労働人口の減少と外国人労働力の活用
今後の労働人口の推移
皆様もご存知の通り、日本の労働人口の推移が問題視されています。日々、ニュースなどで少子高齢化の進行について耳にすることが多いと思いますし、自社の状況を見ても「若い世代が少なく、40代、50代が多い」と感じることが多いのではないでしょうか。実際に統計でもその傾向が示されており、今後の予測でも同様の結果が出ています。
2020年頃、ちょうどコロナが始まった時点では、日本の労働人口、つまり16歳から65歳の方々は約6400万人いました。この世代が日本の経済を支えていたわけですが、2065年頃には労働人口が4000万人を割り込むと予想されています。その頃には日本の総人口も1億人を切っていると考えられており、労働人口が現在の半分以下になる見通しです。
いくら技術の進化が進んで機械化やAI、ITを導入したとしても、人が直接携わらなければならない仕事が多く残るため、将来的な労働力不足は避けられない状況です。
加えて、健康保険料や年金を納める側の人が減少し、逆に受け取る側が増えてしまうことで、国全体の財政にも大きな不安があるのではないかと考えられます。このような背景から、外国人労働者の受け入れについても様々な意見が飛び交っており、賛否両論ある中で注目されています。
日本で就労する外国人の現状
実際に日本で就労する外国人労働者の現状を見てみると、2009年には約50万人だった外国人労働者が、2022年には200万人に迫る勢いで増加しています。2023年の統計が発表されるのは来年(2024年)6月頃になる見込みですが、その頃には200万人を超えている可能性が高いと考えられます。それだけ、外国人労働者が日本の労働市場に急速に増えている状況です。
国別に見ると、かつては日系ブラジル人や日系ペルー人が多く、特に1980年代には製造業を支えていました。しかし、現在ではこれらの方々の平均年齢が50代に達しており、シェアとしては減少傾向にあります。その後、中国やフィリピンが増加しましたが、特に近年目立っているのがベトナムからの労働者です。
職場でもベトナム人の技能実習生や特定技能の方々を見かけることが増えているのではないでしょうか。現在、日本で働く外国人労働者の約1/4がベトナム人であり、次に多いのが中国人、その後にフィリピン人が続いています。ブラジル人やその他の国からの労働者は少数派となりつつありますが、今後の推移もまた変わっていく可能性があります。
外国人労働者の主な産業別内訳
産業別に見ますと、外国人労働者が最も多く就労しているのは製造業です。これは、ブラジルの日系の方々が早い段階から製造業に従事していたため、外国人が働く土壌がすでに整っていたことが背景にあります。現在の技能実習や特定技能などの制度も製造業が積極的に導入しており、その結果、製造業への外国人労働者の流入が一番多くなっています。
一方で、小売業や宿泊・飲食業でも外国人労働者の姿が多く見られます。特に飲食業や小売業では、外国人が自ら経営するケースが多く、例えばインド料理店を経営するインド人や、韓国料理店を経営する韓国人など、街中でよく見かけます。これらの業種では、雇用されている外国人の数はそれほど多くないようですが、経営者として活動している外国人が一定の割合を占めています。
建設業については、労働者の平均年齢が非常に高く、労働力不足が深刻化しています。外国人労働者を積極的に受け入れているイメージがありますが、実際のところ、全体の6.4%と意外に低い割合にとどまっています。
ホワイトカラーに分類される教育・学術分野では、外国人労働者はまだ少なく、農業分野でも労働者の年齢構成が高齢化しているため、若い労働力をどう確保するかが課題となっていますが、外国人労働者の受け入れはまだ進んでいない状況です。
労働現場における「特定技能」の活用について
このような中で、外国人労働力を増やしていくために注目されているのが、特定技能の制度です。
この在留資格は2019年度からスタートした新しい制度で、技能実習制度と混同されることがありますが、根本的な違いがあります。技能実習は、日本で職業の技術やノウハウを学び、それを母国に持ち帰ることを目的としていますが、特定技能ははっきりと労働力としての位置づけです。そのため、外国人労働者を長期的に受け入れる制度として期待されています。
現在、技能実習2号や3号を修了し、必要な評価試験に合格した方が特定技能に移行するケースが非常に多いです。特定技能1号は最長で5年間までしか滞在できず、更新はなく、その後は本国に帰る必要があります。しかし、評価試験に合格すると、特定技能2号に移行することが可能です。特定技能2号になると、在留資格の更新が1年単位で無制限に可能となり、長期的に同じ会社で働くことができます。さらに、長く日本に滞在することで永住権取得・帰化の可能性が出てきます。特定技能2号として5年から10年滞在することで、永住権の申請資格を得られるようになります。
また、特定技能2号になると家族滞在の資格も得られ、配偶者や子どもと共に日本で暮らすことができます。これにより、外国人労働者が日本で家庭を持ち、安定した生活基盤を築くことが可能になり、日本で長期的に働き続ける意欲が高まります。
長期間にわたって外国人労働者が会社に定着すれば、会社の業務全般について深い理解を得て、信頼して任せられる人材になることが期待できます。特に中小企業では、黒字経営でありながら後継者がいないために廃業するケースが散見されます。そのような状況であれば、信頼できる外国人労働者に事業の継承を考えることも一つの選択肢となり得ます。
事業承継を行う際には、「経営管理」という在留資格、いわゆる「経営ビザ」への移行が可能であり、永住資格を持っている場合には経営者になることに何の問題もありません。
現在、特定技能の制度は12分野14業種に対応していますが、国としては今後さらにこの制度をあらゆる業種・分野に広げていく方針です。
ただし、デメリットとしては、特定技能2号になることで外国人労働者の選択肢が増え、会社との折り合いがつかなくなれば辞めてしまう可能性があるという点があります。しかし、逆に言えば、企業と外国人労働者が良好な人間関係を築き、互いに信頼できる関係を構築すれば、このデメリットは大きな懸念にはならないでしょう。
受入可能な産業分野(現状:12分野14業種)
特定技能の受け入れ分野については、監督官庁が4つあり、それぞれ以下のような分野で外国人労働者の受け入れを推進しています:
- 国土交通省:建設、造船、自動車整備、飛行機整備、宿泊業
- 農林水産省:農業、漁業、飲食料品製造業、外食産業
- 経済産業省:素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業
- 厚生労働省:介護、ビルクリーニング。
これらの分野は現在、人材不足が特に深刻であり、特定技能の配置が可能な状態です。しかし、今後はさらに多くの産業で人手不足が問題となっているため、特定技能制度が他の分野にも拡大していくことが期待されています。
特定技能1号と特定技能2号ってなに?
特定技能1号と2号の、両者の違いについてもう一度整理してみましょう。
まず、特定技能1号の対象となる業種は全ての業種に対応しているのに対して、特定技能2号は建設業と造船業に限定されています。しかし、今年(2023年)の春頃から自民党や政府の審議会などで、現行の特定技能1号で受け入れられている業種すべてが、特定技能2号にも解放されることが決まりました。
もう一つの課題は、技能実習から特定技能1号への移行に関するものでした。特に、建設業の職種で技能実習と特定技能が合致しないという問題があり、一部の業種では移行が難しい状況が続いていましたが、昨年(2022年)の夏にはこの問題も解消されました。これにより、技能実習で建設業に従事していた方々が、そのまま特定技能1号や2号へと移行できる仕組みが整い、制度面での改善が図られています。
次に、在留期間についてですが、特定技能1号の場合、在留期間は最長で5年間となっており、それ以上の在留はできません。6年目以降も在留を希望する場合は、特定技能2号への変更が必要です。この特定技能2号には在留期間の制限がありません。
また、技能水準については、特定技能1号では、入社後に即戦力として活躍できる程度の技能を有していることが求められます。高度な技術までは求められないものの、企業内での戦力としてカウントされる水準です。一方、特定技能2号では、さらなる技能の習熟が期待されており、例えば建設業では現場のリーダー的な役割を担うことが想定されています。特定技能1号では作業員としてグループの一員であるのに対し、特定技能2号ではそのグループの班長となり、日本人の部下を率いて現場で指揮を執るような成長が期待されています。このように、特定技能2号ではより責任ある立場で仕事を任せられる存在となることが求められています。
特定技能の資格を取得するためには、まず技能試験に合格する必要があります。この試験は母国で受験することもできますし、日本で技能実習2号や3号を修了し、その際の評価をクリアした場合にも、特定技能1号に移行することが可能です。そして、特定技能2号に進むには、1号での在留期間中に2号の評価試験に合格する必要があります。
日本語能力については、特定技能1号ではN4程度の日本語能力が求められます。これは小学生高学年レベルの読み書き能力で、ひらがなが多い文章であれば理解できる程度です。このくらいの能力がないと、職場での意思疎通が難しくなると考えられます。一方、特定技能2号に進む際の日本語能力については特に規定はありませんが、特定技能1号で5年間日本で働いていれば、自然と日本語も上達しているだろうという前提があるようです。
また、特定技能1号と2号の大きな違いの一つに、家族の帯同が挙げられます。特定技能1号では家族の帯同が認められていませんが、特定技能2号では帯同が可能です。これにより、家族とともに日本で生活することができます。
介護分野に関しては、特定技能の枠外で既に在留資格「介護」が存在しており、EPA(経済連携協定)による国際的な協定を通じて来日する介護従事者もいるため、特定技能に頼る必要が少なくなっているという特殊な事情があります。このため、介護分野は特定技能の一般的な枠組みとは別の取り扱いとなっています。
特定技能外国人受入可能人数上限(全体目標)
特定技能外国人の受け入れには、国が上限数を設定して一気に増加しないようリミッターがかけられています。2022年時点ではコロナの影響もあり、受け入れ数が一度減少しましたが、今後の見直しで大幅に増加する可能性があります。これは、業界団体から受け入れ枠の拡大を求める声が上がっているためです。
しかし、受け入れの制限には注意が必要です。特に建設と介護の分野では、事業所や会社の規模に応じた人数の受け入れを求められています。例えば、従業員が30人の会社が、事業拡大を理由に突然50人や60人の外国人労働者を受け入れると、管理や支援が行き届かなくなる恐れがあります。そのため、外国人労働者が日本で働きながら生活するために必要なサポートを、会社や登録支援機関がしっかりと提供できるよう、現行の事業規模に見合った受け入れを行うことが求められているのです。教育面も含めて、受け入れ体制の整備が重要視されている点は非常に大切です。
特定技能在留外国人の推移
特定技能の外国人労働者は、2019年6月頃までは数が非常に少なく、統計にも表れないほどでした。しかし、コロナの影響を受けつつも着実に増加しています。特に2022年後半には急激に増加し、前年同月比で倍以上になっています。例えば、2021年12月と2022年12月を比較すると、その増加率は明らかです。この増加の勢いは今後も続くと予想されます。
特定技能外国人 分野別受け入れ状況
特定技能外国人がどの分野で活用されているかを見てみると、本来人手不足が深刻で外国人労働者の受け入れが期待されている介護、建設、宿泊、外食業などでは、まだ十分に活用されていないのが現状です。特に外食業では、コロナの影響で人の流れや営業の制限があり、多くの従業員を失った企業が多く見られます。
現在、インバウンドの需要が高まり、外国人観光客も増加していますが、従業員の不足から営業時間を制限したり、顧客の受け入れを制限したりする企業もあります。このような状況を改善するために、特定技能の外国人労働者の活用が有効であると考えられます。
建設業に関しても、特定技能外国人の受け入れが進んでいますが、依然として手続きが煩雑で費用がかかるという課題があります。しかし、以前に比べるとこれらの手続きや費用の負担は徐々に緩和されつつあり、他の業界と比較しても負担は軽減されています。
介護分野については、特にインドネシアなどの国からの人材供給が進んでおり、今後さらに特定技能外国人の活用が期待されています。
特定技能の外国人労働者は、自動車整備や造船などの分野でも重要な役割を果たしています。特に自動車整備では、若い従業員の離職が多いとのことで、人手不足が深刻です。
行政書士事務所VERDEでは外国人材を繋ぎます
私は行政書士として、特定技能外国人材の受け入れ支援を行っております。
特にベトナムやインドネシアからの人材に強い登録支援団体と提携し、現地の送り出し機関と連携して日本企業へのマッチングを行っています。また、特定技能以外のルートとして、ベトナム、ネパール、スリランカなどからもお声がけをいただいており、現地からの送り出しを支援する形で日本での雇用を仲介しています。企業の環境整備や在留資格取得のサポートも行っています。
特に、コロナで大打撃を受けた外食業や宿泊業については、ネパールからの人材の需要が高まっており、ネパールの方からも日本での就労の希望が寄せられています。個人事業主や法人化していない事業者でも受け入れが可能であり、ファミリーレストランやチェーン店の居酒屋などでも特定技能外国人を受け入れることができます。
インバウンド需要の高まりに伴い、外国人観光客が増加している中で、英語が得意なネパールやスリランカからの人材を活用することも一つの手です。これにより、新たなマーケットの確保に繋がる可能性もあります。
業務の拡大に際し、企業の成長と事業者との連携の中で、特定技能外国人を活用することは非常に良い選択肢の一つであると考えます。特定技能外国人を採用することで、職業の選択に制約があるため転職のリスクがあるとの懸念もありますが、技能実習生の場合、使い捨ての可能性があることを考慮する必要があります。具体的には、技能実習生は3年や5年で帰国する可能性があるため、特定技能外国人を選ぶ方が長期的な視点での安定した運用が可能です。
また、先程も触れたように、特定技能外国人は後継者としても考えられる存在であることから、しっかりとしたポジションと報酬、雇用プランやビジョンを提供することが重要です。人間関係や心意気が必ず伝わるため、そのような配慮をもって外国人材を受け入れることをお勧めします。国籍に関係なく優れた人材を自社に迎え入れる姿勢で取り組んでいただければと思います。
建設業については、手間がかかるという点についてもお話ししましたが、当社には専門的なノウハウがありますので、ぜひご相談いただければと思います。介護業界については、コロナ禍でインドネシア国内や出国待機中の方が長期間待たされているケースがある一方、最短4ヶ月で日本の現場に配属できるスキームもありますので、急ぎの方もご相談ください。
また、特定技能に関するお話をしましたが、在留資格全般についても対応しています。仕事に関するビザだけでなく、国際結婚や永住、家族滞在、日本人配偶者等、国籍変更や在留ビザの変更なども取り扱っています。技能実習や特定技能で外国人を受け入れたい場合にも対応しております。
さらに、登録支援機関の仕事がオーバーフローしているとの声もありますが、そのような支援も可能です。
山本 謙
行政書士
行政書士事務所VERDE(ヴェルデ) 代表
宅地建物取引士 / マンション管理士 / 管理業務主任者 / 1級FP技能士 / 社会福祉主事任用資格 / 保健体育教員免許
2020年10月に横浜市緑区に「行政書士事務所VERDE(ヴェルデ)」を開業。
主たる業務として
申請取次(ビザ申請代行) / 補助金申請支援(事業再構築補助金・ものづくり補助金等) / 法人設立(株式・合同・一般社団法人・NPO) / 許認可、その他文書作成(契約書等)
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