観光地・観光産業における人材不足対策事業とは?

吉川 和明
中小企業診断士
大手製造機器メーカーにて、流通小売業向けPOSシステム、および決済システムの開発に従事。本業と中小企業診断士の二刀流で、商工会議所の経営相談員や補助金申請支援などの活動を実施中。
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観光地・観光産業における人材不足対策事業とは?
a. 観光地・観光産業における人材不足対策事業の概要
インバウンドをはじめとする観光客数の増加に伴い、国内における観光需要が急速に回復する一方で、観光客の受け皿となる宿泊業における人手不足が顕著となっています。そのため、今後更なる増加が見込まれる観光需要を着実に取り込み、旅行者数・旅行消費額等を増加させ、観光立国を実現することが求められています。
この事業は、受け皿となる宿泊業の人手不足の解消に資する設備投資に対して、費用負担を軽減するため当該経費の一部を支援することにより、サービス水準の向上・賃上げを達成することを目的とします。
b. 補助対象となる取り組み
補助対象となる取り組み(製品開発/設備導入など)の概要は以下の通りです。
対象業務 | 概要 |
フロント業務 | 自動チェックイン機・無人化のための機械導入など |
予約・デスク業務 | 予約管理システムの導入、AI機器・設備の設置など |
清掃業務 | 清掃ロボット等の導入、効率化を図るための設備など |
食事の準備・配膳 | 献立管理システムの導入、配膳ロボットの購入など |
その他バックサポート業務 | シフト管理システムの導入、インカム導入など |
補助金の対象となる事業者
補助対象事業者は「宿泊事業者」であり、その定義は以下の通りです。
①旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条第1項に規定する許可を受けた者とします。ただし、風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営む者、また、住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第3条第1項に規定する住宅宿泊事業を営む者は補助対象事業者となりません。 |
②補助事業を実施する宿泊施設の所有者と運営者が異なる場合においては、宿泊事業者でない者も、当該宿泊施設を所有または運営する宿泊事業者と運営委託関係または賃貸借関係等にある場合に限って、補助対象事業者になり得ます。ただし、補助事業を実施する宿泊施設の所有者または運営者のどらかが旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条第1項に規定する許可を受けていることが必要です。 |
補助金の上限金額と補助率(2025年度版)
a. 補助上限額と補助率
宿泊施設において実施する人手不足の解消に資するシステム、設備および備品の購入、導入および設置に要する経費について、補助率2分の1を補助額上限500万円の範囲で支援します。
条件 | 補助上限額・補助率 |
1事業者(法人・個人)あたり3施設を上限に右記のとおり補助する | 補助上限額=1施設あたり500万円補助率=1/2 |
b. 補助対象/対象外の経費
①経費として認められるもの
区分 | 経費 | 備考 |
A | 宿泊施設における、下記のシステム、設備および備品の購入、導入および設置に要する経費(システム、設備および備品の購入、導入および設置に附随する経費を含む)【フロント業務の例】自動チェックイン機、スマートロック・カードロック、翻訳・通訳システム、電子宿帳システム、POS・キャッシュレス決済端末など【予約・デスク業務の例】ホテル管理システム、宿泊予約システム、チャットボット、SMS送信サービス、会計ソフトなど【清掃業務】清掃ロボット、床洗浄機、オゾン脱臭機など【バックサポート業務】インカム・無線通信機、監視カメラ、温度管理システム、労務管理・在庫管理システムなど【食事の準備・配膳】スチームコンベクションオーブン、オーダーシステム、冷凍庫、真空包装機、配膳ロボットなど | 事業計画に申請理由の記入は不要 |
B | A以外で、宿泊施設において実施する人手不足の解消に資するシステム、設備および備品の購入、導入および設置に要する経費(システム、設備および備品の購入、導入および設置に附随する経費を含む)宿泊施設の運営に必要不可欠である人手不足の解消に資する設備・備品に限る。 | 事業計画に申請理由の記入が必要 |
②経費として認められないもの
・「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」の製品カタログ(令和7年3月10日時点)に記載されているシステム、設備および備品の購入、導入および設置に要する経費(「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」の補助対象者の要件を満たす中小企業等が補助事業者となる場合)・補助事業に直接関係のない経費・故障、老朽化した設備および備品の単なる更新に要する経費・交付決定前に発生した経費・事業者における経常的な経費(光熱水費、通信料、仲介手数料、保証金等)・躯体の新設工事費(導入および設置に附随する必要最低限な工事費は補助対象経費に含む)・補助事業における資金調達に必要となった利子・法令または条例等において義務化されている設備等の新規導入に係る工事費・同一事業の経費において、国(独立行政法人含む)から別途補助金が支給されている場合・恒久的な施設の設置、用地取得等、補助事業の範囲に含まれ得ない経費• 中古設備の購入費・自動等の車体購入費(宿泊施設において省人化のために特に効果が期待される車体の購入は補助対象経費に含む)・主に施設敷地外での利用が想定されるシステム、設備および備品の購入、導入および設置に要する経費・ウェブサイトの構築および改修に要する経費(システムの導入に伴って要する改修に係る費用は補助対象経費に含む)・汎用性が高く、一般使用が見込まれる物品(例:事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォンおよびデジタル複合機等)の購入費(補助事業で導入するシステムおよび設備等の利用にあたって必要不可欠とされる物品購入費は補助対象経費に含む)・食器および衣類等の消耗品の購入費・導入により新たな収入が見込まれる設備の購入費・外部への業務委託等に要する経費(システム等の導入・運用に付随する必要最小限の役務提供で、システム利用料と不可分であるものは補助対象経費に含む)・物品のレンタル、リース料(システム等の導入・運用に付随する必要最小限の物品で、システム利用料と不可分であるものは補助対象経費に含む)・振込手数料および収入印紙等の設備購入に要する手数料等 |
申請スケジュールと公募要領
a. 公募開始〜採択〜交付申請までの流れ
(出典:観光地・観光産業における人材不足対策事業説明会資料より抜粋)
b. 公募期間および計画申請
計画申請受付期間は以下の通りです。
公募 | 受付期間 |
一次公募 | ・計画申請受付開始:令和7年3月24日(月)13:00・参加申込締め切り:令和7年5月23日(金)17:00・計画申請受付締切:令和7年5月30日(金)17:00 |
計画申請方法については、以下の特設Webサイトから参加申込の後、事務局からメールで送られてくる案内に従って、計画申請フォームから申請を行います。
特設WebサイトURL | 観光地・観光産業における人材不足対策事業事務局https://www.kanko-jinzai.go.jp |
採択される事業計画書のポイント
a. 審査基準の解説(採択に当たって優先すること)
①宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインに基づく登録制度(高付加価値経営旅館等登録規程(令和5年観光庁告示第3号))において、「高付加価値経営旅館等」の登録を受けた方、または同制度の登録申請をされた方を優先します。
②①に該当する事業者のなかでも、下記【資料A】または【資料B】のどちらかを提出する方を優先します。
資料 | 概要 |
【資料A】宿泊施設の損益管理実態が分かる資料(令和6年4月1日から令和7年5月30日までの期間内の1カ月分) | 売上と費用の月次(週次)目標を設定し、当月実績と比較して、達成度合いを管理している資料を提出してください。なお、売上と費用の実績を管理していることが分かる資料の提出で代用可とします。 |
【資料B】集客促進を目的とした顧客情報の管理や統計分析等を実施していることが分かる資料(令和6年4月1日から令和7年5月30日までの期間内の1カ月分以上) | 公式HPや公式SNSのインサイトにて閲覧数等の統計を管理している資料を提出してください。なお、マーケティング戦略を構築する際に利活用する顧客属性(アンケートや予約情報から集計した情報)をExcelやPMS上で集計・グラフ化していることが分かる資料の提出で代用可とします。 |
b. 採択方法
早く申請をした事業者から先に審査し、採択する事業者を選定します。
なお、必要に応じて、申請者等に対してヒアリング等を実施する場合があります。
優先順位 | 資料Aまたは資料Bの提出 | 高付加価値経営旅館等登録済または申請中 | 準高付加価値経営旅館等登録済または申請中 | 有価証券報告書を提出し、観光施設における心のバリアフリー認定制度の認定を取得済または取得予定 |
1 | ◯ | ◯ | ― | ― |
2 | ― | ◯ | ― | ― |
3 | ― | ― | ◯ | ― |
― | ― | ― | ◯ |
まとめ
観光地・観光産業における人材不足対策事業について解説しました。
自社が補助金受給の対象か否かを判断するには、補助金の「公募要領」を読み解く必要があります。しかしながら「公募要領」は記述内容も多く、仮に自社が事業者として対象であっても、設備投資内容が補助対象外となるケースも見受けられます。また、補助金の申請や交付申請の手続きも複雑なため、専門的な知識と経験が必要です。
自社が補助金受給の対象となるか迷ったら、専門家に相談することをお勧めします。
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