成果を出す展示会営業術 | Part4 展示会後のフォロー
清永 健一
中小企業診断士
株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役 清永 健一
展示会のプロフェッショナルとして、展示会主催者や出展企業などにノウハウを伝える。著書の「飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術」他4冊はいずれもAmazon部門1位を獲得。
展示会の専門家としてNHKラジオ総合第一に出演。
行政、公益法人、金融機関、各地の商工会議所など講演実績多数。
本シリーズは四部制で、上記の動画は「Part.4」です。
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アポ率30%はもったいない
展示会営業コンサルタントの清永健一です。今回は、展示会後のフォローについてお伝えします。展示会場では、その場で売れる事はなかなかありません。BtoB商売で相手が決定権者だったとしてもその場では売れることは無く、その後のフォローが成否を決定づけます。
そこで考えたいのが展示会で獲得した名刺の有効活用です。3日間の展示会だと有効名刺が300枚くらいは集まると思います。わかりやすいように100枚とすると、その後のフォローで「お会いしましょう、具体的にお話ししましょう」とアポが取れる数は商材や相手の属性にもよりますが、何も工夫しないと30件以上にはなりません。面談が30件だとしたら受注は当然30件以下にしかなりません。非常にもったいないです。
相手の困りごとを解決するブースを作る
では、どうすれば良いか考えましょう。私がお手伝いをした東海地区の清掃業の例を使ってご説明します。この会社は今まではビルや飲食店の清掃をやっていました。新しい客層に拡販したいと思って考えたのが介護施設でした。出展コンセプト検討シートを使って考えると一番目の出会いたい相手は介護施設の経営者や施設長です。
その人が日頃心の中でつぶやいてる内容を考えると、一番は、採用できないことや、退職、スタッフの同士の仲が悪いなどスタッフに関する悩みではないでしょうか。他には国が急に監査に来たら困るということもあるかもしれません。更には入居者の募集がうまく行かないということも考えられます。しかし、これらは全部掃除屋さんには解決しにくい悩みです。他に無いかといろいろ考えたら一つありました。
ノロウイルスが急に発生すると困るということです。これはコロナ前の2016年の話なので、ノロウイルスが発生したら困るという悩みに対して作ったのがこのブースです。ノロ・インフルの院内感染阻止だと、相手にズバリ合います。
この人は同一人物か?
相手の困りごとにリーチしてキャッチコピーを入れたブースを作ると、たくさんの人が来ました。人が来るとどうなるかというと、来場者は普段はなかなか立ち止まらないくせに一回立ち止まって話し出すと、調子が良くなります。「興味あります。ウチは前からノロウイルスに困っていたんです、しかも安いですね。多分お願いすると思います。私の名刺渡しておきますので、後で連絡してください。」と言ったりします。こちらは「よっしゃ」と思います。
しかし、翌日電話すると、同一人物とは思えないように、雰囲気が全く違います。「誰ですか?今会議中なので、切りますね。」と切られて、二度とアポが取れないという事が多いです。
対応策は来場特典
これにどう対応するかというと、「来場特典限定80施設ウイルスチェック無料診断」というような特典をつけます。この例の場合だと、「ウイルスチェック診断を実施しています。このチェック診断は、特殊な空気環境測定器を当社スタッフがお持ちして水回りや集会所、個室などのチェックをさせていただいて、どの程度ノロウイルスが発生する危険性がありそうかの診断をさせていただくサービスです。
特殊な測定器を使って、作業員が動きますので普通なら最低でも3万円程度は頂きたいですが、ブースでお会いした方については限定80施設限定で無料にて対応させていただきます。かなりお得なので先ほどからほとんど方がエントリーされていますが、まだ少しだけ枠が残っています。どうされますか?」と言ってエントリーをしていただきます。これだけで全然結果が変わります。
エントリーしていただいたら「うちの係の者からいつチェックにお伺いするかメールで日程調整の連絡をしますね。」と付け加えると必ずアポが取れてお話ができます。ちなみにこのブースは3日間でウイルスチェック診断のエントリーが137件ありました。137件のエントリーがあって、ウイルスチェック診断に行ったのが137件です。
相手がやってくれといっているので、当然の結果です。137件の内、清掃の受注をしたのは76件です。76件の中にはスポット清掃もありますが、良い数字だと思います。これが特典の部分も無しでやったらこうは行かなかったと思います。
普段やっていることを特典にする
難しいことを考える必要は全くありません。何か特別なことをわざわざお金をかけて自社の持ち出しでやる必要もありません。初めてお客さんの所に行ったときに必ず見る所や聞く事があると思います。それを単純にやるだけです。
営業上どうせやることをするだけです。掃除屋さんだったら、清掃計画立てようと思ったら、上記の事を測定しないと計画を立てられないので、どうせやる事を少し先にやっているだけだと思ってください。
展示会出展をさまざまな媒体を使って告知する
展示会に出展する事が決まったら、見込み客や休眠客、停滞客に対して招待メールを送ってください。
コロナになって営業が止まってしまい、なかなか連絡できていないような顧客はちょうどいい機会です。「展示会に出ているので、良かったら寄ってくださいねと。」と連絡を入れます。来なかったとしても、もう一度接触できるチャンスなので、必ずメールなどで送ってください。
送る時にもポイントがあります。「展示会に出展するので来てください。」と言うだけではあまり効果的ではないです。限定特典企画を作って、それをご紹介するというタイトルにしてください。タイトルを「限定特典のご案内(●●展示会の出展について)」として、自社のブースの説明する前に、展示会自体が素晴らしいので、来場するとメリットがあると言うと、お客さん目線な感じがします。その後で、当社のブースでこういうウイルスチェック診断を限定80社でやらせていただきますと書いてお送りすると効果があります。
メール文面と全く同じで良いので、出展する事をWEBサイトにも載せてください。SNSも活用しましょう。SNSも同じような内容で良いですが、もう少しカジュアルにしてください。
当日も大事です。当日も「●●EXPO当日一日目こんなに人来てくれてます。」と、当日盛り上がってるってことを伝えてください。そうすると他のお客さんにもプラスになるし来るかは別として「人気があるんだな」ということをアピールできます。
フォローメールでありがちな間違い
展示会後のお礼も非常に重要です。展示会のお礼メールは、残念なメールが多いです。Google検索で「展示会お礼メール」と検索した時に一番上に出て来る文例をそのまま使って「先日の展示会、ありがとうございました。当日はうちのスタッフの説明が不足している部分もあり、大変申し訳ございませんでした。」の書き出しでいきなり謝ってくるものが多いです。
そんなやり方ではなく、先ほどの特別企画を追加でゲットできるような内容にしましょう。「当日非常に人気があって残念ながら制限を超えてしまい、お断りした方もおられました。皆さんに喜んでいただけているので、特別に10社追加できます。よかったらどうぞ。」というような文言にすると、既に申し込んでる人は「良かった」ですし、まだの人は、「ではやってみようか。」と思ってくれます。
展示会の専用チラシを作ろうとされる方がおられます。これ自体は悪くはないですが、チラシは捨てられます。展示会場のゴミ箱は大きいのでまとめて捨てられます。せっかく作るのであれば、展示会専用の名刺を作ると良いと思います。名刺には今までに説明した以下の事を全部組み込んでください。
展示会専用名刺に含める内容
・ブースキャッチコピー
・特典企画
・商品の開発ストーリー
・お客様の声
こういうものを載せていって、名刺として二つ折りになっているイメージです。 名刺として渡してしまうと捨てられにくいです。
長期的な視点に立って考える
今までお伝えしたことがしっかりできれば、短期的には良いですが、せっかく展示会に出るので、それ以上のことをしてください。展示会はきっかけに過ぎません。今まで全く接点が無かったお客様に対して、展示会というキッカケを通して名刺をゲットできます。
名刺をゲットしたお客様に対して、ウイルスチェック診断のような特典企画を使うことによって、購入の検討を促して買っていただく。これをやると短期的な売上につながりますが、どうしても購入のタイミングは今ではないという「そのうち客」と呼ばれるお客様は必ずいます。
今が購入タイミングではないお客様にプッシュすると「わかった。今検討するから、その代わりどれだけ安くなるのか。」となります。今買ってもらうための値引きをするのはもったいないです。このような「そのうち客」は興味を維持させて相手のタイミングがきた時に検討していただいて買っていただくという流れもあらかじめ作っておきましょう。
忘れられないようにするために色々なやり方あります。昔ながらのルート営業のように、定期的に訪問して「何か用事ないですか」とやると手間がかかります。手紙を書いて送るのも、たまには良いですが手間がかかり過ぎます。情報提供のメルマガを送るのが一番だと思います。
メルマガを送るときの内容も売り込みメールではなくて、「あなたの役に立つ情報を提供します。」というスタンスでお送りしてください。定期的、継続的に情報提供することで将来の見込み客にします。そして一年後展示会に出展する事になったら、その展示会の招待メールをメルマガとして送れば良いです。そのようにぐるぐる循環させてください。
名刺データは電子化する
名刺情報は電子データ化してください。中小企業がメールを送るためのお客様情報の電子データ化率を調査してみました。全く顧客情報を共有してないという企業が43.2%、ほぼ共有しないが17.7%で約6割の企業がおそらく名刺は営業マンの引き出しの中にあると思います。展示会出展をきっかけとして、全部の名刺を一旦集めてデータ化するというところから是非始めてください。
便利なものがあります。昔だったら名刺データの入力で打ち間違いなどがありましたが、最近は便利なアプリがあります。有名なものだとEightですが、Excelに吐き出すのが有料になるので、まだ使ってないのであれば、myBridgeを使うと全部無料でできます。
こういうものを使いながら、継続的なそのうち客に近くに対してもアプローチをしていただきたいです。展示会で集めた名刺が1枚も無駄にならない状況にしていってください。
終わりに
4回に渡って展示会で成果を出す秘訣をお伝えしましたが、単に展示に出展するだけではなかなか成果は出ませんが、きちんと考えると非常に大きな効果が出ます。是非今までの説明もお読みいただきたいと思います。
展示会で売上を上げる事はもちろんですが、それ以外にも色々な効果があります。例えば、以前お伝えしましたが、多くの会社ではセクショナリズムがあります。展示会のプロジェクトチームを作り、そのチームで考えていくと、「学園祭効果」と呼んでいますが、期間も決まっているイベントでチームが協力してセクショナリズムがなくなるきっかけになることもあります。
ブースキャッチコピーをしっかり作り、特典企画をしっかり作って行くと、今まではお願いして買ってもらっていたのが、相手から買いに来てくれることもあります。そういう副次的な効果も狙ってください。展示会出展と後フォローをきちんと進めると、下手な営業研修を受けるよりも社員さんのスキルが上がるという側面もあります。そういうこと全部含めて、「展示会営業ノウハウ」という言っていますが、これまでの四回の説明がみなさんのお役に立ち、展示会を通して皆さんの業績が大きく向上して行くと言うことを心から願っております。
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