管理職が知っておきたい「中小企業の組織支援」が今すぐ必要な理由──商売と組織を同時に立て直す視点

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中小企業の悩みはだいたい「商売」と「組織」に分かれる

現場の相談は、突き詰めると二系統に分かれます。ひとつは売上や粗利、受注、商品・サービス、営業、マーケティング、事業開発など「商売」の問題。もうひとつは採用・育成・評価・配置、会議のやり方、部門連携、ルール、文化、マネジメントなど「組織」の問題です。

商売の課題は、比較的わかりやすい形で表に出ます。数字に直結し、原因や打ち手がイメージしやすいからです。一方で組織の課題は、症状が“じわじわ”出ます。たとえば「会議が空回りする」「部署間で揉める」「現場の不満が増える」「管理職が疲弊する」「離職が止まらない」など、見え方はバラバラです。
しかし厄介なのは、これらが“自然現象”として起きる点です。「無策だと組織はダメになる」「人数が増えるだけでダメになる」「儲かるとダメになる」のです。

管理職として重要なのは、「うちの会社は人が悪い/最近の若手が…」と個人要因に短絡しないことです。組織は放置すれば、構造的に崩れやすい。だからこそ“組織支援”が必要になります。

なぜ今、組織支援が「待ったなし」なのか

背景には、環境変化が同時多発していることがあります。労働人口の減少、転職ブーム、幼児性の高まり、会社合併の増加などが挙げられ、「無策なら組織の崩壊」につながります。
言い換えると、これまで“気合いと根性”で回っていた組織ほど、外部環境の揺れに耐えにくくなっています。特に中小企業は、商売を回すだけで手一杯になりがちです。中小企業は余裕がなく、商売ばかりしてきた、組織作りの基礎知識を知らないのが大きな課題です。

組織が揺れ始めたときに“正しい順番で、統合的に”手を打てず、目の前の火消しに終始してしまう。給与を少し上げる、流行りの理論に飛びつく、原因を社員のせいにする――こうした「対処療法の連鎖」が起き、良くならないのも中小企業の特徴です。

管理職から見れば、これは他人事ではありません。組織の不調は最初に“現場の管理職”へ降りかかります。会議が荒れる、板挟みになる、若手が育たない、問題社員対応が増える。仕事は増えるのに成果は出にくい。ここで踏ん張り方を間違えると、管理職が疲弊し、次の担い手も育たず、組織の回復力が落ちていきます。

「人事施策だけ」では、いい組織は作れない

組織が揺れたとき、多くの会社は人事部に期待します。しかし、「HR領域(人事部)の施策だけでは いい組織は作れない」のです。
人事部の役割は重要です。ただし、採用・育成・評価・配置や制度設計のような“人事の範囲”を超えたところ――つまり、事業の勝ち筋、業務設計、会議体、部門連携、現場KPI、文化づくり、経営陣の意思決定など――が弱いままだと、組織は噛み合いません。

人事部が通常は担いにくい領域として、たとえば以下があげられます。
 基本戦略やビジネスモデル、ミッションの表現/コアコンピタンスやエース人材の定義/業務設計・IT化・KPI・PDCA/社内情報の収集と気運づくり・文化醸成/経営陣育成と仕組みづくり、などです。
管理職の目線で言えば、「現場が回るための前提条件(ルール・型・連携・意思決定)」に手が入らない限り、研修や制度だけでは現場の摩擦が減らない、ということです。

“組織づくり”を丸ごと支援できる人が少ない背景

では、なぜこの領域を支援できる人が少ないのでしょうか。コンサル会社は中小企業にフレームワークが適用しづらく利益も低いのでやりたがらない、研修会社は定型研修が中心で経営支援までは踏み込めない、税理士は組織づくりの知識がほとんどない、といった理由からです。

ここで押さえたいのは、「部分最適の支援が多い」ことです。研修は研修、制度は制度、採用は採用、ITはIT。分解して解くのは合理的に見えますが、組織の問題は“つながっている”ことがほとんどです。だから統合施策が必要になるのです。「組織作りは、ひとつの施策ではうまくいかない。統合施策が必要」なのです。

さらに中小企業では、そもそも「型」が未整備であることが多いのです。会議のやり方が定義されておらず、不満大会になったり、詰問になったりする例が多くみられます。
 つまり、管理職が頑張る以前に、頑張り方の“共通言語”がない。その状態で部分的な施策だけ入れても、現場に定着しません。

目指す人材像:「本当に会社を変えられる人材」とは

管理職が成長すれば、組織は変わります。管理職が社内で体現すべき「会社を変えられる人材像」とは、以下です。

商売と組織を、別々に扱わない

「商売(営業・商品設計・製造・物流・広告宣伝・販売促進等)」と「組織(採用・教育・評価・組織編成・人材像・報酬制度・Mission/Vision等)」はタイヤの両輪です。両方とも重要なのです。
管理職が現場でやるべきは、組織施策を“人事の仕事”に押し込めることではなく、商売の成果につながる形で、現場の型・会議・KPI・部門間連携・育成を設計し直すことです。

「正しい順番」で設計し、浸透までやり切る

理念・ビジョン・行動指針から始まり、管理職研修、必要機能、管理体制、管理職・社員像、必要文化、そして現場の型づくりなど、やるべきことはたくさんあります。しかし、組織作りは、早くても2〜3年はかかります。
管理職にとって重要なのは、“短期で劇的に変える”発想を捨てることです。そうではなく、一つずつ丁寧に、組織の定義(ルール・型・責任と権限・期待役割・組織文化等)を整えていくことが必要不可欠です。

人を動かし、人を育て、文化に落とす

「良い会社」は、収益性・報酬だけでなく、永続性、過度なストレスの少なさ、健全な関係性、やりがい等が存在します。管理職の仕事は、数字の達成だけでは終わりません。数字が出る“仕組み”と、働き続けられる“関係性・文化”をつくること。人が辞めれば、商売は続きません。だからこそ、管理職が「人を育てる技術」「人を動かす技術」「組織を作る技術」を学び、現場に実装する価値が高まっています。

管理職が今日から持つべき視点

最後に、明日からの実務に落ちる形で要点をまとめます。

  • 組織の不調は“自然現象”。放置すると悪化する前提で見る(だから早めに手を打つ)。
  • 人事施策だけで解けない問題を、現場の「型」「会議」「連携」「意思決定」からほどく。
  • 流行りの言葉ではなく、自社の勝ち筋(コア)と、求める人材像・管理職像を言語化する(定義できないと育てられない)。
  • 施策は分断せず、順番を守って統合し、運用で仕上げる(2〜3年の覚悟を持つ)。

中小企業の組織支援が必要なのは、誰かが“魔法の解”を持っているからではありません。むしろ逆で、組織は放っておけば崩れるのに、丸ごと支援できる担い手が少ないからです。だから管理職こそが、「会社を変えられる人材」に近づくほど、組織は強くなり、商売も安定して伸びていきます。

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執筆者

中小企業診断士
(株)3Rマネジメント 代表取締役 https://3r-management.jp/
(株)IoTメイカーズ 代表取締役 https://www.iot-makers.co.jp/

約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。

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