PDCAで経営改善 | Part1 理論編
石井 信裕
中小企業診断士
バリューエンジニアリングスペシャリスト / 簿記2級 / TOEIC 935点
1983年 ソニー株式会社入社後、ソニーエレクトロニクス(米国)SCMマネージャー、ソニー(株) ストレージメディア事業管理部⻑、事業推進部⻑後、数社経る。
2020年 日本フィランソロピー協会 シニアマネージャー 2021年 東京都中小企業振興公社 事業承継・再生支援マネージャー
本シリーズは二部制で、上記の動画は「Part.1」です。
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PDCAとは
PDCAというのは計画を立てるPlanのP、計画を実行するDoのD、実行を評価するCheckのC、改善して次へつなぐActionのAをつなげてPDCAのサイクルと言います。このPDCAのそれぞれにつき以下ご説明させて頂きます。
目的の明確化
PDCA活動をはじめるにあたり、まず目的を明確にしてください。それぞれの会社や組織における改善には様々な目的があると思います。例えば売上を伸ばしたい、コストを下げたい、品質を良くしたいなど会社や組織の中で改善したい業務は多いでしょう。そのような改善したい業務の中で、これから始めるPDCA活動では何の目的に向かって改善を進めていくのかを明確にすることが重要です。
「論語」と共に儒教の中心となる1つに「中庸」という本があります。この中で、「およそ事はあらかじめすれば、すなわち立ち、あらかじめさせれば、すなわち廃す」という言葉があります。全て物事はあらかじめ事前によく考えておくとりっぱに成功するが、事前によく考えもしないで始めると失敗するものである」という意味です。
この本を書いたといわれる孔子の孫の子思はいまから2500年近く前に生きた方です。そうした昔から計画の大切が書かれています。私の経験でも計画を予めきちんと立てずに活動を進めたが故に失敗したことが多々ありました。どのような改善活動でもいえる事ですが、まず目的を明確にして、できる限り詳細な計画を立てる事は重要です。
P:計画を立てる
PDCAサイクルの1番目は「P:計画を立てる」です。この計画を立てるために1.問題を明確にする事、2.現状を把握すること、 3.目標を設定すること、4.真因をつきとめること、5.対策の計画を立てる、という5つのステップ経て計画を作ります。
5つのステップ、それぞれの具体的な内容を以下ご説明します。
ステップ1:問題を明確にする
まず初めに問題を明確にします。会社や組織にはそれぞれ目指したい「あるべき姿」があるでしょう。何を目的として、どのような「あるべき姿」を目指しいのかをまず明確にして下さい。そして「あるべき姿」に対して今の会社や組織はどのような状態なのかを把握して下さい。その「あるべき姿」と「現状」にはどのような差、ギャップがあるのかを認識します。これが「問題」です。
例えば「あるべき姿」は毎年5%の売上を伸ばしたいが、現状は売上が全く伸びないとすれば、この5%の差を問題としてとらえます。現実にはギャップはさまざまな要素から成り立っています。そうしたギャップ、すなわち「問題」を明らかにしてください。
またこうした問題の把握を行う時にはリーダーが一人で考えるのではなく、改善を進めるチームの中で良く議論しながら問題の把握をおこなってください。そうする事でチ-ムにとり共通の問題意識を持つことができます。チーム共通の意識を持たず活動を進めるとメンバーひとりひとりの活動の方向性が揃わず、成果が出ません。チームでしっかりと協議を行い改善活動を行ってください。
ステップ2:現状を把握する
「あるべき姿」に対して現状はどうかを把握します。できるだけ客観的に把握可能なデータや指標を選び現状調査を行ってください。調査した内容をチームの中で共有し、あるべき姿とのギャップが起きるのは何が障害なのかをチームの中で議論して下さい。ギャップについて可能な限り定量化してその差異、問題を明確にしてください。
ステップ3:目標を設定する
「現状」から「あるべき姿」へむかう時、理想的には一気に「あるべき姿」へ到達できればよいのですが、その差が大きい場合にはまず到達可能と思われ目標を設定しながら一歩一歩あるべき姿に近づけていくことが大切です。あるべき姿を目指してまず実現可能と思われる目標の設定をして下さい。現状調査と同様できるだけ定量的な目標を設定してください。そのうえで、いつまでに達成したいのかを明確にしてください。
ステップ4:真因をつきとめる
「現状」は、なぜ「あるべき姿」になっていないのか、その阻害している原因を洗い出し真因をつきとめます。真因をつきとめる手法には、なぜなぜ分析や特性要因図があります。
なぜなぜ分析というのは発生した問題事象の根本原因を探る分析手法です。問題に対してなぜそれが起きたのか原因を見極め、その原因に対して「なぜ?」を問うことを繰り返すことで問題の深掘りをしていき、根本原因を抽出します。
特性要因図は、ある問題に対してその問題は何が原因で起きているかについて図を利用しながら分解、分析します。できるだけ詳細に想定される要因をチームで協議しながら分析してください。分析を行った上で、どの要因が問題に対して影響が大きいかなどをチームの中で話し合い、優先順位を決めます。
ステップ5:対策の計画を立てる
以上のステップで協議した内容を整理してチームで確認します。目的は何か、目標はどこにおくか、誰が何をいつまでにどのように進めるのか、具体的な手法、手段はどうするのか、どういった指標やデータを抽出し進捗を確認するのか、等々詳細な計画を立ててください。
D:実行する
PDCAの2番目は「D:実行する」です。 「P:計画する」の5つのステップを経て作成した詳細計画に沿い改善活動を進めていってください。実行にあたって注意すべきポイントを以下に述べます。
チームの中の連携や情報交換をしっかりと行って下さい。大規模な改善活動やプロジェクトではいくつかのチームに分かれ、それぞれの役割を担いながら実行することになります。あるチームで起きた問題が他のチームへ影響を及ぼすことも多くあります。また活動結果を正しく記録せず進捗の判断が行えないケースもあります。
必ずどの指標を改善の物差しとしていくのかを決め、記録に残しながら活動を進めてください。定量的な面だけでなく、活動を進めている中で気づいた事や反省すべき事など定性的な面についても記録を残しておくと今後の改善活動において新たな気づきの材料になります。
活動進捗をレビューする場には統括するリーダーは必ず参加してください。リーダー出席のもとで定期的に進捗を確認することは改善活動を成功させるための重要な鍵です。進捗レビューにおいて計画と大きく乖離している活動はリーダーが中心となり、その乖離を減らす対策をチームメンバーと共に協議し立ててください。
C:評価する
PDCAの3番目は「C:評価する」です。 実行した結果、その目標は達成できたのか判断します。目標と実績に乖離が見られるときにはその乖離は何が原因で起きたのかをチームで徹底的に協議し突き止めてください。また改善活動を通じて良かった点、あるいは反省すべき点は何かについても、この評価の中でチームとして整理してください。乖離の原因や良い点、反省すべき点などを記録に残し、将来の改善活動に活かして下さい。
A:改善し次へ繋ぐ
PDCAの4番目は「A:改善し次へ繋ぐ」です。評価で得られた改善を実行に移して下さい。また、評価から気づいた課題などを踏まえて「あるべき姿」へ向け次の目標を立て下さい。ここで注意して頂きたいポイントは次の通りです。
改善内容を実施していく場合リスクを伴うこともあります。リスクが想定される場合には、そのリスクが実際起きた場合にどのような対策すなわちバックアップをとるのかも決め実施して下さい。改善活動で得られた成果は、他の部署等へ横展開して下さい。組織全体のレベルアップに繋がります。次の目標設定をする時、「あるべき姿」を常に忘れず決めて下さい。
以上PDCA活動についてご説明させて頂きました。シンプルな内容ですが、経営改善を進める上で強力な武器になります。
最後にPDCAの改善を進める中で大切な事を整理します。
組織の方針沿った、組織のあるべき姿をめざした目的、目標を立てて下さい。
PDCAの中で特に「C」のチェック、反省を徹底的に行って下さい。この反省を踏まえて修正すべき内容を次の計画に盛り込みながらこのPDCAを続けていくことが成功への鍵です。
「あるべき姿」は高く掲げますが、目標を高くしすぎると活動が続きにくくなります。チームで力を合わせて達成可能な目標を掲げ、その目標を達成することで一歩一歩、「あるべき姿」を目指してください。
チームで取り組んでください。一体感が生まれチーム全体の力が強くなります。
リーダーは必ず実行部隊の皆さんと一緒に活動して下さい。計画を決めた後は実行部隊に任せるようなリーダーもみかけますが、リーダーが実行を人任せにするような改善は進みません。
最後に、こうした活動を実行する場合、途中で活動を阻む壁のようなものが現れることがよくあります。その壁のために活動の進み方が遅くなり、諦めてしまうケースもよく見受けられます。そこで諦めたら最後、折角のそれまでの活動は後に何も残りません。粘りにねばり、最後までチームで力を合わせて必ず達成する信念を持ち活動して下さい。
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