中小企業のDX人材育成 | Part2 DX人材の採用・育成の方向性

【執筆者】
中小企業診断士 山浦 直晃
認定経営革新等支援機関

1996年~ 大東京信用組合にて渉外(営業)に従事
2000年~ SCSK(株) にて、ERPの提案営業・導入コンサルタントに従事 100社以上の企業にシステムを導入
2019年 中小企業診断士を取得
システム導入・IT化戦略立案支援・5社(内、顧問契約3社)、
事業計画策定支援(補助金採択実績・12社、融資による資金調達支援・1社)、
企業総合診断・5社に従事

2022年~ 中小企業基盤整備機構、地方銀行にて、コンサルティング業務に従事。
主にIT/DX領域を担当

システムやデジタル技術は、あくまでも経営課題を解決するための「手段」であり、
現在の業務プロセスを分析し、問題点を明確にして、最適な改善策を提案することをモットーにする。


本シリーズは三部制で、上記の動画は「Part.2」です。

▼ シリーズ動画一覧

「中小企業のDX人材育成」について、全部で3つのパートに分けて解説いたします。

今回は第2回目として、「中小企業がDXを推進すべき理由」というテーマで解説したいと思います。

目次

中小企業におけるDXの取り組み状況について

中小企業基盤整備機構が2022年の3月に行った、中小企業1,000社を対象としたアンケート調査の結果は次のとおりです。

·DXに既に取り組んでいる、検討していると回答した企業は24.8%で全体の1/4程度

·DXの具体的な取り組み内容についてはホームページの作成が47.2%を占める

この結果から、中小企業はホームページの整備も不十分であり、デジタル技術を使って革新する段階には至っていない状況であるといえます。

中小企業がDXを推進するべき理由

① 競争優位の確立

ビジネスは多様化しており、同時に消費者のニーズも変化しています。現代社会は同じような商品であふれており、モノの価値だけでは差別化が困難なため、独自の価値をアピールする必要があります。独自の価値を創造して競争優位を確立するためにも、次のようなデジタル技術を活用した「新しい顧客価値の創造」が求められています。

·One To Oneマーケティング

データ分析をもとにした顧客一人一人に合わせたマーケティング

·Online Merges with Offline(OMO)

オンラインとリアル店舗の垣根をなくし、効率のよい購買体験を実現するマーケティング

② 低コストで便利なDXツールの出現

近年、低コストで使い勝手の良いシステムやツールが出てきています。必要な機能を必要な期間だけ利用できるという特徴があり、システムを新しく導入するためのハードルが下がってきています。下表にて、DXツールの一例を紹介します。

DXツール用途概要
Slackコミュニケーションインターネットを利用して、パソコン·スマホでのチャット、ファイル管理、ビデオ通話が可能。
クラウドサイン電子契約契約書などの電子署名やクラウド上での電子書類の保管·管理が可能。
Freee会計·人事労務管理Saas型会計システム。個人事業主から中小企業まで企業の状況に合わせて利用可能。
楽々精算社内経費精算Saas型経費精算システム。手入力の軽減や、振込データ生成、会計ソフトへの仕分連携が可能。

③ DXの促進に役立つ補助金·税制の拡充

補助金についは、2022年度第2次補正予算が決定し、2023年度も引き続きさまざまな補助金の拡充が見込まれています。

一例として、IT導入補助金、ものづくり補助金、事業再構築補助金があり、ITやDXの導入時に必要な経費が補助されます。

また、2021年の税制改正において、デジタルトランスフォーメーション促進税制が新設されました。DX投資に対して、税額控除、または特別償却という形で優遇が受けられる制度であり、2025年3月31日まで適用期限が延期されています。

DXを促進するためには、これら補助金や税制を積極的に活用することが重要です。

④ 2025年の崖問題への対応

2025年の崖とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提示した、日本の産業界に対する警鐘のことです。

日本企業のIT予算のうち、8割が現行システムの維持管理に使われている状況にあります。長年、現行システムに改造を重ねてきた結果、複雑化·老朽化し、かつブラックボックス化したことが、その理由といわれています。さらに、現行システムを扱えるIT人材が引退し、メーカー側がサポートを終了するというリスクも高まっています。

2025年以降の5年間で、年間あたり最大12兆円の経済損失が発生するといわれており、2025年の崖問題には真摯に対応していく必要があります。

DXの3つの段階と導入事例

経済産業省では「DXレポート2」にて、企業がDXの具体的なアクションを設計できるように、DXを3つの段階に分解しました。

段階定義
デジタイゼーションアナログ·物理データのデジタルデータ化
デジタライゼーション個別の業務·製造プロセスのデジタル化
デジタルトランスフォーメーション組織横断/全体の業務·製造プロセスのデジタル化、”顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革

製造業での業務のデジタル化を3つの段階に当てはめると、次のようになります。

段階解決策詳細
デジタイゼーション製造装置の電子化仮想化を見据えたシミュレーション、および遠隔で制御可能な製造装置の導入
デジタライゼーション製造プロセスの仮想化職人の技術のデータ化、および製造プロセスをシミュレーションする製品の導入
デジタルトランスフォーメーション製造の遠隔化遠隔地にある製造装置に対して直接出力するビジネスモデルへ変革

これら3つの段階について、筆者が実際に担当した導入事例を紹介します。

① デジタイゼーション導入事例(溶接工事業)

現状の問題点·工員の勤務実績は、毎月手書きの「作業日報」にて把握している ·社員が少ないため、高額なシステム投資は費用対効果が見込めない
解決策Googleスプレッドシート活用による「作業日報の電子化」
期待効果·工員によるタイムリーな作業日報提出 ·事務員の業務負荷軽減 ·IT導入の成功体験によるIT化促進

この事例では、毎月手書きの作業日報で工員の勤務実績を把握していたため、作業日報提出の遅延などにより給料計算が煩雑になっているという問題がありました。

解決策として、Googleスプレッドシートを活用した日報を提供し、工員がスマートフォンから簡単に入力できるようにしました。その結果、リアルタイムな集計による給与計算の簡素化が可能となりました。

今までの紙による作業日報や集計作業をなくし、「作業日報の電子化」を行うことで実現した、デジタイゼーションの事例となります。

② デジタライゼーション導入事例(食品卸売・小売業)

現状の問題点·代理店毎の卸価格等の営業情報が属人化しており共有されていない ·在庫管理が煩雑
解決策BtoB用のECサイト構築による「代理店営業業務の自動化」
期待効果·代理店毎の卸価格をマスタ化することで属人化を抑制 ·受注プロセスの自動化による業務負荷の軽減 ·倉庫システムとの連携により、将来的に在庫管理の可視化·自動化を実現

この事例では、コロナの影響でBtoB事業の新規代理店が増加したが、代理店毎の卸価格等の営業情報が属人化されており、新規代理店業務まで手が回らないという問題がありました。

解決策として、ECサイト経由で販売できる仕組みを構築して、新規代理店へのサービスを提供できるようにしました。その結果、新規代理店の増加による営業業務の負荷を軽減することが可能となりました。

今までの属人化した営業業務ではなく、データ化されたECサイトによる「代理店営業業務の自動化」を行ことで実現した、デジタライゼーションの事例となります。

③ デジタルトランスフォーメーション導入事例(駅ビル惣菜屋)

現状の問題点·コロナ影響により駅ビル利用者が激減 ·その一方で、夕方には混雑によりお客様を待たせてしまう ·駅ビルのため賃料負担が大きい
解決策テイクアウト予約、デリバリー注文、ECの機能を備えた「店舗型Webサイトの構築」
期待効果·デリバリーやテイクアウトを開始することによる新規顧客獲得 ·お客様を待たせないオペレーションの実現 ·路面店への展開が可能な「新ビジネスモデル」の創出

この事例では、コロナの影響で駅ビルの利用者が激減したことで売上が減少したが、その一方で混雑する時間帯では顧客を待たせてしまうという問題がありました。

解決策として、リアル店舗での販売だけでなく、テイクアウトサイトとデリバリーサイト、ECサイトを同時に立ち上げて、ネットでの注文も可能としました。その結果、ネットで注文した商品を店舗で受け取る、自宅に配達してもらう、ECサイトで販売することが可能となり、顧客の待ち時間を解消することが可能となりました。さらに、リアル店舗と店舗型Webサイトの連携により、オンラインで決済を完結することも可能となりました。

今までの駅ビル店舗にとどまらず、路面店でのビジネスモデルも視野に入れた「店舗型Webサイトの構築」を行ことで実現した、デジタルトランスフォーメーションの事例となります。

今回「中小企業がDXを推進すべき理由」というテーマで、DXの現状や課題、3つの段階など事例も交えながら解説しました。

中小企業において、DXを推進する人材を育成するうえで必要な知識として理解いただけれ


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この記事を書いた人

中小企業診断士 山浦 直晃
認定経営革新等支援機関

1996~2000年
大東京信用組合にて渉外(営業)に従事

2000~2022年
SCSK(株) にて、ERPの提案営業・導入コンサルタントに従事 100社以上の企業にシステムを導入

2019年 中小企業診断士を取得
システム導入・IT化戦略立案支援・5社(内、顧問契約3社)、
事業計画策定支援(補助金採択実績・12社、融資による資金調達支援・1社)、
企業総合診断・5社に従事

2022年~現在
中小企業基盤整備機構、地方銀行にて、コンサルティング業務に従事
主にIT/DX領域を担当

システムやデジタル技術は、あくまでも経営課題を解決するための「手段」であり、
現在の業務プロセスを分析し、問題点を明確にして、最適な改善策を提案することをモットーにする。

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