紙芝居で学ぶ!中小企業の人財応募率・定着率アップアイデア集 | Part3
藤堂 武久
弁護士/中小企業診断士
登録弁護士として活動を開始したが、多くの人々が手遅れになってしまっており、役に立てないケースを多く経験した。トラブルを予防し未然に防ぐ活動をすべく、中小企業診断士として、情報発信活動、講演・研修、経営相談業務、人財の採用・定着・育成に携わる。
・延べ講演・研修回数635回超
・延べ受講者数14,251名超
・延べ経営相談回数572回超 (2023年4月末時点)
本シリーズ部制で、上記の動画は「Part.3」です。
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はじめに
今回は「紙芝居で学ぶ!中小企業のための人材応募率・定着率アップアイデア集」パート3をお届けします。ここからは「定着率の向上」に焦点を当てて話を進めたいと思います。
前回お伝えしたように、採用から定着までをステップごとに計画することが重要です。全体像をしっかりと描き、その中で次に何をすべきかというと、まずは定着率を高める施策に取り組むことをお勧めします。
もちろん、資金や時間、労力を投じて求人広告を出すことも大切ですが、せっかく入社していただいた方がすぐに辞めてしまっては効率が悪いと言わざるを得ません。そのため、まずは定着率を上げる仕組みを整えてから、求人広告などに投資するという順序が望ましいと考えています。
では、何をすれば定着率が向上するのか。もちろん、これは各企業の状況やビジネスによって異なりますが、広く汎用性のある考え方をご紹介します。
コミュニケーション・チームワークの重要性
結論から申し上げると、「職場に気の合う友達が3人以上いると、人生の満足度が2倍に上がる」という統計結果があります。これは、2004年にアメリカの大手世論調査会社ギャラップ社が、世界中の500万人を対象に行った大規模な調査によるものです。この調査では、職場で親しい友人が3人以上いる人は、そうでない人に比べて人生の満足度が2倍に高まることが分かりました。
この結果からも分かるように、定着率を上げるためには、職場での人間関係が大きな影響を与えます。日々の多くの時間を過ごす職場で、3人以上の親しい友人がいることで、人生の満足度が大きく向上するのです。このような職場環境を整えることが、定着率向上の有効な戦略の一つとして考えられます。
ただし、生産ラインのように、個々の責任が厳格に求められ、情報共有が制限される職場では、この戦略は適用が難しいかもしれません。そのような場合は、別の施策を検討する必要があります。しかし、多くの職場で「気の合う友人を3人以上作る」という取り組みは比較的実施しやすいでしょう。
さらに、職場に親しい友人が3人以上いると、人生の満足度が2倍になるだけでなく、給料への満足度が3倍に上がるという結果も報告されています。これは、例えば同じ年収のA君とB君がいた場合、1人は3倍の満足感を得ている一方で、もう1人はその1/3しか満足していないということです。経営戦略の方向性としても、3倍の満足感を得られる環境を目指したいところです。
このように、職場での人間関係を充実させることは、定着率向上の有効な方法の一つです。
職場活性化アイデア集
次に、「職場活性化アイデア集」と題して、一般的に効果的とされる職場の活性化策をご紹介します。
まず1つ目は、「仕事外のコミュニケーションを増やすことで、仕事中のコミュニケーションを促進する」という方法です。これは、いわゆるコミュニケーション活性化の取り組みであり、飲み会だけでなくランチ会や研修名目の集まりなど、さまざまな手法が考えられます。特に、昔から共に食事をするという行為が重視されてきたのは、仕事外のコミュニケーションが増えるほど、仕事中のコミュニケーションがスムーズになるというシンプルな関係があるからです。
次に2つ目のポイントとして、コミュニケーションの量が増えることで、その質も向上するという考えがあります。仕事だけの会話しかない職場と、プライベートの楽しい話題や嬉しかったことも共有できる職場では、どちらが強い組織になるかは明らかでしょう。もちろん、すべての人に同じアプローチが適しているわけではないため、無理のない範囲で進めることが重要です。
ただし、注意点としては、お酒が苦手な人を無理に飲み会に誘わないことです。例えば、私のようにお酒が好きな人間は喜んで参加しますが、若い方の中にはお酒が苦手な方も多く、無理に誘うと逆効果になることもあります。このため、お酒が苦手な方にはランチ会などの別の方策を考えることが良いでしょう。また、若い世代の中には、仕事終わりのスマホゲームの時間が最大の楽しみだという方も多く、そうした方々の楽しみを奪わないよう配慮する必要があります。
3つ目は、「個々の趣味・嗜好に合わせた対応をする」ことです。社員一人ひとりに向き合い、仕事の面白さややりがいを引き出すことも効果的です。
次に4つ目のアイデアとして、注意や指導などのネガティブなフィードバックよりも、承認や褒めるなどのポジティブなフィードバックの比率を1対3以上にすることが効果的だとされています。これは、心理学者でコンサルタントのロサダ氏が提唱する実験結果に基づいたものです。
5つ目ですが、日常のコミュニケーションの中で「ティーチング」と「コーチング」を適切に使い分けることが重要です。どちらか一方に偏ると、効果が薄れてしまうこともあるため、上司の方々には、状況に応じて「教える」と「導く」を上手に使い分け、コミュニケーションの質を高めていただきたいと思います。
6つ目は、職場の雰囲気を向上させる方法として、「感謝」「親切」「助け合い」「ポジティブな交流」を推奨します。これらの行為は心理学的にも非常に大きなメリットがあるとされ、例えば、感謝や親切な行動をした人自身の幸福度が上がるという実験結果もあります。そのため、これらの行動を職場内でお互いに共有し、感謝や親切、助け合いの精神が飛び交う職場を目指すことで、全体の雰囲気を良好にすることができます。
次に、7つ目のポイントとして「お互いの強みを共有し、生かし合う」「弱点を共有し、フォローし合う」という考え方があります。ポジティブ心理学の分野では、人には必ず強みがあり、それを認識するだけで幸福度が上がるとされています。そして、その強みを活かせるようにすれば、さらに幸福度が向上すると言われています。ですので、こうしたアプローチを活用することも有効でしょう。
8つ目として、「お互いのやりたいこと、目標、希望、ビジョンを共有し、応援し合う空気を作る」ことが挙げられます。企業としては、社員に経営への協力を求める立場にありますが、逆に社員一人ひとりの目標や希望も、全員で応援する姿勢を持つことが重要です。このように相互に支え合うことで、職場全体の士気が向上する効果が期待できます。
9つ目は、「個人のビジョンと組織のビジョンを明確化し、その共通部分を広げていく」ことです。よく言われる「ビジョン研修」などで、個人と組織のビジョンを明確にし、それらが重なる部分を増やしていくと良いでしょう。ビジョンが重なれば重なるほど、個々のビジョンと組織のビジョンが一致し、長期的な協力関係が築きやすくなります。
最後に10番目として、「チームワークを高めることで得られるメリット、逆にチームワークが低い場合のデメリットについて考えさせる」という方法も有効です。チームワークの重要性を理解し、その価値を実感してもらうことで、自然と協力の精神が生まれます。
以上、職場の定着率向上の戦略として、他の企業でも実施されている様々なアイデアをご紹介しました。これらの取り組みがすべて正解というわけではなく、あくまで一つの参考として捉えていただき、御社に合いそうなものがあればぜひご活用いただければと思います。職場に適した施策を取り入れることで、より良い環境を作り、社員の定着率を高めていきましょう。
休日になにしてる?
若い社員に「休日は何をしているのですか?」とよく質問することがあります。実は、これには理由があります。ある若い社員がいた場合、近くに座ってもらい、「A君、毎月研修に参加してくれてありがとう。最近の君の意見はとても鋭く、非常に助かっています。本当に感謝しているよ」と感謝の気持ちを伝えたうえで、「ところで、A君は休日にどんなことをしているんだい?」と必ず聞くようにしています。
すると、かなりの確率で若い男性社員からの答えは「ゲームをしています」と返ってきます。これが現在、圧倒的に多い回答です。確かに、ゲームは面白くて中毒性があり、夢中にさせるものです。特にスマホやインターネットゲームは、天才プログラマーたちが限られた時間を奪い合う激しい競争の中で作り上げたものであり、その魅力は尽きることがありません。そのため、多くの若者がゲームに熱中しているのだと感じます。また、動画視聴なども人気で、面白いコンテンツが数多く存在します。
こうした若者のゲーム好きの傾向を企業としてどう活かすかが問われるところです。ここで私が独自に考案した方法の一つをご紹介します。こちらは、建設業の企業様の事例です。ある建設業の会社では、「建設あるある問題ゲーム」というカードゲームを作成しました。このゲームは、建設業ならではの工程表を使いながら、予算を管理して売上を上げ、業績を向上させることを目指す内容となっています。プレイヤーはカードをめくりながら、建設業で起こり得る問題やトラブルを体験し、それらを解決してスキルを向上させつつ、資金を増やしていくという形式です。
このゲームは手作りではありますが、「みんなでゲームをしよう」という提案のもと、社員同士で楽しむことで、仕事外のコミュニケーションを増やし、それが仕事のコミュニケーションの質向上にもつながることを目指しています。先ほどお伝えした通り、コミュニケーションの量を増やすことで、組織の連携を強化したいという趣旨です。
この取り組みは、ゼロベースから発想し、様々な工夫を凝らして、その企業様に最適な方法を模索し続けています。体当たりで試行錯誤を繰り返しながら、企業に合ったコミュニケーション改善策を探っているという状況です。このような事例もあるということを、皆様にお伝えしたく、今回ご紹介させていただきました。
さらに、実際にゲームを取り入れた研修を行うことが非常に多い状況です。他にどのようなゲームを行っているかというと、先ほどのカードゲームのほかに、古典的な「ベリウムリング」と呼ばれるフラフープを使ったゲームや、「ペーパータワー」と呼ばれる紙を使ってタワーを作るゲームなども実施しています。また、昔からある様々なコミュニケーションゲームも活用しています。これらのゲームは本やビデオでも紹介されているものが多く、日常的に取り入れています。
こうしたゲームが増えた背景としては、かつてはコミュニケーションが非常に機能していたため、お酒の席で率直な意見を交換し合い、互いの話を聞きながらコミュニケーションの量を増やし、質を高めることが一般的でした。しかし、現在では価値観が多様化し、お酒が苦手な方やプライベートの時間を大切にしたいという方が増えており、その時間を奪われたくないという強い思いを持つ方も多くいらっしゃいます。
そうした事情を尊重し、勤務時間内や勤務時間の前に1時間程度をコミュニケーション研修の名目で設定し、実際にゲームを行うようにしています。この研修は、机に座って勉強するものではなく、コミュニケーションゲームを通じて互いの距離を縮め、コミュニケーションの量を増やし、質を向上させることを目的としています。
人間関係は一朝一夕では築けません。親友のような関係を作るには、長い年月をかけて同じ食事をし、同じ景色を見て、同じ経験を共有することが必要です。こうした取り組みが、そうした関係構築の一助となることを目指しています。インターネットで「コミュニケーションゲーム」を検索し、様々な方法を試してみることをおすすめしています。
ちなみに、「ヘリウムリング」というゲームについてですが、これはフラフープを使い、人差し指の第2関節までしかフラフープに触れてはいけないというルールで行います。おすすめの人数は4名ですが、できれば6名以上が良いです。4名では比較的簡単にできてしまうため、6名以上を推奨します。
ゲームのルールは、人差し指の第2関節までしかフラフープに触れないというもので、フラフープを目線の高さからスタートし、みんなで協力して徐々に床までフラフープを下ろしていきます。目的は床に到達するまでの時間を競うタイムアタック方式です。しかし、指がフラフープから離れたらアウトとなり、最初からやり直しとなるのがこのゲームの肝です。
このゲームの面白いところは、誰かの指が少しでも離れるとアウトになるため、みんなが「ちょっと触っておこう」と慎重になります。しかし、その結果、みんなが触りすぎてフラフープが徐々に上に上がっていってしまい、最終的には崩れてしまうという展開がよく見られます。初めて体験する方は「なんで上がっちゃうんですか?」と驚き、誰かがふざけているのではないかと疑ったり、笑い声があふれたりと、大変盛り上がる場面が生まれます。
このコミュニケーション研修を行うと、経営者の方々は驚かれることが多いです。普段は暗くなりがちな会社の雰囲気が、こんな単純なゲームひとつでこんなに明るく盛り上がるのかと、「こんなに笑い声が聞こえるなんて、うちの会社では初めて見た光景だ」と感動されることもあります。
このように、ルールがシンプルで効果的なコミュニケーションゲームはたくさんありますので、日頃のコミュニケーション改善のために、ぜひ取り入れてみてください。
他にも、紙を使ってタワーを作るゲームなど、さまざまなゲームがあります。また、紙だけでなく、ストローやマシュマロ、パスタ、カードを使ったゲームもあり、バリエーションは豊富です。これらのゲームを通じてコミュニケーションを増やすことは、今の時代に合っていると考えていますし、実際にこうしたゲームには独自の魅力やプログラムが多く存在します。
こうしたゲームの活動を通じて、職場でのコミュニケーションを活性化させるのは非常に有効です。ゲームの持つ特有の楽しさや競争心を活用することで、参加者同士の距離が縮まり、自然とコミュニケーションの量も増えていきます。ぜひ、さまざまなゲームを取り入れて、日常のコミュニケーションの改善に役立てていただければと思います。
1点だけ、注意点をお伝えさせていただければと思います。実は私の大きな失敗談になりますが、ある企業の社長様とお話させていただいた際に、その会社では定着率が下がっており、社内の雰囲気が暗いというご相談を受けました。そこで、私は「コミュニケーションの量を増やすことが重要ですから、古典的なコミュニケーションゲームを研修でやりましょうか」と提案しました。具体的には先ほどご紹介したヘリウムリングの話をお伝えし、YouTubeなどの動画もお見せして、「こういった形で盛り上がるんです」と説明しました。社長様もそれをご覧になり、「これは面白い!いいね」と好感触を示してくださいました。
そこで、私は「では来月、私が実施しましょうか。これは鉄板で盛り上がりますから!」と自信を持って提案したのですが、社長様が「いや、これは自分でやる」とおっしゃったのです。「私がやりますよ」と申し出たのですが、「いや、自分でやるから」と断られてしまいました。私はそのとき、社長様もきっと満足されるだろうし、翌月には「楽しかったよ、ありがとう」と言ってもらえるだろうと期待していたのです。
ところが、翌月に社長様にお話を伺うと、とても神妙な面持ちで「藤堂さん、大変なことになったよ」と言われました。驚いて「どんなことですか?」と聞くと、「どえらい空気になったんだ」と。詳しくお話を伺うと、社長様は普段から社員の方々に対して指導や注意をすることが多く、その延長で「皆集まれ」と突然呼びかけて、いきなりヘリウムリングを始めたそうです。社員の方々は普段怒られている社長様からの突然の指示に困惑し、「何をさせられているんだろう」という空気になってしまい、全員が沈んだ時間を過ごすことになったというのです。
これは完全に私の失敗でした。ゲームが盛り上がることに過信し、必要な説明や雰囲気作りを怠ってしまったのです。ゲームは確かに面白いですが、その前の時間でどれだけ笑顔で接し、どれだけ楽しいコミュニケーション研修をするんだという空気作りが重要だったのだと、そのとき初めて気づかされました。
皆様におかれましては、もしゲームをされる際には、ぜひ楽しい雰囲気作りを大切にして、ゲームを進めていただければと思います。
特に、ゲームを始める前の雰囲気づくりが非常に大切です。例えば、「じゃあ皆さん、今からコミュニケーションゲームをやります!今日は楽しみましょう。景品も用意していますので、ぜひ優勝チームを目指して一緒に頑張りましょう!」と、軽快な挨拶で参加者をリラックスさせることが重要です。
また、研修講師は120%の笑顔で取り組み、BGMや小道具なども活用して、場の雰囲気を盛り上げることが求められます。単にゲームを行うだけではなく、こうした事前の準備と空気づくりが、成功の鍵となりますので、どうか「ゲームをやればいい」と考えず、雰囲気作りからしっかりと取り組んでいただければと思います。
3倍承認シート
先ほどご紹介いたしましたマルシャル・ロサダ博士の「1対3の法則」について、さらに詳しくご説明したいと思います。この法則とは、心理学者であるマルシャル・ロサダ博士が、10年もの長期間にわたってさまざまなチームを分析した結果、導き出されたものです。
この法則の要点は、ネガティブなフィードバック(例えば注意や指導)1に対して、ポジティブなフィードバック(例えば褒める、承認する、認めるなど)を3倍行うことで、業績が向上するというものです。この比率を指して、「ロサダライン」と呼ぶこともあります。
ロサダ博士の研究によれば、企業やチームの業績を上げるためには、ネガティブなフィードバックに対してポジティブなフィードバックを1対3の割合で行うと効果的であることが示されています。特に上司の方々におかれましては、ネガティブな指摘を行う際に、少なくとも3倍のポジティブなフィードバックを心がけると良い結果をもたらす可能性があります。
また、ロサダ博士によれば、理想的な比率は1対6であるとされていますが、現実的には6倍のポジティブフィードバックを行うのは難しい場合も多いでしょう。そのため、まずは1対3の比率を意識して実践することが、業績向上に繋がる第一歩となるでしょう。
褒めることだけでなく、認めることや声をかけることもポジティブなフィードバックとして重要であるとマルシャル・ロサ博士は述べています。博士はネガティブなフィードバックに対してポジティブなフィードバックを1対3の割合で行うことが効果的だとし、理想的には1対6の比率が望ましいとしています。
特に上司の方々におかれましては、この比率を意識していただけると良いでしょう。しかし、ポジティブな声かけが難しいという相談もよく受けることがあります。確かに、日々の練習や工夫が必要です。私からは、ポジティブな声かけの例をいくつかご紹介いたしますので、参考にしていただければと思います。
仕事に関するポジティブな声かけの例としては、以下のようなものがあります。
「一生懸命だね」
「諦めないね」
「きちんとしているね」
「しっかりしているね」
「準備がいいね」
「仕事が正確だね」
「任せられるよ」
「一貫性があるね」
「仕事が早いね」
「素早いね」
「安心感があるね」
「伸び代があるね」
「信念があるね」
「説得力があるね」
「建設的だね」
「魅力的だね」
「チャレンジングだね」
「ナイスアイデアだね」
「クリエイティブなセンスがあるね」
ポジティブなフィードバックはタイミングも重要です。適切なタイミングで、相手が好む言葉を使うことが大切です。そのため、事前にポジティブな声かけの例を準備し、練習しておくとよいでしょう。
また、性格的な特性についても、以下のようなポジティブな評価が可能です。
「律儀だね」
「誠実だね」
「責任感があるね」
「礼儀正しいね」
「堅実だね」
「冷静だね」
「柔軟だね」
「親切だね」
「深い判断力があるね」
「勇気があるね」
「元気だね」
「熱心だね」
「強い忍耐力があるね」
「粘り強いね」
「意欲があるね」
「リーダーシップがあるね」
「エネルギッシュだね」
「ポジティブだね」
「アクティブだね」
「前向きだね」
「行動力があるね」
「純粋だね」
「実行力があるね」
「頑張り屋だね」
「努力家だね」
「集中力があるね」
「優しいね」
「明るいね」
「愛情深いね」
「思いやりがあるね」
「穏やかだね」
「気が利くね」
「友情に熱いね」
「ユーモアがあるね」
これらの言葉は一例に過ぎませんが、自由にストックし、適切なタイミングで使えるように準備しておくと良いでしょう。
ティーチング・コーチング比較シート
先ほどお伝えした「ティーチング」と「コーチング」の使い分けについて、さらに詳しくご説明いたします。基本的に、定着の方向性としてはコミュニケーションの量を増やし、その質を高めることが重要です。企業や組織にはそれぞれ適した方法がありますが、その中でも「ティーチング」と「コーチング」のバランスをうまく取ることが推奨されます。
ティーチングとは、答えを教えることを中心とした指導方法であり、日本の義務教育では一般的にこの方法が多く用いられています。ティーチングのメリットとしては、答えが明確であり、成長が早いことが挙げられます。速効性があり、マニュアル通りの対応がしやすいという点も利点です。しかし、ティーチングにはデメリットも存在します。それは、部下が自分で考える訓練が不足するため、依存的になりがちである点です。結果として、創造性や自主性が育まれず、組織全体の思考力やアイデアの創出が低下する恐れがあります。特に、変化が激しい時代では、正解が不明確な状況が多いため、ティーチングだけでは対応しきれないこともあります。
これに対して、コーチングは答えを教えるのではなく、考える力を育むことに重点を置いた指導方法です。コーチングのメリットは、部下が自分で考え、試行錯誤する力を身につけることができる点です。自分で考えたアイデアには実行のモチベーションが高まりやすく、内発的なやる気が引き出されます。さらに、答えが不明確な領域ではトライアンドエラーを繰り返しながら改善していくことができ、最終的には適切な解決策を見つけることが可能です。
コーチングのデメリットとして、時間がかかることが挙げられます。特に緊急対応が必要な場合には、適切な対応が難しいことがあります。たとえば、お客様からのクレームに対しては、すぐに謝罪する必要があり、事故が発生した際には即座に助けに行く必要があります。こうした緊急事態では、コーチングよりも迅速な対応が求められるため、即座に対応することが優先されます。
コーチングを効果的に活用するためには、場合によっては上司があえて自分の知識を隠し、部下と一緒に考える姿勢を見せることが有効です。例えば、「この答えは私も完全には把握していないから、一緒に考えてみよう」とか、「A君の意見を聞かせてくれ、君のアイデアで助けてくれ」といった形で、部下の成長を促す方法があります。
コーチングの一つの有名なモデルとして、「GROWモデル」があります。これは、コーチングにおけるフレームワークの一つで、非常に使いやすい思考モデルです。GROWモデルは、以下のようなステップで構成されています。
Goal(目標):目標は何かを明確にする。
Reality(現実):現状はどうなっているかを把握する。
Options(選択肢):選択肢や解決策を検討する。
Will(意志):どの選択肢を実行するかを決定する。
このGROWモデルを使って、コーチングを行う際の会話の流れを練習することができます。例えば、部下が営業先の攻略方法について相談したい場合、上司はまず部下に現状を聞き、次に目標を明確にし、問題点や壁を把握し、解決策を検討するプロセスをサポートします。
具体的には、以下のような対話が考えられます:
上司:「A君、今日何か相談したいことがあるか?」
部下:「はい、今の営業をかけているA社の攻略方法についてアドバイスをもらいたいのですが。」
上司:「なるほど、A社についてどんな状況か教えてくれる?」
部下:「今までの営業では、A社に対するアプローチが不十分だったと感じています。」
上司:「では、目標としてはどのような結果を期待しているの?」
部下:「まずは契約を取ることが目標で、その後もリピートしてもらいたいです。」
上司:「今直面している壁は何かある?」
部下:「競争が激しく、他の企業との違いを示すのが難しいです。」
上司:「それを乗り越えるためにどんな選択肢が考えられる?」
このように、コーチングを通じて部下が自分で考える力を育むことができます。GROWモデルを活用することで、コミュニケーションの量と質を同時に高めていきたいと考えています。
私の経験から、コーチングの研修において直面した失敗談を共有させていただきます。ある企業でコーチングの研修を実施した際のことです。研修の初めに、基本的な考え方や進め方について約30分説明しました。その後、参加者に2人組になってもらい、相談者に対しては決して答えを教えず、自分の考えを伝えないようにするというルールで練習を開始しました。しかし、その結果、「ティーチング大会」になってしまいました。
多くの人が、「どう思いますか?」や「相談させてください」と言われると、つい答えを教えなければならないという気持ちになってしまいます。特に優しい人や責任感が強い人ほど、その傾向が強いです。日本では長年ティーチングを受けてきたため、答えをすぐに教えることが習慣化しているのです。私の講師としての失敗は、コーチングの練習と称しながら、結果的にティーチングが行われる場面を作ってしまったことです。
そこで、問題を解決するためにゲーム性を取り入れました。コーチ役の方には、答えを教えるのではなく、カードに書かれた質問やヒントのみを使うというルールにしました。この変更により、コーチ役の方がアドバイスしたいという衝動を抑え、カードに書かれた質問だけを使って進めることができました。この方法によって、ティーチング大会の問題が解決できたという経験があります。
このように、コーチングの実践においては、ルールやゲーム性を取り入れることで、効果的なトレーニングが可能になることがあります。是非、こういった方法も参考にしていただければと思います。
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