成果を出す展示会営業術| Part2 出展コンセプトと目標設定

登壇者
株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役 中小企業診断士 清永 健一のプロフィール写真

清永 健一
中小企業診断士

株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役 清永 健一

展示会のプロフェッショナルとして、展示会主催者や出展企業などにノウハウを伝える。著書の「飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術」他4冊はいずれもAmazon部門1位を獲得。
展示会の専門家としてNHKラジオ総合第一に出演。
行政、公益法人、金融機関、各地の商工会議所など講演実績多数。


本シリーズは四部制で、上記の動画は「Part.2」です。

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目次


展示会営業コンサルタントの清永健一です。

前回は「なぜ展示会が最強の営業手法なのか」と題して、展示会の有効性についてご説明しました。第2回目の今回は、確実に成果を出す展示会営業術で一番大事な、出展コンセプトや目標設定についてお伝えします。

展示会来場者の目的を考える

展示会に行かれたことがある方も多いと思いますが、会場に行った目的を思い出してください。展示会の来場目的は情報収集ではないでしょうか。これは私見ではなく、いろいろな調査を見ると、「情報収集や業界トレンドの把握」が74.5%と出ています。来場者が情報収集に来るということは、それを迎える出展者がすべきことは情報提供ということになります。

ここで大切なのは、どのような情報を提供するかという事です。情報を伝えるときに重要な質問があります。

自社を一言で説明する

その質問は「あなたの会社は何屋さんですか?」です。一般的には「花を売ってる花屋です」とか、「ネジを作っているネジ製造業です。」又は「コンサルティングをやっているコンサルティング会社です。」と答えるのではないでしょうか。これは扱っているモノやサービスによって自社を定義しています。

モノやサービスによる定義が悪いということではないですが、展示会で大きな成果を出していくという視点で考えると、少しもったいないです。扱うモノやサービスではなく、お客様に提供する価値そのもので自社を何屋さんか定義してください。

チラシ印刷をおこなっている印刷業を例に挙げて説明します。自社で扱っている物はチラシなのでモノを見ているとチラシ屋だと考えると思います。そうすると自社は「チラシを印刷する印刷屋」となります。

視点を変えて、お客様がなぜこのチラシを自社に発注してくれているのかと考えてると、出来上がったチラシを配った時に来る問い合わせ電話や引合いをお客様は求めています。そう考えると、自社は「チラシを印刷することを通してお客様の販売促進を支援している」となります。

このように扱っているモノから発想するのではなく、顧客に提供する価値から発想することが非常に重要です。

人の事はわかるが自分の事はわからない

他人のことだったら分かるのですが、自社のことになると、その商品が好きすぎてスペックを説明したくなるのが人間です。展示会で提供すべき情報は「これは本物の氷なんです。3時間は溶けないです。」というようなスペックではなく、「販売単価を13倍にできます。」というような、この商材をうまく活用した時にどのような成果を出せるかということです。

ここは大切な論点なので、3つ事例をお伝えします。製造業、卸売業、サービス業の事例をご紹介しますので、自社に近い業種でご自身に置き換えてみてください。

1つ目:製造業の事例

岐阜県関市にある機械刃物メーカー、鎌倉時代の刀鍛冶の末裔のエドランド工業さんです、機械要素技術展に出展していた企業です。自社を「切る機械お悩みコンシェルジュ」と位置づけています。刃物を使った工場は多く、刃物の摩耗や、設定変更などの段取替えをする時間がかかり、効率が悪いなどの悩みを抱えています。そこで、当社は、その解決策やや生産性アップの方法を教えるブースを作って人だかりを作りました。

2つ目:卸売業の事例

神奈川県にあるテレコムさんと言う無線機の商社です。モトローラなどを扱っている企業です。危機管理産業展という展示会に出展しましたが、「緊急時連絡アドバイザー」という立ち位置で、災害等で社員の安否確認が必要となった時に、どのような手順で行えば良いかということを伝ることによって、人だかりを作っていました。

3つ目:サービス業の事例

写真の人だかりで集まっているのは、中古車ディーラーの経営者や整備屋さんです。通常は車の色を変えようと思ったら塗り替えますが、当社の商品・サービスは、ラッピングによる塗り替えです。簡単に綺麗に貼れるし、剥がす時も簡単です。「きれいにはがれます」という事を伝えたくなりますが、この会社は「車業界繁盛パートナー」という立ち位置で営業しています。「整備工場がビジネスとして取り入れれば、収益に繋がります。」とブースでは、言っています。中古車ディーラーなら、なかなか売れない車の色を変えてみることで、売れる可能性があるので、ディーラーに儲け方を教えているということです。

1ブース=1アイテム=1ターゲットが大切

展示会は、出展コンセプトが非常に重要です。色々な企業のお手伝いしていると、「せっかく出展するので、うちの商品を全部見てほしい。」とか「建設業から製造業まで色々なお客様がいるけが、全部のお客さんに来てもらいたい。」などと言われる方もいます。また、とにかく展示しよう、並べようと思われる方がいますが、これは間違いです。展示会はたくさんのブースがあるので、来場者は一瞬しか見ません。歩きながら皆さんのブースを見るのは、例えば3mなら2秒弱、6mでも3秒が限界です。その一瞬で何を出展示しているかを把握して「面白そうだ」と思わせなければなりません。よって、コンセプトが非常に重要です。

「このブース謎だ、謎を解き明かす」と思って近寄ってくれるというのは、出展者側の幻想でしかないです。分からないブースはスルーされると思ってください。

私はいつも「1ブース=1アイテム=1ターゲット」にしてくださいとお伝えしております。1アイテムというのは純粋な意味のアイテムでなくても良いです。AというアイテムとBというアイテムを組合わせて、AプラスBで提供する方がターゲットに対して価値が高まるという場合はAプラスBでワンソリューションと読み替えてもらっても良いです。ただ、あれもこれもそれもどれも節操やるのはやめましょう。

出展コンセプトを作ろう

出展コンセプトを作るための「出展コンセプト検討シート」をご説明します。四つの質問に答えていくいうだけで簡単に作成できます。例を使って説明します。

写真はスーパーマーケットトレードショーというスーパーのバイヤーや社長が来場する展示会のあるブースで、展示している商品はバックヤードの棚です。今まではバッグヤードの上にある資材などを取る際に脚立を使って取り出していましたが、脚立の出し入れなど大変だったそうです。それを簡単に上げ下げできる商品として業務用昇降棚を展示しています。

この場合、「1.展示会やオンライン展示会で出会いたい人は?」というと、スーパーの経営者や店舗設計責任者です。出展コンセプト検討シートの4つの枠一番大事なのは、「2.その人が日ごろ心の中でつぶやいている悩みは?」です。ここでの注意点はその人になりきり、自社の商品が解決できないことも含めて挙げることです。意識しないと、例えば一番下に書いてる「脚立を使うと転倒の危険があって、労災になって困るなぁ。」のような、自社の商品が解決できることばかりを挙げてしまいがちです。勿論、それも悩みとしてあるかもしれませんが、スーパーの経営者にとっては、一番優先順位の高い悩みではないはずです。

例えば、人を募集しても集まらないとか、スタッフがすぐ辞めてしまうなどの悩みの方が、優先順位が高いはずです。商品で解決できる悩みだけを上げてしまうと、単なる売込みになってしまいますので、注意しましょう。

次に「3.だったら、当社が(こんな風に)役にたてますよ」を挙げます。脚立を使うことで危険があり、労災になって困るということであれば、それに対しては一番下に脚立を使わなくてよくなり、事故の防止につながります。とありますが、その前段階をよく見てください。

これを使う女性やお年寄りでも働きやすい環境になるので、女性や高齢者が働きたいという希望が増える可能性が高まることで人を募集しやすくなる可能性があります。

次に「4.ほんと?、思うでしょ、裏付けはね・・・」には、役に立てることに対する裏付けを挙げます。「3時間は溶けません」というような機能面でも良いですが、一番良いのは他のお客様で出た成果です。●▲社だとすでに何店舗導入していて、しかも労災の事故がゼロになったというような内容です。

目標設定をする

出展コンセプトを作ったら、次は展示会での目標設定です。展示会出展の最終的な目標は、すべての企業の最終的な目標は売上だと思います。では、中間的な目標はいかがでしょう。A:認知度アップ、B:見込み客の獲得のどちらでしょうか。

絶対に正解があるわけではないですが、消去法的に考えるとB:見込み客の獲得が正解です。A:認知度アップは当然ですが、展示会出展前後で自社の認知度がどの程度上がったかは測れません。測れないものを目標にしても結果が測定できないので意味がありません。よって消去法的にB:見込み客の獲得になるとなります。

受注までのプロセスから目標を数値化する

目標を数値化するポイントにはコツがあります。受注までのプロセスを考えましょう。まずは、自社のブースに惹きつけて話をすることで名刺を獲得できます。来場者の名刺を獲得できたとしても、その場で売れるわけではないので展示会が終わった後、その名刺に対してアポを取ります。商談後、最終的に受注するというのが一連のプロセスです。

それぞれのプロセスごとに、最終的に得たい成果から目標を逆算してください。展示会から3社受注したいと考えたとします。案件化した中からの受注率が20%だとすると、受注目標3件÷20%で必要な案件15件になります。アポを取った中の案件化率が30%だとすると、案件15件÷30%で、約50件必要になります。名刺獲得からのアポ率が16%だと仮にすると、名刺は約300枚必要となります。こうやって目標を作ることが大切です。

このように逆算している企業はほぼありません。あったとしても、去年名刺が何枚集まったらから、今年は何枚というようような決め方ですが、名刺を集めることは途中の段階に過ぎません。名刺だけ集めたいのであれば、ミネラルウォーター等を配れば集まります。しかし、それは、ミネラルウォーターが欲しかった人の名刺でしかなくて、見込み客の名刺ではありません。

ここでよくご質問をいただく事があるので、お伝えします。

・率がわからない

目標の売上はあるが、案件化率などの数値がわからないという企業もいます。通常の商談のパーセントで案件化率などを使えればよいですが、それもわからない方も。その場合は「エイヤ」で一回決めてください。一旦は目標を立ててやってみて、出展した結果の実績が出るので、翌年から実績に応じた正しい現実的な目標設定ができます。こうやって毎年ブラッシュアップしてください。

・受注までのリードタイムが長い

特にBtoBの企業では、商談リードタイムが長く、案件化してから受注するまで10ヶ月間という企業もあります。その場合は10か月追いかけ続けてください。

・結果目標を売上金額にしたい

最終的に目標を売上金額にしたいと言われることもあります。しかし、売上の金額の大小は、こちらではコントロールできないことが多いです。相手が大規模な会社だと金額が大きくなるが、相手が中規模だったらそれなり、小規模だったら、売上も小さいことがあります。自社でコントロールできないことを目標にして、たまたま一発大きい案件に当たって達成したっていうことを繰り返しても意味がありません。

逆に管理しやすい受注件数にしておいて、平均受注額を使って売上目標が300万円で平均受注額が100万円であれば、受注目標は3件と決めてください。

ゲーム化して目標を達成する

KPIを極端に追跡すると、逆に成果が出なくなります。一番わかりやすいのが、名刺獲得300枚を目標とすると、展示会の開催期間が3日間として、1日当たり100枚になります。そのブースに立つスタッフが3人だとすると1人あたり1日34枚となります。展示会が8時間あるとしたら1人1時間あたりで約5枚ということになります。

皆さんが社長だとして。スタッフを集めて「おい、お前らちょっと来い。目標は全員で名刺300枚だから、1時間当たり1人5枚集めろ。分かったか」と言うと、「はい、分かりました。やればいいんでしょ?いつものノルマでしょ。」となります。

イヤイヤ取り組むとノルマになるので成果が出にくくなります。展示会の場合は特にその傾向が強くなります。なぜなら展示会はお祭り、イベントだからです。皆さんが来場者として展示会に行った際に「このブースをきちんと説明してくれるし統制も取れているけど、なんか嫌な感じする。」と感じたことはないでしょうか。統制し過ぎると、ブースにそんなギスギスした雰囲気が出てしまいます。

ではKPI目標値の設定を止めればいいかというと、それも違います。仕事ですので成果出さなければなりません。私は、支援先に「ゲーム化して楽しみながら目標を達成しましょう」と言っています。

ノルマ感を薄めるために、名刺獲得をゲームの得点にするというようなことをしてください。1枚獲得したら1ポイントだが、相手が社長の名刺だったらプラス3ポイントのようなルールを作り、みんなで競争します。ブースに立つ人数が多い場合はチーム戦にすると盛り上がり、目標値に対して意識を持って取り組んでいくことができます。

社内を巻き込む

目標やコンセプトを考えるときには、1人だけで取り組まず、社内の色々な方を巻き込んでください。通常お客様と接する営業部門の方や、引き合いリードを創るマーケティングの方だけではなく、日頃お客様と接しない設計、購買、製造の方なども含めて3人から10人以内の展示会営業プロジェクトチームを作ってください。皆さんでいろいろ考えていくことも展示会で成果を出すコツの一つになります。

次回は展示会当日の行動についてご説明します。


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株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役 清永 健一
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