なぜ組織は崩れるのか?──「実務だけ」では回らない。中間管理職が形骸化する“現場の構造原因”
なぜ組織は崩れるのか(現場の構造原因)
「最近、社内の空気が悪い」「頑張っているのに辞めていく」「現場がバラバラで、管理職が機能していない気がする」
こうした違和感は、管理職の皆さんが一番早く察知します。部下の表情、会議の温度感、報連相の減り方、細かな不満の増え方。数字より先に“組織の兆候”が見えてしまうからです。
ただ、ここで多くの人がつまずきます。
原因を「誰か」に置きたくなる。社長が悪い、若手が甘い、管理職が弱い、評価制度がダメだ……。けれど本質はもっと構造的で、そして救いがあります。
結論から言うと、組織が崩れ始めるのは**“自然現象”**です。
「無策だと組織はダメになる」「人数が増えるだけで組織はダメになる」「儲かると組織はダメになる」。これは誰かの責任追及ではなく、放置すれば必ず起きる現象だ、という整理です。
では、その自然現象は現場でどんな形で表れ、どこから崩れていくのか。管理職が「自分のせいだ」と抱え込まず、構造として理解し、手を打てるように整理していきます。
組織崩壊は「自然現象」から始まる
社員数が5人、10人の頃は、勢いと近さで回ります。
社長の声が直接届き、誰が何をしているかが見え、暗黙のルールも共有されやすい。
ところが20人を超えてくると、急に見えないものが増えます。会社の成長の流れとして、5名程度→20名程度→100名程度と進み、フェーズごとに必要能力が「営業力」から「組織作り・マネジメント・人材育成」へ移るにもかかわらず、多くの会社は“商売のやり方”の延長で走ってしまう。すると、組織面は無策になり、自然現象が起きます。
自然現象が怖いのは、ゆっくり進むことです。
ある日突然崩壊するというより、少しずつ、しかし確実に現場の温度が下がる。漠然とした不安、不平等感、やらされ感、ワクワクしない職場、価値観のバラバラ化、社長の方針が伝わらない、現場の状況が上に上がらない、個人任せ、モラル低下、採用費の増大、踊り場……と連鎖します。
ここで重要なのは、「管理職が悪い」ではなく、**“仕組みが管理職を形骸化させる”**ことです。
「実務だけ教えて、“組織で働く作法”を教えない」問題
現場の構造原因の核にあるのがこれです。
人が増え、仕事が増えたから採用する。けれど入社時に教えるのは「実務」だけ。すると新人は、会社で地雷を踏みます。やってはいけないことをやり、逆に“評価される動き方”が分からないまま消耗します。
会社が人を増やした時に「求める働き方・考え方」「どうすればうまく生きていけるか」「この会社の歩き方」を教えていないことが問題になります。さらに「意味のない目標設定」「意味が分からない目標設定」を“とにかくやれ”と言われ、仕事が面白くなるわけがない、という状況も起きやすい。
部下はこう感じています。
- 何をすると評価されるのかが分からない
- どんな報連相が正解かが分からない
- どこまで自分で決めていいかが分からない
- 相談すると「自分で考えろ」と言われるが、考える材料がない
- 失敗すると急に怒られる(基準が見えない)
つまり部下の問題というより、**“ルールと期待値が言語化されていない”**状態です。これは管理職個人の能力以前に、会社として「組織で働く作法」を設計していないことが原因になります。
中間管理職の形骸化が、指揮系統・育成・情報流を壊す
中間管理職が置かれているのに、明確な組織化がされていないため、指示系統があいまいで、管理職能力も鍛えられず、障害が発生する。これが「形骸化」の正体です。
典型的に起きるのは、次の3点です。
社長の意志が現場に届かない
社長の意志・情熱・狙いが部下に伝えられない。
これは伝達力の問題に見えますが、実態は「翻訳機能」の不在です。現場の言葉に落とし、日々の判断基準に変換するのが管理職の役割なのに、それを学ばせてもらっていない。結果、社長の言葉は“スローガン”になり、現場は動きません。
現場の実態が上に上がらない
現場の状況を社長に伝えられない。
上からの情熱や戦略が伝えられず、現場の状況も上に上げられず、結果として「情報流がない」状態になります。情報が流れない組織では、意思決定が遅れ、現場は“諦め”を覚え、改善の芽が潰れます。
部下育成が起きず、現場が荒れる
部下への指示・指導ができない、厳しさ(甘さ)だけが目立つ。
育成が“気合”と“叱咤”に寄りやすいのは、育成の型がないからです。型がない組織では、優しい人は放置し、厳しい人は詰める。どちらも部下の成長に繋がらず、現場は疲弊します。
そして最後に決定打になるのが、指揮系統の曖昧さです。
指揮系統があいまいだと、中間管理職の立場が形骸化し、夢が伝わらずマンネリ化し、烏合の衆になっていく。けれど、これは管理職のせいではなく、管理業務をやらせる体制と教育をしてこなかった会社の問題です。
指揮系統が曖昧だと、現場は必ず詰む(「飛ばしパス」の害)
仕事の指示は絶対上司から。社長が“いいからこの仕事やれ”という飛ばしパスは、現場の優先順位と責任を破壊します。課長が部下の24時間を管理するのが仕事であり、部下の時間でどれだけ生産性を上げるかが課長の仕事。だから業務時間の管理は直の課長がやるしかない、という定義が置けなければ、課長は形骸化していきます。
ここは、管理職が明日からでも改善できます。
ポイントは「社長を止める」ではなく、“指示の通り道”を設計することです。
- 業務指示は必ず上司経由(例外の条件も定義)
- 例外が起きたら、課長が優先順位を再設計する権限を持つ
- 社長は教育・方針共有はOK、しかし「今日この仕事をやれ」の業務指示は課長が握る
- 誰が誰の時間を管理しているかを明示する
指揮系統の設計は、現場のストレスを減らし、判断スピードを上げ、部下の安心感を取り戻します。
プレイングマネージャーが“悪い”のではなく、「マネジメント時間が設計されていない」のが問題
「プレイングマネージャーが原因」という議論は、よく感情論になります。
しかし本質は、プレイングのまま“マネジメントが発生していない”ことです。
部下が増えたら本来はフルマネージャーが必要と言われますが、部署のエースを現場から外すのはコストでもあります。そこで現実的には、**「プレイング→フル」へ“徐々に変える”】【マネジメント時間を定義する】**ことが重要になります。
フルマネージャーは「自分の実務を持たず、マネジメントだけフルでやれる人」。その前提として、持たなくても売上・利益が上がる体制(儲かっていること)が必要です。だから「いつ、どの割合で、マネジメントに時間を移すか」を会社として設計し、本人と合意するのが肝になります。
現場で使える形に落とすなら、例えばこうです。
- マネジメント比率を明文化(例:当面20%→半年後40%→1年後60%)
- 育成対象を絞る(全員を一気に育てない。最初は“核”を作る)
- 権限移譲のステップを作る(任せる範囲・判断基準・レビュー頻度)
- 「自分が動いた方が早い」を禁じるのではなく、“動く条件”を決める
プレイングを責めるのではなく、マネジメントが発生する構造を作る。
「管理職のせいではない」──会社の体制と教育の問題として捉える
管理職の方ほど「でも、結局自分がやらなきゃいけないんですよね」と背負いがちです。
ただ、崩れの連鎖は、管理職のせいではありません。管理業務をやらせる体制と教育を行ってこなかったために生じている、会社の問題です。
これは“免罪符”ではありません。
むしろ、管理職にとって最大の武器です。
- 個人の根性論で抱え込まなくていい
- 構造として説明できるから、上司や経営と対話できる
- 対策が「教育」「設計」「定義」に落ちるので、再現性が出る
つまり、あなたが今感じている現場の違和感は、能力不足の証明ではなく、組織が次のフェーズに移ったサインです。
管理職が今日から打てる“構造対策”
ここからは、管理職向けに「最初の一手」を具体化します。ポイントは、派手な施策ではなく、現場が変わる“設計”です。
「組織で働く作法」を言語化する
新人・若手に渡すべきなのは、業務マニュアルだけではありません。
「この会社で評価される動き」「相談の型」「報連相の粒度」「会議での振る舞い」「意思決定の前提」など、暗黙知を“文章と面談”で渡してください。「会社の歩き方」を教えることがここに該当します。
指揮系統のルールを“例外込み”で決める
飛ばしパスをゼロにするのではなく、「例外の条件」を決めます。
誰が優先順位を決めるか、最終責任は誰か、部下の時間を誰が管理するか。課長が部下の時間を管理するという定義が置ければ、現場の混乱が止まります。
情報流の“上り”と“下り”を設計する
社長の意志が現場に下りず、現場の実態が上がらないと「裸の王様」構造になります。
管理職は翻訳者として、
下り:方針→判断基準→現場行動
上り:現場事実→論点→意思決定材料
の型を作ってください。週次の定例に“事実のフォーマット”を持ち込むだけでも効果があります。
マネジメント時間を定義し、育成の優先順位を決める
プレイングのままでもいい。ただし「マネジメントをやる時間」を先に確保しないと、永遠に育成は起きません。
最初は、部下全員ではなく“核”を育てる。核が育つと、チームの生産性が上がり、マネジメント時間が増え、さらに育成が回り始めます。
まとめ:組織が崩れるのは「人のせい」ではなく、設計不足のサイン
組織が崩れる時、現場では人間関係や感情の問題に見えます。
しかし構造として見ると、原因はかなり整理できます。
無策だと組織は自然にダメになる。人数が増えるだけで、儲かるだけで、放っておけば崩れ始める。
その中心には、「実務だけ教えて、組織で働く作法を教えない」ことがあり、結果として中間管理職が形骸化し、指揮系統が曖昧になり、情報流が断絶し、育成が止まります。
だからこそ、管理職がやるべきことは“気合で頑張る”ではありません。
作法を言語化し、指示の通り道を設計し、情報流を作り、マネジメント時間を定義する。これらは再現性のある、実務です。
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