中小企業のM&Aのススメ | Part2 スモールM&Aの必要性

登壇者
弁護士 中小企業診断士 上野 真裕のプロフィール写真

上野 真裕
弁護士 / 中小企業診断士

中野通り法律事務所 弁護士

◆ 弁護士業務
・一般民事事件(各種損害賠償、労働、家事、不動産等)
・債務整理(破産、個人再生、任意整理)、など

◆ 中小企業診断士業務
・事業再構築補助金など各種補助金申請の支援
・事業承継・引継ぎ補助金を活用したスモールM&Aの支援、など

本シリーズは二部制で、上記の動画は「Part.2」です。

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目次

はじめに

「中小企業のM&Aのススメ Part2」として、売り手と買い手、それぞれのスモールM&Aの具体的なニーズについて解説します。

まず質問ですが、「従業員が数名程度の小さな会社でも、今後はM&Aが必要になることがあるのでしょうか?また、その必要があるとして、売り手・買い手それぞれのスモールM&Aの具体的なニーズ(どうしてM&Aが必要なのか)についても教えてください。」

回答の要旨としては、まず従業員が数名程度の小さな会社であっても、売り手・買い手いずれの立場からもM&Aの必要性・ニーズは高まっています。

売り手の具体的なニーズですが、1番大きいのは「従業員の雇用の維持」ということが考えられます。買い手の具体的なニーズとしては、「売上・市場シェアの拡大」、「新事業展開・異業種への参入」、更には「人材の獲得」、「技術・ノウハウの獲得」など、主に事業展開に関するものが大部分を占めています。

スモールM&Aの必要性

まず、中小企業におけるスモールM&Aの必要性についてご説明します。

近年、事業承継の選択肢として、あるいは企業規模拡大や事業多角化の手段として、中小企業においてもM&Aが注目されています。

こうしたスモールM&Aのニーズは、従業員の規模に関わらず、従業員が数名程度の小さな会社であっても異ならないと思います。従って、従業員が数名程度の小さな会社であってもM&Aの必要性は高いと言えます。規模が小さいからといって、M&Aを躊躇する必要はないと思います。

中小PMIガイドライン」という中小企業庁の発行してるガイドラインを見ますと、小規模案件として買い手としては売上高3億円前後ぐらいまで、売り手としては売上高1億円前後ぐらいまで、従業員としては5名ぐらいまでという会社を想定したM&Aに関するガイドラインが出ている通り、この規模感でもM&Aの対象になってくることが前提になっています。

売り手にとってのスモールM&Aの必要性

では、売り手と買い手それぞれにとってのスモールM&Aの必要性は何かを、前回から少し踏み込んでご説明します。

売り手としてのM&Aを検討したきっかけや目的
出典:中小企業庁 中小企業白書

2021年版の中小企業白書では、売り手としてのM&Aを検討したきっかけや目的についてアンケートを取っており、1番大きいのは「従業員の雇用の維持(53.0%)」、さらに「後継者不在(47.9%)」という高い割合を占めてます。

両者は必ずしも別の話ではないため、両者合わさって事業承継に関連したニーズだということが分かります。それが割合としては非常に高いということです。

また、2番目には「事業の成長・発展(48.3%)」という項目も割合が高く、売り手側であっても事業を成長・発展させるために検討していることが分かります。

また、3番目には「後継者不在(49.7%)」があり、この辺りが突出して必要性としては高い割合を占めています。

4番目には「事業や株式売却による利益確保(22.0%)」ということで、エグジットという表現もされますが、事業承継でオーナーの方が引退する時に注目されるところだと思います。

少し毛色の違ったところとしては、「事業の再生(18.6%)」としてM&Aを使うということも検討されています。

更には、「ノンコア事業の売却による事業改革(4.7%)」ということで、不採算部門を切り離すためにM&Aが活用されるケースもあります。恐らく、大企業ですと事業再生であったりノンコア事業の売却という目的が大きいと思いますが、スモールM&Aの特徴としては、従業員の雇用の維持や後継者不在であったり、更には自社事業の成長・発展であったりというところが特徴的だと思います。

売り手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項
出典:中小企業庁 中小企業白書

また、売り手としてM&Aを実施するに至った場合に、どの点を重視するかという確認事項についてアンケート調査の結果があります。

M&Aの目的やきっかけに直結しますが、「従業員の雇用維持(82.7%)」が確認事項としは突出しています。スモールM&Aでは、ほとんどの企業が従業員の雇用維持を重視していることが分かります。また、「会社や事業の更なる発展(47.6%)」も重視する確認事項として高い割合を占めています。

私が相談を受けている会社の実例ですが、従業員数名のシステム開発会社でシステムの開発では実績を積み重ねています。しかし、ご相談を受ける内容としては、「代表者自らもSEとして動いているため管理業務がおろそかになっている」や「案件も代表者自ら営業しなければならず、売上が不安定で一定しない」、更には、「M&Aの話が来ていて、買い取ってくれる会社は売上規模で1,000億円の大きな会社なので、しっかりやってもらえるんじゃないか」という期待の下、M&Aの交渉を進めているケースがあります。

こうした会社・事業の更なる発展の観点を確認事項として、M&Aを進めることも重要な位置付けを占めていることが分かります。

後は、「売却価格(48.9%)」としていくらで売れるかというのは重要なことであり、この辺りも注目されています。また、「取引先との関係維持(32.7%)」、「会社の債務の整理(26.7%)」等、それ以外の部分でも確認事項として上がっており、重要なポイントとなっています。

買い手にとってのスモールM&Aの必要性

次に、買い手にとってのスモールM&Aの必要性についてご説明します。

買い手としてのM&Aを検討したきっかけや目的
出典:中小企業庁 中小企業白書

中小企業白書によると、買い手がM&Aを検討したきっかけや目的は、1番は「売上・市場シアの拡大(73.7%)」で最も高くなっています。次に「新規事業・異業種への参入(49.1%)」が比較的高くなっています。このように、他社の経営資源を活用して、企業規模を拡大したり事業多角化を目指したりすることが、買い手側の主な目的となっています。

また、「人材の獲得(40.3%)」や「技術・ノウハウの獲得(33.1%)」なども上位を占めており、それらをM&Aによって解決しようとする動きも見られます。

後は、「コストの低減・合理化(18.6%)」という点も5番目に上がっており、先ほど述べた中小PMIガイドラインはこの辺りも詳しく記述されています。

例えば、経理や間接業務などは2つの会社が合されば1つで良くなるため、シナジーが発揮しやすいという位置づけになっています。こういった点も、買い手のM&Aの目的としてはあるように思います。

後は、「ブランドの獲得(5.6%)」や「設備・土地の獲得(12.8%)」も数字としては上がってきています。

買い手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項
出典:中小企業庁 中小企業白書

今の点に関連して、M&Aを踏み込んで実施する時にどのあたりを重視するのかを確認すると、やはり1番は「事業の成長性や持続性(61.6%)」が最も高く6割を超えているいます。

次いで、「直近の売上、利益(57.6%)」となっており、事業の成長性や持続性に関連することなので買い手としては確認しています。

後は、「借入等の負債状況(56.0%)」という項目も上がっており、ビジネスが良くてもM&Aで会社を買収した後に負債で事業を圧迫することがないよう、シビアに見ていることが分かります。

また、「経営陣や従業員の人柄や意向(54.3%)」という項目もあり、買ったはいいが全員社員が辞めてしまっては意味がないため、その辺りも注目の高い確認事項になっています 。

「既存事業のシナジー(54.2%)」も考えられれば素晴らしいと思いますが、シナジーまで見越して確認して買収してるという実態があげられています。

まとめ

売り手や買い手、いずれの立場からもスモールM&Aの必要性は高まっており、このことは従業員が数名程度でも変わらないと言えます。

むしろ、小さな会社こそ厳しい事業環境に翻弄されないように、M&Aを経営戦略の1つとして積極的に検討していくことが求められていると思います。


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