中小企業のDX人材育成 | Part1 中小企業がDX人材を推進すべき理由

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山浦 直晃
中小企業診断士

SCSK(株) にて、ERPの提案営業・導入コンサルタントに従事 100社以上の企業にシステムを導入。
システム導入・IT化戦略立案支援、事業計画策定支援、企業総合診断5社に従事2022年~ 中小企業基盤整備機構、地方銀行にて、コンサルティング業務に従事。主にIT/DX領域を担当。システムやデジタル技術は、あくまでも経営課題を解決するための「手段」であり、現在の業務プロセスを分析し、問題点を明確にして最適な改善策を提案することをモットーにする。


本シリーズは三部制で、上記の動画は「Part.1」です。

▼ シリーズ動画一覧

「中小企業のDX人材育成」について、全部で3つのパートに分けて解説いたします。

今は第1回目として、「DXとは」というテーマで解説したいと思います。

目次

DXとは何か?

まず、DX(デジタルトランスフォーメーション)の概念について紹介します。

DXという言葉は、スウェーデンのエリック·ストルターマン教授が2004年に提唱しています。その後、IDC Japan株式会社や経済産業省などでもDXについて定義をしています。

<DXの概念>

①エリック・ストルターマン教授の提唱(2004年)

デジタル技術の浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる

②IDC Japan株式会社の定義

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面で顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

 

③デジタルガバナンスコード2.0(経済産業省)の定義

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化·風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

 これらをもう少しシンプルに整理すると、DXとは、「デジタル技術を活用してビジネスモデルを革新すること」になります。

英語圏では、変革(トランスフォーメーション)を一言で表す時に「X」を用いていることから、デジタルの「D」と変革の「X」をつなげて「DX」という表現になりました。

DXの推進に求められる要件

市場を分析する時にさまざまなフレームワークを活用しますが、そのフレームワークの1つである「3C」を使ってDXの推進に求められる要件を整理したいと思います。

「3C」とは、お客様(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という3つの観点で物事を考えて整理するフレームワークです。

①顧客(Customer)

お客様にとって最も身近なDXは買い物ではないでしょうか。最近では多くの商品が、店頭だけではなくスマートフォンを使って購入できるようになりました。

ひと昔前は音楽を聴くためにレコードを買っていましたが、今では当たり前のように定額の利用料を払って、スマートフォンを使って音楽を聴くことができるようになりました。

このように、DXとはデジタルデータを活用したビジネスモデルの変革であると言えます。

②競合(Competitor)

DXが進展してくると、思いもよらない異業種から競合企業として参入してくることがあります。代表的な事例として、アップル社の取り組みを紹介します。

ご存知の通りアップル社は、元々パソコンメーカーでした。そのアップル社が、音楽プレイヤーの「iPod」とデジタル音楽配信サービスの「iTunes Store」を組み合わせて、音楽業界に参入しました。その結果、音楽業界でのビジネスの在り方を一変させることができました。

この事例から、DXではデジタル技術を主体としながらも、製品やサービスをうまく組み合わせて、新たな価値を生み出す取り組みが不可欠であるといえるでしょう。

③自社(Company)

2020年以降はコロナの影響でテレワークが進展し、働き方が多様化しました。このテレワークを支えたのは、自宅のパソコンとオフィスをつなぐデジタル技術ではありますが、大事なのはテレワークに合わせた業務や就業ルールの革新だと思います。それこそがテレワークを進展するために重要な役割を果たしたといえると思います。

このように、DXではデジタル技術だけでなく、業務手順や規則·ルール等の革新を伴う取り組みも必要であると言えます。

「3C」により整理した、DXの推進に求められる要件は以下の通りです。

·デジタル技術を活用できるビジネスモデルであること

·製品やサービスと組み合わせて新たな価値を生み出す取り組みであること

·業務手順や規則·ルール等の革新を伴う取り組みであること

デジタル技術の紹介

 具体的なDXにはどのようなものがあるのかを知るために、DXと関わりが深い5つのデジタル技術について紹介します。なお、これらの技術はあくまでも手段であるため、ビジネスモデルの革新こそがDXの本質であることを念頭においていただきたいと思います。

①デザイン思考

DXを推進する際のスタートは「新しいニーズ」です。DXでは、変化し続けるユーザーのニーズに対して、解決策を創出することからスタートする考え方が求められています。

これを「デザイン思考」と呼んでいます。

②IoT

さまざまな機器に搭載されたセンサからデータを取得して、インターネットを通じて収集する技術を「IoT」と呼んでいます。具体的な例として、「IoT」の機能を備えたエアコンがあります。インターネットを通じて温度などの情報を収集し、次の製品開発に活かしています。また、「RFIDタグ」も「IoT」の一種であり、商品につけて流通させることで、インターネットを通じて商品の所在や状態などの情報をとらえることが可能となります。

③ビッグデータ

「IoT」で収集されるデータのように、日々生成される多種多様なデータ群を「ビッグデータ」と呼んでおり、「量·多様性·頻度」という要件があります。

「データ量」が多いのは当然ながら、中身が同じだとデータ分析に役立たないため「データの多様性」が必要となります。また、常に新しいデータを活用できるように「データ収集の頻度」も大切となります。

④AI

「AI」はデータを吸収して学習していきます。機械学習ともいいますが、学習することで新しい技術が次々と進化していくのです。

その事例として「AI-OCR」があります。これは画像情報の中から文字情報を認識する技術です。従来、画像データの中に文字が書いてあっても、それが文字だとは認識できませんでした。ところが、「AI」に文字の画像パターンを大量に読み込ませ学習させることで、文字情報を認識できるようになったのです。さらに学習をくり返した結果、現在の「AI-OCR」は高精度で文字の読み取りを行うことができるようになりました。

⑤クラウド

「クラウド」とは、インターネットを使って利用者にサービスを提供する仕組みです。サーバーなど物理的なものを意識させないでサービスを利用することが可能です。

前述の「ビッグデータ」や「AI」の仕組みは、今では「クラウド」上で実現されています。

参考までに、「AI」、「ビッグデータ」、「クラウド」、「デザイン思考」の頭文字をとって、DXの関連技術の「ABCD」とも言われます。

今後のデジタル技術

デジタル技術の中で、近年関心が高まっている「Web3」を紹介します。

「Web3」は、まだ実用化するには時間がかかると言われていますが、その特徴はビットコインの中核技術であるブロックチェーンを応用しているという点です。

ブロックチェーンとは「自律分散システム」とも呼ばれ、仮想通貨のビットコインで使われている技術です。仮想通貨では、取引履歴などの大量データが日々発生しています。ブロックチェーンは自立的に取引履歴を分散し、さらに分散したものをコピーして、世界中の参加者のパソコンの中で保持するという特殊な技術で実現されています。そのため、ネットワーク内に無数のコピーが存在することでシステムダウンしない、データの改ざんが困難といったメリットがあります。

 現在はGAFAMと呼ばれる巨大企業が個人情報やコンテンツを独占し、利用者がその独占されたコンテンツを使う仕組みであり、「Web3」と対比して「Web2」とも呼ばれています。

巨大企業にデータを独占されることなく、新しいユニークなサービスが生まれてくる可能性があるということで、「Web3」は大変注目されています。

今回「DXとは」というテーマで、その概念や要件など事例も交えながら解説しました。

中小企業において、DXを推進する人材を育成するうえで必要な基礎知識として理解いただければ幸いです。


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執筆者

中小企業診断士 山浦 直晃
認定経営革新等支援機関

1996~2000年
大東京信用組合にて渉外(営業)に従事

2000~2022年
SCSK(株) にて、ERPの提案営業・導入コンサルタントに従事 100社以上の企業にシステムを導入

2019年 中小企業診断士を取得
システム導入・IT化戦略立案支援・5社(内、顧問契約3社)、
事業計画策定支援(補助金採択実績・12社、融資による資金調達支援・1社)、
企業総合診断・5社に従事

2022年~現在
中小企業基盤整備機構、地方銀行にて、コンサルティング業務に従事
主にIT/DX領域を担当

システムやデジタル技術は、あくまでも経営課題を解決するための「手段」であり、
現在の業務プロセスを分析し、問題点を明確にして、最適な改善策を提案することをモットーにする。

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