【2025年最新】省エネ補助金「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」とは?要件・採択実績を徹底解説

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池谷 卓
中小企業診断士

約30年以上にわたり、素材メーカーに勤務し、国内外の生産設備・ライン
設計・保全や生産拠点運営、新事業開拓、経営企画、DX推進等を経験。2023年に中小企業診断士として登録。

目次

省エネ補助金の最新動向

2020年、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。これ以降、エネルギー基本計画にも再生可能エネルギーの拡大や省エネ設備の更新、省エネ需要構造の転換などが盛り込まれ、さまざまな支援政策が進められています。

今回取り上げる『省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金』も、そうした施策のひとつです。省エネ設備の更新や構造転換というと、大企業向けの補助金と思われがちですが、この補助金は中小企業の積極的な投資を強力に後押しすることに重点を置いています。実際、令和6年度(令和5年度補正)の採択結果では、全採択件数の約8割が中小企業で占められており、採択率も70%を超える高水準となっています。こうした中、令和7年度(令和6年度補正)からは「中小企業投資促進枠」が新たに設けられ、省エネに取り組む中小企業への支援がさらに拡充されることになりました。また、本補助金の予算規模自体も令和5年度より拡大しました。

今回は、特にこの新しい枠組みである『省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金』の概要についてご紹介します。

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の目的・構成・要件

本補助金は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、産業・業務部門での省エネ設備投資を促進し、省エネルギー化を進めることを目的としています。これにより、内外の環境変化に対応できる安定したエネルギー需要構造の構築を目指しています。つまり、エネルギー使用の効率化、需要の平準化・柔軟化、高い経済性の追求、そして環境負荷の低減を実現するための補助金と言えます。

当該補助金には、

(Ⅰ) 工場・事業型
(Ⅱ) 電化・脱炭素燃転型
(Ⅳ) エネルギー需要最適化型

の3タイプが用意されています。(Ⅰ) 工場・事業型の中には、先進枠、一般枠、中小企業投資促進枠があり、(Ⅱ) と (Ⅳ) には枠の区分はありません。

先進枠は、事前に審査・採用された先進設備・システムへの更新が対象です。一般枠や中小企業投資促進枠では、機械設計・製作を含むオーダーメイド設備や指定設備への更新が可能です。(Ⅱ) 電化・脱炭素燃転型では、化石燃料から電気など低炭素燃料への転換等の指定設備への更新が支援されます。(Ⅳ) エネルギー需要最適化型では、事前登録されたEMS(エネルギー・マネジメント・システム)を活用し、エネルギー使用量の削減や最適化が求められます。

表:要件、補助率などには、それぞれの型・枠ごとの要件や補助対象経費、補助率、補助限度額などを、公募要領をもとにまとめています(その他の申請要件や連携事業の補助金限度額は除いています)。詳細については、公募要領でご確認ください。



<要件、補助率など>

事業区分(Ⅰ)工場・事業場型(Ⅱ)電化・脱酸素燃転型(Ⅳ)エネルギー需要最適型
先進枠一般枠中小企業投資促進枠
事業要件あらかじめ審査・採用された先進設備・システムへの更新機械設計・製作を含むオーダーメイド設備又は指定設備への更新化石燃料から電気など低炭素燃料への転換等の指定設備への更新事前登録されたEMS(エネルギー・マネジメント・システム)を用いてエネルギー使用量削減や最適化
省エネ効果要件(工場・事業場型の場合は、➀、②、③のいずれかを満たす事業)➀省エネ率+非化石割合増加率:30%以上②省エネ量+非化石使用量:1,000kl以上③エネルギー消費原単位改善率:15%以上➀省エネ率+非化石割合増加率:10%以上②省エネ量+非化石使用量:700kl以上③エネルギー消費原単位改善率:7%以上➀省エネ率+非化石割合増加率:7%以上②省エネ量+非化石使用量:500kl以上③エネルギー消費原単位改善率:5%以上補助対象設備として登録及び公表した指定設備への更新補助対象設備として登録及び公表したEMSへの更新し、エネルギー消費分析や運用改善
投資回収要件5年以上5年以上3年以上
補助金対象経費
(中小企業の場合)
設計費・設備費・工事費設備費・工事費設計費・設備費・工事費
補助率
(中小企業の場合)
2/3以内1/2以内(投資回収7年未満:1/3以内)1/2以内
(投資回収5年未満:1/3以内)
1/2以内1/2以内
補助金限度額単年度【上限】
15億円
【下限】
100万円
【上限】
15億円
【下限】
100万円
【上限】
3億円
【下限】
30万円
【上限】
1億円
【下限】
30万円
複数年度【上限】
30億円【下限】
100万円
【上限】
20億円【下限】
100万円

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の採択実績分析

ここでは、採択された事例の補助金交付額の傾向や、採択事業について、工場・事業場型の場合を中心に分析したいと思います。分析の対象は、令和7年度(令和6年度補正)の第1次採択分147件と第2次採択分131件です。

まず、補助金交付決定額の傾向を確認してみます(グラフ:補助金交付決定額分布)。すると、2千万円以上3千万円未満と、1億円以上2億万円未満に、二つのピークがありますが、採択された事業の多くは1億円未満で約7割以上を占めています。さらに細かく見ると、5千万円未満の採択数が全体の5割以上、2千万円未満は約2割となっています。この結果から、多くの採択事業の実投資額は、2億円以下である可能性が高いと考えられます(補助率を1/2と仮定)。交付決定額から見ると、大企業だけでなく、中堅・中小企業でも設備投資ができる事業が多いのだと考えられます。

次に、省エネ施策として取り組みやすく・成果も出やすい(例えば蛍光灯器具のLED照明器具への更新で3割程度の省エネ期待など)、『空調更新』と『照明更新』の、全採択事業に占める割合について調べてみました。その結果、空調と照明の更新が、全体の4~5割を占めていることが分かりました。ちなみに、これら設備更新は、比較的エンジニアリング業務の難易度が低く、中小企業でも取り組みになります。

以上のことから、冒頭でご紹介した「全採択件数の約8割が中小企業による事業」という事実は、採択結果からも裏付けられると言えそうです。

まとめ:中小企業が省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金を活用するための次のステップ

多くの中小企業関係者は、本補助金の要綱を見ると「中小企業では取り組みにくい」と感じると思います。しかし、先に紹介した採択結果やご説明した今回の分析からも明らかなように、本補助金は、実際に中小企業の省エネ活動を積極的に支援する制度であり、実際に多くの中小企業が活用しています。

補助金を活用した中小企業は、工場や設備などのインフラ整備を進めながら、コスト削減と環境負荷の削減を実現し、戦略的に競争力を高めていると考えられます。

省エネルギーにご興味のある中小企業皆様が、本補助金をはじめとする支援制度を通して省エネを進めることは、非常に有意義な取り組みであると思います。今回のご紹介が、その一助になれば幸いです。

当社3Rマネジメントでは、中小企業の省エネルギーに関する支援に豊富な実績があります。今回ご紹介した補助金に限らず、省エネルギーに関する伴走支援をご希望の方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

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本稿は、令和6年度補正予算に基づく『省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金』第三次公募要領等をもとに概要を整理したものです。

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中小企業診断士
技術士

約30年以上にわたり、素材メーカーに勤務し、国内外の生産設備・ライン
設計・保全や生産拠点運営、新事業開拓、経営企画、DX推進等を経験。2023年に、中小企業診断士として登録。

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