「価値をつくる」問題把握の考え方と解決に向けた思考プロセス | Part2
長澤 秀幸
経営コンサルタント
Will Partners 代表
商工業者の支援を行う浜松商工会議所に20年間勤める中で、経営者が持つ「強み」に寄り添って、「納得」から伴走者として信頼していただき一緒になって展開するスタイルを確立。
「価値を顧客に伝えるビジネスプロセスの創出・再構築」こそ「売れる仕組みづくり」につながり、事業拡大や事業承継までつながっていくことを実感。
2019年独立。「強みと顧客を巻き込んだ」販売戦略、ブランドをづくり、小さな企業が持つ、独自の強み(宝モノ)を発掘し、持続可能な経営と売上づくりを実践。
本シリーズは三部制で、上記の動画は「Part.2」です。
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はじめに
今回は、「『価値を作る』問題把握の考え方と解決に向けた思考プロセス」のパート2をお話します。
まずは問題を「見える化」する
「問題をどうやって解決するか?」ということですが、基本は、まず問題を「見える化」することです。問題に直面すると、皆さん「大変だ!大変だ!」と慌ててしまいますが、本当に大変な状況なのかを見える化する必要があります。
現状とありたい姿のギャップを測るためには、見える化することが最もスムーズに解決策を展開する方法となります。問題を見える化することによって、取引先との問題であれば取引先と話をすることで問題点を共有化できますし、社内であれば社内で問題点を共有化することが重要です。
また、問題点を問題と感じるか否かは、人や組織の問題意識の持ち方や考え方で変わってきます。しかし、見える化することによって、人や組織の相互間で、問題の共通認識を持つことができます。
一方、なぜ問題意識の共有ができないかを考えると、現状の組織や業務に満足している場合、問題意識を持つ機会が少なくなってしまいます。もちろん、日々忙しくて目先の業務に追われている場合も、問題意識を持ち辛くなることがあります。
更に、望みが高すぎる人がいる場合も同様です。望みが高すぎる人はこの世のすべてが問題に映ってしまうため、逆に問題点を見つけにくくなります。
従って、まずは問題点を見える化して、その問題意識を関係者と共有していくことが大前提となります。そして、その問題点を紐解いていくことで、問題を組織として扱うことができるようになる最初のステップとなります。
「問題の見える化」について、1つ1つ言語化していこう
次に、「問題の見える化」を1つ1つ言語化してみましょう。
まず、真ん中にある「問題は?」という部分は、具体的な問題点を列挙していく場所です。今、どのような問題が社内で起きているのかを、具体的に挙げていきます。
次に、右にある「このままでは(どうなるか)?」の部分で、前回お話した重要度の観点から結果予測をします。真ん中で挙げた問題点が本当に問題かどうかは、問題だと考える人と考えない人の2パターンに分かれます。従って、問題をこのまま放置したらどうなるかを、重要度の観点から予測します。
次に、上にある「本来は?」という部分で、あるべき姿を明確化させます。前回、問題にはいろいろなギャップがあることをお話しましたが、現状とあるべき姿のギャップの大きさや方向性が見えていないと、問題把握や解決策の方向性の判断を誤ってしまう可能性があります。
従って、現状と理想的な状態(あるべき姿)をしっかり描いてもらい、そのギャップが見えてくることで「本来はこうあるべき」という状況が明確になり、それを組織内に共有化することができます。
次に、左にある「なぜ(何なのか)?」という部分で、問題が起きた原因を明確化させます。問題発生の原因をしっかり捉えていかない場合、また同じ問題が起こってしまう可能性があります。これでは生産性も悪くなり、仕事上の信頼も失ってしまいます。
従って、原因解明をしっかり行い、「なぜそのような問題が起こってしまったか?人の問題なのか?機械の問題なのか?仕組みの問題なのか?」を解明する必要があります。
最後に、下にある「だから?」という部分で、現状を踏まえた具体的な解決手段を設定していきます。これによって、問題解決に近づいていきます。
問題解決が上手くいかない場合は、このプロセスを1つ1つ辿りながら問題の言語化をすることで、問題解決のヒントが見えてきます。
問題を3つのタイプに分ける
問題を整理・分析する場合、いろんな問題を1つにまとめてしまうと分かりづらくなってしまうため、問題のタイプごとに3つに分けます。
1つ目は、発生型問題です。
「誰もが問題だと感じる顕在化した問題」と定義しています。特徴は、今まさに問題が起こっており、対応が求められている問題です。
発生型問題の場合、苦情やクレーム、不具合が出てきたら、応急処置的な問題解決を進めるとともに、本当の問題は何かという真相・原因究明を行うことで、あるべき姿の復帰や安定に繋がっていきます。
2つ目は、「設定型問題」です。
「今の経営レベルのレベルアップや、あるべき姿の基準を上げていくために認識するべき問題」と定義しています。現状とあるべき姿の基準を設定して、それを達成していく問題になるため、経営の中では経営課題と設定されます。その経営課題を解決することによって、経営のステージを上げていくことができます。
具体的には、目標達成、成長、発展のために設定型問題を扱うことで、会社や組織が前に進むことができます。ここでの対策としては、目的・目標の妥当性をしっかり評価することです。妥当な評価がされていない目的・目標では、やるべきことに取り組めなくなるなど、問題解決が一向に進まない場合があります。
また、実現可能性の検討も重要です。例えば、パートナーと一緒に取り組むことで実現できる取り組み内容を把握したり、スケジュールや想定されるリスクを明確にしたりすることで、問題の見直しや改善策向上のアプローチができます。
3つ目は「将来型問題」です。
「時間の推移とともに顕在化する潜在的な問題」と定義しています。今は問題となっていないが、このまま行くと不具合が生じるような問題です。
例えば、リスク回避や事業承継など、見なければいけないのに見たくない問題というのは、意外と多いのではないでしょうか。このような問題も、問題であるか否かを見える化して分析することで、対策を講じることができます。それにより将来予測や問題への適応アプローチが可能になってきます。
問題をなぜ整理するのか
問題を整理することで、重要性と緊急性を意識し、取り組むべき問題を特定・発見することに繋がります。また、問題認識を共有して解決ポイントが正しく設定できると、アイデアの集約や解決方法の提案が出やすくなります。
よく「会議は開催するが意見が出ない…」という話もありますが、これはもしかしたら、提案方法や改善の方向性が共有できない可能性があります。従って、問題におけるさまざまな因果関係を明らかにすることで、新しい取り組みや問題の真因の発見に繋がってきます。
いきなり問題解決に取り組もうとすると、メンバー間で問題に対する認識や解決の方向性が揃わないため、問題を整理して分析・共有することによって、スムーズな経営課題の解決に繋がっていくこととなります。
ビジネス上の問題の「真因」とは
問題解決においては、「ビジネスの成長における問題は何か?」という真因を特定することが最も重要となります。
1つ目の真因は、「事業上の問題」です。
例えば、資金がない、設備がない、人手が不足してる、利益が出ないなど、表面的な問題から真因に近づいていく必要があります。
資金がない場合、資金がないという現象を起こしてる問題があるはずです。人材不足も同様で、人材不足自体は起こっている現象に過ぎず、人材不足させないための仕組みがないという問題を捉えていくことで、新しい発見が出てきます。
2つ目の真因は、「マネジメント上の問題」です。
例えば、仕組みがない、制度が整っていないなど、事業上の問題より1つ深掘りした原因追究が必要となります。この部分の原因追究をすることで、「人材不足の原因はコミュニケーションが悪いから人が辞めてしまう」や「業務効率が非効率だから、売上・利益に繋がっていない」という真因に繋がっていきます。
3つ目の真因は、「オペレーション上の問題」です。
マネジメント上の問題を更に深掘ると、「そもそも仕組みがなくなっている」といった原因が出てくるかもしれません。設備であれば、壊れていたりメンテナンスができない状態になっていたりすることもありますし、人材の問題であれば、その作業が正しくないプロセスに変わっているということがあるかもしれません。
これらの問題を1つ1つ扱うことによって、その問題がなぜ起きてるのかという現象を捉え、本当の原因を掘り下げていくことで、真因に近づくことができます。
問題をなぜ分析するのか
次に、「問題をなぜ分析するのか」についてお話します。
皆さんは、問題を細かく分けて分析できていますでしょうか?もし、問題解決が上手くいっていない場合、問題を正しく分析できていなかったり、細分化できていなかったりすることが最大の要因だと考えられます。
問題解決のために1つ1つ整理して組み直すと、今まで見えていなかったことが見えてきたり、新しい解決方法のアイデアが出てきたりします。
また、分析する際は、定量的に数字で捉えていくことが重要です。そうすることで、相対的に問題の大きさが明確になり、全体における問題解決の優先順位を付けやすくもなります。問題解決の優先順位の付け方やその意味を組織内で共有することで、問題解決の進め方も明確になってきます。
問題解決においては、「整理・分析」2つを実施できる能力を身につつけることによって、本質を捉える能力が磨かれてきます。そうすることで、さまざまな対象を細分化して分析する能力が身についてきます。
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