに就職したあと、税理士に転身。中小企業のあらゆる悩みに応えられるようにと中小企業診断士、FBAAファミリービジネスアドバイザー認定資格を取り現在に至る。
2018年~多摩大学大学院MBA客員教授

・得意分野
事業承継・相続・M&A支援や組織再編成、補助金申請サポートなど。
複雑な話をわかりやすく説明することを心掛けてサポートを行う。

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