トーク例で学ぶ反論処理の基本ステップ
悠稀 智惠
売れる話し方 /
プレゼンコンサルタント
舞台女優歴15年。ハリウッドの有名俳優も使う演技メソッドと起業家の成功ノウハウから編み出したオリジナル話し方メソッド「ハートフルスピーチ®」を、起業家や経営者向けに研修を行う。
講師実績
・電話/接客研修(KDDI代理店, 老舗洋菓子店, 食品会社など)
・営業研修(IT企業, 健康グッズ販売, 住宅販売など)
・新人研修/ハラスメント研修(IT企業, 製造企業など)
本シリーズは四部制で、上記の動画は「Part.4」です。
はじめに
ここでは「反論処理7つの基本ステップ」「切り返しトーク例」として、実際のトーク例をご紹介します。
反論処理
お断りされた際や、回答が曖昧だった場合に反論してはいけません。「反論処理」という言葉から、いかに反論するか、あるいは如何にうまく言い逃れするかを考えがちですが、討論が始まった時点で営業は敗北しています。
お客様は敵ではなく、共に課題や悩みを解決するためのパートナーとなり得る存在です。お客様の立場からすれば、わざわざお金を払ってお願いする相手か否かの見極めをしている段階では、そんな段階において言葉で圧倒されたら再び会いたいとは思えません。知らない人に否定されれば誰でもイラっとするものですし、そう思われてしまうとこちらの声はお客様には届きません。重要なのは、共感、提案、自信の3要素をしっかりと押さえることです。
反論処理7つの基本ステップ
反論処理の基本ステップは7つです。
まず、相手のお断りに対して「理解」を示すことです。次に、感想や意見を伝えてくれたことに対して「感謝」の気持ちを伝えます。さらに、相手が何を考えているのかを理解し「整理」するための質問を行います。そして、相手の質問や回答に対して「共感」を示します。その後、認識にずれがないか「確認」します。次に、相手が考えているできない理由に対する解決策を「提案」します。最後に、「クロージング」として、最後の一押しのメッセージを伝えることが大切です。この流れをしっかりと抑えておきましょう。
切り返しトーク例
切り返しの例をご紹介いたします。
もしお客様から「今は間に合っています」と言われた場合、まずは「今は」という言葉と「間に合っている」という言葉に注目しましょう。「今は」ということは、過去や未来には間に合っていない可能性があります。つまり、今すぐでなくても、今後やこれからのための話ができる可能性があることを意味しています。「間に合っている」の意味を整理すると、解決できていて困っていない、解決に向けて取り組んでいる途中、忙しくてやっていない、そもそも興味がない、ということが考えられます。
もし解決できていて困っていないという状況であれば、「おめでとうございます」と伝え、現状をお祝いすることができます。解決に向けて取り組んでいる途中であれば、「状況はいかがですか?」と尋ねてみましょう。忙しくてやっていないということであれば、「それなら私が代わりにやりますよ」と提案してみると良いでしょう。そもそも興味がないということであれば、「本当にそれで大丈夫ですか?」と確認することが重要です。
相手の言葉の意味によって伝えるべきメッセージは変わるため、何に対して断っているのかを確認し、その上で次の課題や問題点を尋ねる必要があります。
「間に合っています」の切り返しトーク例
例えば、「間に合っています」と言われた場合は、「よかったですね、おめでとうございます。ただし、そういった企業様は次に〇〇のような課題もお持ちかもしれませんが、いかがですか?」と聞いてみるのが良いでしょう。逆に「今は」という言葉から、将来的に不安や異なる課題が出てくる可能性があるかもしれませんので、それを聞いてみるのも一つの方法です。
「忙しい」の切り返しトーク例
「忙しい」と言われた場合、現代人は誰もが忙しいと認識しましょう。テレアポや飛び込み営業など、誰もが忙しい状況にあります。暇な人や時間が空いている人は存在しないという意識を持ちましょう。その上で、相手の緊急度と重要度を上げる提案をし、優先順位を上げてもらうためのコミュニケーションが必要です。
忙しいと言われた際に、「そんなこと言わずに、まずは会ってください」といった対応は逆効果です。忙しいとおっしゃる相手には、「お忙しい中申し訳ありません」とお詫びと労いの言葉が大切です。その後、「お忙しいことは十分に理解していますが、それでも〇〇様にお伝えしたいことがあったためご連絡させていただきました」と伝えることがポイントです。
さらに伝えるべきことは簡易提案です。ただ「会ってください」といったアプローチでは不十分です。具体的には、「〇〇の件でお話をさせていただきたく」、「〇〇の件で御社のお役に立てると思いまして」といった形で、相手が自分に会うべき理由を明確に伝えることが重要です。理由もなく「会ってください」とか「アポください」といった依頼は完全にNGです。相手の忙しさに共感し、お詫びを伝えた上で、自分に会うべき理由を伝えることを意識しましょう。人は理由がなければ動きません。この理由をしっかり提案できるかどうかが営業の成否を分けます。
例えば、「お忙しいタイミングで申し訳ございません。〇〇さんがお忙しいことは十分に理解しておりますが、それでもお伝えしたいことがあり、ご連絡させていただきました。〇〇の件で私に3分だけお時間いただけませんか?」といった形で使っていくと良いでしょう。
「お金がない」の切り返しトーク例
次に、「お金がない」と言われた場合についてです。ほとんどの人は「お金がない」と言われると「そうですか」と諦めてしまいがちですが、「お金がない」には3つの意味があります。1つ目は、本当に使えるお金がない、2つ目は、使えるお金がないと思っている、3つ目は、提案されている内容に使えるお金がない、です。
本当に使えるお金がない場合は仕方がありません。しかし、使えるお金がないと思っている場合や、提案されている内容に使えるお金がない場合はもったいないです。予算やお金の問題に対しては、相手のお金の使い方とタイミングをしっかりと確認することで大きく改善されます。お金が使えるようになるタイミングをしっかり確認することが必要です。
具体的なアプローチとしては、「お金がない」と言われたら、まずは「そうなんですね」と受け入れます。その後、予算やお金の状況について確認を行います。この際に『ちなみに』という言葉を使うと、聞きやすくなります。
例えば、「ちなみに今どこにお金を多く使っていますか?」、「ちなみにご予算が決まるタイミングはいつですか?」、「ちなみにお金以外の点でスタートしてみたいお気持ちはありますか?」、「ちなみに予算の問題がなければこちらの内容はいかがですか?」などの質問を行います。お客様のために支払い方法を一緒に考えるスタンスで話していくと良いでしょう。
「他社にお願いしています」の切り返しトーク例
「他社にお願いしています」と言われた場合について説明します。物が溢れ返っている現代では、すでに他社が関与しているか、あるいは多くの手段で何とかしているケースが多いです。ですから、こちらも「そうですよね」と理解を示しましょう。そして、なぜ自分が連絡したのかを相手のメリットが分かるように提示することが重要です。
例えば、「御社ほどの企業様であれば、すでに他社とお付き合いされていると思っていました。ただ、どうしても〇〇がもったいないなと思っていたので、今回ご連絡させていただきました。」と伝えると良いでしょう。
また、他社を使用していることが必ずしも満足しているとは限りません。その場合は、「かしこまりました。もし今、〇〇さんが本当に満足しているのであれば、こちらから現時点でお手伝いできることはないかもしれません。ただ、商品やサービスはどんどん増えており、最近のトレンドや情報なども踏まえてよく調べてご決断されたのですよね。」と、自分の提案に自信があることをアピールするのも良いでしょう。
「必要あればご連絡します」の切り返しトーク例
「必要あればご連絡します」と言われた場合、現代ではネットで簡単に情報を調べたり、Webで資料請求したりすることができます。そのため、「必要あればご連絡します」という言葉も理解できますが、残念ながら必要なタイミングが訪れることはほぼありません。
そのため、必要なタイミングを作り出す意識を持ち、どんな時に自分のことを思い出してほしいか、どんな言葉を考えた時に思い出してほしいかを伝えることが大切です。また、接触回数を増やすことで思い出してもらえる確率が高まります。つまり、定期的に連絡を取れる環境が重要です。
「必要ない」と言われた場合、お客様自身も漠然と「なんとかしたいな」と思っているものの、何をしたいのか、どうすべきなのかが明確でないことが多いです。このような断りは最もよく出されるものの、実は最も回避しやすいものです。
具体的な対処法としては、ヒアリングに戻り、注意深くニーズを掘り下げる質問をし、自分の商品がどのように役立つかを認識してもらうことが重要です。お客様に「本気で変わらなければいけない」と思ってもらうことがカギとなります。
「急がない」の切り返しトーク例
「急がない」と言われた場合、人間として自然に先延ばしにすることがあります。そのため、「急がない」という断り文句はお客様の典型的な答えです。この場合は、テストクロージングをしっかり行うことが必要です。
例えば、プラン説明やクロージングに入る前に「では、〇〇さん、これから△△という当社のサービスについてお話をしますが、今すぐ決めていただく必要はありません。ただし、もし〇〇さんが良いと思われた場合には、ぜひ早速スタートしてください。良いと思わなかった場合には、もちろんお断りいただいて構いません。そのご判断を本日中にしていただければと思いますが、よろしいでしょうか。」というようにテストクロージングを行うと良いでしょう。
しかし、もしお客様が「今すぐじゃないです」とおっしゃった場合、そのままクロージングを進めても契約に至る可能性は低くなります。この場合はクロージングを進めず、再度ヒアリングを実施し、問題点を解消する必要があります。具体的には、トークを先に進めずに「どのような点で急がないとお考えですか?」とお聞きし、急ぎでないとする反論を解決するように努めましょう。
「今、決めなくていいですか?」の切り返しトーク例
「今、決めなくていいですか?」と言われた場合、先ほどお聞きした理由に基づき、「今、決めた方が〇〇さんにとって有益ですので、ぜひ今お決めください」と促すのが良いです。即決を促す際には、「もともと決断はその日にしない方針です」と事前におっしゃっていた方以外には、その日に決断を促すようにしましょう。
「決済・お支払いは今日でなくても良いですか?」という場合も同様に考えます。
「他社と比較したい(相見積もり)」の切り返しトーク例
お客様が「他社と比較したい」「見積もりが欲しい」とおっしゃった場合には、コスト、料金、クオリティ、商品の質、スピード、納期などについての比較表を事前に用意しておくと効果的です。
お客様が他社と比較したい、見積もりを求める場合には、まず即決を促すことが重要です。比較表を見せながら、自社の有利な点を強調しましょう。ご納得いただけた場合には、「ご納得いただけたようですので、こちらでご決断をお願いできますか?」と促します。もし比較表を出して即決を促してもなお比較を続けたいとおっしゃる場合は、他社と比較した後に最終的に自社に戻ってくるようなトークを展開し、資料を渡して自社に有利な要素で比較してもらいましょう。また、他社の営業マンの話を聞いた後にアポを取るという方法も考慮することができます。
例えば、「他社さんのお話をお聞きした後、当社としても勉強させていただきたいと考えております。そのため、再度アポイントを取らせていただきたく存じます。」「もちろん、今回ご提案させていただいた内容が当初の最適な提案であることは間違いありませんが、さらにお得な条件をご提示し、御社に貢献させていただきたいと思っております。他社とお会いした後の何日と何日では、どちらがご都合よろしいでしょうか。」と促します。
もし、他社の名前を教えていただけなかったり、他社との面談日程を教えていただけなかったりする場合は、そもそも人間関係が構築できていない可能性があります。その際には、再度人間関係の構築を行う必要があります。
「決裁権者(主人・かみさん・上司)に聞いてみないと」の切り返しトーク例
決裁権者が別にいる場合、次のステップへ進める必要があります。まずは、本人の気持ちを確認し、「検討したい」という気持ちを受け入れ、その人の本心を確認する質問を行います。
例えば、「〇〇さんご自身は当社のこの商品について、良いとお感じですか?」とお尋ねします。そして、お客様が本気であれば即決トークを試みます。この際には、決定権があるのはご本人であることを認識していただくことが重要です。ご本人に決定していただき、その結果を出した後でご主人や奥様にお話をしていただく流れで進めることが考えられます。
さらに、お客様が確認の際に本気でない場合は、単なる断り文句や先延ばしの可能性がありますので、プレゼンテーションを再度行う必要があります。即決トークを試しても効果がない場合は、その場で決裁権者と直接話すことを試みることも考慮するべきです。
例えば、「今、上司の方にお電話をし、私から説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」と伺い、その場でお話しできない場合は、決裁権者とのアポイントを設定します。「私が決裁権者様に直接お話しさせていただくために、何日と何日でどちらがご都合良いでしょうか?」と確認します。
次に、お客様をあなたの使者に引き入れましょう。決裁権者がどのような基準で決定を行うのかをお客様からヒアリングし、それに合わせた武器を作成して渡します。ここで言う「武器」とは、セールストークやセールスツールのことを指します。トークは、決裁権者が喜ぶ内容を考え、戦略を立てる必要があります。そうしないと、単純に金額だけで判断されてしまい、NGとなる可能性があります。
「高い」の切り返しトーク例
もし「高い」と言われた場合、それは価格に見合う商品やサービスの価値が理解されていないことを示している可能性があります。考えられる理由として、予算感がずれていることが考えられます。そのため、商品やサービスが市場でどの程度の価格で提供されているのかを説明し、予算感を理解していただくことが重要です。あなたの商品やサービスが適正価格であると認識してもらう必要があります。
また、商品やサービスの価値が理解されていない場合、価値が伝わっていない可能性があります。再度お客様のニーズをヒアリングし、そのニーズに合った商品説明を行いましょう。お客様と金銭感覚がずれている場合もあります。この場合、あまりにも金銭感覚が異なるようであれば、低価格の商品やサービスがあれば、それを提供することを検討しましょう。
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