経済産業省【挑戦する中小企業応援パッケージ】の「信用保証制度と再生支援」のポイントを中小企業診断士がわかりやすく解説!

【執筆者】
中小企業診断士 原口 卓也

商工会議所
 ・個社支援(制度資金あっせん、補助金申請他)
 ・面的支援(イベント企画運営)

税理士法人
 ・財務に基づく経営計画PDCA支援コンサルティング
 ・法人・個人の決算書・申告書作成

中小・卸小売業 経理財務部
 ・月次・年次決算とりまとめ
 ・プロジェクト活動(インボイス制度対応など)

資格
 ・中小企業診断士 2021年5月登録
 ・国家資格キャリアコンサルタント 2019年9月登録 

その他
 ・埼玉県生まれ長野県出身、妻と息子と千葉県在住
 ・好きなものはバレーボール、NBA、新日本プロレス

まずは、本パッケージについておさらいしてまいります。

前回お届けした『挑戦する中小企業応援パッケージ(以下本パッケージ)』について、今回は再生フェーズ、再チャレンジフェーズの詳細に触れてまいります。具体的には、『求償権消滅保証制度』並びに『再挑戦支援保証制度』を採り上げてまいります。

目次

挑戦する中小企業応援パッケージとは(おさらい)

前回の『アフターコロナにおける政府による中小企業の金融支援策「中小企業応援パッケージ」とは?』において、今後の国による中小企業金融支援策として、本パッケージを採り上げました。

以下抜粋

2023年8月30日に、経済産業省が金融庁や財務省と連携の上、『挑戦する中小企業応援パッケージ』を策定しました。これは「将来の挑戦に向けたコロナ資金繰り支援」と「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援の強化」をパッケージ化し、”挑戦する”中小企業の持続的成長を支援するものです。

なぜ信用保証制度が中小企業の再生支援において有意義なのかについて、中小企業を取り巻く外部環境の変化から考察してまいります。

信用保証制度と再生支援

企業専門の信用調査会社である株式会社帝国データバンクが公表した『全国倒産企業集計2023年度上半期報』によると、企業倒産に関する直近の動向は以下の通りです。

◆倒産件数

4,006件(前年同期3,045件、31.6%増)となり、上半期としては6年ぶりに前年を上回った

◆業種別

14年ぶりに全業種で前年同期を上回り、中でもサービス業(前年同期774件→958件、23.8%増)が多かった

※サービス業には旅館業、娯楽業や専門サービス業が含まれるが、特に広告サービス業の件数増加が目立った(231件→308件)

◆地域別

上半期としては2006年以来、17年ぶりに全地域で前年を上回った。その内、東北・関東・中部・九州は、コロナ禍前の2019年上半期を超えた

◆規模別

負債総額では5,000万円未満の倒産が2,307件(前年同期1,787件、29.1%増)で最も多く、全体の57.6%を占めた。また、資本金別では1,000万円未満(個人事業主含む)の倒産が2,720件(前年同期2,028件、34.1%増)発生し、全体の67.9%を占めた

 →小規模な事業者の小口な倒産が増加傾向にあるといえます。

◆倒産の主因別

「販売不振」が3,130件(前年同期2,330件、34.3%増)で最も多く、全体の78.1%(対前年同期1.6ポイント増)を占めた

→販売不振とは売上が上がらず、利益が出ないことをいいます。企業側は人手不足などで売りたくても売れない、消費者側はエネルギーコストの負担増や物価高により買いたくても買えないことも想定され、販売不振の要因は複合的と推察されます。

コロナ対策として、金利実質0%・無担保保証の”ゼロゼロ融資”の返済開始は2023年7月から2024年4月までの間に返済開始が集中しているとされます。上記調査結果はそれ以前のものであり、さらに、倒産の先行指標とされる代位弁済件数は2023年4〜6月に9,720件と前年同期比70%増えており、業況が回復し切っていない中小企業の倒産件数は今後も余談を許さない状況が続きます。

売上が回復せずとも、資金繰りが回れば、企業は倒産しません。キャッシュフロー計算書における営業活動キャッシュフロー(以下、CF)がマイナスでも、投資活動CFや財務活動CFがプラスで、現金収支がプラスであれば、資金繰りが回っていることになります(※当然ながら営業活動CFがプラスな状態が健全)。

したがって、業況や業績が改善されるまでの間、当面の資金繰りを下支えするために、借り入れられる枠を大きくしたり、保証対象を拡充したりして、中小企業が資金調達(財務活動CFをプラスに)しやすい環境を整えるのが、信用保証制度による中小企業支援の目的です。

しかしながら、経営者に強い事業継続の意思や次こそはという新規事業のアイデアを有していたとしても、返済が滞ったり、一度倒産させたりという実績は記録として残り全国で共有されて、新たな資金調達を阻み再チャレンジしづらい経営環境であることは事実です。そこで、本パッケージでは、以下の二つの信用保証制度を打ち出し、中小企業の再生・再チャレンジを支援します。

再生フェーズ_求償権消滅保証制度における対象拡大

『求償権消滅保証制度』を説明するには、まず代位弁済とは何かを理解する必要があります。その代位弁済とは、保証人の保証を受けた債務について、何らかの原因により契約通りの弁済が困難となった場合に、保証人が債務者に代わって債権者へ弁済することです。

求償権消滅保証制度図表
参照:J-Net21 ビジネスQ&A

そして、求償権とは、債務者に代わって債権者へ弁済した債務について、保証人が債務者に対して有する返還請求権のことです。代位弁済を受けると、信用情報に事故登録される、担保が差し押さえられるなどの理由から、債務者に事業継続の意思があり、業況回復の見込みがあったとしても、新たな資金調達が困難となり、資金繰りが立ち行かなくなるリスクがあります。

 上記より、『求償権消滅保証制度』では、信用保証協会が求償権を有する債務の弁済努力を誠実に行っている事業者を対象に、信用保証協会が代位弁済したために保有する債権(求償権)の全部又は一部を借換により消滅させることで、金融の正常化を図ることを目的としています。

 これまでは、本保証制度を利用するには、経営サポート会議による事業再⽣計画、もしくは中⼩企業活性化協議会による再建計画があることが条件であったことから、そのハードルが高く利用できる対象が限られていました。

※経営サポート会議とは、⾦融機関等の関係者により個々の事業者を⽀援する信⽤保証協会等を事務局とした⽀援の枠組みです。

 そこで、本パッケージにより認定経営革新等支援機関が支援した『経営改善計画策定支援事業』による計画も、2023年10月から『求償権消滅保証制度』の利用対象となったことで、その対象が拡大されました。

 『経営改善計画策定支援事業』では、中小企業診断士ら認定経営革新等支援機関による支援を通じて、事業の収益性の向上、キャッシュフローの改善を目指す計画策定、その実行を行います。その費用の2/3を中小企業活性化協議会が補助する仕組みであり、制度を利用しやすいことが特長であります。

再チャレンジフェーズ_再挑戦支援保証制度における書類要件の緩和

 次の『再挑戦支援保証制度』は、血が滲むような努力の結果、不本意ながら廃業や会社清算を選択せざるを得なかったが、その”過去の失敗”を活かして新たに再チャレンジしようとする事業者を支援する制度です。本パッケージでは、「資格要件申告書」の書式改正が行われ、申請者である事業者の負担軽減が図られました

 本保証制度は、事業を廃止した、または清算した会社の役員であった個人が、新たな事業を開始してから5年間が経過していない個人が対象です。創業関連保証と合算で、保証限度額が3,500万円ですので、ご留意ください。

挑戦する中小企業応援パッケージのまとめ

 本パッケージは、コロナから立ち上がろうとする中小企業から資金を引き上げてしまっては地域の経済や雇用が崩壊することを国が危惧し、当面の支援として打ち出されたのではないでしょうか。本パッケージが打ち出された裏側では、セーフティネット保証4号における地域指定が借換目的のみ延長されるなど、(金融の)蛇口を閉めるところは閉めるという国の姿勢が窺い知れます。

 コロナは5類に移行しましたが、ガザ危機に代表されるように、これからの中小企業を取り巻く経営環境はまさに先行き不透明で、そのような状況下で行われる経営者の意思決定に正解はありません。だからこそ、本パッケージによる支援策は転ばぬ先の杖としてインプットしておくと共に、再生・再チャレンジ支援が必要になる前に、経営計画のPDCAと資金繰り表の管理を行い、”倒産しにくい経営体制を構築すべきと考えます。当社はありたい姿へまっすぐに向かっているか、そのためのキャッシュに過不足ないかを常日頃からウォッチすることで、変化にいち早く気づき採るべきアクションを打つことができます。

 経営計画のPDCAと資金繰り表の管理について、取り組み方が分からない、または取り組んでいるがその成果が不十分だと感じている経営者の方は、お近くの中小企業診断士にご相談ください。経営の専門家として、また客観的な視点を持つ第三者として、御社の持続的成長をご支援いたします。

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中小企業診断士 原口 卓也

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