シニア世代をターゲットに!新市場開拓のヒント!

【執筆者】
中小企業診断士 池谷 卓
技術士

約30年以上にわたり、素材メーカーに勤務し、国内外の生産設備・ライン
設計・保全や生産拠点運営、新事業開拓、経営企画、DX推進等を経験。2023年に中小企業診断士として登録。

今回は、「老後不安をのりこえる シニアエコノミー」 著者 大前研一 (小学館)を読んで感じたことをお伝えしていきたいと思います。

私の復習も兼ねて、日本の高齢化社会の実態をみてみますと、すでに65歳以上のシニアは約29%と、3人1人は65歳以上のシニアがしめています。

そして、65歳以上のシニアの個人金融資産は1,200兆円であり、日本の個人金融資産の60%を占めています。言い換えますと人口の約30%の65歳以上のシニアが、60%の日本の個人金融資産を保有していると言うことになります。

著者が提唱しているシニアエコノミーでは、シニアのニーズに合ったサービスを提供していくことで、1,200兆円もの金融資産を消費に回してもらい、新たな市場作りあげようと言うことです。

そのシニアエコノミーの市場は、医療・医薬市場、介護市場、そして生活産業の3つの市場で構成されていて、2025年の市場規模はそれぞれ、35兆円、15.2兆円、そして51.1兆円、合計では100兆円になると予想されています。

それぞれの市場には特徴があって、医療・医薬市場、介護市場は高齢化に従って長期に成長が続きますが、生活産業市場は団塊の世代が後期高齢者となり彼らの消費意欲が低下するために、2030年頃までにはピークアウトすると予想されています。

そこで、もし皆さんの中で生活産業市場への参入を考えている方がいらっしゃいましたら、早めにご相談いただいた方がよさそうです。

目次

シニアエコノミーの主役

シニアエコノミーの主役である、65歳以上の男女の方々は、いわゆるステレオタイプな「お年寄り」のイメージとは全く違う様です。

著書によれば、例えば、約7割の方がスマートホンを持って、60代の7割、70代の4割以上の方がLINEを利用し、バーチャルな買い物にも積極的で、多くの方がテレビショッピングよりもネットショッピングを利用しているそうです。

また、働くことに関しても、62%もの方が健康なうちは働きたいと思っているそうで、実際の就業率でも40%ほどとなっており、この点は欧米諸国と比較した場合の日本のシニア層の特徴になっていると言われています。

そして、お金の面はというと、先にも1,200兆円の金融資産を保有している方々と説明しましたが、図1に示した通りで、シニア層世帯の資産は「負債が少なく十分な貯蓄を保有」していることが判ります。

  図1:2022年の年代別世帯の貯蓄、負債額、差額(貯蓄-負債)/総務省の家計調査報告より作成

以上から見えてくるシニア層は、「ある程度の資産を持ち金銭的に余裕でありながらも、自主的に働いてリアルに社会とのかかわりを持ち、モバイルツールを積極的に活用してバーチャルでも社会に積極的に参加している方々」って感じではないでしょうかと思います。

このようなお話をすると、「マスコミは、貯金もなくて年金もなくて、十分な食事もできないで困っているシニアが多いと報道しているではないか」とお叱りを受けると思いますが、データから見えてくるシニア層の中心は、マスコミが報道している様なシニア層ではないことをご理解いただきたいと思います。

蛇足になりますが、そもそもマスコミは珍しく・ニュース性がないものは報道しませんし、ドラマにもしません、そのため、ビジネスでその情報をご使用の際には、その点を十分に理解しておく必要があろうかと思います。

確かに、私の知っているシニアの方には、90歳で現役をリタイアして、今でも毎月ゴルフをやったり趣味に興じたりして、生活を楽しんでいらっしゃる方などもいて、確かに、長生きで、時間的に余裕があるだけでなく、その時間を楽しむ金銭的な余裕がある方がいらっしゃるのだと感じます。

シニアエコノミーにおける新市場開拓のヒント

先に、シニアエコノミーは、医療・医薬市場、介護市場、そして生活産業の3つの市場があると言いましたが、それらの市場においてどのように新規事業を開拓していけば良いのでしょうか?

そのためにはシニア層の方々がどのような考えをもっているのか、何に困っているのか、何をしたいのかなどを明らかにしていく必要があるかと思いましたので、シニア層の方々を発展段階の視点から考えてみたいと思います。

多くのシニア層はご自身が又はご家族が一度定年退職をして、あらためて自分や家族の老後を考えて模索していく中で、今までの自分の人生と向き合い、そしてこれからの残された人生に向き合いことになると思います。なかには、時間を巻き戻せることが出来ないことを悔いて、穏やかな気持ちになれずに防衛的に不安解消をする方もいると思います。

しかし、多くのシニア層の方々は防衛的、保守的な不安解消をするのではなく、それを受け入れて、それらネガティブなことから自分や家族を解放していく、強い・賢い力を持っているようです。

この点から明らかになってくるシニア層の大きなニーズの柱は、「シニア層は、自分の現実を価値に転換させて、自分が認められるようにしてほしい」と言うことです。 

しかし、著書では、このような大くくりでシニア層を見るだけでは不十分であり、それぞれの世代毎の発達段階における経験の違いに注目して、シニア層を世代別にとらえておく必要があるとしています。

例えば、1947年~1949年に生まれた団塊の世代(ベビーブーマー)については、「高度成長経済」を体験し、「ファーストフードやジーンズ」などのアメリカの若者文化を取り入れたり、音楽でも「ビートルズ」などの新しい音楽に熱狂した世代と言うような感じです。

この世代の方々は、流行に敏感なこともありレビューなどを気にしたり、サークルなどの仲間を大切にする意識が強くことなどが特徴とされています。

市場開拓のヒントとして、著書には、女性シニア層を読者対象として独り勝ちしている月刊誌「ハルメク」を挙げています。

この雑誌の特徴は、徹底的に読者に寄り添った点にあるようです、例えば、毎月編集部に届く2,000~3,000枚のはがきを全部読んで、そこに書かれている読者像を明らかにしながら、読者像の仮説を立て読者目線で記事を作り、読者からの意見を聴きながら読者像を育てていく、つまり、読者とのコミュニケーションで読者が主役となって雑誌を作り上げているようです。

この雑誌は、同じようにシニア層を読者層とした1989年創刊の「いきいき」という名前の雑誌の後継雑誌に当たります。

「いきいき」は、2006年の3月頃のピークに時には約40万人の読者数がいましたが、2007年の春に導入したシステム不良などにより読者離反が多くなり、その後読者数はピーク時の約半分まで落ち込んでしまい、2016年に雑誌名を「いきいき」から「ハルメク」に変更しています。

表1は両雑誌を比較したものですが、両雑誌の読者平均年齢はほぼ同じであることが判ります。

表1:「いきいき」と「ハルメク」の比較/インターネット情報を基に作成

項目いきいきハルメク
読者の平均年齢(歳)6868.3
ピーク時の発行部数(万部)43(2006年)50(現在)
発行時期(年)1989~20162016~
記事作成手法出版社主導読者参加による協業

次に、読者の平均年齢にあたる世代(例えば、2020年3月、68歳の方の世代は「ポスト団塊の世代」となります)と両雑誌の発行部数(定期購読者数推移)の関係について、図2で確認したいと思います。

 図2:読者の平均年齢世代と発行部数との関係/https://www.youtube.com/watch?v=DrnIJTlIMI0の資料を基に作成

いきいきの場合、2017年の春に発生したシステム不具合による読者の離反よりも1年も前から読者が減少していることが判ります。また、ハルメクに関しては、2017年後半から2018年ごろから読者が増加していることが判ります。

前者に関しては、戦前世代から戦時中世代へと世代交代期に当たっていること、後者に関しては、2017年に優秀な編集長への交代が大きく関係しているかもしれませんが、やはり団塊の世代からポスト団塊の世代へと世代交代がなにかしら関係していると考えても良さそうです。

ポスト団塊の世代は、著書によれば「起業」、「アンチエージング」、「海外リゾート」に関心が高いようなので、自分から積極的に参加していくように方が多いと考えられますので、確かにハルメクの編集方針である、読者とのコミュニケーションに基づいた読者との雑誌作りは、この世代には積極的に受け入れる素地があったと考えられます。

そして、少し乱暴ではありますが、それが2018年以降発行部数の増加につながったと考えることができます。

そうすると、やはり、「世代」は、シニアエコノミーで新規事業を探す一つのヒントとしても良さそうだと考えられます。

確かに、「三子の魂百までも」と言われるように、子供から青年期までの経験が個々人の考え方や行動に与える影響は大きいことからも、これから100歳まで生きる方が多くなるシニアエコノミーを考える際には「世代」が一つの軸になることは間違いなさそうです。

まとめ

筆者は、人生のエンディングにおいて、金融資産を2,000万円も3,000万円もの大金を残して死んでいくのは日本人以外にはいないと、関係者(企業、医療、介護、行政など)は、その金融資産を使ってもらうための努力をすべきであると言っています。

そのためには、シニア層の困っていることを明確にしていくことが大事であり、それを考えるための軸の一つとして、「世代」の重要性を説いています。

このような考え方は、マーケティングの手法としては至極まっとうな方法であり、特に不思議なところはないのではと思いますが、若年者や中年層を相手とするマーケティングや新規事業と本質的に違うとことは、消費者には金融資産があっても、健康で活動する又は変化するための時間、環境に限りがあると言うことです。

もしシニアエコノミーに参入する方がいらっしゃいましたら、これらの点を理解して事業に参入していけば、巨大なシニアエコノミー市場におけるビジネスチャンスをつかむ可能性があると考えます。

 そのような皆様にとって、今回のご紹介が少しでもお役に立てば幸いです。

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この記事を書いた人

中小企業診断士
技術士

約30年以上にわたり、素材メーカーに勤務し、国内外の生産設備・ライン
設計・保全や生産拠点運営、新事業開拓、経営企画、DX推進等を経験。2023年に、中小企業診断士として登録。

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