採用面接でストレス耐性&レジリエンスの強さを見抜くポイント 後編

登壇者

栃久保 奈々
人事コンサルタント

早稲田大学卒業後、15年以上に渡り人材業界や人事業務に携わる。
10か国でのビジネス経験や30以上の企業や学校と関わり、高校生からシニアまで対応する。採用や研修、カウンセリングを通じて「人」に関する問題提起や課題解決の提案を行う。面談した社員約550名、メンタルヘルスや企業研修で指導した社員は約3,000名にのぼる。
雑誌やWEBでのヨガ・インドの連載や、ラジオ番組への出演をこなしながら、インド政府公認ヨガインストラクターとしても活動。
著書に『インド式壁の乗りこえ方(自由国民社刊)』


本シリーズは二部制で、上記の動画は「後編」です。

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目次

はじめに

今回は、「採用面接でのストレス耐性とレジリエンスの強さを見抜くための具体的なポイント」についてお話しします。

まず、面接の意義や企業と応募者双方に求められる心構え、さらに面接で確認すべきポイントについては前半で触れました。

後半では、具体的な質問の例や質問の仕方のコツについて解説します。

また、採用活動の締めくくりとして、「一般的に優秀とされる人材が必ずしも貴社に合うとは限らない」という観点もお伝えします。さらに、面接時に法律に触れる可能性がある質問についても、どのように避けるかといったアドバイスも加えていきます。

レジリエンスとは具体的にどんな力?

さて、今回のテーマである「レジリエンス」について簡単におさらいしましょう。

「レジリエンス」という言葉をご存じでしょうか。これは、困難をしなやかに乗り越え、回復する力を指します。レジリエンスは主に5つの要素から構成されています。

感情・情動コントロール力
自分の感情や行動を適切に調整する力。

自己効力感
自己肯定感ではなく、自分はできると信じて挑戦していく力のことです。最近では、幼稚園や保育園の段階から重視されています。

自尊感情
自分を価値ある存在と認識し、些細な挫折では動じない心を持つことです。

良い人間関係
心の支えとなる人と良い関係を築くことが重要です。人間関係の質が低下すると、行動や仕事の質も低下し、悪循環に陥る可能性があります。

楽観性
先行きが不透明な時代においても、未来への明るい見通しを持ち続ける力です。
特に、コロナ禍においては、企業が迅速にテレワークを導入するなど、柔軟な対応力が求められました。逆に、対応が遅れた企業もあったと聞いています。現代においては、先見性や臨機応変に対応する力が企業の成長や従業員満足度の向上に直結します。

レジリエンスは、これからの時代においてますます重要視される能力です。今後の採用面接では、ぜひこれらのポイントを踏まえて、貴社にふさわしい人材を見極めてください。

ストレス耐性・レジリエンスが高い人の特徴

次に、ストレス耐性とレジリエンスが高い人の特徴についてお話しします。

面接では応募者の原体験を掘り下げて質問することで、これらの特徴が見えてくると考えます。今回お伝えする内容は、私が約17年間面接を通じて培ってきた経験をもとに、採用後に応募者と一緒に分析した結果を踏まえたものです。

原体験を掘り下げて質問していくことで見えてくる

まず、「原体験」とは、人生におけるターニングポイントとなる経験のことで、現在の性格や考え方に大きな影響を与える出来事を指します。面接の際には、この原体験を探ることで応募者の本質を理解する手がかりとなります。

また、面接は可能な限り2名体制で行うことを推奨します。

理由として、質問をする面接官と聞く面接官では見え方が異なるためです。質問をする面接官は応募者の本質を引き出すことに集中しますが、もう1名の面接官はその受け答えを客観的に評価することができます。

しかし、面接官が3名以上になると応募者が緊張しやすくなるため、人数を増やしすぎるのは避けたほうが良いでしょう。

法律的に聞いてはいけない質問は慎重に

では、具体的な質問内容についてご紹介します。

面接でよく尋ねられる内容ですが、例えば学生時代の部活やアルバイト経験などから、以下の項目を確認することが重要です。

兄弟構成
兄弟構成によって性格に傾向が見られることがあります。例えば、長子は承認欲求や完璧主義が強い傾向があり、一人っ子は構われたい欲求が強いとされています。

転勤族であったかどうか
転勤族であった場合、環境が変わっても新しい発見を楽しめる人は、どのような環境でも適応できる可能性が高いです。実際、営業職で活躍している人にはこのような特徴を持つ方が多くいます。

アルバイト先での役割や接客経験
学生時代に責任あるポジションについた経験のある方は、マネジメント志向が強く、将来的に組織のリーダーシップを期待できる可能性があります。特に接客経験が豊富な人は、臨機応変な対応や不条理なクレーム対応に慣れていることが多く、メンタルの強さも期待できます。

これらの質問は、応募者の性格や背景に関する特徴を把握するために非常に有効ですが、注意しなければならないのは、法律的に直接尋ねてはいけない内容も含まれていることです。質問の仕方には慎重を期す必要があります。

例えば、兄弟構成については、面接の中で「あなたの育ってきた環境について教えてください」などと間接的に質問し、その人の家庭環境や人間関係の形成に影響を与えた要因を探ると良いでしょう。

また、転勤族であったかどうかは、「これまでの環境の変化にどのように対応してきましたか?」といった質問で掘り下げることが可能です。

面接で確認するポイントとして、兄弟構成や血液型などには確証がないとされており、医学的にも根拠がないという意見もあります。したがって、あくまで参考情報として捉え、応募者の本質を見極めるための材料の一つとして活用してください。

しかし、企業文化と個人の特性が影響を及ぼすケースも少なくありません。

例えば、B型の社員が多い会社や左利きの社員が多い会社など、特定の個性が偏在する企業が見られます。クリエイティブな業界やマーケティング業界ではB型の社員が多い傾向があり、これに対して典型的なA型(特にAA型)の社員は、退職率が高くなるというデータも存在します。

私の前職の広告代理店では、B型の社員が最も多く、B型>AB型>O型>A型の順でした。AA型の社員は経理部門にしかおらず、他の部門ではAO型の社員は適応していましたが、AA型の社員は居心地の悪さを感じ、退職していくケースが多かったのです。

これを踏まえ、面接では応募者の部活動やポジションの選択について質問することが有用です。

学生時代の選択も、今の人生に影響を与えている

部活動の経験が現在の性格やキャリア選択に大きく影響を与えることは、多くの調査で示されています。

特に、体育会系の経験がある方は昔から求められる傾向にありますが、それに加えて、吹奏楽部でソリストを務めた方や演劇部で裏方を担当した方も、ぜひ採用候補に入れていただきたいと考えます。

彼らは大会のプレッシャーや努力を経験し、パフォーマンスが高いと評価されることが多いです。また、演劇部の裏方の経験者は、視野の広さや人を支える能力を持ち、組織にとって縁の下の力持ちとなる可能性が高いです。

特に、吹奏楽部で金管楽器のソリストを務めた方は、自己コントロール能力が高く、ストレスに強いとされています。

アルバイトや部活動の選択理由についても、ぜひ質問してください。

なぜその選択をしたのか、その背景には本人の価値観や意志が反映されていることが多いからです。環境に流されたり、他責傾向で消極的な選択をしたりしている場合は、メンタルの強さに欠ける可能性がありますので、その点を注意深く確認しましょう。

自己肯定感と納得感を持っているか

自己肯定感や納得感を持っているかどうかも面接で確認しておくべき項目です。

自己肯定感が高ければ、困難な状況でも前向きに対処することが期待できます。挫折に関する質問も有効で、応募者が過去にどのような挫折を経験し、それをどのように乗り越えてきたのか、または乗り越えられなかった場合の理由についても掘り下げて確認することが重要です。

挫折を経験したことがない人もいますが、その場合は、どのような状況を挫折と感じるかについても尋ねてみましょう。

例えば、受験の失敗や友人関係のトラブルなどを挫折と捉えない人もいます。その際には「なぜ挫折と感じなかったのか」を掘り下げて質問することも有効です。これにより、その方のメンタルの強さや、ストレスへの対処能力が見えてくることがあります。

ただし、挫折を克服できていない場合でも、自己分析に一貫性があり、問題やネガティブな状況を客観視できている場合は、その方を評価する材料となり得ます。挫折を克服できなかったからといって、その人のメンタルが弱いと決めつけるのは早計ですので、注意が必要です。

また、応募者の学歴やキャリアの流れに矛盾がないか、納得感を持って選択しているかも確認することが大切です。

中学までは保護者の意向が反映されていることが多いですが、高校以降の選択は本人の意思が反映される場面が増えます。このため、高校以降の選択に一貫性があるかどうかを判断しましょう。納得感のある選択をしている方は、組織に入った後も自分で考え、行動できる可能性が高いです。

現代では、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回すことが重要視されていますが、それ以上に、状況を見て判断し行動する「OODA(観察・方向づけ・意思決定・行動)」のような柔軟な対応が求められる時代です。

このため、一貫性を持って自分の選択を説明できる応募者は、未知の課題に柔軟に対応できる能力を持つと考えられます。

おまけ

面接では、自己肯定感や納得感を持っているかどうかも見極めておくことが有効です。

特に、「5分で自分の長所を30個以上挙げられるか」という質問は、応募者の地頭の良さや日頃からどれだけ自分と向き合っているかを測るための面白い指標となります。

紙に書いてもらうのも良いですが、口頭で行うと、最後の5個に本音が出やすくなると言われています。これにより、メンタルの強さやストレス耐性、自己コントロール能力が確認できることがあります。

また最近では、コロナ禍が落ち着き、応募者と会議室を離れて食事を共にすることも可能になっています。

私の新卒時代には「飲み会選考」などもありましたが、近年はあまり見られなくなりました。それでも、食事を共にすることでプライベートな一面が垣間見えるため、推薦したい手法です。

たくさん食べる人や美味しそうに食べる人は、話していても気持ちの良いことが多いと感じます。また、食べ方が気持ちの良い方は、人生に対して前向きに取り組んでいる印象がありますし、感謝の気持ちを持っていることも多いため、人間関係の構築がスムーズになることが期待できます。

聞きづらい質問の回答を聞き出すコツ

面接では、応募者の家庭環境や親の職業など、直接的には聞けない項目も存在します。

法律的にNGとされている質問を避けるためには、応募者が自然と話してくれるような質問を工夫して引き出すことが重要です。特に家庭環境や親の職業は、本人が選べない部分であるため、直接的な質問は避け、話の流れの中で応募者の本質に迫るよう心がけましょう。

また、プライバシーに関わる質問には注意が必要ですが、応募者の本音や背景を知るためには、間接的なアプローチが有効です。

例えば、「面倒見が良さそうですね」とか「兄弟が下にいそうですね」などのさりげない相槌を打つことで、自然に応募者が話してくれることが多いです。

また、「転勤が多いんですね」といった転校や転勤について触れると、応募者が親御さんの職業について自然に話し始めることもあります。面接官が自己開示をすることで、応募者も話しやすくなるため、積極的に自分の背景や経験を共有するのも効果的です。

質問をする際には、サラッとした質問の後に、その質問の背景や意図を伝えることで、応募者がより多くの情報を提供してくれるようになります。採用担当者自身の経験や考えを話すことで、応募者との信頼関係が築かれやすくなります。

自社にあった人材を見極めよう

「優秀な人材が欲しい」との相談を受けることはよくありますが、一般的に優秀とされる人材が必ずしも企業にとって最適な人材とは限りません。

企業の規模、業種、組織構成、役職などによって、求める人材の特性は異なります。中間管理職やマネジメント層、また若手管理職の下に付くポジションなど、採用する役割によっても適性は変わってきます。

そのため、まずは自社で活躍している社員の特徴や、今後数年の組織のビジョンに必要な人材像を明確にすることが重要です。採用を始める前に社内で話し合い、しっかりと観察・分析しておくことが成功への鍵です。

また、応募者の方々は潜在的な顧客でもあります。

たとえ採用に至らなくても、彼らが将来的に他社で仕事を依頼してくれることや、エンドユーザーとして自社の商品を購入してくれる可能性もあります。

そのため、応募者に対しては決して無礼な態度を取らず、誠意を持って接することが大切です。面接の際の対応がその後の関係性にも影響を与えることを忘れずに、丁寧に応対することを心がけましょう。


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執筆者

人事コンサルタント 栃久保 奈々

早稲田大学卒業後、15年以上に渡り人材業界や人事業務に携わる。
10か国でのビジネス経験、30以上の企業や学校とのやり取りの中、高校生からシニアまで関わる。採用や研修、カウンセリングを通じて「人」に関する問題提起や課題解決の幅広い提案を行う。面談した社員約550名、メンタルヘルスや企業研修で指導した社員は約3,000名にのぼる。
雑誌やWEBでのヨガ・インドの連載や、ラジオ番組への出演をこなしながら、インド政府公認ヨガインストラクターとしても活動。
著書に『インド式壁の乗りこえ方(自由国民社刊)』。
プライベートでは、娘2人を育てる母として奮闘中。

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