アトツギ甲⼦園と補助金の加点の関係性について

登壇者
中小企業診断士 バリューエンジニアリングスペシャリスト 石井 信裕のプロフィール写真

石井 信裕
中小企業診断士

バリューエンジニアリングスペシャリスト / 簿記2級 / TOEIC 935点

1983年 ソニー株式会社入社後、ソニーエレクトロニクス(米国)SCMマネージャー、ソニー(株) ストレージメディア事業管理部⻑、事業推進部⻑後、数社経る。
2020年 日本フィランソロピー協会 シニアマネージャー 2021年 東京都中小企業振興公社 事業承継・再生支援マネージャー

目次

中小企業経営にとって大切な補助金の活用

中小企業は補助金を活用することにより、研究開発、設備投資、生産性向上、人材育成、マーケティング活動など、広範囲な経営活動に資金を投資することができます。

こうした投資により、企業は新しいプロジェクトを立ち上げ、或いは既存のビジネスを改善することができます。

2016年の中小企業庁の資料によると、小規模事業者持続化補助金に採択された事業者のうち、取引や顧客の獲得状況について65.8%が新たな取引先や顧客を「獲得した」と回答し、また、売上の増加の状況では、55.5%が売上げが「増加した」との回答があったと記載されています。補助金の活用は企業の持続可能性を高め、社会的な責任を果たすことができ、企業の成長に欠かせない要素のひとつと言えます。しかしながら補助金の応募は煩雑な手続きが必要な事も多く、時間に余裕を持って申請することが重要であり、ビジネス戦略に合わせた補助金を選定することが求められます。

思いつきで補助金を申請していませんか?

中小企業にとり重要な補助金申請ですが、思いつきで補助金申請するようなケースが良く見受けられます。いくつかの理由が考えられますが、第一に、ビジネス戦略の不備によるものが挙げられます。

中小企業は、企業が成長するためのビジネス戦略を持たぬまま、たまたま知った補助金を利用することで、資金を確保しようとする場合があります。こうした申請では十分な計画がないために、目的が明確でなく必要な情報が不足している場合があります。

その結果、申請プロセスが遅れ、申請を行っても内容が不適切で採択されないことがあります。補助金の申請にあたっては、中小企業自身の成長戦略に則って計画的にどのような分野に投資すべきかをよく考えて適切な補助金を選ぶことが重要です。

締め切りギリギリで補助金を申請すると採択されにくい?

補助金を締め切りギリギリで申し込んでしまうようなケースもしばしば見受けられます。理由は様々ですが主に次のような要因があります。

第一に通常業務が忙しいため、申請の準備に時間をかける余裕がないケースです。補助金申請に時間を割くことができず、締め切りぎりぎりまで必要な書類等の準備ができません。

第二の要因は、補助金の存在を知らなかったため、申請期間を見落としてしまうことです。締め切りが近づいてから、その存在に気付き慌てて準備を開始するケースです。

第三は、申請に必要な書類や情報を集めるのに時間がかかってしまうケースです。補助金により申請に求められる書類は多岐に渡ります。

第四は、申請に必要な要件が複雑であるため、申請書類の記載に自信を持てず申請をためらってしまうケースも見受けられます。

こうしたいくつかの要因が組み合わさり、締め切りギリギリで補助金を申請することになってしまうケースがあります。補助金は中小企業にとり重要な経営要素であり、補助金の申請は十分な時間を確保して準備することが求められます。

補助金申請を計画的に、早めに準備するためには?

補助金の申請には時間がかかるため、計画的に準備することが必要です。

補助金の申請には、必要な書類や情報を集めることが必要ですが、これには情報収集に時間がかかるばかりか、申請のために個別の調査も必要となる場合があります。また、申請する機関によって期限や書類の提出方法も異なります。

このため、補助金に必要な情報を把握するだけでなく、申請書類の出し方についても調べ、内部の人員や外部の専門家に情報収集を依頼するなどの準備をする必要があります。

さらに、補助金は競争でもあり、準備が不十分な場合チャンスを逃す可能性も高いといえます。補助金は多数の申請者に対して限られた資金が配分され、補助金の獲得は競争が激しいと言われています。

特に年度単位で複数回の申し込みあるような補助金の場合、早期に申し込みを行うことで採択率が上がると言われています。申請先機関の状況や提供される資金について発信される情報を早めに収集して準備することが必要です。

補助金申請は計画的に、かつ早めに準備することが重要です。十分な時間を確保して、外部の専門家の助けを借りたり、必要な情報を確認したりすることが必要です。

補助金申請で加点されるアトツギ甲子園とは?

「アトツギ甲子園」は、中小企業の後継者が家業の経営資源を活かした新規事業アイデアを競う舞台であり、全国各地から集まった後継者が発表するピッチイベントです。39歳以下の後継者・後継者候補に参加資格があり、アイデアだけの段階でもエントリーできます。

第四回「アトツギ甲子園」では5つのブロックで地方予選大会を行い、新規性、実現可能性、社会性、承継予定の会社の経営資源活用、熱量・ストーリー、といった観点から評価が行われます。決勝大会での最優秀賞受賞者には中小企業庁長官賞が授与されます。

アトツギ甲子園に出場することで、補助金申請において加点される可能性があります。

具体的には、地方予選含む大会出場者は事業再構築補助金、ものづくり補助金、事業承継・引継ぎ補助金、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech 事業)における優遇措置などが受けられます。また、決勝大会出場者(ファイナリスト)は、上限200万円・補助率2/3を補助する小規模事業者持続化補助金の後継者支援枠(特別枠)に申請が可能となります。

第4回「アトツギ甲子園」チラシ

出所:第4回「アトツギ甲子園」チラシPDF  (https://atotsugi-koshien.go.jp/images/pdf/koshien_reaflet.pdf)

補助金を計画的にそして事前に準備するために

補助金を計画的、かつ事前に準備するためには、つぎのような対策が考えられます。

第一に、早期に情報収集を始めることです。補助金の申請にあたっては、申請条件や期限、申請書類の提出方法などを把握する必要があります。このため、補助金のウェブサイトや、公的機関や地方自治体の公式サイト、商工会議所の情報などから情報収集を行い、早めに情報を把握しましょう。

第二に、申請書類を早めに作成することです。補助金を申請するためには、様々な書類が必要となります。必要な書類を事前に確認し、申請期限ギリギリにならないように早めに書類を準備しましょう。その際には、申請書類の入手方法、提出書類の内容や提出先の住所、提出期限などを詳細に把握することが大切です。

第三に、専門家のアドバイスを受けることです。補助金申請には、対象補助金の書類の準備方法、記載方法、提出方法などについて、申請者自身ではわからないことがあります。そのため、商工会議所や税理士、中小企業診断士など経験豊富な専門家に相談することをおすすめします。

第四に、提出にあたって申請書類を十分に確認することです。申請書類の提出前に記入漏れや書類の不備などがないか繰り返し見直すことが大切です。

以上のような解決策を講じることで、補助金を計画的、かつ事前に準備することが可能となります。補助金の申請前に、申請する場合に必要である情報や書類について、よく把握し、適切な準備を行うことが、補助金申請を成功させるための最も確実な方法です。

まとめ

補助金は、中小企業経営にとって重要な経営資源の一つです。

補助金をうまく活用することで、事業拡大、効率化、新規事業開発などのビジネスの成長戦略を展開することができます。ただし、補助金申請は煩雑な手続きを求められる事が多く、申請しても必ず補助金を受け取ることができるわけではありません

したがって、補助金の種類についてよく調べ、申請に必要な書類や期限を把握することが非常に重要です。また、補助金の採択は競争が激しいため、そのための具体的なビジネスプラン含めた準備が欠かせません。

中小企業経営者の皆さまには、補助金を積極的に活用することで企業成長に不可欠な資金を確保し、よりよい経営を目指して積極的に取り組んで頂きたいと思います。

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この記事を書いた人

中小企業診断士 石井 信裕
バリューエンジニアリングスペシャリスト
簿記2級 / TOEIC 935点

1983年 ソニー株式会社入社
1989年 ソニーエレクトロニクス(米国)SCMマネージャー
2001年 ソニー(株) ストレージメディア事業管理部⻑、事業推進部⻑
2008年 ソニーケミカル&ID(株) 事業室⻑、調達部⻑、製造部⻑
2016年 インテムコンサルティング(株)シニアコンサルタント(ODA国際協力事業)
2017年 日本生産性本部 参与 海外研修講師
2018年 太陽工業株式会社 海外事業担当スーパーバイザー
2020年 公益社団法人 日本フィランソロピー協会 シニアマネージャー 2021年 東京都中小企業振興公社 事業承継・再生支援マネージャー
経済産業大臣認定 中小企業診断士 (国家資格 登録番号422873)

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