補助金申請でよくある失敗と対策

執筆者
中小企業診断士 金親正和のプロフィール写真

金親 正和
中小企業診断士

中小企業診断士 / 宅地建物取引士 / 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士 / 管理業務主任者 / 防災士

大学卒業後、総合不動産会社にて不動産の企画・開発、賃貸物件のリーシング・管理(5,000室)、売却(半年間で46物件)と入口から出口までの業務に従事。
現在は、「補助金を通じて、中小企業経営者の皆様を支えたい」という思いから、各種補助金の申請支援に注力している。

\認定支援機関!補助金のプロの中小企業診断士がサポート/

補助金は、事業の成長を後押ししてくれる強力な資金支援制度ですが、「申請すれば必ず採択される」ものではありません。

むしろ、提出書類や申請内容にわずかな不備があるだけで、採択されないという結果となってしまいます。

「要件を満たしていたのに、なぜ落ちたのか?」「同業他社は通っているのに…」といった声を多く聞きます。

実際に支援した補助金申請において、私も不採択という結果を目の当たりにして、「どうして?どこがダメなのか?」と事務局に問い合わせたい気持ちで一杯でした。

補助金申請は、「不採択」という結果だけ通知されますので、なぜ不採択だったのかという理由がわからないのです。

ですので、次回の補助金申請に備えて、万全な対策を講じることができません。

しかしながら、不採択となった背景には、審査項目の正しい理解不足や、事業計画書の記載内容と補助金の趣旨とのズレなど、避けられるはずの“申請の失敗”が潜んでいます。

本記事では、中小企業診断士や支援者の立場から、補助金申請でよく見られる典型的な失敗パターンと、それを回避するための具体的な対策を、実例を交えながら解説していきます。

採択の確率を高めるために、ぜひ確認しておきたい“落とし穴”と“成功のポイント”を押さえていきましょう。

目次

はじめに:なぜ補助金申請は失敗しやすいのか

補助金は、中小企業や小規模事業者にとって非常に魅力的な制度ですが、実際には「申請したけれど不採択だった」というケースが数多く見られます。

なぜ補助金申請は失敗しやすいのでしょうか。その主な理由は、以下の3点に集約されます。

競争倍率の高さ

補助金は予算に限りがあるため、すべての申請が採択されるわけではありません。特に人気の高い補助金では、申請数が想定を上回り、採択率が30~50%を下回ることもあります。そのため、いかに制度趣旨に合致し、他の申請よりも説得力のある事業計画を提出できるかが鍵になります。

ちなみに、ものづくり補助金の採択率は以下のとおりです。

開催会採択発表日申請者数採択者数採択率
第1回令和2年4月28日2,2871,42962.5%
第2回令和2年6月30日5,7213,26757.1%
第3回令和2年9月25日6,9232,63738.1%
第4回令和3年2月18日10,3123,17830.8%
第5回令和3年3月31日5,2992,33744.1%
第6回令和3年6月29日4,9802,36247.4%
第7回令和3年9月27日5,5072,76850.3%
第8回令和4年1月12日4,6532,78059.7%
第9回令和4年3月25日3,6132,24762.2%
第10回令和4年7月15日4,2942,61260.8%
第11回令和4年10月20日4,7442,81759.4%
第12回令和4年12月16日3,2561,90758.6%
第13回令和5年2月20日3,3221,92758.0%
第14回令和5年6月23日4,8652,47050.8%
第15回令和5年9月29日5,6942,86150.2%
第16回令和6年1月19日5,6082,73848.8%
第17回令和6年5月20日62918529.4%
第18回令和6年6月25日5,7772,07035.8%
出所:採択結果|ものづくり補助事業公式ホームページ 

ルール・公募要件の複雑さ

補助金制度は多様で、それぞれに異なる申請要件・対象経費・実施スケジュールがあります。

さらに、公募要領には細かなルールや注意事項が多数記載されており、1つでも条件を満たしていなければ失格となる場合があります。

申請様式の記載項目も多岐にわたり、表面的な理解では対応できませんので、公募要領を何度も何度も読み返して、間違いがないようにしています。

よって、公募要領は必ず印刷するようにしています。特に重要であったり、経営者の皆様に注意してもらいたい部分には、ラインマーカーをしたうえで、ポストイット(付箋)を貼り付けておきます。

経営者が本業で多忙、準備不足

中小企業や小規模事業者では、経営者が営業・経理・製造など複数業務を兼任しており、補助金申請に十分な時間を確保することが困難です。

その結果、書類の作成や事業計画の練り込みが不十分となり、申請の質が下がってしまうことがよくあります。

補助金申請は、GビズIDプライムというシステムから必要事項を入力し、必要書類を添付(アップロード)しますが、多忙かつ準備不足となると、締切日までに電子申請を完了することができないという事態に陥ります。

これらの要因が重なることで、補助金申請は想像以上にハードルの高いものとなっており、入念な準備と正確な対応が求められます。次項では、具体的にどのような失敗パターンがあるのかを見ていきましょう。

補助金申請時の失敗事例5選

失敗例① 書類不備・提出ミス

補助金申請において最も基本的かつ致命的なミスの一つが、書類の不備や提出ミスです。

補助金の審査においては、形式審査が一番最初に行われますが、公募要領で明記された提出書類がすべて揃っていない場合は、苦労して考え記載した事業計画が読まれることはなく、この段階で一発アウトになります。

記入漏れや誤字脱字は、たとえ軽微であっても、審査側にとっては「計画の信頼性」に疑問を抱かせる要因となります。

例えば、書類の不備については、履歴事項全部証明書や納税証明書、事業計画書の様式不備などが該当します。

これらの対策として、申請チェックリストの活用や第三者(支援機関・中小企業診断士)による事前確認が有効です。

失敗例② 公募要件の誤解・対象外事業

申請する補助金が「どのような目的で設定されているか」という理解が不足していると、そもそも補助対象とならない事業で申請してしまうケースがあります。

例えば、小規模事業者持続化補助金では「販路開拓」や「業務効率化」が目的とされていますが、申請内容が単なる設備の更新や修繕だった場合、対象外となる恐れがあります。

また、対象経費の誤認もよくあるミスです。

例えば、従業員の人件費、日常的な消耗品、税金・社会保険料などは補助対象外であるにもかかわらず、これらを経費として申請に含めてしまうと、減額または不採択の要因になります。

東京都が行っている「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」では最大2億円の助成額となっており、この補助金に申請したことがありますが、不採択の経験があります。
参考:「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」チラシ

再度、チャレンジしようと公募要領を読み込み、事務局にも確認したところ、親会社で設備投資して、子会社が委託をもらって運営する場合は、社長が一緒でも別法人のためNGということでした。

これらの失敗を防ぐには、公募要領を何度も何度も丁寧に読み込み、不明点は必ず事務局や中小企業診断士などの支援専門家に確認することが鉄則です。

「補助対象者かどうか」「対象事業かどうか」「対象経費かどうか」の線引きは、主観ではなく制度趣旨に基づいた判断が必要です。

失敗例③ スケジュール管理の失敗

補助金申請において、想定以上に多く見られるのが「準備時間の見積もり不足による申請遅延」です。

中小企業や小規模事業者の場合、本業が多忙な中で補助金申請の準備を進める必要があるため、十分な時間を確保できずに内容が薄いまま提出するケースが多くあります。さらに、提出期限の日時(17:00〆切が多い)を「日付のみ」で覚えていたために、〆切時間を過ぎて提出無効となったケースも散見されます。

例えば、小規模事業者持続化補助金においては、商工会議所へ事前にアポイントを取ったうえで訪問し、商工会議所から「様式4」小規模事業者持続化補助金に係る事業支援計画書を作成してもらい、交付を受ける必要があります。

このアポイントを取るタイミングは非常に重要です。事業計画書をシステム入力したうえで印刷して持参しなければならないため、この段階で内容が確定していないといけません。

締切間近になると、商工会議所の担当者に時間が無く、アポイントが取れずに商工会議所から「様式4」小規模事業者持続化補助金に係る事業支援計画書を受領できずに申請ができないという事態に陥ります。

申請書類の作成には、経営戦略の整理、必要書類の収集、数値計画の作成、社内確認、電子申請のリハーサル等、多くの工程が含まれています。

これらを数日で完成させることは極めて困難であり、結果として「駆け込み申請」で計画の完成度が低下し、不採択のリスクが高まります。

スケジュール管理の対策としては、逆算スケジュールの作成と、最低でも3週間以上前からの着手が推奨されます。また、提出締切日よりも2〜3営業日前には電子申請が完了するように逆算したスケジュール管理を徹底することが肝要です。

スケジュール管理においても、中小企業診断士などの外部支援者との連携を行い、プロジェクト管理を依頼するということも有効な手段です。

失敗例④ 予算計画の甘さ

補助金申請における予算計画は、単なる数字の記載ではなく、「実行可能性と妥当性」が問われる審査項目です。

見積もりが極端に安価すぎたり、逆に実現性のない高額すぎる申請額になっていたりする場合、計画の信憑性を損なう結果となります。

また、見積書の提出が求められる場合には、業者とのやり取りや比較検討の痕跡が求められる場合もあります。見積りの裏付けが弱ければ、審査側から「本当に発注予定があるのか」と疑われ、審査評価に影響します。

特に注意すべきは、根拠のない売上予測や、必要性の説明が不足した経費項目です。「どのようなアクションをしていくら売り上げるのか」「なぜこの経費が必要なのか」「どのように費用対効果があるのか」を明確に記載することが求められます。予算計画は、「ロジックとエビデンス」が揃って初めて説得力が生まれます。

失敗例⑤ 事業計画の内容不足

補助金は「単なる費用補填」ではなく、「持続的な事業成長を支援する投資」です。特に最近は、「賃上げ」を目的とした補助金が多くなっています。

そのため、事業計画の内容が具体性に欠ける場合や、成長可能性が読み取れない場合は、採択されにくくなります。

よくある失敗としては、「やりたいこと」が書かれているだけで、「なぜ今その事業に取り組むのか」「どう実現するのか」が説明されていない計画書です。

特に、経営課題や自社の強み・機会(SWOT分析)について記述が浅いと、審査員にとって「説得力のあるビジョン」を感じにくくなります。

また、KPI(重要業績評価指標)や売上目標、利益計画などの数値目標が現実的かつ検証可能でなければ、計画の実行可能性が疑問視されます。

事業計画では、「戦略性」と「実行性」を両立させた論理構成が不可欠です。

なお、審査員は1件の審査に時間をかけません。一度見て、読んで理解し、納得のできる内容か否かという視点で審査をしていますので、大前提として「読みやすさ」が求められます。

よって、申請前には、第三者に読んでもらい、「この計画は本当に現実的か?」「納得できる説明になっているか?」といった視点からのフィードバックを得ることが重要です。

対策まとめ:失敗を防ぐための準備・プロ活用の重要性

補助金申請で採択されるためには、単に「やりたいことを書く」だけでは不十分です。まず重要なのは、公募要領を丁寧に読み込み、補助対象や要件、スケジュールなどを正しく理解することです。

加えて、記載漏れ・添付書類の不備を防ぐために、提出前にチェックリストを活用することも効果的です。

しかし、それでも見落としが発生したり、自社だけでは判断が難しい点も多くあります。そうした場面で頼れるのが、補助金申請のプロである中小企業診断士や認定支援機関の存在です。

制度趣旨に沿った計画づくりから、審査で評価されやすい表現の整備、全体構成の最適化まで、専門家が伴走することで採択率は格段に高まります。

「きちんと準備したい」「一発で通したい」と思うなら、ぜひ補助金支援の実績とノウハウを持つ専門家への相談をご検討ください。

書類の精度が、結果を左右します。

【無料診断のご案内】失敗ゼロの補助金申請へ

補助金申請は、ほんの些細なミスや見落としで不採択となることが多く、申請に慣れていない方にとっては大きなハードルとなりがちです。
そこで当社では、補助金申請のプロが“失敗しないためのポイント”を丁寧に診断・アドバイスする【無料相談】サービスを実施しています。

「自社が申請要件に当てはまるのか知りたい」「どんな書類が必要か不安」「一発で採択を目指したい」という方は、ぜひ下記ページよりお気軽にご相談ください。

\認定支援機関!補助金のプロの中小企業診断士がサポート/

執筆者

1978年 千葉県生まれ

中小企業診断士
宅地建物取引士 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士 管理業務主任者 防災士

大学卒業後、総合不動産会社にて不動産の企画・開発、
賃貸物件のリーシング・管理(5,000室)、売却(半年間で46物件)
と入口から出口までの業務に従事。

現在は、補助金を通じて、中小企業経営者の皆様を支えたい
という思いから、各種補助金の申請支援に注力している。

目次