「採択」と「交付決定」の違いとは?補助金で失敗しないための基礎知識

執筆者
中小企業診断士 金親正和のプロフィール写真

金親 正和
中小企業診断士

中小企業診断士 / 宅地建物取引士 / 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士 / 管理業務主任者 / 防災士

大学卒業後、総合不動産会社にて不動産の企画・開発、賃貸物件のリーシング・管理(5,000室)、売却(半年間で46物件)と入口から出口までの業務に従事。
現在は、「補助金を通じて、中小企業経営者の皆様を支えたい」という思いから、各種補助金の申請支援に注力している。

\認定支援機関!補助金のプロの中小企業診断士がサポート/

目次

はじめに:補助金申請の流れを正しく理解していますか?

補助金を申請するにあたって、多くの中小企業が陥る誤解の一つが「採択されたらすぐにお金が使える」という認識です。

しかし、実際には「採択」と「交付決定」はまったく異なる意味を持ち、それぞれの段階で取るべき手続きと注意点が存在します。

この違いを正しく理解していないと、採択されたにもかかわらず、補助金を受け取れないということにもなりかねません。

本記事では、補助金申請における重要な2つのステップ「採択」と「交付決定」の違いを明確にして、実際のトラブル事例や専門家の活用方法も含めて、正しく補助金が活用できるように解説します。

「採択」とは何か?

(1)採択通知の意味

「採択」とは、提出した補助金申請書が審査を経て、制度の対象事業として選ばれた状態を指します。言い換えれば、「あなたの事業は補助金を受けるに値すると評価されました」という一次的な合格通知です。

(2)採択されたらすぐ使えるわけではない理由

採択されたからといって、すぐに補助金が支払われたり、事業に着手できるわけではありません。

これは、多くの補助金制度において「交付決定」となってから正式に補助事業の開始と定めているためです。

採択はあくまで”内定”であり、本採用である”交付決定”に至るには、資金の使途や事業計画の詳細を提出し、改めて精査を受ける必要があります。

「交付決定」とは何か?

(1)交付決定通知が意味すること

「交付決定」とは、補助金事務局が申請内容(交付申請書)を審査し、「この計画に対して、補助金を交付することを正式に認めます」と通知することです。

この通知を受けた段階で、初めて補助事業に着手できます。

(2)このタイミングから着手できる事業とは

交付決定を受けて初めて、

  • 設備の発注(見積取得~契約~発注)
  • 工事の開始
  • ソフトウェア導入や委託契約の締結

など、実効的な支出が可能となります。

仮に採択直後にこれらの行動をとってしまうと、”補助対象経費”として認められず、結果的に補助金が受け取れないリスクがあります。

採択と交付決定の違い

項目【採択】【交付決定】
意味申請した内容が評価された状態補助金の支出が正式に認められた状態
通知タイミング審査後(公募終了から1~2ヶ月後)採択通知後、交付申請の提出・審査後(+1~2ヶ月後
実行可否事業着手・契約・支出は不可正式な事業着手が可能
必要手続き補助金申請書類の提出交付申請書、見積書、資金計画、実施体制等の提出

採択後に注意すべき落とし穴

(1)交付申請書の準備不足

採択後、事業者が軽視しがちな手続きが交付申請書の作成です。

これは単なる事務処理ではなく、補助金事務局に対して「具体的にどう予算を使い、どのような体制で実施するか」などを詳細に説明する書類です。

要件に不備があると、差し戻しや再提出が発生し、事業着手が大幅に遅れます。

(2)予算の修正による再提出リスク

採択時点では概算だった経費内訳も、交付申請では具体的な見積書を基に確定します。

見積額が申請額とズレると、予算配分の修正が必要になり、交付申請のやり直しが発生することもあります。ここでも適切な準備が不可欠です。

実際にありがちなトラブル例

(1)採択後に設備発注 → 経費対象外に

ある中小企業は採択通知を受けた直後、急いで機械設備を発注しました。しかし交付決定前だったため、当該契約は補助対象経費とならず、全額自己負担となってしまいました。

(2)着工タイミングの誤認による補助対象外

別の事例では、工事着工が交付決定の2日前に始まっていたため、対象外と判断されました。事業者は「どうせ採択されたのだから」と判断しましたが、規定は厳格です。「1日でも早い着工」は命取りになります。

専門家に相談するメリット

(1)採択後の手続きサポート

採択後の交付申請や実績報告、精算処理は煩雑で時間がかかります。中小企業診断士などの補助金に精通した専門家に依頼することで、書類不備による差し戻しや申請遅延を防げます。

(2)経費の精査・申請書の再構成

専門家は見積内容や経費の妥当性を客観的にチェックし、不採択リスクの低い構成に再設計してくれます。特に、ものづくり補助金などは、経費区分や要件が細かく設定されており、素人判断では不備が出やすい制度です。

まとめ

補助金の制度を正しく活用するには、「採択」と「交付決定」の違いを明確に理解することが最初の一歩です。

採択されたからといって油断せず、交付申請や事業計画の精緻化、実行スケジュールの確認を怠らないことが、補助金を最大限活用するコツです。

また、補助金は公的な資金である以上、手続きには厳格さが求められます。少しの油断や思い込みが、大きな損失に直結する可能性もあります。

不安がある場合は、早期から中小企業診断士などの専門家の力を借りることで、スムーズかつ確実な補助金の活用が可能になります。

補助金は「採択されたら終わり」ではなく、そこからが本当のスタートです。

\認定支援機関!補助金のプロの中小企業診断士がサポート/

執筆者

1978年 千葉県生まれ

中小企業診断士
宅地建物取引士 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士 管理業務主任者 防災士

大学卒業後、総合不動産会社にて不動産の企画・開発、
賃貸物件のリーシング・管理(5,000室)、売却(半年間で46物件)
と入口から出口までの業務に従事。

現在は、補助金を通じて、中小企業経営者の皆様を支えたい
という思いから、各種補助金の申請支援に注力している。

目次