数々のヒット商品を開発した経営者に聞く︕︕新商品開発のポイント「自宅でカラオケができる防音装置」編

【執筆者】
株式会社アリア 代表取締役 堀口 直子
社団法人認知症高齢者研究所研究員
一般社団法人日本音楽レ・クリエーション指導協会 理事長

武蔵野音楽大学ピアノ科卒業
4歳でピアノを始める。8歳の時に武蔵野音大に入るという夢を持ち18歳で上京。ポーランド国立クラクフ室内管弦楽団とピアノコンチェルト共演。
第36,37,38回長崎県高校生音楽コンクールにおいて3年連続金賞受賞。
第22回東京国際芸術協会新人演奏会オーディションに合格、同披露演奏会に出演。
大学卒業後、ソロやオペラ歌手のピアノ伴奏者となる。
また、絶対音感を持つピアニストとして幅広いレパートリーを持つ。

<事業内容>
・出張生演奏(音楽家派遣)、講演
・セミナー、イベントの企画、制作
・音楽に関する研究、調査
・音楽小物、文房具の開発、販売

本シリーズは二部制で、上記の動画は「Part.2」です。

▼ シリーズ動画一覧

渡邊社長

前回、「五楽線(ごらくせん)」と「楽譜面ブック(らくふめんぶっく)」の開発秘話をお話ししていただきましたけども、今回は、クラウドファンディングの「Makuake(マクアケ)」にて応援購入金額が約1400万円、サポーターが864名も集まった「ヴォイシーズ」という商品についてのお話をお聞きします。
まず、なぜ「ヴォイシーズ」を開発しようと思ったのですか?

堀口社長

最初のきっかけは、国立音楽大学の合唱の先生であり、音楽仲間の木島タローさんから「商品化を検討したいアイディアがあるんですけどちょっと聞いてもらえませんか?」という相談があったところから始まりました。

渡邊社長

なぜ堀口社長に相談があったのですか?

堀口社長

私が「五楽線」や「楽譜面ブック」などいろんな商品開発をしているので、私であれば商品化を実現してくれるのではないかと思ってくれたようです。
彼は小さい頃からバンドマンで将来は歌手になることを目指していたのですが、ボーカルの声は壁を通り抜けやすいので、家の中で近所から苦情がこないように練習をするのが大変だったそうです。いつも押し入れの布団の中やこたつの中に上半身だけいれて歌うといたとのことです。

渡邊社長

漫画みたいですね?

堀口社長

本当に漫画みたいです。押入れからお尻だけ出して練習していると、とても息苦しいし声の響きもないし、そして何より暑い。だからといって、専用の防音室を借りるとなると、一番安い防音室でも数十万円単位のお金が必要になってくる。バンドマンはそれほどお金に余裕がないので、何とか家で練習ができないだろうかと、ずっと構想していて思いついたのが「ヴォイシーズ」だったそうです。
彼からこの相談があったのが2021年ぐらいだったのですが、ちょうどその頃はコロナ禍で学校やカラオケルームでも飛沫の問題で満足に歌を歌えない状況でした。彼のアイディアを実現すればコロナ禍でも家でカラオケができるようになると思い、それは「音楽をもっと身近に」とか「たくさんの人を音楽で笑顔に元気にする」という私の企業理念にも当てはまるので、では開発を一緒にやりましょうとなったのがきっかけです。

渡邊社長

以前、木島タローさんからはこの商品に関して、自分を顧客ターゲットにして細かいところを追求したと聞いたことがあるのですが、商品化にあたり具体的に誰が、いつ、どういう状況で使うことを想定されて開発を進められたのかお聞かせください。

堀口社長

「誰が」というのは、歌を職業としている人もしくはそれを目指している人が練習する時に使うというのをまず考えました。「どこで」や「どういう状況で」というのは、家とかホテルなど宿泊先での練習に持って行って使うことを想定しました。なので、やはりプロの音楽家向けが一番優先したターゲットで、一般の方が家でカラオケ代わりに使うというのはその次のターゲットとしました。

渡邊社長

開発の時にこだわった機能とか外観デザインとかはありますか?

堀口社長

まずこだわったのは、使っていて呼吸が苦しくならないことです。密閉されないように空気が抜ける構造にして、使用中も呼吸が楽にできるようにするという点にこだわりました。次に重さにはこだわりました。商品が重すぎても練習にならないので、マイクを入れて900何十グラム程度に収まるように軽量化にはとても苦労しました。後は、商品の構造上、音がこもりやすくなるので、音響をとても考えました。開発チームに工学博士の先生が入っているので、どのような商品デザインにしたら音が反響しすぎず、こもりすぎずにいい音として完成されるかというのはとてもこだわりました。

渡邊社長

工学博士の先生とも開発チームを組んで、試作品を作って試行錯誤しながら商品開発を行ったとお聞きしたのですが、その辺のお話を聞かせていただけますか?

堀口社長

開発チームは、私と発案者である木島タローさん、そして工学博士の先生と試作品を作ってくれる専門の会社の方と特許の専門家という5名が基本メンバーでした。試作品は、3Dプリンターで1回あたり30万~40万円ぐらいかけて作りました。試作品を作って修正してまた作ってを繰り返し、最終的には5回ぐらい試作品をつくりました。

渡邊社長

試作品を作る時にどういったことで苦労されましたか?

堀口社長

試作品ができあがってみて初めて気づくことが多いという点です。特に音の響きは形と違って、作った後に実際に歌って確かめてみないと結果がわからないというのがとても苦労した点でした。音が持つ周波数の関係で、商品の一部の大きさや長さを変えるとある一定の音だけが強く鳴ってしまうというようなこともあり、結果的に何回も試作品を作り直す必要がありました。

渡邊社長

開発チームのメンバーである、工学博士の先生や試作品を作ってくれる専門家の方々などはどうやって見つけたのですか?

堀口社長

お二人とも私が起業した後に、人脈づくりの一環で知り合った飲み友達です。

渡邊社長

「ヴォイシーズ」の成功のポイントを販売面、マーケティング面からもお聞きしたいと思います。まず、クラウドファンディングで1400万円もの応援購入につながったポイントは何だと思われますか?

堀口社長

一つのポイントはSNSでの情報発信があると思います。「ヴォイシーズ」の公式アカウントで発案者である木島タローさんが、商品の良いところだけでなく、マイナス面も包み隠さず正直にドンドン投稿してくれました。また、「ヴォイシーズ」でエゴサーチをして、使っていただいている方のつぶやきがあれば、「使っていただいてありがとうございます。ヴォイシーズの開発チームです。どのように使われていますか?何か不便なところはありませんか?」と話しかけるというのを、ほとんど全てのつぶやきに対して行っていきました。

渡邊社長

YouTubeチャンネルも開設して活用されたそうですね?

堀口社長

Twitterでは商品に対する疑問点や不安点を色々と憶測で書き込む方が多くいました。そういった間違った憶測情報が広まらないように、YouTubeチャンネルで具体的に解説する内容の動画を上げて、疑問や不安をつぶやいた方に対してはその動画のアドレスを案内していきました。結果として、対応が誠実だと評価していただくお声をたくさんいただきました。

渡邊社長

商品に対する質問があった時に動画を作って回答するということをしていたんですね?

堀口社長

その動画が少しずつ積み重なって、同じような質問が来た時のQ&Aに流用するなど、今やYouTubeチャンネルの中で財産にもなっています。

渡邊社長

クラウドファンディングの募集ページ自体にも工夫をされていたようですね?

堀口社長

見てもらう人が見やすいページにするということはもちろん、ページへ訪問された方からの書き込みに対しても毎回丁寧に返信をすることをしていました。また、ブログの機能もあるので、商品開発の進み具合を写真つきで頻繁に投稿していました。

渡邊社長

SNSをインタラクティブに活用しながら商品への信頼を勝ち得ていくという、SNS活用のお手本のような取り組みですね。マイナスポイントも含め、ありのままをオープンに伝える方法がお客さまに誠実さを感じさせて、逆に物が売れやすくなるというのは、営業の世界でも良く聞く話です。クラウドファンディングが終わった後も順調に販売台数を伸ばしているとのこと。今日は堀口社長に「ヴォイシーズ」の大ヒットの秘訣についてお話をうかがいました。本日はどうもありがとうございました。

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この記事を書いた人

株式会社アリア 代表取締役 堀口 直子
社団法人認知症高齢者研究所研究員
一般社団法人日本音楽レ・クリエーション指導協会 理事長

武蔵野音楽大学ピアノ科卒業
4歳でピアノを始める。8歳の時に武蔵野音大に入るという夢を持ち18歳で上京。ポーランド国立クラクフ室内管弦楽団とピアノコンチェルト共演。
第36,37,38回長崎県高校生音楽コンクールにおいて3年連続金賞受賞。
第22回東京国際芸術協会新人演奏会オーディションに合格、同披露演奏会に出演。
大学卒業後、ソロやオペラ歌手のピアノ伴奏者となる。
また、絶対音感を持つピアニストとして幅広いレパートリーを持つ。

<事業内容>
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・セミナー、イベントの企画、制作
・音楽に関する研究、調査
・音楽小物、文房具の開発、販売

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