経営者が押さえるべき「組織のオリジナリティ」設計──管理職を育て、会社の強みと企画力を持続させる方法

目次

経営者が押さえるべき「組織のオリジナリティ」設計

経営者の方が組織づくりを考えるとき、よくある悩みがあります。
それは、「うちの会社らしさをどう組織に反映すればいいのか」という問いです。

理念を掲げることはできる。行動指針も作れる。管理職研修の必要性も理解している。けれど、どこまでが多くの会社に共通する土台で、どこからが自社独自の設計なのかが見えにくい。この点で立ち止まる企業は少なくありません。

今回のテーマで繰り返し語られていたのは、組織づくりの大部分には共通項がある一方で、残りの一部には会社ごとの「味付け」が必要だという考え方です。中小企業の多くは、まずは協力し合い、育て合い、管理職が現場をまとめるメンバーシップ型の土台を作ることが重要であり、そのベースだけでも組織の8割は機能する。けれど、最後に成果の差を生むのは、その会社がどこを強みとして伸ばすのか、どんな人材が集まりやすいのか、どの企画機能を誰が担うのかといった“オリジナル部分”です。

つまり、組織のオリジナリティとは、感覚的に「うちらしさ」を語ることではありません。
経営者が自社の商売、採用、現在のメンバー特性、そして将来の変化まで見据えたうえで、「この会社は何で勝つのか」「そのためにどんな管理職と組織機能が必要か」を言語化することです。

この設計ができると、管理職育成の意味が一気に変わります。
単に現場を回す人を増やすのではなく、経営者の代わりに組織を動かし、強みを再現し、会社の未来をつくる人材を育てることになるからです。

組織づくりの土台と会社ごとのオリジナリティは何が違うのか

多くの企業では、組織づくりというと、つい制度や評価の話から入りがちです。
しかし、組織戦略とは、事業戦略を実行する部隊をどのように作り上げるかという視点で考えるべきものです。理想の組織を定義し、それに近づく施策群として組織づくりを捉える必要があります。そこには、儲け続ける仕組み、社員が自然と頑張る仕組み、永続性を実現する仕組み、優秀な社員を複製する仕組み、新しい発想を生み出す仕組みなどが含まれます。

そして重要なのは、メンバーシップ型の組織を目指す中小企業では、組織定義のかなりの部分が共通しやすいという点です。
たとえば、管理職がチームをまとめること、若手を育てること、ルールや文化を整えること、協力し合う前提を作ることなどは、多くの会社で必要です。ここは、いわば組織の基礎工事です。基礎工事が不十分なまま、「うちならでは」を語っても、建物は不安定になります。

一方で、会社が本当に差別化されるのは、その先です。
何を“強み”として伸ばすのか。どの能力を会社の核として磨くのか。どんな人材なら採用でき、どんな人材なら育つのか。現メンバーの特性を踏まえると、どこに勝ち目があるのか。これらは会社ごとに違います。

だからこそ、経営者に必要なのは、「全部を独自化しよう」と気負うことではありません。
まず土台はしっかり共通項で固める。次に、その上で自社だけの勝ち筋を定義する。この順番が大切です。組織づくりは統合的な施策であり、施策の順序がとても重要で、2〜3年かけて進めるものです。

会社ごとのオリジナリティを組織に加える方法

会社ごとのオリジナリティを探るうえでは、社長の思い、社長の活かし方、事業の寿命、事業戦略の明確さ、組織特性、現状の課題といった要素を整理することが大切です。ここで特に経営者にとって重要なのは、「自分が何を望むか」だけでなく、「自分をどう活かすと会社が強くなるか」まで考えることです。

経営者はしばしば、自分が何でもやったほうが早いと思いがちです。
実際、創業期や拡大初期はその通りでしょう。営業も商品企画も採用も、社長が先頭に立ったからここまで来られた会社は多いはずです。

しかし、会社が成長すると、それは強みであると同時に限界にもなります。
社長しか企画できない。社長しか強みを説明できない。社長しか顧客に刺さる言葉を持っていない。こうした状態では、売上は一時的に伸びても、永続性は生まれません。なぜなら、社長の時間と体力がボトルネックになるからです。

だからこそ、「社長の活かし方」を再設計する必要があります。
社長はどの勝負どころで前に出るべきか。逆に、何を管理職や幹部に移すべきか。社長が武器になるなら、その武器を最も効果的に使うために、組織はどうあるべきか。社長の強みを見極め、組織がどうなれば社長は自由に動けるかを考えることが、オリジナリティ設計の一部になります。

経営者の仕事を楽にするとは、単に業務を減らすことではありません。
社長が本来やるべき高付加価値の仕事に集中できる状態を作ることです。そのためには、管理職が現場管理だけでなく、企画や改善や育成の一部を担える存在に育たなければなりません。

何を強みとして伸ばすのかは商品ではなく組織能力で決める

経営者が自社の強みを語るとき、「商品がいい」「サービスがいい」「お客様との関係がいい」と表現することがあります。もちろんそれ自体は間違いではありません。ですが、本当に重要なのは、そのさらに奥にある「源泉」です。つまり、なぜその商品やサービスが成立しているのかを支える組織能力です。

ビジネスモデルや商品そのものではなく、それを生み出している無形のノウハウや技術力こそが重要です。技術力、販売力、企画力、人材力、採用力、改善力、育成力、文化力など、組織や人が持つ力を事業運営を通じて磨き上げることで、他社が簡単には追いつけない競争力になります。しかも、これは今ある状態だけで決めるのではなく、今後の事業戦略から逆算して新しく定義してもよいものです。

ここは、経営者にとって非常に大きな視点です。
なぜなら、強みを「今売れているもの」で定義すると、市場環境が変わった瞬間に弱くなるからです。一方で、強みを「組織として持ち続けられる能力」で定義すれば、商品や市場が変わっても応用が利きます。

たとえば、営業が強い会社というだけでは抽象的です。
けれど、「顧客の潜在課題を引き出して継続提案に変える営業力」が強い、「難しい案件を標準化して新人でも再現できる育成力」が強い、「現場改善を高速で回せる管理力」が強い、と定義できれば、採用、育成、会議、評価、管理職教育の方向性が見えてきます。

つまり、強みを定義するとは、経営判断の軸を作ることです。
何を採るか。何を教えるか。誰を昇格させるか。どこに予算を張るか。どの事業を伸ばすか。これらの判断が、一本の軸でつながるようになります。

採用できる人材と現メンバー特性から強みを考える重要性

強みの定義で陥りやすい失敗があります。
それは、経営者が理想だけで考えてしまうことです。

「もっと優秀な人が来ればできる」
「本当はこういう会社にしたい」
「一流企業のような組織にしたい」

その思い自体は大切です。ですが、組織戦略は願望だけでは成立しません。
その会社が得意とするところは何か、今どういうメンバーが集まっているのか、これからどんな人が採用できるのかといった条件を見ていくと、おおむね会社の組織のあり方は見えてきます。

つまり、自社の強みを考えるときには、現実の採用市場と現メンバーの特性を直視する必要があります。
たとえば、突出した専門人材を大量採用できる会社ではないのに、ジョブ型で個人の専門性に全面依存する組織を目指しても、うまくいきにくいでしょう。逆に、若手や未経験者が比較的採用できる会社なら、育成力や管理職の現場支援力を強みにしたほうが持続的です。

経営者が本当に見るべきなのは、「理想の人材像」だけではありません。
「今のメンバーで勝てる形は何か」「これから採れる人材を前提にすると何が勝ち筋か」です。

ここで管理職育成が重要になります。
優秀な人材を外から集めきれないなら、管理職が今いる人材を戦力化できるかどうかが、企業成長の分かれ道になるからです。管理職が人を育て、再現し、現場をまとめ、強みを日々の行動に落とし込めるようになれば、経営者が細かく介入しなくても会社は回り始めます。

永続性のある会社に必要な企画力とは何か

今回のテーマの中でも、特に経営者・経営陣に強く刺さるのがこの論点です。
会社の永続性とは、単に長く続くことではなく、変革できること、新しいことを生み出せることです。そして、そのために重要なのが「企画力をどう維持するか」です。

多くの会社では、実務を回すことに追われて、企画機能が曖昧になりがちです。
営業は営業をする。製造は製造をする。管理部は管理をする。みんな忙しい。けれど、気づけば「次の一手」を考える人がいない。新商品を誰が考えるのか、新サービスを誰が考えるのか、業務改善を誰が考えるのか、組織改造を誰が考えるのかが曖昧なまま、日々が過ぎていくのです。

だからこそ、経営企画、事業企画、商品企画、業務企画、現場企画といった企画機能を俯瞰し、どの企画力をどのポストまたは部隊に任せるのかを定義することが重要です。また、その企画力を強化する方法として、研修で教える、できる人の下につける、実際にやらせるという方向性で育てていく必要があります。

これは経営者の仕事を大きく変えます。
なぜなら、社長一人で未来を考え続ける会社から、管理職や幹部が未来づくりに参加する会社へ移行できるからです。

たとえば、営業部長は営業戦略の企画を担う。
工場長は生産改善の企画を担う。
管理部長は人材育成や制度運用の改善企画を担う。
課長は現場の実行管理だけでなく、小さな改善提案を起案する。

こうして「誰が何を企画するか」が明確になると、管理職は単なる中継役ではなくなります。
経営の一部を担う存在になり、経営者の仕事が確実に軽くなります。同時に、会社の変化対応力が高まり、成長も持続しやすくなります。

管理職育成が経営者の仕事を楽にし企業成長につながる理由

経営者の負荷が高い会社には、共通する構造があります。
社長が意思決定し、社長が方向性を示し、社長が人を叱咤し、社長が問題社員に対処し、社長が営業の最後を締め、社長が採用を見て、社長が組織の違和感を拾っている。つまり、組織の定義も、実行管理も、企画も、多くが社長に集中しています。

これでは、どれだけ経営者が優秀でも、会社は社長の器以上には伸びにくくなります。

管理職が本来担うべき役割は、単に部下の勤怠を管理することではありません。
与えられたミッションをメンバーに振り分け、実行を管理し、必要な調整や助言を行い、部下育成や改善案の起案まで担うことです。つまり、管理職が機能するとは、組織を前に進める装置になることです。

経営者が管理職育成に本気で取り組むべき理由はここにあります。
管理職が機能すれば、社長が毎回口を出さなくても、現場が動きます。若手が育ちます。小さな問題がその場で潰れます。改善案が上がってきます。現場の温度感が社長に届きます。結果として、社長は本来の仕事に集中できます。

本来の仕事とは何か。
事業の方向を定めることです。
投資判断をすることです。
大口顧客や重要な提携に向き合うことです。
将来の勝ち筋を描くことです。

つまり、管理職育成は現場のためだけではありません。
経営者の時間を取り戻し、会社を次の段階に進めるための経営施策なのです。

経営者が今やるべきことは強みと企画の担当者を明確にすること

ここまでの内容を踏まえると、経営者・経営陣が今やるべきことは明確です。

まず、自社の土台となる組織定義を整えること。
そのうえで、自社のオリジナリティを「何を強みとして伸ばすのか」という形で定義すること。さらに、その強みを磨き続けるために、誰が何を企画するのかを明確にすることです。

このとき、注意したいのは、強みを抽象論で終わらせないことです。
「うちは人がいい会社です」では足りません。
「うちは育成力が強みである」なら、どの階層の誰が何を教えるのか。
「うちは提案力が強みである」なら、その型をどう共有するのか。
「うちは改善力が強みである」なら、どの会議体で改善案を出し、誰が起案し、どう実行するのか。
ここまで落とし込んで初めて、組織のオリジナリティは成果につながります。

そして、この実装の要が管理職です。
経営者がいくら正しいことを考えても、管理職が動かなければ現場は変わりません。逆に、組織の定義を理解し、強みを日々の行動に変換し、企画や改善の役割を担える管理職が育てば、会社は着実に変わり始めます。

組織づくりは一足飛びには進みません。
だからこそ、経営者は焦って制度だけを入れるのではなく、順番を守りながら、管理職を通じて会社の定義を浸透させていく必要があります。

自社のオリジナリティをつくるとは、特別な奇策を打つことではありません。
自社の商売と人材に合った勝ち筋を定義し、それを管理職が再現し、改善し、次の世代に渡せるようにすることです。
それができたとき、経営者の仕事は確実に楽になります。
そして、会社は“社長が頑張る会社”から、“組織で成長する会社”へと変わっていきます。

管理職育成を通じて経営を楽にしたい経営者の方へ

管理職が育つと、経営者が一人で抱え込んでいた仕事を組織に渡せるようになります。
現場がまとまり、育成が進み、改善や企画が社内で回り始めると、会社の成長は経営者の属人性から少しずつ離れていきます。

「管理職を育てたいが、何から始めればいいかわからない」
「組織の定義を作りたいが、言語化しきれていない」
「経営者に負荷が集中しており、次の成長段階に進めない」

そのような課題をお持ちの経営者・経営陣の方は、無料セミナーをご覧ください。
管理職育成を起点に、組織をどう整えれば経営が楽になり、企業成長につながるのかを具体的に学べます。

あわせて読みたい
管理職研修導入オンライン説明会 1時間で概要がわかる無料セミナーに参加する! 中小企業オーナーの皆様こんな悩みはありませんか?   「社長の指示待ち」が常に起こっており、従業員(役員・幹部含む)...

執筆者

中小企業診断士
(株)3Rマネジメント 代表取締役 https://3r-management.jp/
(株)IoTメイカーズ 代表取締役 https://www.iot-makers.co.jp/

約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。

目次