小さな会社の賢いメディア戦略術:Part3 メディア掲載が次のメディアを呼ぶ
梅澤 アンナ
装飾デザイナー /
小売物販コンサルタント
株式会社Mari`eeFleurir代表
日本大学芸術学部卒業後、株式会社ユニクロへ入社。
ファッション業界に精通するため量販小売店でBY、DBを経験し、アウトドアメーカーでMDと商品管理を経験。
その後、独立し装飾品店を開業。年間500件以上のオーダーを受注し、西武百貨店や高島屋などにも出展。現在は日本の着物を後世に繋ぐファッションプロジェクトを推進。2021年からはクリエイト塾を開講し、個別コンサルも行う。2023年にはパリコレに出展。
本シリーズは四部制で、上記の動画は「Part3」です。
はじめに
今回は小さな会社の賢いメディア戦略についてお伝えしたいと思います。
具体的には、第4回目として「メディア掲載が次のメディアを呼ぶメディア連鎖法」についてお話しします。
小さな会社のメディア戦略とは?
小さな会社のメディア戦略で重要な点は、費用を最小限に抑えながらも効果的な露出を得ることです。大手メディアに取り上げられることで、お客様からの信頼と安心を確保することが非常に大切です。
メディアに取り上げられたからといって、直ちに売上が急増するわけではありません。これは大手企業が実現することです。小さな会社の場合、メディアを上手に活用して信頼性や安心感を確保することが必要です。例えば、物販業を営んでいる場合、メディアに取り上げられることで「この会社で物を買っても大丈夫」と顧客に安心感を提供することができます。
本当にメディアに出演できるのか?
「本当にそんなことができるのか?」と疑問に思われる方も多いかもしれません。
例えば、「広告を使っているのでは?」や「メディアとのコネクションがあるのでは?」といった質問を受けることがありますが、実際には何も特別な手段は使っていません。最初は何もない状態から始め、最近では2023年10月29日に日本テレビの番組に出演し、11月中旬には読売新聞に取り上げられるなど、実績を積んできました。
これらの実績も、最初は何もないところからのスタートでした。こうした実例を通じて、どのようにメディア戦略を成功に導いたのかをお伝えできればと思います。
メディア掲載が次のメディア掲載を呼ぶには?(メディア連鎖法)
それでは、小さな会社がメディアに取り上げられることのメリットについてお話しします。
先述したように、メディア掲載の主な利点は社会的な信頼性の確保と安心の提供です。これにより、次のメディア掲載に繋げるための「メディア連鎖法」についてもお伝えしたいと思います。
まず、どこかのメディアに取り上げられると、その結果として新たなメディアへの露出が可能となります。前回もお話ししたように、取り上げていただいたメディアには感謝の意を示すことが重要です。その後、取り上げてくださったメディアへの定期的な挨拶を続けることが推奨されます。これにより、メディアとの関係が築かれ、次の機会を得るための基盤が整います。
そのためには、まず新聞などのメディアに取り上げられる実績を作るために、記者クラブなどを活用し、地元の新聞などから実績を積み上げることが大切です。その後、自社のホームページにメディア掲載の実績をきちんと掲載することを忘れずに行いましょう。これにより、訪問者は「この会社は定期的にメディアに取り上げられている」という印象を持ち、会社が社会的に信頼されていると感じるでしょう。
定期的な挨拶の重要性
まず、定期的な挨拶の重要性についてお話しします。
お世話になったメディアの方には、できるだけ定期的に挨拶を送ることが推奨されます。具体的には、少なくとも月に1回、難しい場合は2ヶ月に1回でも構いません。挨拶の方法としては、手紙よりもメールが適しています。手紙は重たく感じられることがあるため、メールでの連絡が最も実用的です。
このように定期的に挨拶を行う理由は、メディアの方々が非常に忙しく、すぐに忘れられてしまうことが多いからです。挨拶を通じて自分のアピールポイントを伝えるのも良いですが、必ずしも自分の事業の話だけでなく、メディアの方の活動に対する感想やフィードバックを送ることも有効です。例えば、「〇〇さんが書かれた記事を読みました。とても勉強になりました。」といった内容でも構いません。このように自分のアピールばかりでなく、相手の活動を認めることが重要です。
メディアの方々が自分のことを覚えておくためには、定期的に何らかの関わりを持つことが必要です。礼儀としての挨拶を送った後は、それで終わりではなく、継続的に関係を築く努力を続けることが大切です。とにかく、メディアの方々に忘れられないようにするための工夫を怠らないことが重要です。
とにかく忘れないようにしてもらうこと(メールの実例)
ここで少し実例をご紹介したいと思います。
メールの書き方について、具体的にどのように書けば良いのかという点に関心をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。そこで、実際のメールの例をお見せします。
件名: 読売新聞 〇〇記者様へ
読売新聞 〇〇記者様
いつもお世話になっております。
鎌倉市で着物をリメイクした装飾品を製作している梅沢です。
先日は取材していただき、誠にありがとうございました。記事が掲載されてから2ヶ月が経過しましたが、その記事を読んでくださった方からのお問い合わせが今月も2件ありました。
また、先日〇〇様が執筆されたコーナー記事を拝見いたしました。実はそれまで〇〇について全く知識がなく、とても勉強になりました。私の子供が学校でその話を聞いたことがあると言っていたので、一緒に調べてみて、今度実際にその場所に行ってみようかと話しておりました。今日はその感想をお伝えしたくてメールいたしました。
暑い日が続いておりますので、どうぞご自愛ください。
このメールは、ちょうど夏休み頃に私が送ったものです。偶然記事を目にして、子供がその内容について知っていたこともあり、「そんなことがあるのか」と驚いて一緒に調べてみました。そしてその流れで、訪れてみようかという話になったのです。このように、率直な感想をそのまま伝えるメールを書きました。少しでも相手に印象を残すように、日頃からこまめに感謝や感想を伝えることはとても大切だと思います。
まずは新聞から載るように実績を作る
皆さんからよくいただく質問についてお答えします。
「うちの商品や飲食店のメニューを考えると、新聞よりも絶対にテレビや動画メディアに出た方がいいのではないか」といったご意見です。確かに、動画メディアの方がインパクトが強く、視覚的に訴求しやすいと考えるのは当然かもしれません。
しかし、実際のところメディア業界の内部の方々は、今でも新聞を非常に重要視しているようです。これは私自身も驚いたのですが、テレビ関係者からの情報によれば、メディア内部の多くの方が日々新聞をしっかりと読んでいるそうです。もちろん、ネットニュースを活用する方もいるようですが、新聞の持つ公共性や信頼性は未だに大きな価値を持っています。
新聞には名前や年齢などの詳細情報が掲載されることが多く、その点も他のメディアにはない特徴です。新聞には多様な見方や反論もありますが、何よりも公共性が重視されています。そのため、無料のイベントは新聞で取り上げやすい一方で、有料のイベントは広告枠を購入しない限り掲載が難しいという制約もあります。新聞記者が金銭のかかるイベントを記事にすることは、公共性の観点から慎重にならざるを得ないのです。
したがって、各テレビ局や無料配信のYouTube番組など、さまざまなメディアは新聞から情報を得ていることが多いのです。私たち外部の者が知らないところで、メディア内部の人々は新聞を情報源として活用しているのです。ですから、まずは新聞に取り上げられるような実績を作ることが重要です。
新聞に載るとメディア露出連鎖が起きやすい理由
新聞に掲載されることで、他のメディアに情報が連鎖的に広がりやすくなるのです。
例えば、新聞が重視される理由としては、第一に新聞は毎日発行されているという点が挙げられます。これにより、圧倒的な数の現場取材記者が存在し、豊富なニュースネタが集まるのです。
そして最も重要なのは、新聞が形に残る「オールドメディア」であるという点です。紙面に記録として残るため、嘘や誤りを載せることができません。公共性が非常に重要視されているため、読者からの信頼を得ているのです。情報は日々更新されていきますが、新聞として形に残るからこそ、信頼性が高いと言えます。
また、新聞には圧倒的な数の取材記者と豊富なネタがあります。例えば、神奈川県の地元テレビ局には1社あたりおよそ2〜3人の記者しかいないことが多いのに対して、新聞社では1社あたり約10人の記者がいるとされています。また、地元の新聞社であれば50人以上の記者がいることもあり、取材に応じる体制が整っています。このように、圧倒的な数の記者がいることで、取材を受ける機会も増えるのです。
そのため、まず新聞に取り上げられることが非常に重要です。
さらに、地元の新聞に取り上げられることが意外に重要であるという点です。なぜかというと、テレビメディアの人々から見ると、地方の小さなネタは意外性があり、興味を引くことがあるからです。東京などの大都市では大きなニュースが多く、視聴者がそれに飽きてしまうこともありますが、地方の小さな話題は新鮮で面白く感じられることがあります。これがきっかけで、地方のニュースが全国のテレビで取り上げられることもあるのです。そのため、地元紙の存在を侮るべきではありません。
また、新聞は「形に残るオールドメディア」であり、若い世代には馴染みが薄いかもしれませんが、その記録性は非常に強力です。メディア関係者は過去の記事を図書館などで調べることができ、これがニュースの裏付けや信頼性を高めるために重要な役割を果たしています。私自身も経験しましたが、新聞社の取材は非常に厳密で、日付や時間といった細かな点まで何度も確認されました。新人記者の場合でも、取材内容が正しいかどうかを確認するために電話で連絡してくることがあるほど、情報の精査には徹底した慎重さがあります。
このような取材の徹底ぶりから、新聞の情報はメディア関係者にとって非常に信頼性が高いものとされています。ネット上の情報が削除や改ざんされるリスクがあるのに対し、新聞は形に残るため、そういったリスクがありません。だからこそ、新聞は信頼されるメディアであり、他のメディアがその情報を基にニュースを構成することができるのです。
弊社のメディア連鎖事例
実際に弊社で起きたメディア連鎖の事例についてお話しします。
まず、最初に地元の神奈川新聞に掲載されました。これがメディア連鎖のスタートでした。その次に、地元のタウン誌に取り上げられました。次に起きたのは、FM東京からの連絡でした。とある番組から出演のオファーがあり、その番組に出演することになりました。すると、その放送を聞いていた地元のケーブルテレビ局の方から「ぜひ地元のケーブルテレビに出演してほしい」との声がかかり、地元のニュース番組に出演することが決まりました。
このように、地元での露出が増える中で、今度は東京新聞の記者さんが目をつけてくれました。記者さんは、私たちのオーダーメイドのものづくりというコンセプトが面白いと感じてくれたようです。何でも物販ができる時代に、あえて時間のかかるオーダーメイドに取り組む姿勢が新鮮だと興味を持っていただき、その結果、東京新聞に掲載されることになりました。
この流れが弊社のメディア連鎖の一例です。
最初は地元の新聞に掲載されたことから始まり、その後も地元のタウン誌やラジオ、ケーブルテレビと広がっていきました。そして、地元での実績が東京のメディアにまで影響を及ぼし、さらに広がっていくという形で連鎖が起きました。広がっては縮小し、また広がるといった流れを繰り返すことで、結果的に多くのメディアに取り上げていただくことができました。
もうひとつ最近の事例として、6月頃に地元のタウン誌に掲載されたものがあります。このときはイベントを行った際の取り組みが取り上げられました。まず地元のタウン誌に掲載されたことが最初のきっかけです。
その後、このタウン誌の記事を見た読売新聞の記者さんが「イベントはもう終わってしまったけれども、着物リメイクの取り組みが面白い」ということで取材を依頼され、読売新聞にも掲載されることになりました。これに続いて、朝日新聞の方からも「この取り組みについて、別の角度からもう少し詳しく聞きたい」と連絡があり、今度は朝日新聞に掲載されました。
また、自分でプレスリリースを各メディアに送ることもしていましたが、すでにいくつかの新聞で取り上げられていることが信頼の証となり、次に日本テレビのディレクターさんからも連絡がありました。このように、地元のタウン誌から始まり、次第に大手メディアへと広がっていったのがこのメディア連鎖の事例です。
メディア連鎖が起こると問い合わせが増える
実際にメディア連鎖が起きたことで、どのようなことが増えたのかというと、まず確実に問い合わせが増えます。これは弊社だけでなく、さまざまな事業でも同じ現象が見られます。
具体的に弊社の場合、主に個人のお客様向けに物づくりをしているのですが、新聞に掲載されたことをきっかけに企業からも連絡が来るようになりました。例えば、隣の藤沢市にある企業の社長さんから、「面白い取り組みをしているね」とお声がけいただき、一度会ってお話をする機会を得ました。そこからすぐに大きな仕事に繋がるわけではありませんが、その社長さんから時々「こういう話があるんだけどどうかな?」といった形で相談が来ることがあり、今も少しずつですが関係が続いています。思いもよらないところから声がかかるのもメディア連鎖の大きな効果です。
このような効果が顕著に現れるのは圧倒的に新聞です。テレビやラジオでも反響はありますが、短期的な効果で終わることが多く、一時的なブームのように消えてしまう傾向があります。しかし、新聞の場合は手元に残るメディアであるためか、掲載された記事をきっかけに数ヶ月後でも問い合わせが来ることがあります。例えば、着物リメイクの相談が来たり、一般のお客様からも問い合わせが増えたりしています。こうした問い合わせの継続性があるのも新聞の特徴で、メディア連鎖を通じて信頼性が向上し、長期的な関係を築くきっかけとなっています。
メディア連鎖が起こると信頼が上がり認知度が高まる
メディア連鎖が起こると、信頼性が格段に上がり、「〇〇といえば〇〇さんだよね」といった形で、その分野での認知度が高まります。例えば、「着物リメイクを鎌倉でやっている人といえば梅沢さんだよね」といったイメージが広がるかもしれません。
実際の事例として、私たちの店「マリエフルリール大正浪漫店」では「大正浪漫」というキーワードを大切にし、作品作りを行っています。そのキーワードに関連して、以前に映画の衣装提供の依頼がありました。その依頼をくださった方は、神奈川新聞のウェブ版である「カナロコ」の記事を見たとのことでした。「カナロコ」はウェブ上にずっと記事が残り続けるため、時間が経っても情報が検索で引っかかるのです。
具体的には、「大正浪漫」で検索したところ、たまたま当店の情報が掲載されている記事を見つけ、それをきっかけに弊社にコンタクトを取ってくださったのです。つまり、この一連の流れの元となったのは、やはり新聞の掲載でした。新聞には詳細な情報、例えば年齢なども記載されていることが多く、そういった点も安心感に繋がり、依頼をいただけたのだと思います。
メディア掲載の実績をHPに書いておく
メディア連鎖が起きた後に重要なのは、メディア掲載の実績を自社のホームページなどにしっかりと記載しておくことです。メディアでの露出をきちんとまとめて見せることで、さらなる信頼と新たなビジネスチャンスに繋がります。
そのため、メディア掲載の実績などはしっかりとホームページやブログに記載しておくことが大切です。こういった実績をきちんと書いておくと、検索エンジン経由で取材の依頼が舞い込むことも期待できるんです。
実際、私の会社ではまだ検索エンジン経由で取材を獲得できているかははっきり分かりませんが、先ほどの映画の衣装提供の事例のように、神奈川新聞のウェブ版に私たちの活動がずっと掲載されていたため、それが検索で引っかかりました。ですから、自社メディア、つまり自分の会社のブログやホームページにもこうした実績をしっかり書いておけば、今後の検索にも引っかかる可能性が高まると思います。定期的に実績をアップしていくことの重要性を、話しながら改めて痛感しています。
また、単に実績を載せるだけでなく、今話題になっているニュースと自社のサービスや商品を掛け合わせたブログ記事を更新することも非常に効果的です。実績だけをブログに書いていても、それはそれで「実績がある会社なんだな」とは思ってもらえますが、発信力や時事性に欠けているように見えることもあります。しかし、ニュースと自分のサービスをうまく掛け合わせると、「あ、このネタで取材してみたい」と記者さんが興味を持ってくれるかもしれません。
ですので、実績を載せるだけでなく、ニュースやトレンドと結びつけた情報発信も意識していくと良いと思います。
まとめ
今回の内容は少々短めでしたが、弊社の実例を通じてメディア連鎖の起こし方をお伝えできたことと思います。重要なのは、まず地元メディアの新聞に取り上げてもらうことです。その後、次のメディアに取り上げてもらうことで、次第に大きなメディアに取り上げられるようになるでしょう。こうして信頼と実績が積み重なっていくと、大手メディアにも取材していただける可能性が高くなります。
次回は、メディアの方々と良好な関係を築く方法についてお話しします。今回の内容は第1回目から第4回目までお話ししましたが、これらを全て実践することで、小さな会社でも無料でメディアに取り上げられるチャンスが得られます。そして、それが顧客の信頼と安心を確保することにもつながりますので、ぜひ挑戦してみてください。
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