パワハラ予防対策セミナー | Part3 パワハラ6類型を知っていますか?…
藤堂 武久
弁護士/中小企業診断士
登録弁護士として活動を開始したが、多くの人々が手遅れになってしまっており、役に立てないケースを多く経験した。トラブルを予防し未然に防ぐ活動をすべく、中小企業診断士として、情報発信活動、講演・研修、経営相談業務、人財の採用・定着・育成に携わる。
・延べ講演・研修回数635回超
・延べ受講者数14,251名超
・延べ経営相談回数572回超 (2023年4月末時点)
本シリーズは五部制で、上記の動画は「Part3」です。
はじめに
今回は『パワハラ予防対策セミナー|パート3』として、パワハラ6類型について解説します。パワーハラスメントに関する相談が実際にあった場合、どのようなやり取りが行われるのか、1つの例をご紹介します。
パワハラ問題の相談例
こちらの登場人物はAさんです。
Aさんは、とある中小企業で課長を務めています。元々、豪快な性格で体も声も大きく、人を引っ張っていくことが得意なため、若くして課長に抜擢されました。しかし、Aさんにはある悩みがありました。
最近、社内でパワハラ防止のアナウンスがよく流れているな。それに、社内研修でもパワハラに関する研修を受ける機会が増えてきた。研修を受けるたびに、『そういえば俺ってパワハラをしているかもしれない…』って思うんだよな。
俺は昔ながらの性格だから、人との距離感が近くて、結構ずけずけと言っちゃうんだよな。後輩にも接し方がきついかもしれないし、反省しなきゃいけないのかもしれない。最近、会社から俺がパワハラしてるんじゃないかって疑われているような気がするんだ。
大丈夫かな、気のせいかな?
その時、Aさんの電話が鳴りました。発信者は本部の部長でした。
はい、もしもし。
あ、はい。え?来週に面談ですか。わかりました、そちらに伺います。
ちなみに、何の件での面談でしょうか?え、わかりました……。
部長から呼び出しがあったけど、何の面談か聞いても教えてくれなかった。何なんだろう?やっぱり俺がパワハラをしているって疑われているのかな。どうしよう……。
そうだ。来週まで待つのも不安だから、一度、客観的な立場からパワハラの専門家に相談してみよう。
そこでA課長は、専門家に相談することにしました。
こんにちは。
今日はどのようなご相談でしょうか?
こんにちは、初めまして。
すみません、今日はパワハラについてお聞きしたいと思いまして……。
実は来週、会社の本部で上司と面談するように言われていまして、もしかしたら私のパワハラが疑われているのではないかと心配しているんです。
なるほど、そういうことだったのですね。
現時点で、どのような点が気になっていらっしゃるのか、まずはそのあたりをお聞かせいただけますか?
はい、実はパワハラ研修を受けまして、『パワハラ6類型』というのを学びました。具体的には、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、そして個人の尊厳を侵害する行為ですね。それを聞いて、正直なところ結構心当たりがあるんです。
そうだったんですね。
具体的にどのようなことが心当たりに?
例えば、部下がミスをすると、ついイラッとしてしまって、頭を軽く叩いたりしてしまうんです。つい頭にきて、『この下手くそ』とか『この給料泥棒』なんて言葉を口にしてしまうこともありました。それから、ミスした部下に対してノルマを倍にしたり、逆に仕事を与えずに雑用だけさせたりしたこともあります。
さらに、私には同期がいて、その者は私以上にひどいパワハラをすることがあります。彼の部下がミスをしたりノルマを達成できなかったりすると、すごいパワハラをするんです。その時、ついつい悪ノリして私も便乗し、同僚と一緒に部下を仲間外れにすることもしてしまいました。
そうですか、他にはどんなことが気になりますか?
私はお酒が好きで、1人で飲むより誰かと一緒に飲みたいタイプなんです。それで、後輩をしょっちゅう飲みに誘うんですが、断る後輩がいると、『何の用事があるんだ?』と根掘り葉掘り聞いてしまいます。
そして、大した用事じゃなければ、『上司である俺との飲みを優先しろ』なんて言ってしまうこともあります。
それから、男だけで飲むより女性社員がいる方が場が明るくなるので、女性社員もお酒の場にしつこく誘ってしまいました。
なるほど、そのようなことがあったのですね。
はい。最近、社内の誰かが本部の部長に私のパワハラについて報告したのではないかと心配しています。
もしそうだとしたら、私は一体どうなってしまうのでしょうか?
そうですね、なるほど。
現時点では本部の方から具体的なことはまだ何も言われていないとのことですので、正確なことをお伝えするのは難しいですが、一般論としてパワハラをしてしまうとどのようなリスクがあるのか、まずは一般的なお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?
はい、ぜひ一般論で結構ですので教えてください。
わかりました。
まず、そもそも何がパワハラに該当するのかという判断自体が難しい場合も多いのですが、今日はそこは置いておいて、一般論としてパワハラをしてしまうとどのようなリスクがあるのかについてお話ししますね。
まず、所属している会社から注意や指導の対象になることが挙げられます。当然ながら、パワハラを行うと人事評価が悪くなる可能性もあります。また、ケースバイケースですが、場合によっては懲戒処分の対象となることもあります。
具体的には、減給や出勤停止、戒告、さらには懲戒解雇といった処分が規定されていることがあります。
次に、パワハラの加害者になってしまうと、被害者から損害賠償請求をされる可能性もあります。これはいわゆる民事裁判に発展し、損害賠償を求められるというケースです。
金額についてはパワハラの内容や被害の程度、その他の様々な事情を総合的に考慮して判断されるため、一概にいくらとは言えませんが、かなりの負担になることが考えられます。
特に昨今ではニュースでも報道されていますが、長期間のパワハラによって精神障害に陥ったり、最悪の場合、自殺してしまったりといった痛ましい事件も起きています。このような場合、パワハラの加害者個人が莫大な損害賠償請求を受ける可能性もあります。
さらに、ケースによっては刑事裁判に発展し、刑事罰を受ける可能性もあるんです。
例えば、暴行罪、脅迫罪、強要罪、名誉毀損罪、侮辱罪などで刑事事件として扱われることもあります。もし刑事裁判で有罪になってしまうと、罰金や懲役刑の可能性があり、前科がつくということにもなります。
以上のように、パワハラの加害者になると様々なリスクがあるため、本当に注意が必要です。
最近では、被害者の方がパワハラを受けた事実について詳細なメモを作成していたり、隠れて録音をしていたりすることも増えています。また、組織が被害者の方から相談を受けたり、誰かから通報を受けたりした場合には、加害者と被害者だけでなく周囲の人にも事情聴取が行われることがあり、話が大きくなってしまうこともあります。その結果、社内の雰囲気が悪化してしまうというリスクもあります。
とにかく、パワハラをしてしまうと大変なことになります。
これは違法行為ですので、どうか一刻も早くパワハラを根絶していくことをお勧めいたします。
なんと!そうだったんですか。
一般論をお聞きしただけでも、私自身もう反省しなければならないと思いました。本日はありがとうございました。
パワハラ6類型
事例で登場した「パワハラ6類型」は、とても重要なポイントです。これらは、研究によって整理されたパワハラの典型的な形態であり、身体的な攻撃や精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害といった形で分類されています。これらはパワハラの理解を深めるための有効なガイドラインですが、「6類型に該当しなければパワハラではない」というわけではない、という点にご注意いただきたいです。
パワハラを行うことのリスク
先ほどの事例に基づき、リスクについて説明いたします。
まず、パワーハラスメント(パワハラ)は違法行為であり、会社組織からの注意や指導の対象となります。これにより、人事評価にも影響を及ぼす可能性があります。また、企業は就業規則などに基づき、懲戒処分を実施することができます。懲戒処分には、戒告、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇などがあり、パワハラもこれらの処分の対象となり得ることを把握しておく必要があります。
さらに、パワハラが会社内で解決しない場合、外部の裁判に発展するリスクもあります。民事裁判においては損害賠償を請求される可能性があり、これもリスクの一つです。加えて、刑事裁判に発展する可能性もあり、懲役や罰金といった厳しい処罰が科されることもあります。有罪判決を受けると前科がつく可能性もあり、この点にも注意が必要です。
最近では、パワハラに関する記録をしっかりと残したり、隠し録音をしたりする人も増えています。また、パワハラが相談されると、企業内での問題が深刻化し、会社の雰囲気が悪化することもあります。パワハラはどちらにとっても利益がない問題であり、全員が協力して解決に向けて取り組むことが重要です。これが、パワハラを防ぐために必要な態度であることをお伝えしたいと思います。
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