「価値をつくる」問題把握の考え方と解決に向けた思考プロセス | Part3
長澤 秀幸
経営コンサルタント
Will Partners 代表
商工業者の支援を行う浜松商工会議所に20年間勤める中で、経営者が持つ「強み」に寄り添って、「納得」から伴走者として信頼していただき一緒になって展開するスタイルを確立。
「価値を顧客に伝えるビジネスプロセスの創出・再構築」こそ「売れる仕組みづくり」につながり、事業拡大や事業承継までつながっていくことを実感。
2019年独立。「強みと顧客を巻き込んだ」販売戦略、ブランドをづくり、小さな企業が持つ、独自の強み(宝モノ)を発掘し、持続可能な経営と売上づくりを実践。
本シリーズは三部制で、上記の動画は「Part.3」です。
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はじめに
今回は、「『価値をつくる』問題把握の考え方と解決に向けた思考プロセス」のパート3をお話します。
仮説検証・説明・意思決定のプロセス
問題解決にあたっては、仮説を立て、関係者に説明して共有し、そこから意思決定をしていくというプロセスを辿ることが重要です。
1つ目は、仮説検証です。
仮説検証は、関係者の多様な視点から「ここの辺りに問題があるんじゃないか?」というポイントの当たりを付けることです。当たりを付けることによって問題の重点が共有でき、着眼点が生まれます。また、着眼点があることによって、PDCAやSWOT分析など、好みに応じた分析手法を選んでいくこともできます。
2つ目は、説明です。
ビジネスの問題は、自分だけが納得しても解決に繋がりません。当然、組織やチーム、グループなど社内関係者がいますし、B to B事業であれば取引先との話の中で取引が進んでいくため、自分だけが納得しても問題解決ができないこともあります。
従って、問題を関係者と共有して扱う必要があるため、説明するプロセスが必要となります。また、一人で問題解決をするよりも、同じ目線で関係者と問題の共有を図ることで、協力して2倍3倍の力に変えていくこともできます。
3つ目は、意思決定です。
問題の仮説検証でポイントを絞り込み、説明によって関係者の合意形成が取れたら後は、組織的に決定をする段階になります。その意思決定プロセスにおいて、権限を明確にし、「誰がリーダーとして明確なリーダーシップを取り、その問題を解決していくのか?」を明確にしておく必要があります。
この一連のプロセスによって、問題の分析から取捨選択、優先順位や解決に向けた明確なコンセプト、方向性などが決まります。それにより、一貫性のあるシナリオで問題解決に向かっていくことができます。
整理・分析のプロセスは「広げる」と「絞る」
問題の「整理・分析」のプロセスにおいては、思考を「広げる」と「絞る」を繰り返していくことになります。
まず、仮説検証において関係者で話し合うことで思考を広げ、広がった思考を絞り込んでいく中で整理をして問題点の当たりを付けます。次に、説得において合意形成が行われ、その中で必要であれば思考を広げてまた絞ることを繰り返しながら意思決定をしていきます。
この整理・分析のアプローチがなければ、問題は解決していきません。闇雲に起こった問題を解決するのではなく、時間的スケジュールも加味した上で、整理・分析プロセスをしっかり踏みながら、有効な問題解決を扱っていく必要があります。
「広げる」と「絞る」のサイクル
「広げる」と「絞る」のサイクルは、場面や状況で使い分ける必要があります。
単なる問題点の列挙ではなく、連想される問題点は関連付けを行うのも1つの方法です。また、似たような問題が集まる場合は、同じグループとして細分化・構造化して分けることで問題を分析・整理しやすくなります。更に、思考のサイクルの中からはまったく違う代替案が出てくるなど、新しい気付きに繋がっていきます。
次に、思考を数値化することも必要です。前回も定量化のお話をしましたが、定量化して、可視化して、問題点を絞り込んでいくことで、より効果的な解決策に繋げていくことができます。
次に、順位付けです。対応事項の順位を付けることで、経営課題を解決する対応事項をどの順番でどれくらいの時間を使っていくかが明確にできます。
この3つの視点を持ちながら、「広げる」と「絞る」の思考を繰り返すことで、より効果的な意思決定に繋がっていきます。
整理・分析のそのあと
次に、整理・分析した後についてお話します。
実際に、「解決すべき問題点はここだ」というところまで決定し、対策を立案して、スケジュール化するところまでは、多くの方が取り組まれると思います。
しかし、1番大切なのは問題に対する対策です。対策のプロセスにおいては、進捗管理が重要です。実際に問題の解決策を取った結果、その成果が上手くいったのか否かを管理することで、問題解決がより良い方向に進んでいきます。
当たり前のことですが、意外と進捗管理と成果把握が漏れていることが多いため、意識して対応する必要があります。
まず、1番目の「対策立案」では、前段の思考のサイクル(「広げる」「絞る」)で決めた優先順位に従って、問題への対応を検討します。立案した対策に有効性があるかどうか、また実現可能性があるかどうか、この2つの側面から重点化して対策を決めます。
2番目は「スケジュール化」です。問題点の重要性と緊急性の軸に従って、対応策の手順とタイミングをスケジュール化します。実際のビジネスでは状況が日々変化していくため、自分たちが取るべき対策を明確にしてスケジュール化することで、スムーズな解決策の展開に繋がっていきます。
3番目は「実施」です。対策の実施段階では、責任者やリーダーを決めることが重要です。
これらが対策の実施前に重要なポイントとなります。
次に、対策実施後に重要なのは進捗管理です。
対策がスケジュール通りに実施されいてるかの確認は重要です。進捗管理の期間はそれぞれですが、1週間や1か月など期間を決めて進捗確認を行い、問題あればその都度修正していくことになります。また、対応策の内容を「何を、いつまでに、どの程度」という目標として設定し、進捗管理を進めていくことも重要です。
そして、最後は成果把握です。成果を数値化することにより、現在の進捗状況を見ながら軌道修正ができます。数値化は結果指標だけでなく、結果に至るまでの過程も評価できるプロセス指標も併せて設定することが重要です。
プロセス指標を明確にすることで、現在の方法で上手く行っていっているか否かも判断でき、指標と違った場合にすぐ修正対応を取ることも可能です。
結果指標とプロセス指標、この2つの指標を明確にすることで、対策実施前・対策実施後の効果を検証することができます。
例えば、材料費・労務費が上がって厳しい経営環境の中で、赤字経営だったと仮定します。取引先からもクレームが来ている中、「どうしよう…」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。
こうした中でも、まずは現状を把握することから始めます。その中で、「場合分け」「数値化」「順位付け」を行い、そのプロセスと論点を整理します。現状がしっかり整理・分析できたら、過去の数字と比較をすることで、例えば、「歩留りが少し悪そうだ」と当たりを付けることができます。
当たりを付けたら、次は、複数ある工程の生産量を数値化して、歩留りが悪い原因の仮説検証をします。例えば、歩留りが5年前は93だったものが、今は82だという工程が見つかれば、その工程から優先的に改善を行うといった絞り込みができます。
このように、あらゆる問題においてこの問題解決プロセスを使った解決ができます。
では、実際に対策のアイデアを考えて具体化する方法をお話します。
まずは問題を列挙して、そのアイデアをグループごとに分けていきます。その中で、効果・費用・期間などを具体的な評価項目を設定して数値化します。
アイデアを具体化して、計画を作り、対策の実施に向けて対策前後の成果まで含めて改善活動をすることで、経営ステージを変えていくことに繋がります。
まとめ
最後に、考える順番を示します。
1番目に、何のために行動・アクションを取るのか目的を考えます。
2番目に、目的を達成するために目指す目標を考えます。目標とは、あるべき姿をしっかり描いて、それを具体的・定量的に数値化します。
3番目に、目標に対する現状とのギャップを考えることで、4番目に問題の抽出がなされ、問題点が明確になります。
5番目に、課題設定を行います。ギャップを埋めるために必要な対策を考えて、実行してく課題設定をします。
最後、6番目に対策です。その課題を解決する具体的なアクションを起こすことで、問題解決をして経営のステージアップしていく道筋・変革モデル作りとなります。
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