労働基準監督署の調査の傾向と対応
寺林 顕
社会保険労務士
保険労務士法人リンケージゲート 代表
2001年に保健労務士法人を共同設立。関連会社として企業PR動画撮影会社や採用コンサルや弁護士事務所も。
・著書
「テレワークの労務管理のコツとツボがゼッタイにわかる本」2020年10月((株)秀和システム執筆)
「労務管理のコツとツボがゼッタイにわかる本」第二版2019年8月((株)秀和システム執筆)
はじめに
今回は「もしものために知っておきたい – 労働基準監督署の調査の傾向と対応」についてご説明いたします。
本日の内容は以下の4つに分けて進めます。まず1つ目は、労働基準監督署の調査の内容について、2つ目は違反を指摘された場合の対応手順について、3つ目は調査で確認される主な事項について、そして最後にその他の注意点などを含めたお話をさせていただきます。
労働基準監督署(労基署)とは
ではまず、労働基準監督署とは何かというところからお話しします。
私たちは「労基署」「労基署」とよく言いますが、労働基準監督署の役割は、労働基準法や労働契約法などの労働法が各企業で遵守されているかを確認し、必要に応じて取り締まりを行うことです。また、労働法に関連する各種手続きもこの機関が担当しています。
ここで、労働基準監督署の「署」という字についても注目してほしいのですが、年金事務所の「所」とは異なり、「署」は警察署の「署」と同じ漢字です。これは、労働基準監督官が「特別司法警察職員」という肩書きを持ち、重大な違反があれば書類送検などの法的措置が取れるためです。ですから、労働基準監督署の調査を軽視していると、思わぬ事態に発展する可能性がありますので、注意が必要です。
労働基準監督官の権限としては、事業場や寄宿舎、その付属施設への立ち入り(臨検)、帳簿や書類の提出要求、そして使用者や労働者への尋問が行えるとされています。このため、労働基準監督署の調査が行われる際は、適切な対応が求められるのです。
いつ調査に来るのか
それでは、労働基準監督署の調査についてお話しします。
皆様が気になるのは、「いつ調査が来るのか?」という点だと思いますが、調査のタイミングには大きく分けて2種類のパターンがあります。1つ目は抜き打ちで突然やってくるパターン、もう1つは事前に郵送で案内が来るパターンです。
まず、抜き打ちの調査についてですが、この場合、事前の連絡なしに労働基準監督署の職員が直接事業所に訪問してくることがあります。このような調査に対しては、原則として拒否することはできません。突然「こんにちは、〇〇労働基準監督署の者です」といった形で訪問されることがあります。抜き打ちの調査があると、「何か密告があって労働基準監督署の方が来たのですか?」と心配される方もいますが、確かに密告による調査は多いです。しかし、それだけでなく、定期的な巡回調査として訪問しているケースもあります。
多くの場合、次に説明する事前通知のパターンが一般的です。このパターンでは、調査日や必要書類が指定された案内が郵送で届きます。例えば、「〇〇労働基準監督署です。〇月〇日に以下の書類を持参してください」といった内容で、労働者名簿や出勤簿、賃金台帳などの提出が求められます。これには2つのパターンがあり、事業所への訪問調査か、労働基準監督署への出頭調査です。
案内には通常、調査日が1か月後や3週間後などと指定されていますが、日程については調整が可能です。もしその日程で都合がつかない場合には、「別の日にしてください」と連絡をすることで変更が可能です。労働基準監督署の調査に備えるためには、これらの案内にしっかりと対応し、必要な準備を進めることが重要です。
監督調査の種類
労働基準監督署の調査には、全部で4種類あります。
まず1つ目は「定期監督」です。この定期監督は全体の約85%を占める最も一般的な調査です。これは労働基準監督署の年間計画に基づき、対象事業所が決定されるもので、事前に調査日程が通知されることが多いです。年間計画の中で、「今年は製造業を重点的に調査しよう」などの方針が定められ、その計画に沿って調査が実施されます。ほとんどの監査がこの定期監督に分類されます。
次に厄介なのが「申告監督」です。これは、従業員や退職した従業員からの通報に基づいて行われる調査で、残業代の未払い、不当解雇などがその主な通報内容です。調査全体の約15%を占め、定期監督よりも厳しく行われる傾向があります。現在は、インターネット上からも申告が可能で、「我が社では長時間労働が常態化しており、毎月100時間を超える残業をしている」といった内容が通報されると、それに基づいて監督官が調査に出向くことになります。これが「申告監督」と呼ばれるものです。
続いて、「災害監督」について説明します。これは、労働災害によって労働者が死亡したり、重傷を負ったりした場合に実施される調査です。事故の原因究明や再発防止が目的で、例えば製造業などで重大な事故が発生し、救急車を呼ぶような事態が起きた際に行われます。このような労働災害が発生した場合、迅速に災害監督が実施されることになります。
最後に、「再監督」という種類の調査があります。これは、定期監督、申告監督、災害監督のいずれかの調査で指摘された事項がきちんと是正されているかを確認するために行われるもので、必ずしも実施されるわけではありません。しかし、内容が悪質であったり、是正が適切に行われていなかったりしたと判断された場合には、1年後などに再度監督が行われることがあります。
労基署調査での指摘の多い内容
続いて、労働基準監督署の調査で指摘されることが多い内容について見ていきたいと思います。
主な調査項目としては、「労働時間が正しく管理されているかどうか」が挙げられます。労働基準法では、労働時間を1分単位で管理することが義務付けられています。そのため、30分単位や15分単位で労働時間を管理している場合には是正の対象となる可能性が高いです。
続いて、シフト管理が適正に行われているかどうかも労働基準監督署の調査の重要なポイントです。例えば、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入しているのにシフトが適切に組まれていない、あるいは1年単位の変形労働時間制を採用しているのに年間休日が設定されていない場合、これらは是正対象となる可能性が高いです。
また、出勤簿や賃金台帳の管理も非常に重要です。出勤簿は1分単位で管理されているかが確認され、15分単位などで管理されている場合には是正の指導を受けることがあります。賃金台帳についても同様で、細かな内容が確認されます。賃金台帳には絶対的な記載事項が含まれている必要があり、例えば出勤日数、残業時間、就業時間などが正確に記載されていない場合、是正指導や是正勧告が行われることがあります。特に中小企業では、これらの情報が十分に記載されていないことが多く、注意が必要です。
さらに、就業規則や36協定の提出についても確認されます。就業規則は、従業員がパートも含めて10人以上いる場合には労働基準監督署に提出しなければなりません。また、残業時間が発生する場合には36協定の提出も求められます。しかし、これらは提出するだけでは不十分で、従業員に周知されて初めて整備されているとみなされます。労働基準監督署の調査では、就業規則や36協定がきちんと従業員に周知されているかどうかも重要なチェックポイントとなります。
年次有給休暇の取得状況も確認対象となります。2019年4月から、有給休暇の5日取得義務が法律で定められました。労働基準監督署の調査では、この有給休暇の5日取得義務が守られているかどうかも必ず確認されます。この義務が遵守されていない場合も是正の指導を受けることがあるので注意が必要です。
続いて、健康診断が実施されているかについてです。企業は年に1回、必ず健康診断を行う必要があります。また、新規雇用者についても、大体3ヶ月以内に健康診断を実施する義務があります。この健康診断に関連して、長時間労働などの影響で再検査が必要とされた場合には、医師の所見を聞いているかどうかの確認も行われます。
調査で確認する主な書類
次に、労働基準監督署の調査で確認する主な書類についてお話しします。先ほど労基署の調査で指摘されることが多い内容について触れましたが、具体的にどのような帳簿を確認するのかを説明します。
まず1つ目が労働者名簿です。これはどの会社にも備え付けられているものです。次に2つ目は労働条件通知書や雇用契約書です。3つ目は賃金台帳、4つ目は出勤簿やタイムカードです。そして5つ目には有給休暇取得状況の管理簿があります。この管理簿は2019年4月から有給取得が義務化されたことに伴い、調査で確認されるようになりました。もし、この管理簿がまだ整備されていない企業がありましたら、早めに整備することをお勧めします。
さらに、6つ目として就業規則、7つ目は36協定、8つ目は労使協定があります。フレックスタイム制を採用している場合は、フレックスタイム制の労使協定も必要です。また、賃金控除を行っている場合は、そのための労使協定も求められます。そして、定期健康診断の個人票やその控えも確認されます。それから10番目のポイントとして、安全管理者や衛生管理者の選任状況、さらに安全衛生委員会の議事録も確認対象となります。
労働基準監督署の調査で特に重点的に確認されるのは、賃金台帳、出勤簿、タイムカードです。これらの書類を確認することで、まず出勤簿やタイムカードから長時間労働が行われていないかをチェックします。さらに、タイムカードや出勤簿を見て、適切に残業代が支払われているかを特に注意して確認します。未払いの残業代がある企業は、特に注意が必要です。
労働基準監督署の調査の傾向と対応
次に、労働基準監督署の調査の傾向と対応について、違反を指摘された場合の対応手順についてお話しします。
まず、どのようにして指摘されるのかについてですが、労働基準監督署の調査の流れは以下のようになっています。調査は計画に基づいた事業所の選定、労働者からの申告、または労働災害の発生などによって、事業所への訪問や労働基準監督署への出頭という形で行われます。
続いて、立ち入り調査や事情聴取、帳簿の確認などが行われます。ここで何も違反が見つからなかった場合は、それで指導は終了となります。しかし、違反が悪質だった場合には更なる処分が検討されます。通常、何かしらの違反が見つかることが多いのですが、違反が認められた場合には文書指導という形で是正勧告や改善指導などが行われます。
続いて、改善指導が行われた後の流れについてですが、企業は労働基準監督署に是正改善報告書を提出する必要があります。この是正報告書や改善報告書を提出し、内容に問題がなければ指導は終了となります。しかし、悪質な違反が認められた場合には、再監督が行われることもあり、再び指導を受ける可能性があります。
是正勧告書
それでは、具体的にどのような是正勧告が行われるのかを見ていきましょう。
是正勧告書は、調査の結果法令違反があった場合に交付されるものです。なお、これは行政処分ではありません。是正勧告書で指摘された箇所を法令通りに是正し、是正報告書を提出すれば、罰金や処分などの行政処分を受けることはありません。
是正勧告書には、例えば「有給休暇の5日間取得義務に対して、5日が取得されていないので改善してください」といった具体的な違反内容が記載されています。また、「従業員が10人以上いるにもかかわらず、就業規則が提出されていないため、労働基準法第〇条に違反しています」といった内容も含まれます。このように是正勧告書には、どの法令に違反しているかが明記され、是正を求める内容が示されます。
是正勧告書の提出期限は通常1ヶ月後となっていますが、必要に応じて延長することが可能です。報告の期限に間に合わない場合は、事前に監督官に相談し、期限の延長をお願いすることが大切です。もし是正報告を期限内に提出しない場合、最悪の場合、書類送検されることもあります。そのため、調査の後は逐一担当監督官と連絡を取り合い、適切に対応することが重要です。
是正報告において中間報告が必要かどうかという点についてですが、是正事項が複数ある場合には、対応が完了したものから順次、労働基準監督署の監督官に報告することが推奨されます。仮に是正勧告が6項目あった場合、1~2個でも対応が完了したら、その都度報告を行うことで、迅速な対応を示すことができます。すべての項目が完了するまで待っていると時間がかかり、その間に追加の指導や勧告を受ける可能性もあるため、随時中間報告を行うことが望ましいです。
是正勧告書は、労働基準監督官から経営者に対して発行されます。通常は5~6項目、場合によっては2ページにわたって違反が指摘されることもあります。是正期限も明記されており、通常は1ヶ月後ですが、必要に応じて電話で相談し、期限の延長を求めることも可能です。
是正報告は、1つ1つ是正を行う必要があります。例えば、「有給休暇の5日取得義務が達成されていません」と指摘された場合、取得促進のための案内を行い、実際に何日分の有給休暇を取得させたかを報告します。この報告書は、是正報告書という正式な書類で提出され、記載内容には労働基準法の何条に違反していたか、是正日、是正内容などを明確にします。最終的には、この是正報告書を労働基準監督署に提出し、問題がないことが確認されれば、指導は終了し、監督官の印鑑をもらって完了となります。
しかし、悪質で何も対応していない場合、最悪の場合は書類送検されることもあります。
指導票
また、「指導票」という書類もあります。
これは法令違反ではないものの、法令違反につながる恐れがある場合や改善が必要と判断される場合に交付されます。指導票を受けた場合も、是正報告書を提出し、改善を図ったことを報告する必要があります。この報告が義務であることを忘れずに対応してください。
是正期日を守らないと?
是正期日を守らないとどうなるかについては、多くの方が気になるところですよね。
まず、是正期日を過ぎても是正報告を行わない場合、労働基準監督署から電話で是正督促が行われます。もし何らかの事情があって報告できなかった場合は、監督署に事情を説明すれば、理解してもらえることが多いです。例えば、繁忙期でどうしても報告が遅れたという理由を伝えることができますが、是正期日は事前に延長しておくのが賢明です。あらかじめ余裕を持って是正対応を行うことを労働基準監督署に伝えておくことが重要です。
電話による是正督促を無視し、さらに是正報告を行わないと、次に文書による是正督促が行われます。完全な是正が難しい場合でも、是正の進捗や見通しを報告すれば、さらなる督促を避けることができます。そのため、調査が行われた際には、監督官との密な連絡が非常に重要です。監督官に対して恐怖心を抱く方もいるかもしれませんが、改善の意志があれば、監督官も厳しく対応することは少なく、将来に向けた改善を促すのが彼らの役目となります。
文書による是正督促を無視し続けると、再監督が行われることになります。この再監督が繰り返されると、監督官は最終的に書類送検の手続きを行う可能性が高まります。予告なしの再監督が行われた場合、これは書類送検を意識していると考えて良いでしょう。
ブラック企業名公表措置
ブラック企業名の公表措置についても注意が必要です。特に大企業は社会的影響力が大きく、企業名が公表される可能性があります。例えば、違法な長時間労働が一定期間続き、複数の事業所で複数の労働者により繰り返されている場合、公表の対象となります。
具体的には、月100時間を超える残業が1つの事業所で10人以上、または全体の1/4以上の従業員に及ぶケースが1年程度で3箇所以上ある場合、企業名が公表される基準に該当する可能性があります。
書類送検された場合、それだけでニュースとなり、企業名が公表されることもありますので、是正の指示を軽視せず、しっかりと対応することが重要です。監督官からの是正指導を放置していると、最悪の場合、書類送検される可能性がありますので、注意を怠らないようにしてください。
労働基準監督署の調査の傾向と対応
続いて、調査で確認される主な事故についてお話しします。
まず、必ず行うべきなのは長時間労働のチェックです。過労死ラインの目安として、月に80時間以上の残業が挙げられますので、この80時間を超えているかどうかを徹底的に確認します。また、週に40時間を超える時間外労働や休日労働が、月合計で45時間を超える場合には、業務と発症の関連性が強まるとされています。
さらに、発症前の1ヶ月に100時間を超える時間外労働や、発症後の2ヶ月もしくは6ヶ月間にわたって1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働が行われていた場合には、業務と発症の関連性が極めて強いと示されます。
特に法律では、月に45時間を超える時間外労働は年6回まで許可されています。また、月の残業時間も100時間を超えてはいけませんし、月平均では80時間未満に抑える必要があります。このため、長時間労働に関しては特に厳しくチェックされています。残業時間が長い場合には、是正勧告が行われ、是正報告書を提出する必要があります。出勤簿に関しても、長時間労働のある会社では毎月45時間未満であるかどうかを確認し、45時間を超える残業時間は年6回までとする体制が整っているかをチェックするようになっています。
過労死の労災認定においては、労働時間以外にも以下の要素が考慮されます。勤務時間の不規則性、例えば不規則な勤務や深夜勤務、事業場外での移動を伴う業務、すなわち出張の頻度や出張期間、移動距離なども評価されます。また、心理的負荷を伴う業務、例えばパワハラや事故・災害の目撃も考慮されます。長時間労働に関しては特に厳しくチェックされており、調査が行われる際には、まず長時間労働がないかどうかを確認することが、労働基準監督署の監督官によって行われています。
調査では何を見られるか遡及適用期間
続いて、調査で何が確認されるのかについてお話しします。
まず、最も重要なのは未払い残業の問題です。特に中小企業では、残業代が支払われていないケースが見られます。例えば、労働時間が15分や30分カットされることがよくあります。また、タイムカードには打刻されているにも関わらず、残業申請がされていないために残業代が支払われていないケースや、最終的に残業代がカットされて支払われていない場合もあります。このような場合には、是正勧告が出され、「支払ってください」という指導が行われます。
2020年4月1日以降、全ての労働者の賃金債権の消滅時効期間が賃金支払い日から3年に延長されました。これにより、3年遡って未払い賃金を請求することが可能となっています。ただし、労働基準監督署による調査があった場合、未払い賃金の支払いが3年間となるかどうかは、会社の状況によって異なる場合があります。特に飲食店などでは、会社が経営不振により潰れるケースもあります。そのため、調査における未払い賃金の支払い要求は、通常、3ヶ月から6ヶ月程度の遡及が目安となります。労働基準監督署の役目は、将来の労働環境を改善することにあるため、法違反の取り締まりよりも、労働環境の是正が目的となります。
そのため、未払い残業の支払い要求についても、3ヶ月から6ヶ月の範囲内での支払いが一般的です。もしも3年分遡っての支払い要求となると、監督官との交渉の余地もあるかもしれません。是正勧告についても、6ヶ月に短縮してもらう、または3ヶ月に短縮してもらい、残りの部分については従業員と話し合うといった交渉の余地が考えられます。
申告による監督の場合は、申告者の状況に大きく依存するため、調査では特に未払い賃金が注意深く見られることがあります。未払い残業がないかどうかを確認しておくことが重要です。残業申告がない場合や、タイムカードには長時間労働が記録されているにもかかわらず、一切残業代が支払われていないといった場合は、問題が発生する可能性があります。また、固定残業制度がある場合でも、基本給の中に残業代が含まれていると主張するだけでは不十分です。就業規則や雇用契約書に明記されていない場合には、監督官から未払い残業代の支払いを指導されることがあります。
月60時間超 割増賃金50%に改正
最後に、法改正についてお話しします。
2023年4月から、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%に改正されました。それ以前は25%でしたが、改正後は1.5倍の50%割増となっています。このため、長時間労働の未払い賃金が発見された場合、未払い分を1.5倍で計算しなければならず、支払い額が増える可能性があるため注意が必要です。
労働条件の明示 2024年4月改正予定
また、労働条件の明示に関する規定も変更されます。2024年4月から、雇用契約書には新たに明示すべき事項が追加されます。すべての労働契約の締結時や有期労働契約の更新時には、勤務地や業務の変更範囲についても記載する必要があります。具体的には、転勤の有無や業務内容の変更(営業から事務への変更など)が含まれます。さらに、有期契約の場合は更新の上限やその内容についても記載が求められます。
無期転換ルールに基づく無期転換申込み権が発生する契約の更新時には、無期転換申し込みの機会や無期転換後の労働条件についても記載が必要です。これにより、2022年4月以降の雇用契約書の確認時に記載事項の漏れが指摘される可能性があります。また、月60時間を超える割増賃金率が50%になることも確認されるでしょう。
まとめ
まとめとして、労働基準監督署の調査の傾向と対応についてお話しします。
まず、求められた書類を適切に提出することが重要です。労働基準監督署からは、労働者名簿や賃金台帳、有給管理簿など、さまざまな書類の提出を求められますので、日頃から適切に書類を作成し保存しておくことが必要です。
次に、虚偽の報告を避けることが重要です。未払い残業のために嘘のタイムカードを提出するなどの改ざんは、悪質と見なされ、書類送検される可能性があります。是正措置の期限についても、調査が入った場合は1ヶ月での対応が求められることが多いですが、延長を申し出ることができるため、必要に応じて延長を検討することをお勧めします。
最後に、真摯な対応が重要です。是正勧告を受けた場合でも、改善の意思を示すことで、書類送検を避けることができます。
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