10ヶ月連続トップセールスが徹底解説!営業のコツ | Part3 提案編
川崎 朋子
中小企業診断士
大学卒業後、外資系製薬会社にて医療用医薬品の営業に従事。育児短時間勤務制度を利用し1日5時間の営業時間でトップ営業成績を達成。最優秀営業所賞受賞、マーケティングリサーチカード全国1位、抗菌薬キャンペーン5年連続達成他実績あり。
中小企業診断士・経営コンサルタントとして独立後は、支援企業を半年で黒字化させるなど実績多数。売上・利益向上を狙う経営者に対しコンサルティング・セミナー講師として一都三県を中心に奔走。現在は北海道から九州まで支援地域を広げている。
本シリーズは三部制で、上記の動画は「Part3」です。
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はじめに
こんにちは。本日は「営業力強化のコツ」シリーズのパート3についてお話しします。
これまでにパート1とパート2もお話ししていますので、まだご覧になっていない方は、ぜひそちらもご確認ください。パート1では「ターゲティング編」、パート2では「ヒアリング編」についてお話ししました。今回はパート3として「提案編」についてお話しさせていただきます。
パート1では、ターゲットとなる方をどのように選定するか、つまり、狙いをどこに定めるのかというお話をしました。続いてパート2の「ヒアリング編」では、売り込むのではなく、お客様の話をしっかり聞きましょうという内容でした。そして、今回のパート3では「提案編」となります。
提案のイメージ
実際に優先順位が高いターゲットに対して、ヒアリングを通じて得られた様々な情報から、お客様がどのようなことに関心を持ち、どのようなポテンシャルがあるのかを把握しました。そこで次に、こちらから具体的な提案をしていきます。例えば「当社の商品を使ってみませんか?」や「一度お試しいただけませんか?」といった形でお伝えするのが、この「提案編」です。
私はさまざまな企業で営業の支援をさせていただいているのですが、意外とこの「提案」の部分がイメージしづらい、うまく伝わっていないということがあるのです。それが何かと申しますと、「提案のイメージ」です。
多くの方は、営業員である自分と、見込み客であるお客様が異なる立場にいると考えがちです。もちろん、それはその通りですが、私が心がけていたのは、「お客様と肩を組んで、同じ目標を見て走る」ということです。
実際に私が医師の方々との営業でうまくいったのは、まさにこの考え方でした。一緒に「こういった患者さんの問題を少しでも改善したいですね」や「このお薬を使ってQOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)を向上させませんか」といった具合に、目標を共有することでした。医師の方々にとっては、患者さんの症状が改善することが最も重要であり、私たちはそのサポート役として共に歩んでいるのです。
提案する際には、「私は営業員、あなたは未来のお客様」ではなく、「お客様が将来こうなりたいとお考えではないでしょうか?当社の商品がお役に立てると思います。共にその未来を実現していきませんか?」という姿勢でアプローチします。このように、同じ未来を見据え、パートナーシップを築くことが、提案をスムーズに進める鍵となります。
この「未来を共有する姿勢」を意識することで、提案の成功率は格段に上がるのではないでしょうか。これが最も重要なポイントだと私は考えています。
準備
ここに至るためには、提案に入る前の準備が非常に重要です。個人的には、この段階で3つの重要なポイントがあると考えています。もちろん、前提として「ヒアリング編」で相手の状況やニーズをしっかり把握し、面談の準備として計画を立てていることが大切です。これについてはパート2で詳しくお話ししていますので、まだご覧になっていない方は、ぜひそちらをご確認のうえでこの「準備編」をご覧ください。
意思決定者との面談アポイントを取る
準備段階において重要なポイントの1つ目は、「意思決定者との面談のアポイントを取る」ことです。特に法人営業の場合、意思決定者が複数階層にわたっている場合や、同等の決定権を持つ方が複数いるケースもあります。このため、ヒアリング段階で、誰が最終的な意思決定をするのかを正確に把握しておくことが非常に重要です。
意思決定者でない方に提案をしても、最終的な決定には結びつきにくいため、最終的な決定権者が誰か、そしてその方にどのようにアプローチすれば良いかを明確にしておくことが求められます。さらに、どのようにしてその方との面談アポイントを取るかまで、ヒアリングで情報を集められると理想的です。
顧客に沿った提案を組み立てる
2つ目のポイントは、「顧客に沿った提案を組み立てる」ことです。パート1でもお話しした通り、顧客の興味と成長の可能性、いわゆる「伸び代」を掛け合わせることが重要です。これらは掛け算の関係にあるため、どちらか一方が0(ゼロ)では効果を発揮しません。少ししか興味がなかったものでも、提案によって興味が倍増することはよくあります。
例えば、もともと10程度の興味しかなかったものが、提案によって20や30まで引き上げられることもあります。ただし、もともと0(ゼロ)の状態から引き上げるのは難しいので、少しでも興味がある場合を見極めて提案を組み立てることが大切です。また、顧客自身が気づいていないニーズや興味を掘り起こすことも必要です。そのためには、顧客に合った具体的な提案を練り上げることが求められます。
提案を組み立てる際には、可能であれば、事前にシナリオを作っておくことで、実際の面談時に「何を話せばいいのかわからない」という状態を防ぐことができます。慣れてくると即興でも対応できるようになりますが、特に最初のうちは、しっかりとした準備をしておくことで提案の質が向上します。ぜひ一度、この流れで提案を組み立ててみてください。
自社における軸を決めておく(価格、人員、商品数、納期など)
3つ目の重要なポイントは、「自社における軸を決めておく」ことです。これが何を意味するかというと、例えば「この商品は良いと思うが、価格をここまで下げられないか」といった交渉の場面や、「もっと人員を割いてほしい」「商品数や納期を調整できないか」といった要求が出てくることがあります。あらかじめ、自社として譲歩できる範囲や条件の軸をしっかり決めておくことが重要です。
例えば、企画や商品が元々設定された価格や数量、納期などの条件があるかもしれませんが、交渉に入るとその条件を調整する必要が出てくる場合があります。そのため、「どこまでなら譲歩できるのか」というラインを事前に決めておくと良いでしょう。これは提案時に「うまく提案できない」と感じる要因の一つかもしれません。もし提案がスムーズに進まず、成約に至らない場合には、自社の軸がうまく決まっていなかったり、交渉の決め手が甘かったりする可能性があります。ですので、「自社における軸」をしっかり見極めておくことが大切です。
意思決定者と面談アポイントをとるために
意思決定者との面談アポイントを取るために、先ほどのヒアリングでも確認するようにとお伝えしましたが、これをさらに徹底していただきたいです。意思決定者に会えない限り、契約には繋がりませんので、ここはしっかりとアプローチしていきましょう。
まず必ず行うべきことは、「誰が意思決定者なのかを確認する」ことです。1回の確認だけではなく、複数の人に確認することが重要です。なぜなら、最初に聞いた人が真の意思決定者ではない可能性もあるからです。組織の階層が上がるにつれて、意思決定者が変わることもありますので、常に最新の情報を確認することが必要です。
次に、「意思決定者の意向を確認する」ことも非常に重要です。意思決定者がどの方向に進もうとしているのか、どのようなことに興味や懸念を持っているのかを把握することで、提案の内容をより効果的に調整できます。
さらに、意外と見落としがちですが、「意思決定者に到達するための適切な手続きを理解する」ことも重要です。例えば、社内の稟議書が必要だったり、特定の手順を経ないと意思決定者にたどり着けなかったりする場合があります。そのため、必要な資料や情報を提供し、提案がスムーズに進むようにサポートすることが求められます。特に、組織が階層構造になっている場合は、どう説明するかが難しい場合がありますし、稟議書の作成に不慣れな担当者がいることもありますので、その場合はしっかりとサポートを提供してください。
これらのポイントを押さえることで、提案から成約までの流れをスムーズに進めることができるでしょう。
番外編として有効な手段の一つに、意思決定者の周辺から攻めるという方法があります。特に階層構造のある組織や業界においては、このアプローチが非常に効果的です。
例えば、病院の場合、各科の部長から医院長へと階層が上がっていくケースがあります。しかし、一番上のトップに最初からアプローチできるルートを見つけることも戦略の一つです。トップの医師と関係が深い医師から攻めていくことで、スムーズに上層部まで話が進むことがあります。
このアプローチは他の業界でも同様です。例えば、歯科向けの製品やソフトウェアを販売する場合、業界のトップの方にアプローチすることがポイントです。業界のトップは顔が広く、紹介が発生しやすい環境にあります。トップの方が業界の勉強会や研究会、交流会を持っていることが多く、「月に一度集まる場でセミナーをしてみませんか?」といった話に繋がることも少なくありません。
また、各業界やエリアで影響力を持つトップの方にアプローチすることも効果的です。特に、ある程度の規模の経営者が集まる会を持っている方にアプローチするのは、新規事業を立ち上げる際に有効な手段です。トップの方々が集まるコミュニティや会合に参加して、そこから繋がりを作っていくことで、効率よく売上に結びつけることができます。
これらのアプローチは、新規顧客開拓だけでなく、既存の取引先との関係強化にも有効です。特に新しいサービスや商品の導入を考えている場合には、こうした視点を取り入れてみてください。業界やエリアのリーダーにアプローチすることで、より大きなインパクトを生み出せる可能性が広がります。
提案
ご提案のポイントは3つあります。
まず1つ目は、顧客の困りごとや「あったらいいな」と感じる点を、自社の商品でどのように解決できるかを提案することです。例えば、「こういうことでお困りではないですか?当社の商品なら、このように役立てますよ」といった形で提案を行います。この提案に先立って、事前に顧客の困りごとやニーズをヒアリングし、その上で提案を行うことが重要です。
さらに、他社の製品との違いや使い分けについても合わせて説明します。よくあるのが、良い点だけを伝えるのではなく、新しいものに対しては必ず顧客が懸念していることがあるという点です。例えば、「価格が高すぎないか」、「自社では使いづらくないか」といった心配事が出てくることがあります。この場合、価格については「どのくらいの価格帯であれば検討できそうか」といった話を聞いたり、使いづらさについては「このようなサポートを提供します」と提案したりすることで、顧客の懸念を解消していくことが大切です。
このように、顧客の懸念や心配事を聞き出し、次の商談やアポイントのきっかけにもつなげることができます。また、このプロセスを通じて、成約率が高まると考えられます。顧客の疑問点や不安を丁寧に聞き、適切な解決策を提案することで、顧客からの信頼感も向上します。ぜひ、顧客の懸念や心配事に耳を傾け、対応策を示してください。
陥りやすいパターン
これまでのご支援の中で、営業活動において陥りやすいパターンについてお話しします。パート1やパート2とも少し重なる部分があるかもしれませんが、これまで営業支援をさせていただく中でよく見られたケースについて、いくつかのポイントをお伝えします。
まず1つ目は、自社の技術の素晴らしさを強調しすぎることです。自社の技術や製品が優れていることは重要ですが、それ以上に「お客様にどのように役立つか」という視点でお話しすることが大切です。自社の技術の話をするのではなく、顧客の視点に立って「この技術がどのようにお客様の問題を解決するか」「どのようにお客様にメリットをもたらすか」を軸に提案してください。
2つ目は、開発期間の長さや開発費用の多さを強調するケースです。「10年かけて開発しました」や「何億円も費やしました」といった情報は、確かに付加価値として伝えることができますが、最も重要なのは「お客様にとってどのように役立つか」という点です。顧客のニーズや期待に応えるための提案を組み立てる際には、こうした開発の背景よりも、製品やサービスが「具体的にどのように顧客の課題を解決するのか」を強調することが効果的です。
繰り返しになりますが、重要なのはお客様の困りごとや「あったらいいな」というニーズに対して、自社の商品やサービスがどのように役立つのかを提案することです。この点を軸に提案を組み立てていけば、大きく外すことは少なく、成功率を上げることができるでしょう。お客様にとっての価値を最優先に考え、ご提案していただければと思います。
まとめ
パート1からパート3にわたって、営業力強化のコツについてお話しさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。私自身も、営業としてのスタートは非常に困難で、「何を話せばいいのか」「どうすればいいのか」がまったくわからない状態から始まりました。例えば、喘息の薬やコストのかかる薬を売る際には、とにかくパンフレットを持参して「お願いします」と頼んだり、製品説明会をさせてくださいとお願いしたりするばかりでした。
しかし、ある時、ふと「そもそも喘息の患者さんはどのくらいいるのだろうか?」「このクリニックではどのような治療をしているのだろうか?」と気になり、直接聞いてみることにしました。その際、「先生のところではどんな薬をどう使っているんですか?」と尋ねると、「うちはこのような薬を使っていて、患者さんがこういう状態の時に処方しているんだよ」と、詳しく教えてくださったのです。このように、何を話していいのかわからない状況から、相手に質問してみたことで多くの情報を得ることができました。
人は質問されると話したくなるものです。自分の気持ちや考えを共有したいと思う方が多いのだと感じました。もちろん、自分から話し始めることは少ないため、こちらから質問することが必要です。こうして相手の話を聞くことで、会話がスムーズに進み、提案も格段にしやすくなります。
この経験を通じて、営業においては、相手に話をさせることが大切であると実感しました。相手が話すことで、こちらも多くの情報を得ることができ、より具体的で効果的な提案が可能になります。最初は営業が苦手だった私でも、この方法を取り入れたことで、営業活動が大きく改善されました。皆さんも、ぜひお客様の話を聞くことから始めてみてください。そうすれば、自然と成約につながるはずです。
今回のパート1、パート2、パート3では、営業力強化のコツについてお話しさせていただきました。具体的には、喘息の治療に関する事例を取り上げ、特定のクリニックでの実際の状況に基づいた提案の仕方について触れました。
例えば、あるクリニックでは、台風の来る夏前後に気圧の変化が原因で喘息が流行ることが分かりました。また、別のクリニックでは冬場に咳が止まりづらくなり、それが原因で喘息が悪化するケースが見られました。こうした情報をもとに、例えば台風の季節が近づく前に営業に行き、「台風の季節に喘息の患者さんが増えることがありますよね?もしよろしければ、当社の薬は4週間ほどで効果が実感できるので、その前に試してみるといいかもしれません」と提案することができました。
このように、季節や気圧の変化に応じたニーズを把握し、それに基づいてタイムリーな提案を行うことで、より効果的な営業が可能になります。営業の際には、口下手でも問題ありませんし、私自身も営業を始めた頃は十分にスムーズに話せるわけではありませんでした。しかし、お客様の話をよく聞き、その中から興味や困りごとを掘り下げていけば、必ず成約につながることを実感しました。
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