クレーム対応の基本!お客様の怒りを笑顔に変える!| Part3
松尾 正二郎
中小企業診断士
株式会社 パワーアップコンサルティング 代表取締役
中小企業診断士 / 消費生活アドバイザー
食品メーカーで営業、マーケティング、人事総務に従事。2005年から10年間お客様センター責任者。消費者対応部門統括部長、働き方改革等の部門統括責任者を経て2018年独立。
顧客対応品質向上、事業承継、賃金人事制度構築、営業力強化、働き方改革推進、管理者育成等の研修やコンサル事業を手掛ける。
本シリーズは三部制で、上記の動画は「Part.3」です。
▼ シリーズ動画一覧
はじめに
「クレーム対応のキホン お客様の怒りを笑顔に変える」というテーマで、下記の5部構成で説明したいと思います。今回は、第4部と第5部ついて解説します。
第4部:クレームタイプ別対応法
1)怒りが激しいとき
いわゆる一般的なクレームでもよく見受けられますが、お客様がとてもお怒りになっているケースがあります。このような場合の対応方法について説明します。
まず、傾聴と共感の姿勢も大事なのですが、お客様のお怒りのピーク、これを見分けることがとても重要です。ピークを見極めて、落ち着いてきたところでテストクロージングを行うことになります。
上図のグラフのとおり、お怒り度には波があります。最初は激しく怒り、しばらく怒っていると少しずつトーンが下がっていきますが、もう1回振り返るケースが多いです。大事なのは、最初のピークよりも2回目のピークのほうが低いということです。このピークが下がってきた頃合いをみてテストクロージングを行います。
「お客様、お怒りはごもっともだと存じますが、具体的なお話をお聞きしてもよろしいでしょうか?」と切り出して、迅速に事実確認と解決策の提示を行います。
2)自己実現型のクレーム
自己実現型のクレームとは、「世直し型」、「説教型」とも呼ばれるクレームタイプで、クレーム自体が目的となっています。申し立てする人はクレームを言っている意識は全くなく、むしろ良い行いをしていると思っているケースがほとんどです。
具体的には、「受付の対応が悪い、どんな教育をしているんだ?」、「お宅のためを思って行っているんだ」、「貴社の製品は真剣に顧客やユーザーのことを考えて開発しているか疑問だね」、「私が開発責任者をしていた時なら、このような製品は出させなかった」といった内容です。
このクレームでは、傾聴と共感はほぼ必要なく、最後のお詫びとクロージングが重要になります。共感は簡単に済ませた上で、申し出に対する感謝をしっかり伝えます。相手からの提案について約束をしないことも重要です。頃合いを見計らって、安全にクロージングへ移行することがポイントになります。
具体的なトークの例は次のとおりです。
- 初期対応
「はい」、「なるほど」、「おっしゃる通りです」、「いたらずに申し訳ありません」 - 事実確認
「〇〇ということですね」、「お客様のおっしゃりたいことは〇〇ですね」 - 解決策提示
「関連部署に伝えます」 - クロージング
「大変勉強になりました」、「貴重なご意見ありがとうございます」
3)不当要求・過剰請求のクレーム
不当要求・過剰請求のクレームは起こってしまうと、対応しても大変なストレスがかかります。対応者への個人的な攻撃は、カスタマーハラスメントといわれています。
特徴としては、クレームを申し立てることで、何らかの利得を得ることが目的といわれています。申し立てする人は同様のクレームを申し立てる場合が多く、クレーム全体をコントロールする技術を持っています。最近は、一般のお客様がクレームのテンプレートを利用して豹変するようなケースもあります。
不当要求・過剰請求のクレームには3つのパターンがあります。
①交渉の主導権を握る
よくある事例としては、準備や判断をさせないように対応を急がせて、「今すぐ来い」、「2日で結果を出せ」といった無理を言うパターンです。
また、関係会社や親会社などの関係先を巻き込むような、「おたくらが対応しないということは、〇〇社に言えばいいのか」といったパターンもあります。
あるいは、「話にならないから上の者を出せ」、「社長が出てくるまで待たしてもらう」といった責任者の対応を要求する、「対応者の態度が悪い」、「時間がかかりすぎる」といった不備をつくパターンもあります。
②揺さぶりをかける・圧力をかける
よくある事例としては、「身体を壊して仕事に支障が出た」、「精神的にダメージを受けた」といった補償を求めるパターンです。
また、「お宅の対応は謝るだけで終わりなのか」、「俺の顔が立つようにしろ」といった企業の姿勢や誠意を問うようなフレーズで攻撃してくるパターンもあります。
他には、「お前は馬鹿か」、「子供はいくつなんだ」と個人攻撃をする、「マスコミや消費者センター、保健所に持ち込むぞ」といった公的機関への申し入れを示唆するパターンもあります。
③対応を長期化させる
「この説明じゃわからない」、「こんな調査報告では納得できない、やり直せ」という調査に対する不満や、「今後何をしてくれるのか考えて来い」、「どうするかよく考えて、また連絡してくれ」と、対応に納得しないで宿題を出すケースもよく見受けられます。
次に、不当要求・過剰請求のクレームの基本的な進め方を説明します。
まず、初期対応としては、対応者が先方の申し出を記録して持ち帰り、その報告をもとに組織で対応を検討します。対応者一人で判断しないことが重要です。
申し出内容から、不当要求・過剰請求のクレームであるかを組織で判断し、そこから事実関係を確認します。社内だけで解決が難しい場合は、専門家に相談した方がよいと思います。
最後に、当社はどういった基準で対応していくのかを決めておいて、クロージングの態勢をとってシナリオを作ります。「ご要望をおっしゃっていただきませんと対応いたしかねます」、「当社としましては、これ以上お役に立てません」といったシャットアウトする時の締めのフレームも準備しておきます。
これによって相手をシャットアウトし、企業をリスクから守ることができるのです。
第5部:クレーム対応マニュアルを作る
クレーム対応の課題を明確にして、マニュアルやフロー、基準を作ることが重要になります。
①対応の手順が明確になっていない
例えば、店長不在時の対応方法や連絡方法などの手順を示したマニュアルやフローを作る必要があります。
②対応する基準が決まっていない
商品を間違って渡してしまった場合の交換の基準や返金の基準、あるいは電話をかける時間帯などの基準を作る必要があります。
③対応者のスキル・知識に問題
マニュアルや基準があるにも関わらず対応ができていないのであれば、対応者への研修を実施する必要があります。
1)マニュアルの作り方
受付、お礼とお詫び、傾聴と共感、事実確認、解決策の提示、お詫びとクロージングについて、当社ではどのように対応するのかを議論した上で、基本動作や心構え、トーク内容を整備します。
現場で使えるマニュアルを作ることで、誰でも同じように対応することができるのです。
2)基準の作り方
基準を作る際は、検討する対象を区切って考えていきます。例えば、製品の交換や料金の返済の場合は、お客様責任、当社責任、責任不明のパターンがありますので、それぞれでどのように対応するのかを決めるのです。
判断根拠については、これまで対応してきた事例や同業他社、世間一般の水準を見据えた上で、基準を決めていきます。
基準を確立することで、どのお客様に対しても同じように対応することができるのです。
3)クレーム対応フロー
クレーム対応の手順をフローチャートで表すことで、アルバイトの人でもすぐに対応ができるようになります。
4.最後に
クレームは企業側からみると、できれば避けたい、早く処理して終わらせたいものですが、お客様の立場からみると、商品やサービスに期待があるからこそ時間と手間をかけて不満を申し出ているのです。期待がなければ何も言わずに去っていきます。こうしたお客様の声は、お金をかけてでも入手したい大切な情報と考えることができます。
クリームではなく、「ご指摘」という言い方に変えるだけで、お客様に対する向き合い方やクレームに対する会社の考え方も変わると思います。
講師に無料相談をする
ビジネス処方箋に登壇している講師に無料相談を行うことができます。
お問い合わせいただきましたら、ご相談内容に適した士業・経営者の講師をご紹介いたします。