利益改善のための打ち手と優先順位——「どこから手を付けるか」で成果が決まる
「売上はそこそこあるのに、利益が残らない」
「経費削減をしても、なぜか改善が続かない」
「何から着手すべきか分からず、毎月の対策が場当たりになる」
利益改善の相談で多いのは、打ち手がないわけではなく、優先順位が設計されていないことです。利益は、売上・原価(変動費)・固定費・運転資金の動きが絡み合って決まります。
どこから手を付けるかを間違えると、頑張っているのに成果が出ない、あるいは短期的に良く見えても反動が来る、といったことが起きます。
この記事では、利益改善の打ち手を「効く順番」に整理し、実務で使える優先順位の付け方をまとめます。
1. 利益改善の全体像:改善の軸は4つあります
まず、利益を決める構造をシンプルに押さえます。
- 売上 − 変動費(原価)= 粗利
- 粗利 − 固定費(販管費)= 営業利益
- 営業利益 ± 金利等 = 経常利益
- 経常利益 ± 特別損益 − 税金 = 当期純利益
したがって、利益改善の軸は次の4つに整理できます。
- 粗利を増やす(粗利率を上げる/粗利額を増やす)
- 固定費を最適化する(削る/固定度を下げる/生産性を上げる)
- 金融コスト・返済負担を整える(経常利益と資金繰りを守る)
- 運転資金を改善する(利益をキャッシュに変える)
※ここでは便宜上、売上に連動しやすい費用を「変動費(原価)」として扱います。人件費や外注費は契約形態・業務設計によって固定費にも変動費にもなり得ます。
優先順位の基本は、「構造に効く順」「再発しにくい順」です。
2. 優先順位①:粗利率を守る(値決め・値引き・商品構成)【止血】
利益改善で最初に点検したいのは、粗利率(売上総利益率)です。粗利は、販管費や投資の原資であり、ここが薄いままでは固定費を削っても限界があり、売上を増やしても疲弊しやすくなります。
粗利率の低下は、利益が残らなくなる“典型的な出血点”になり得るため、まず止血として優先します。
打ち手(粗利率の改善)
- 値引きルールの明確化:例外の連鎖を止め、値引きの条件(数量・納期・仕様など)をセット化する
- 価格の見直し(値上げ):全体一律ではなく、負荷が高いサービス・繁忙期・短納期から着手する
- オプション化・追加課金設計:追加要望を無料で抱え込まない
- 商品・顧客構成の見直し:低粗利の受注が全体を引っ張っていないかを確認する
- 原価転嫁の仕組み化:仕入高騰を価格に反映できる条件・タイミングを設計する
粗利率は一度崩れると戻しにくい指標です。だからこそ最優先に位置づけ、「粗利を守るルール」を会社の標準にしていきます。
3. 優先順位②:原価(変動費)を下げる(ムダ・手戻り・外注構造)【設計】
粗利率の止血ができたら、次は原価(変動費)の改善です。ここでいう原価改善は、安易な品質低下や仕入れの低品質化ではなく、ムダと手戻りを減らして、同じ価値をより低コストで提供する方向です。
打ち手(原価改善)
- 手戻り削減:ミス、やり直し、確認の往復を減らす(チェックリスト・テンプレ・工程設計)
- 標準化:個別対応を減らし、提供プロセスを型化する
- 外注費の設計見直し:固定契約→案件契約へ、仕様の明確化で再作業を減らす
- 仕入条件の見直し:まとめ買い、仕様統一、代替調達先の検討
- 現場の段取り改善:動線・段取り・待ち時間を減らして、実質的な原価を下げる
原価改善は、現場の負荷も下げやすいのが特徴です。結果として品質が安定し、クレーム対応のコストが減り、さらに利益が残るという好循環が生まれます。
4. 優先順位③:固定費を“削る”より、まず固定度を下げる【設計】
利益が出ない会社ほど「固定費を削ろう」という発想に寄りがちです。しかし固定費の削減は、やり方を間違えると成長の芽を摘みます。重要なのは、単純な削減よりも、固定費を柔らかくする(固定度を下げる)ことです。
打ち手(固定費の最適化)
- サブスク・保守契約の棚卸し:使っていない固定費を止める(即効性が高い)
- 外注契約の固定化を解消:月額固定→成果物・案件ベースへ(売上変動に強くなる)
- 人件費の設計:固定給100%から、短時間雇用・業務委託・歩合なども組み合わせる
- 拠点・設備の見直し:持つ→借りる、稼働に合わせて調整できる形にする
- 広告費の上限設計:固定費化しやすい投資を、粗利から上限を逆算して管理する
固定費が重い会社は損益分岐点が高くなります。固定度を下げると、売上が多少落ちても赤字化しにくくなり、資金繰りの不安も減ります。
5. 優先順位④:営業利益を守るための「生産性改善」【加速】
固定費を下げずに利益を増やす強力な方法が、生産性の改善です。これは「同じ人数・同じ時間で、より多くの粗利を生む」状態をつくることです。
“削る”ではなく“増やす”改善として、効果が持続しやすい領域です。
打ち手(生産性改善)
- 業務の可視化:付加価値を生まない作業(移動、二重入力、確認の往復)を洗い出す
- 業務の整理と権限設計:決裁待ち、差し戻しを減らす
- テンプレ化・マニュアル化:属人性を下げ、品質を安定させる
- ツール導入は目的から:削減したい時間・ミスを明確にし、効果検証まで行う
- 案件別採算の把握:儲かる案件にリソースを寄せる(“忙しいのに残らない”を潰す)
生産性改善は、採用を増やさずに売上を伸ばす基盤にもなります。結果として固定費の増加を抑えながら成長でき、利益の伸び方が変わります。
6. 優先順位⑤:資金繰りを改善して「利益をキャッシュに変える」【加速】
利益が出ているのに苦しい会社は、利益がキャッシュになっていないことが多いです。売掛金の回収、在庫、借入返済の影響で、利益と現金がズレます。利益改善を実感につなげるには、運転資金の改善が欠かせません。
打ち手(運転資金改善)
- 回収サイトの短縮:請求の早期化、分割請求、入金条件の見直し
- 滞留債権の管理:売掛金の年齢管理を行い、遅れの兆候を早期に掴む
- 在庫の適正化:回転の可視化、過剰在庫の削減、廃棄ロスの削減
- 支払いサイトの調整:仕入先との交渉でキャッシュアウトを平準化する
- 投資と返済の計画:設備投資が資金繰りを圧迫しない設計にする
運転資金の改善は、利益率を変えなくても資金繰りが改善するケースがあり、心理的な余裕を生みます。余裕があると、粗利改善や生産性改善の施策も進めやすくなります。
7. 優先順位を決める「現場で使える判断基準」
最後に、着手順を迷わないための判断基準をまとめます。
判断基準①:粗利率が下がっているなら最優先で止血
粗利率悪化は、値引き・原価高騰・低粗利受注の増加など、構造の崩れのサインです。ここを放置して売上を追うと、忙しいだけで利益が残らない状態になりやすいです。
判断基準②:固定費が重く損益分岐点が高いなら、固定度の見直し
少しの売上減で赤字になるなら、固定費の硬さが原因です。削減より先に、変動化できる部分を探します。
判断基準③:現場が逼迫しているなら、生産性改善を先に
稼働余力がない状態で売上を増やすと、品質が落ち、手戻りが増え、原価が上がります。まずは工程のムダを減らし、提供体制を整えます。
判断基準④:黒字なのに苦しいなら、運転資金改善を優先
利益とキャッシュのズレを解消すると、次の施策に投資する余力が生まれます。
まとめ:利益改善は「粗利 → 原価 → 固定度 → 生産性 → 運転資金」の順が基本
利益改善は、打ち手の数が多いからこそ順番が重要です。おすすめの基本順は次の通りです。
- 粗利率を守る(値決め・値引き・商品構成)
- 原価(変動費)を下げる(ムダ・手戻り・外注構造)
- 固定費は削減より固定度を下げる(柔らかい構造へ)
- 生産性改善で、固定費を増やさず粗利を増やす
- 運転資金を整え、利益をキャッシュに変える
この順で進めると、場当たりではなく、構造として利益が残る体質に近づきます。
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