無策だと組織は自然に壊れる:人数増加と“儲かった後”に管理職がやるべきこと
組織は「無策」だとダメになる、という前提
組織が崩れるとき、現場ではだいたい同じ会話が起こります。
「社長が悪い」「あの部署が悪い」「最近の若手が…」と、原因探しが“犯人探し”に変わっていく。けれど、重要なのは真逆の捉え方です。
無策だと組織はダメになる。
そして、その大きな原因は次の2つで、どちらも“自然現象”として語るべきだ、という考え方です。
人数が増えるだけで組織はダメになる。儲かっているだけで組織はダメになる。
ここで「自然現象」と呼ぶことには、実務上の大きな意味があります。うまくいかないと誰かのせいにしたくなるけれど、「自然現象ですよ」と置くことで、誰も傷つけずに“対策の議論”に移れる。知らなかっただけで、分かれば対策できる——その空気を作れるのが、管理職の重要な役割になります。
原因:人数が増えるだけで組織はダメになる
会社は成長すると、必要な能力が変わります。
少人数の時期は「売る」「当たりを見つける」に全振りでも回りますが、一定規模を超えたあたりから、必要なのは“組織づくり・マネジメント・人材育成”に移っていきます。
ところが多くの現場では、人数が増えてもやり方が変わりません。結果として、組織には典型的な“症状”が出始めます。
社内に広がる漠然とした不安・不信。
給与や評価、扱いへの不平等感。
やらされ感が増え、職場が活性化しない。
価値観や仕事観がバラバラな人が集まり、一体感が消える。
ルール化が進むほど「言われたことしかやらない」空気になる。
トップの方針は現場に伝わらず、現場の実態も上に上がらない。
気づけば事業は個人任せで、モラルが落ち、採用費だけが膨らむ。
怖いのは、これが「一部のダメ会社」ではなく、一定規模で“普通に起こる”こと。だからこそ、自然現象として先に認識しておく価値があります。
なぜ起きるのか:増員はしても「会社の歩き方」を教えていない
人数が増えるとき、会社は仕事を中心に組織を編成し、仕事が増えたから人を増やします。ここまでは自然です。
問題は、入社時に「求める働き方・考え方」を伝えないまま、実務だけ教えること。会社でどう生きると評価され、どう成長すると報酬が上がるのか。つまり“会社の歩き方”が共有されないまま人だけ増えていく。
その結果、実務ができる人、古くからいる人がリーダーになり、リーダーに何をすべきかは教えられず、リーダー自身も実務を持ち続けます。将来を見据えた組織づくりも人づくりも後回しになり、事業戦略と組織づくりは連動しない。そうなると、従業員は会社の将来も自分の将来も見えず、不安になる——「組織が機能するはずがない」という状態が出来上がります。
ここで押さえたいのは、原因を“管理職の能力不足”に短絡しないことです。形骸化したリーダーを生み出したのは会社側の設計・教育不在であり、個人攻撃にしても何も前に進みません。
管理職が打てる現実的な手:3つの「流れ」を回す
管理職が組織を立て直すとき、立派な制度より先に、まず“流れ”を作るのが効きます。
方針が現場に届く流れ
トップの意志や狙いを、現場の言葉に翻訳して届けることが必要です。現場が動くのは、勝てると思えたとき、いけると思えたときです。方針が抽象的なままだと、人は動けません。
現場が上に上がる流れ
現場の温度感、詰まり、摩擦を、上に“届く形”にして返す。これが途切れると、上は現場を見誤り、現場は不信をため込みます。
育成が日常で回る流れ
「教える時間」を業務として確保しないと、育成は永遠に起きません。特にプレイング比率が高い組織ほど、育成が“善意”扱いになって潰れます。
一定規模になれば、管理職がフルタイムでマネジメントする発想も必要です。少なくとも「部下の時間を管理し、生産性を上げる」のが管理職の仕事だと定義できないと、指示系統は曖昧になり、管理職は形骸化します。
ここまでを「誰かを責めずに」やり切るのが難しいからこそ、“自然現象”の言葉が効きます。責めずに整理し、仕組みで戻す。これが腕の見せ所です。
原因:儲かると組織はダメになる(“儲かった後”の落とし穴)
売上・利益が伸びるのは、本来おめでたいことです。強い商流や商品・サービスがあり、ブランドも育つ。会社が目指してきた状態です。
しかし、ここで放置すると「組織リスク」が自然に増加していきます。
なぜなら、儲かり始めると次のことが“成立してしまう”からです。
本気を出さなくても儲かる。
管理職が機能しなくても儲かる。
無駄な管理職が多くても儲かる。
社員がバラバラでも儲かる。
変化する気がない、成長する気がない、問題意識がない、頭を使わない状態でも儲かる。
つまり、儲かること自体が「改善しなくても生き残れる空気」を作ってしまう。これが“儲かっちゃったリスク”です。
ただし、状況は必ず変わります。商品も商流もブランドも老いていく。うまくいっている時こそ、危機感を持って、組織・人材・仕組みを強化しないと、変化局面で耐えられません。
儲かった後の「ゆるみ」は、管理職の設計で止められる
儲かっている会社ほど、管理職の腕が問われます。理由は単純で、「今のままでも回る」状態だと、人は変わらないからです。
だから管理職がやるべきは、恐怖で締めることではなく、次の2つをセットで作ることです。
危機感の共有
“勝っている今”こそ、改善点を言語化する。状況が変わった時に何が起きるかを、具体で語る。会社が良い時ほど「このままで大丈夫」という空気が強くなるため、そこに対抗するのは管理職の仕事になります。
成長が得になる仕組み
頑張っても頑張らなくても同じなら、組織は必ずゆるみます。評価・任用・役割設計を、成長と結びつけ直す。特に「管理職が機能しなくても儲かる」状態を放置すると、管理職ポストが“肩書き”になり、現場は一気に荒れます。
「自然現象」として語る意味:犯人探しをやめ、対策を前に進める
人数が増えた。儲かった。どちらも経営としては前進です。
それでも組織は自然に崩れる。だから、悪者探しではなく“現象理解”から入る。
現場では、他責に寄るほど成長が止まります。「俺は悪くない」が癖になると、自己改善が止まり、組織も止まる。だからこそ、管理職は“責めない整理”をしつつ、改善の打ち手に全員を向かわせる必要があります。
今日からできる、組織崩壊を防ぐ着手点
大掛かりな制度改定をしなくても、まずはここから始められます。
オンボーディングを「実務だけ」から変える
会社の期待する働き方、評価される行動、注意点、出世の道筋を、言葉にして渡す。新メンバーに“会社の歩き方”を提供するだけで、不安と摩擦は大きく減ります。
管理職の仕事を「実務」から切り分ける
プレイヤーとしての成果を評価し続ける限り、育成は起きません。部下の時間を管理し、生産性を上げることを職務として定義し、実務比率を計画的に下げる。
“儲かっている今”に危機感と改善をセットで入れる
状況が変わった時に何が起きるかを具体化し、組織・人材・仕組みを先に強化する。儲かっている時ほど、手を打つ余力があります。
まとめ:組織は放っておくと自然に壊れる。だから管理職が「先に」動く
組織は、悪者がいるから崩れるのではありません。
人数が増えれば、伝達も育成も評価も複雑になり、自然にほころびます。儲かれば、頑張らなくても回る空気が生まれ、自然にゆるみます。
だからこそ管理職は、犯人探しを止めて“自然現象としての崩れ”を前提に、仕組みで戻す。これをやり切るだけで、組織は驚くほど持ち直します。
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