経営者の役割 ~ライオン社長が会社を成長させる!~

登壇者
中小企業診断士 HYコンサルティング 代表コンサルタント 堀江 康彦のプロフィール写真です。

堀江 康彦
中小企業診断士

大学卒業後、都市銀行に入行。ベンチャーキャピタル~債権管理まで(スタートアップの企業支援~成長ステージ~経営再建~倒産まで)すべてのステージで金融支援を実施。
独立開業後は、中小企業の事業計画策定支援と組織づくりをメインにハンズオン支援、セミナー講師を実施。各種戦略理論は参考程度、事件は現場で起こっており、現場100回がコンサルタントとして最も必要なスキルだと考える。

目次

はじめに

今回は「経営者の役割 ~ライオン社長が会社を成長させる!~」というテーマでお話しさせていただきます。

会社の成長

企業の成長と経営者の心構えについてですが、企業は一般的に、いくつかの成長ステージを経るとされています。まず、「創業期」があり、その後、ある程度の成長を遂げる「発見期」に至ります。さらにその先には、「拡大期」を迎え、最終的にはさらに大きく成長する「発展期」に至るというステージが想定されます。

創業期から発見期にかけては、経営者個人のパフォーマンスが直接的に会社の成長に繋がる段階です。しかし、社員が20名を超え、売上総利益(粗利)が約1.6億円に達するようになると、経営者一人では社員や組織の全体を管理しきれなくなり、管理職が必要となります。この時期においては、課長の評価が重要となり、さらに成長を遂げると、課長の上に立つ事業部門の部長の役割や評価も大事になってきます。

各ステージにおいて、経営者が考えるべきことや必要な能力も変化していきます。創業期や初期の発見期では、とにかく売上を上げることが最優先ですが、組織が成長するに従って、組織作りやマネジメントの知識が求められるようになります。そして、さらに大きな組織を運営していく段階では、リーダーシップや経営戦略を本格的に考える必要があります。このように、企業の成長には創業、発見、拡大、発展という4つのステージがあるとイメージしています。

今回のテーマ「経営者の心構え」として、特に「拡大期」から「発展期」における経営者の考え方に焦点を当ててお話しいたします。

経営者の役割

経営者の役割については、大きく分けて以下の四つの見出しがあります。

  1. 方針作り
  2. 事業開発
  3. 資金関連
  4. 対外活動

まず、方針作りについてですが、経営者が意識すべき重要な点は、会社の目的や方向性を明確に定めることです。自社が何を中心に事業を展開しているのか、例えば製造業に特化しているのか、あるいはサービス業に近いのかをはっきりさせることが求められます。その上で、長期的な戦略を設定し、目標や事業計画を策定することが必要です。

次に、事業開発に関してですが、企業は常に新しい事業を模索する姿勢が重要です。トップ自らが新しい事業のアイデアを考え、会社に適用する役割を果たすことが求められます。これには、事業提携や買収などの選択肢も含まれる場合があります。

資金関連については、特に経営者が苦手とする分野かもしれませんが、銀行対応や株主対応が求められるようになることがあります。資金調達や資金管理は、企業の成長に不可欠な要素です。

対外活動については、経営者が会社の情報やブランドを発信することが重要です。業界の未来に関する情報を収集し、トップ自らが積極的に外部との関係を築く必要があります。業界活動や情報のアンテナを高く保つことが求められます。

さらに、実働面としては、トップが自ら意思決定を行うことが必要です。特に社内のトラブルや事業上の問題に対しては、現場の意見だけでなく、経営者自らの決断が重要です。また、企業の方針やビジョンを現場に伝え、社員と共有することも重要です。この点において、意識を高めることが会社の成長に繋がります。

また、人材育成の面において、中小企業が常に優れた人材を確保できるわけではありません。このため、長期的な視点で次世代の幹部を育成する必要があります。社長は厳しさを持ち、自社の経営に対して真摯に取り組む姿勢が求められます。

社長は経営の仕事ができないのか?

社長が経営の仕事を適切に行えているかどうかは、しばしば社員からの批判や愚痴を通じて表面化することがあります。このような社員の発言や不満について、私が申し上げたいのは、それに対して過度に信じ込む必要はないということです。あくまで自分の信念を持ち、社長業を続けることが重要です。

もし社長が業務を適切に遂行できない場合、問題が能力や知識の不足、やる気の欠如、あるいは忙しさからくる時間的余裕の欠如に起因していることが考えられます。能力や知識の不足、時間的な制約に関しては改善の余地がありますが、やる気の欠如については深刻に受け止めるべきです。

また、社長がすべての業務を完璧にこなすことは難しいため、No.2や役員、管理職の皆さんがサポートすることが必要です。その際、社長自身のプライドが障害となることもありますが、自分が全てをやらなければならないという過度なプライドを持つことなく、No.2以下のメンバーを信頼し協力して経営に臨むことが重要です。

特に、初代の創業者から経営を引き継いだ社長が経営の知識に乏しい場合には、No.2以下のメンバーのサポートを得ながら努力を重ねることが求められます。

会社の基本

会社の基本においては、分業と相互支援が重要です。基本的に、会社はピラミッド型の構造を持ち、社長が頂点に位置し、その下に管理職(No.2以下)が支え、さらにその下に実働部隊としての各スタッフが存在します。

このピラミッド内では、横の連携や役割分担は比較的スムーズに行われているかと思いますが、縦の分業についても重要です。社長は目標を設定し、長期的な戦略を考案します。その上で、No.2以下の管理職は、これを実行段階に落とし込むための具体的な実行管理を担います。そして、下のスタッフが実際にそれを実行し、組織全体で縦のつながりを大切にすることが基本となります。

社長のタイプ(中小オーナー企業)

中小オーナー企業における社長のタイプには、いくつかの特徴があります。

例えば、「ライオン社長」が挙げられます。ここで述べる「ライオン社長」とは、多くのオーナー企業に見られるワンマン型の社長で、高い目標を設定し、その達成に対して非常に厳格に会社を運営する存在です。このような社長は、社員から恐れられることもありますが、その厳しさが時には社員から嫌われる原因となることもあります。多くの社長がこのような厳格な姿勢を持つべきだとされる一方で、こうしたスタイルが必ずしも全ての企業に適しているわけではないことも留意する必要があります。

次に、「キツネ社長」についてですが、いわゆるクールな戦略家と考えていただきたいです。このタイプは参謀型であり、様々なルールを設け、それに基づいて戦略を進めていきます。ルールに厳格に従うため、社員からはあまり好かれないことが多いです。

一方で、「サル社長」については、従業員に対してビジョンを描き、夢を語る社長です。社員はそのビジョンに感化され、一生懸命に働く意欲を持つようになります。こうした社長は、社員にワクワク感を与える一方で、実行面では甘さが見られることがあります。具体的には、ルールや採算管理に対する対応が緩く、結果として会社の利益が上がらないことがあるのです。このような社長が率いる企業は、実行力のある部下が揃っている場合、さらなる成長の可能性を持つことがあります。

最後に「ヒツジ社長」についてご紹介します。このタイプの社長は、社員と同じ目線で接し、強い指示を出さず、むしろ「いいよ、いいよ」といった形で進めていくスタイルを持っています。社員からは好かれることが多いですが、リーダーシップにおいては強烈な印象を持たないため、優秀な部下がその下にいることが前提です。優秀な部下が存在することで、大人しい社長でも会社が成り立ち、経営がうまく行くケースもあります。このように、社員に好かれながらも、部下の能力によって成り立つ経営者も存在します。

さまざまなタイプの社長が存在しますが、企業の成長においてどのような社長でも良いと考えられます。多様な社長がいる中で、企業はみんなで力を合わせて成長していくのが自然な形です。したがって、社長のタイプはどれであっても構わないという認識が重要です。ただし、社長が持つべき重要な能力については、必ず備えておくべきです。この点に関しては、しっかりと理解し、実践していただきたいと思います。

事業に対する意欲や長期的な戦略の策定は、社長にとって重要な能力です。自社が将来的にどのような方向に進むのかを描き、それを実行に移す力が求められます。また、自己および他者に対する厳しさも必要です。これらの要素が揃っていれば、どのような社長タイプであっても、会社としては成り立っていくと考えられます。

中小企業はライオン社長でOK

さまざまな社長タイプについて述べてきましたが、基本的に社長が社員に好かれることを重視する必要はないと思います。社長が無意識のうちに社員と一緒に働こうとする気持ちは理解できますが、実際には社員に好かれようとする行動が会社の成長を妨げることがあります。ここで触れたいのは、社員と社長との間には根本的な意識の違いが存在するという点です。

例えば、「ライオン社長」のように強い目標を設定し、それに向かって進める社長は、しばしば社員から不満を持たれることがあります。具体的には、予定の変更や厳しい言葉、無理な指示などが原因で不満が生じることがあります。しかし、こうした厳しさは、会社を大きくするためには必要な要素です。社長が持つ厳しさは、会社を良くしようとする本気の表れであり、会社を成長させるためには不可欠です。

そのため、社員の不満やストレスは避けられないものですが、これが会社成長の原動力となります。社長が厳しさを持ちながら、社内に健全な緊張感を維持することが、最終的には会社の成長につながると考えられます。

社長と社員はすれ違う

基本的に、社長と社員の考え方には違いがあり、それによりすれ違いが生じることがよくあります。社長は会社の成長や業績、成果を求めることが中心にあり、これは正当な考え方です。従って、社員に対して厳しく当たるのは当然の対応といえます。

一方で、社員は厳しい社長であっても、人格や正しさを求める傾向があります。そのため、厳しい社長に対して不満が出ることがあるのです。このように、社長と社員が求めるものが異なるため、意見が合わないのは自然なことです。まずはこの違いを認識しておくことが重要です。

社長がライオン社長じゃない場合=支援型社長

それに対して、「支援型社長」と呼ばれるタイプも存在します。このタイプの社長は、組織を引っ張るよりも、社員と一緒に働くことを望む傾向があります。しかし、いずれのタイプであれ、どこかで「ライオン」のような役割を担う人物が必要です。もし社長が強いリーダーシップを発揮できない場合は、各部門の部門長が目標達成に向けて厳しく取り組む必要があります。このような人物が存在すれば、社長が強烈なリーダーシップを持っていなくても、会社は成長する可能性があります。

ただし、どの社長タイプであっても、会社の目標や長期的な戦略について常に考える必要があります。現場のスタッフは、こうした長期的な戦略を考えることは難しいため、社長がこの役割を担うことが求められます。また、現場の指揮を下げることや、現場に支障をきたすような動きは控えなければなりません。一方で、会社が動揺した際には、社長として精神的な支柱となる姿勢を保つことが必要です。

本当のダメ社長

様々な社長タイプが存在しますが、例えば「ダメ社長」と呼ばれるタイプがあります。このタイプの社長は、経営に対する根気が欠けていることがあります。ある程度会社が儲かってくると、「このままで良いだろう」といった考えに陥りがちです。

特に二代目社長に見られることが多いですが、初代の創業者が強烈なリーダーシップで会社を成長させた後に、二代目が就任すると、現状に満足してしまうケースがあります。このような態度では、会社の成長が停滞する恐れがあります。

社長が本気を失うと、企業の成長が停滞してしまう事例が多く見られます。この点については、さまざまなケースを挙げて説明していますが、基本的には社長は常に本気で会社経営に取り組むことが求められます。

ダメ役員に注意

社長がリーダーシップを発揮する一方で、会社を困難に陥れる役員や管理職が出てくることがあります。これらの人員は、簡単に言えば、会社の成長を阻害する存在となります。

具体的には、成長を妨げる役員や管理職が、自らの地位を安泰させるために、会社の発展を抑えつける場合があります。このような場合には、社長として一定の決断を持ち、その役員を外す、あるいは配置換えすることを検討する必要があります。

講師に無料相談をする

ビジネス処方箋に登壇している講師に無料相談を行うことができます。
お問い合わせいただきましたら、ご相談内容に適した士業・経営者の講師をご紹介いたします。

このフォームに入力するには、ブラウザーで JavaScript を有効にしてください。
講師の多忙により、ご希望いただいた講師が対応できない場合がございます。予めご了承ください。

執筆者

HYコンサルティング 代表コンサルタント 堀江 康彦
中小企業診断士

大学卒業後、都市銀行に入行。
金融機関においては、ベンチャーキャピタル~債権管理まで(スタートアップの企業支援~成長ステージ~経営再建~倒産まで)すべてのステージで金融支援を実施。
独立開業後は、中小企業の事業計画策定支援と組織づくりをメインにハンズオン支援、セミナー講師を実施。

各種戦略理論は参考程度、事件は現場で起こっており、現場100回がコンサルタントとして最も必要なスキルだと思っている。

・セミナー講師
経営分析・事業計画策定セミナー
組織づくりに関する教育全般

・趣味
ロードバイク、トライアスロン競技

目次