紙芝居で学ぶ!中小企業の人財応募率・定着率アップアイデア集 | Part5

登壇者
弁護士 中小企業診断士 藤堂 武久のプロフィール写真

藤堂 武久
弁護士/中小企業診断士

登録弁護士として活動を開始したが、多くの人々が手遅れになってしまっており、役に立てないケースを多く経験した。トラブルを予防し未然に防ぐ活動をすべく、中小企業診断士として、情報発信活動、講演・研修、経営相談業務、人財の採用・定着・育成に携わる。
・延べ講演・研修回数635回超
・延べ受講者数14,251名超
・延べ経営相談回数572回超 (2023年4月末時点)


本シリーズは五部制で、上記の動画は「Part.5」です。

▼ シリーズ動画一覧

目次

はじめに

本日は、「紙芝居で学ぶ!中小企業のための人材応募率および定着率向上アイデア集、パート5」をお届けいたします。今回は、「応募率の強化」というテーマでお話をさせていただきます。

応募率の強化

採用・定着ステップ詳細版
採用・定着ステップ詳細版

前回もお話しした通り、「採用から定着まで」を一貫して考えるという「採用定着ステップ」についてお話ししました。これに関連して、各種定着のための仕組みを紹介しましたが、それにユニークな名前を付けることで、上のステップから下のステップへと反映させる方法についてご紹介いたします。

まず、求人票についてお話しします。求人票の書き方についての相談は非常に多く、「求人票をどのように記載すればよいか?」という質問をよく受けます。もちろん、これには絶対的なルールはなく、ケースバイケースで最適な戦略を一緒に考えていく必要があります。ここでは、A社とB社の2つの会社の求人票を比較し、皆様が応募者だった場合に、どちらの求人票に反応し、応募したくなるかを考えていただければと思います。

求人票の事例比較

まず、A社のご紹介です。

<事業の内容>
都内の賃貸物件・販売物件を取り扱う不動産会社


<会社の特徴>
平成10年設立の地元密着型企業


<仕事の内容>
賃貸物件の管理業務

この内容は非常に一般的な求人票であると言えるでしょう。

次に、B社のご紹介です。

<事業の内容>
東京都世田谷区、杉並区、中野区、練馬区を中心とした賃貸借物件の仲介、サポート、アフターフォロー、売買物件の仲介・お問い合わせ対応を行っており、不動産に関する困りごとなどについて頼っていただける、皆様のお役に立てる相談屋さんをめざしています。


<会社の特徴>
創業者が不動産トラブルに遭って酷い目にあった経験から、地元地域のみなさまに、不動産に関することでお役に立ちたいと思ったことが会社設立の経緯であり、20年前に東京都世田谷区にて事業を開始し、それ以来一貫して、地域に密着して、不動産に関するお困りごと、リクエストにおこたえすることを、お客様満足を目指して、取り組んできた企業です。


<仕事の内容>
お付き合いしている不動産オーナー様から、管理を依頼されている賃貸物件について、新規契約の締結、入居者対応、おこまりごと相談など、など、人と人とのコミュニケーションが大切なお仕事です。不動産に関するさまざまな知識を身に着けることができます。宅地建物取引士に興味がある方には、資格取得支援を行い、実際に宅建士としてお仕事をしていただきます。地域密着企業であるため、地域の方々とのふれあいを大切にしたい方にオススメの仕事です。なお、当社では、不動産賃貸部門のほかに、不動産販売部門や、不動産投資部門もあり、別部署に異動して経験を積んでいただくこともあります。

どちらの求人票が魅力的?

どちらの求人票がより魅力的に感じられるでしょうか?

おそらく皆様もお気づきかと思いますが、実はA社とB社は同一の会社であるのです。多くの企業様が求人票を簡潔に記載する中で、詳細な情報を提供することで、より充実した内容を引き出すことができます。求人票を一覧で見てみると、他の企業が簡潔に記載している中で、当社が詳細に書くことで目立つことがあります。このように、差別化を図るためには、他社と逆のアプローチを取ることが有効です。

現在、多くの企業が簡潔な記載を選んでいるため、詳細に記載することで目立つことができます。逆に、もし将来的に多くの企業が詳細に記載するようになれば、簡潔な記載も選択肢として考えられるかもしれません。しかし、現時点では簡潔な記載が主流であるため、差別化を図るためには、じっくりと詳細に記載する方が良いでしょう。

また、企業の経営者の中には、「他の企業が簡潔に記載しているから、自社も簡潔に記載しなければならない」と考える方もいらっしゃいます。しかし、差別化を図りたいのであれば、異なる戦略を採用することが有効です。アピールポイントを見つけることが重要ですが、自社を「普通の企業」として遠慮してしまう方も多いです。しかし、必ず良い点は存在するはずで、気づいていないだけであることが多いです。

自分自身の強みは、自分が最も理解しにくいものであるというのは、企業にも当てはまります。したがって、社長ご自身だけでなく、第3者の意見を積極的に取り入れることが効果的です。このように、外部の視点を活用することで、自社の魅力をよりよく引き出すことができるでしょう。

ハローワークの求人票の書き方

ハローワークの求人票を書く際に「仕事」「職場」「会社」の三つに分けて記載する方法を推奨しています。このアプローチにより、求人票の作成が容易になるとされています。具体的には、以下のように情報を分類して記載することが推奨されています。

仕事>
長できるスキル、スキルアップの機会、経験値、対人関係の機会、研究・比較、アイデア出しの面白さ
<職場
アットホームな雰囲気、若手社員が多い、明るい活気のある職場、イベントが多い
<会社
社歴、信用力、ブランド、福利厚生、資格認証、メディア掲載歴、自社の特徴

このように分けて記載することで、求人票の作成がしやすくなります。また、自分の強みを自分で認識することは難しいため、企業においても同様のことが言えます。そのため、自分自身での良い点探しが難しい場合は、外部のサポートを利用することが有効です。特に、最近入社した若手社員に「どのような点が魅力的に感じたか」を尋ねたり、アンケートを実施したりすることも有効です。

求人票の事前準備と備考欄の重要性

さらに、求人票のクオリティを維持するためには、事前に準備することをお勧めします。急いで作成すると、求人票の質が低下する可能性があるため、早めに作成し、少しずつ修正・改善を行うことが望ましいです。

ある求人票には「もぐもぐタイム」や「ガス抜き面談」、さらには「社内通貨」などと記載されていることがあります。これを見た皆様が「何を言っているのか分からない」と感じたかもしれません。このようにあえて不完全な情報を記載することで、興味を引き、スマホでホームページに誘導する効果が期待できます。これは「ツァイガルニク効果」に基づくもので、不完全な情報が逆に人々の関心を引くという心理を利用した戦略です。

実際、私が顧問として関わってきた中で、社内ポイント制度に関するアイデアを一緒に考えたお客様がいらっしゃいます。例えば、単に「社内ポイント制度があります」と記載するのではなく、「社内通貨があります」と記載することで、興味を引き、さらに詳細を調べたくなるという戦略です。このように、表現のわずかな違いが反応率に大きな影響を与えることがあります。

また、企業の求人票で「備考欄」を活用しない例が多く見受けられますが、利用可能な欄は全て活用することが推奨されます。備考欄が空欄であるのはもったいないため、これを使ってホームページへの誘導を図りましょう。

例えば、多くの企業が研修を実施しているにもかかわらず、その情報を備考欄に記載しないことがあります。中途採用者が入社する際には、会社の仕組みなどを教える研修が行われるのが一般的です。この研修の有無は応募者にとって重要な情報であり、アピールしないのはもったいないです。

さらに、例えば「LOVE休暇制度」というキャッチーな名称を付けた特別休暇制度なども有効です。単に「特別休暇1日」と記載するよりも、「LOVE休暇制度」として目立たせることで、応募者の興味を引き、ホームページへの誘導が期待できます。

他にも、例えば「月1メッセージカード制度」というアイデアがあります。これは、社員同士がメッセージを送り合う制度であり、社員間のコミュニケーションを促進します。

また、「ワクワク若手会議」というアイデアもあります。これは、若手社員が発言しやすい会議の場を設けることで、意見を反映させる仕組みです。

このように、アイデアは無限にあり、様々な工夫を凝らすことで、求人票の魅力を高めることができます。目指すべきは、ホームページを見たくなるような魅力的な求人票を作成することです。情報量や画像、動画などを駆使して、様々な戦略を試してみてください。

このような施策を実施した上で、最終的には有料求人媒体に予算と時間、労力を投入して告知を行う戦略が考えられます。また、SNS戦略もこの段階で取り入れることができます。先ほどご紹介したステップの最下部が、まさにこの有料求人媒体やSNSを活用する最終段階にあたります。

したがって、順序としては、まず上位のステップで様々な仕組みを整え、ユニークな要素を取り入れ、それを最下部のステップで紹介するという流れになります。これにより、有料求人媒体やSNSを利用して効果的に告知することが可能になります。

まとめ

まとめとして、何か新たに取り組もうと考えている方には、まず全体像を仮にでも構わないので作成し、少しずつ修正していくことをお勧めします。その際、まずは定着率を向上させるための施策を考え、それを実施してから、ユニークな名前を付けるなどして差別化を図ることが重要です。このようにして、最終的にはホームページへの誘導がしやすくなり、応募率も向上するという戦略です。

最後に

最後にお伝えしたいことがあります。私は中小企業診断士および弁護士として活動しており、全ての法律を完全に遵守している企業がどれほど存在するかを考えると、難しい面もあります。多くの法律が存在し、全てを完璧に守るのは容易ではありませんが、採用や定着、幹部育成に注力することで、結果的に人事トラブルの予防にもつながります。

採用活動に力を入れ、定着率を向上させることで、社員間の関係が良好になり、定着率も高まります。さらに、幹部の育成を進めることで、職場環境が整い、トラブルの発生も減少します。つまり、採用から定着、育成までが一つの流れとして連動しており、これが最終的には人事トラブルの予防にもつながるのです。

このように、採用、定着、育成、人事トラブル予防はすべて繋がっており、一つの川の流れのように上流から下流へと流れていく過程で、最初に出会い採用され、定着し育成される過程がトラブル予防にも寄与するということをお伝えしたくて、本日の話をさせていただきました。

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執筆者

弁護士 / 中小企業診断士 藤堂 武久

2008年 弁護士登録
2013年 独立開業
2013年 中小企業診断士

登録弁護士として活動を開始したが、多くの人々が手遅れになってしまっており、役に立てないケースを多く経験した。
トラブルを予防し未然に防ぐ活動をすべく、中小企業診断士として、情報発信活動、講演・研修、経営相談業務に携わる。
労働問題に携わっていたことから、関連して、人財の採用・定着・育成に携わるようになる。

延べ講演・研修回数635回超
延べ受講者数14,251名超
延べ経営相談回数572回超 (2023年4月末時点)

・取得資格
心理学検定1級
消防設備士(甲1)
第2種電気工事士
2級建築施工管理技士補
マンション管理士
管理業務主任者
宅地建物取引士
行政書士

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