連続起業家が語る成功し続ける秘訣!Part4 顧客を選ぶポイント&普段から意識を高める方法

登壇者
株式会社福水戸家 代表取締役 一般社団法人パラレルキャリアマネジメント協会 代表理事 磯部 一郎のプロフィール写真

磯部 一郎
経営者

株式会社福水戸家 / 株式会社福水戸家ホールディングス 代表取締役
一般社団法人パラレルキャリアマネジメント協会 代表理事

プログラマーとしてIT企業に入社。独立し大手企業向けの業務システム開発事業を実施後、上場企業に株式譲渡。立ち上げに関わった法人は15社。ゼロイチ起業から売上高10億円までのスケールアップ経験がある。企業・事業の買収・合併・譲渡や持株会社や合弁会社の設立など、経営者としての経験も豊富。


本シリーズは五部制で、上記の動画は「Part.4」です。

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目次

はじめに

渡邊社長

本日も起業家・経営コンサルタントであり、癌サバイバーの磯部さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

お客様を選ぶ

磯部 一郎

今回のテーマは「お客様を選ぶ意識と選ばれる営業の実践方法」についてです。具体的には、どのようにしてお客様を選び、お願い営業ではなく選ばれる営業を実現するか、その考え方や意識の持ち方についてご説明いたします。

どんなお客様を断っているでしょうか?

磯部 一郎

まず一つ目のポイントとして、よく質問を受けるのが「どのようなお客様を断っているのか」という点です。
お客様を選ぶことは非常に重要であり、選ぶ基準は単なる好き嫌いではありません。簡単に言うと、自分の提供する価値を認めてくれるお客様、あるいは自分が売りたい形で価値を受け取ってくださるお客様とだけ商売をするべきです。
好き嫌いではなく、例えば無駄に値引きを要求するお客様や、価格比較のみを重視するお客様には注意が必要です。

磯部 一郎

価格の比較検討自体は現代の市場では権利ですが、価格を比較する際に単なる原価として捉えられると、提供価値が無視されることがあります。
例えばコーヒーの例で言うと、居心地の良い空間として比較されるのは良いですが、単にコーヒーそのものの比較対象とされるのは問題です。このような場合、提供する価値を受け取ってもらえないことが多いのです。
さらに、提供する価値に魅力を感じないお客様も避けるべきです。自分が提供するブランディングやプロデュースした価値を理解し、受け入れてくれるお客様とだけ取引を行うことが望ましいのです。

渡邊社長

経営者としては、売上を上げたいと考えるのが当然ですが、お客様を断ると売上が減少する懸念があります。その際、どのような心持ちで断るべきですか?

磯部 一郎

重要なのは「ロストを多く経験することが前進につながる」と考えることです。つまり、自分の価値を認めてくれないお客様とは取引を行わないという考え方を明確にすることが重要です。
このようにして、営業のコミュニケーションコストを無駄にしなくて済むため、生産性が高まります。見込み客全体の中で、取引を行うべき相手とそうでない相手をしっかりと選別し、精査する作業が前進への第一歩です。このプロセスを意識することで、断ることへの恐れが軽減されるでしょう。
お客様を選ぶことで、会社の生産性が向上するのです。この意識を持つことが大切です。

どんな断り方をしているでしょうか?

磯部 一郎

お客様をどのように断るべきかという点についてですが、認めてくれないお客様、例えば値引きを要求する方や価格比較に固執する方には、提供している価値そのものを丁寧に説明し、それが故にこの価格であるということを納得していただくことが重要です。
この説明を通じて、理解を得た上でご購入いただく形を目指します。乱暴な言葉を使ったり、上から目線で接したりするのではなく、自分たちのスタンスを曲げずに説明することが断る方法です。
言い換えれば、高い見積もりを提示することで断るのではなく、自分たちの価値をしっかりと伝えることが心がけるべき断り方です。

高い商材を薦めたら怒られた。どう対処しますか?

磯部 一郎

また、高額な商材を勧められた際に怒られる場合、どのように対処すべきかについてですが、相手が怒るかどうかに関わらず、我々が提供する価値とそのために必要な金額について説明を行うだけです。
価格交渉が行われる場合も同様に、自分たちの提供したい価値とそれに見合う価格についてしっかりと説明することが求められます。自分の価値を認めてくれるお客様とだけ付き合うという意識を高めることも非常に重要です。

意識を高める

磯部 一郎

次に、意識を高めるという点について考えます。

皆さんはなぜ、今日の服装ですか?

磯部 一郎

皆さんが今日の服装を選んだ理由について考えてみましょう。
会社のブランドにしがみついているだけでは商売は成り立ちません。特に起業時には、自分一人で取り組まなければならないため、その人自身がどのような空気感を持っているか、また選ばれるためには印象を残す必要があります。
ですので、スーツを着用することもあれば、カジュアルな服装を選ぶこともあります。服装の選び方は、TPOに合わせることが重要です。右足から出るのか、左足から出るのか、今日は何色のジャケットを選ぶべきかなど、非常に気を使うべきです。
自分らしさを表現し、印象に残るような工夫が求められます。

磯部 一郎

スティーブ・ジョブズのように服装を毎回同じスタイルにすることで、その選択自体が個性やプロデュースの一環となっている場合もあります。
ジョブズの場合、そのスタイルが彼自身のブランドとして確立されているため、斬新に見えるわけで、何も考えずに選んでいるわけではないのです。これは、ただ単にネクタイを外したり、スーツのままカジュアルにしたりすることとは全く異なります。
印象操作やブランディングの一環として、毎日同じスタイルを貫くことと、適当に選んだスタイルとは異なるということを理解しなければなりません。

印象の操作をしていますか?

磯部 一郎

印象の操作について考えると、私は現在スモールビジネス向けのコンサルタントをしていますが、かつては一部上場企業のコンサルタントとして、役員会にITコンサルとして参加し、上場企業の役員会でプレゼンテーションを行ったこともあります。
30代の頃には、そのような場面でスーツとネクタイが標準の世界において、敢えてTシャツとジーンズで臨んだこともありました。それは、特に役員クラスが敵対的だった現場において、議論に勝つための戦略でした。
通常のスーツで臨むのも一つの方法ですが、あえてラフな服装で行くことで、相手に違和感を与え、そこから議論を有利に進めるという狙いがありました。彼らは私がTシャツとジーンズで来たことに驚き、その後、私が発言する内容の鋭さに対して見方が変わりました。
最初は軽んじられていても、発言の内容で評価を覆すことで、ラフなスタイルが一層際立つのです。

磯部 一郎

こうした戦略的な印象操作は、プラスに転じる場合に大きな効果を発揮します。例えば講演の際には白いジャケットを着用するなど、TPOに応じて服装を選ぶことも大切です。講演会では、100人規模の参加者の中で黒い服装では主役としての存在感が薄れがちですから、白いジャケットを選ぶことで印象を操作するようにしています。

なぜ、お客様はあなたから買いますか?

磯部 一郎

このように、印象操作を意識し、その上で「なぜあなたからお客様は購入するのか」という点を理解することが重要です。
会社が売りたいものや提供したい価値、例えば「居心地の良い空間」などがあったとしても、お客様は営業現場で商品だけでなく、その販売を担う営業担当者や経営者のパーソナリティを含めて価値を判断します。
そのため、自分自身の持つ価値観やスタイルをしっかりと理解し、それをお客様に伝えることがビジネスにおいては非常に重要です。

磯部 一郎

私は現在、意識改革コンサルティングを提供していますが、これは単に講義の形で行うだけでなく、ビジネスとして成り立たせているものです。
ただし、お客様は「意識改革」を購入しているつもりではありません。
実際に私のコンサルティングを受ける方々は、私の生き方や生き様に共感し、皆さんが「磯部さんからアドバイスを受けたい」と思って申し込んで来ているのです。

磯部 一郎

私自身、癌サバイバーでありながら様々な困難を乗り越え、新たな挑戦を続けている姿をお見せしています。これを見た方々は、起業という行為自体が勇気のいるものであり、さまざまな決断やリスクを取る必要があることを理解して、私に相談しながら進めていきたいと考えるのです。私はこれを「アントレプレナーシップ」と呼び、事業創造に挑戦する気持ちや勇気を提供しています。

磯部 一郎

したがって、自分が提供している価値は何なのかを自己認識することが非常に重要です。単にサービスを売るのではなく、自分の生き方や理念に共感してくれる人々に向けて、その価値を届けることが本質なのです。

お客様から紹介したいと思われるにはどうしたらよいですか?

磯部 一郎

お客様から「紹介したい」と思われるためにはどうすれば良いのでしょうか。この点について、多くの方から「どうすれば良いのか?」と質問をいただきますが、私はビジネスにおける品性や品格が大切だと考えています。

磯部 一郎

例えば、ビジネス上の品性とは、利害関係や損得だけで物事を判断することではありません。「この方は購入しないから」といって態度が粗雑になるようでは、ビジネス上の品性や品格が欠けていると言えます。
お客様はそういった部分をしっかり見ています。たとえ損得の関係で物を購入しても、紹介したいとは思わないでしょう。
お客様の大切なご友人や経営者仲間に安心して紹介できるのは、信頼できる相手だからです。

磯部 一郎

逆に、損得に関係なく誠意を持って対応する姿勢があれば、「この方なら信頼して紹介できる」と感じてもらえます。ビジネスは結局、巡り巡って自分に返ってくるものですから、常に損得を超えた誠意ある対応を心がけることが大切です。特に独立・起業すると、自分自身がブランドであり、それがそのまま信用につながります。

渡邊社長

これは重要なポイントですが、この重要性に気づかない人も多いものです。気付くためにはどうすれば良いでしょうか?

磯部 一郎

よく「社会貢献はどうすれば良いのか?」と聞かれることがありますが、その話が具体的なビジネスにリンクしないことも多いです。
儲けや楽をすることばかりを考えていては、社会的な視点が欠けてしまいます。同様に、お客様に対して「どうやって利益を上げようか」と考えていると、ビジネス上の品性に欠けた行為となることが多いのです。

磯部 一郎

大切なのは、「どうしたらこのお客様が成功するか?」という視点です。お客様の成功を第一に考え、そのために自社のサービスを通じて貢献することが、自分自身の成功にもつながるのです。
そのためには、自分の意識やマインド、自己肯定感を高めることが必要です。他人の成功を喜べない、自分の努力が報われていないと感じる状態では、ビジネス上の信頼を築くことは難しいでしょう。

磯部 一郎

自分自身の成長や努力が必要です。
例えば、ランニングを通じて心肺能力や筋力を高めるだけでなく、毎日トレーニングしているという事実が自信につながるのです。
同じように、ビジネスにおいても日々の努力や成長を積み重ねることで、自然と品性や品格が身につき、お客様から信頼される存在になっていくのです。

1時間当たりいくら稼いでいますか?

磯部 一郎

「1時間あたりいくら稼いでいますか?」というテーマについて、私は時間で労働力を売ることを否定はしませんが、課題があると考えています。例えば、私たちはコンサルティング業を行っていますが、「1時間いくら」といった売り方はしていません。私たちは一回の契約や成果に基づいてサービスを提供する形を取っています。

磯部 一郎

業務委託契約には「請負契約」と「準委任契約」があります。法律に関連する部分では「委任契約」とも呼ばれます。請負契約は納品物があるのに対し、準委任契約には納品物がありません。準委任契約はさらに「時間や労力を提供する契約」と「成果に基づく契約」に分けられます。

磯部 一郎

特に無形商材のビジネスを展開する場合、私は「請負契約」と「時間売り」は避けた方が良いと考えています。請負の場合、物を納めることが求められますが、コンサルティングの場合、成果物として何を納めるのかが不明確になることがあります。また、時間で売る場合は、長期的なビジネスの発展が難しいというデメリットがあります。

磯部 一郎

例えば、以前、エンジニアを雇用する会社を経営していましたが、会社、エンジニア、お客様の3者が存在する中で、時間で売るモデルを採用すると、エンジニアが1ヶ月働いて60万円の売上を上げたとしても、3年間頑張った結果としてエンジニアは給与の引き上げを求めます。
しかし、60万円の価格が変わらない場合、会社の利益は減少してしまいます。会社は利益を減らすのではなく、売上も利益も増やしていきたいと考えています。これは成長企業の大半が望む成長戦略です。

磯部 一郎

一方で、お客様は長期間サービスを利用していると、価格の引き下げを求める傾向があります。例えば、携帯電話の長期割引制度のように、「長く使っているのだから少し安くして欲しい」と考えるわけです。
このように、会社は利益を伸ばしたい、働く人は給与を増やしたい、お客様はサービスの値引きを求めるという三者の利害が対立する中、時間を売るモデルはうまく機能しづらいのです。

磯部 一郎

この問題を解決するためには、ビジネス自体を拡大させてプロジェクトのメンバーを増やし、他のメンバーが生み出す利益を利用するなどの工夫が必要です。しかし、それでも時間売りモデルはビジネスとしての継続性が難しいと考えます。
そのため、私は時間での売り方を推奨していませんが、それでも「自分が1時間あたりいくらの売上や利益を上げているのか」を把握することは非常に重要だと考えています。

磯部 一郎

当時の状況について述べると、例えばコンサルティング業務において、時間でサービスを販売していなくても、取引先に対して「このコンサルティングは1時間あたりいくらだったか」を正確に算出し、把握しておくことが重要です。そのデータを基に、新しいビジネスを始める際には、1時間あたりの基準価格を設定しておくべきです。

磯部 一郎

私はこれを隠しているわけではなく、様々な場でお話ししているのですが、私の基準は1時間あたり25,000円としています。そのため、この基準を下回る仕事については、通常のビジネスとしては行いません。
ただし、社会貢献や特定の人を応援するための例外として行う場合はありますが、ビジネスとして収益を上げるための仕事は、1時間あたり25,000円を下回らないようにすることを意識しています。

磯部 一郎

この基準を設けている理由としては、低い金額でビジネスをしてしまうと、価格に縛られて断れなくなったり、お客様に対して不本意な結果を生む可能性があったりするからです。
お客様にとって良かれと思って発注してくださっても、後から価格が合わないことに気付き、辞めざるを得ない場合があります。それではお客様にも迷惑をかけてしまいますし、お客様の成功を支援するというサービスの本質から外れてしまいます。

磯部 一郎

したがって、そういった場合には「今回はサービスです」「今回はボランティアです」といった形で、ビジネスとは別に扱うことを徹底し、商売として成立するものは基準価格を上回るものだけを行うようにしています。そうすることで、ただ売り込んで仕事をもらうというのではなく、自分を選んでいただける環境、行動、考え方を作り上げることが非常に重要であると考えています。


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執筆者

磯部 一郎
株式会社福水戸家 代表取締役
株式会社福水戸家ホールディングス 代表取締役
一般社団法人パラレルキャリアマネジメント協会 代表理事

芸者の置屋の息子として、日本橋人形町に生まれる。
大学卒業後、プログラマーとしてIT企業に入社。26歳で共同起業し、大手企業向けの業務システム開発事業を開始。37歳のときに悪性リンパ腫を発病し、上場企業に株式譲渡する。

その後、9度の再発・骨髄移植・右眼失明・余命宣告などを乗り越え奇跡的に生還。闘病中にメディア事業とコワーキングスペース事業、コンサルティング事業を開始。現在は株式会社福水戸家ホールディングスに経営統合。スモールビジネス向けの戦略コンサルティング事業に専念。

立ち上げに関わった法人数は15社にのぼり、ゼロイチ起業から売上高10億円までのスケールアップ経験がある。企業・事業の買収・合併・譲渡や持株会社や合弁会社の設立など、経営者としての経験も豊富。過去にはオンラインサロン・法人向け有料勉強会の運営や、ITによる町内会の活性化を成功させるなど、コミュニティ運営にも定評がある。

2021年3月には著書「生き急ぐ」を出版。

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