行政書士は実務経験なし、未経験でも開業できる?現実とその対策とは

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財務コンサルタント養成講座 運営事務局

2024年より講座を開講。これまでに税理士・行政書士・中小企業診断士をはじめ、保険募集人やIFAなど累計300名以上の専門家が受講。

財務支援/財務コンサルタントを目指す士業・コンサルタントの方に向けて、財務コンサルタントとしての実践ノウハウや働き方について情報発信を行っています。

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行政書士として独立を考えている方の中には、「実務経験がないけど本当にやっていけるのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、多くの行政書士が実務未経験のまま独立し、活躍しています。本記事では、実務ゼロから行政書士として開業する際の現実や課題、そして成功するための対策について詳しく解説します。

目次

実務経験がなくても開業できる?行政書士の現実

行政書士は、国家資格を取得して登録すれば、実務経験がなくても独立・開業が可能な資格です。つまり、法律上の制約はなく、資格さえあれば誰でも開業できる点がこの職業の大きな特徴です。

しかし、現場に出てみると「書類の作り方がわからない」「お客様からの質問に答えられない」「手続きの流れが見えない」といった不安に直面することも少なくありません。開業後すぐに即戦力として働くには、実践的な知識と経験が必要です。

そのため、未経験で独立する場合には、開業後の実務スキル習得に向けた積極的な投資が欠かせません。民間の実務講座に参加したり、地域の行政書士会に顔を出して先輩に相談したりと、知識と経験を補う努力が必要です。

とはいえ、行政書士業務の多くは、役所のガイドラインや豊富な実務書籍などのサポートが充実しており、自主的な学習と実務経験を積むことでスムーズに対応できるようになります。また、そもそも行政書士法人や事務所で実務経験を積む求人自体が少ないため、「実務未経験からの開業」は今や特別なことではなく、むしろ一般的なルートとも言えるでしょう。

実務経験を積む機会は限られている

行政書士としての実務経験を積むことは、業務の精度を高めるうえで非常に重要です。しかし、現実にはその機会は限られています。

まず、行政書士法人や個人事務所での就職は、都市部を中心に求人が出ることはあるものの、全国的に見ると非常に少数です。特に地方では、補助者として働ける事務所が見つかるケースはまれであり、仮に採用されたとしても、全ての業務に関われるとは限りません。補助的な作業ばかりで、肝心の書類作成や行政とのやり取りに触れられないこともあります。

そのような中で、実務経験を積む一つの手段として有効なのが「共同受任」という働き方です。これは、経験豊富な行政書士と共同で案件を受任し、実際の業務を通じて手続きや顧客対応を学べる仕組みです。業務の流れやノウハウを間近で学ぶことができるため、未経験者にとっては非常に貴重な経験となります。

また、求人が見つからない場合でも、地域の行政書士に直接アプローチし、アルバイトや業務提携といった形で関係を築くことも有効です。このような方法であれば、報酬を得ながら実務を学ぶことが可能であり、開業初期の収入確保にもつながります。

このように、実務経験を積むには一定の工夫と行動力が必要ですが、それを補って余りある実務的価値が得られます。未経験でも、チャンスを逃さず積極的に動くことで、スキルと信頼を着実に育てていくことができるでしょう。

実務学習への投資の重要性

行政書士として独立開業した場合、試験で学んだ法律知識だけでは業務をこなすには不十分なこともあります。なぜなら、行政書士の仕事には実務的な判断力や現場対応力が求められるからです。書類の書き方、官公署とのやり取り、顧客対応などは、実際に経験して初めて身につくスキルです。

こうした実務スキルを身につけるためには、「開業してから学ぶ」姿勢が極めて重要です。民間の実務講座や、行政書士会が主催する研修、業務に特化したセミナーなどに積極的に参加し、学習の機会に投資することが、成功への近道となります。

また、講座での学びに加えて、自ら能動的に情報を取りに行く姿勢も欠かせません。たとえば、役所の窓口に直接問い合わせて手続きの詳細を確認したり、関連法令やガイドラインを丁寧に読み込んだりといった行動が、実務の自信と正確さに直結します。

実務への投資は一時的な出費ではありますが、結果的には顧客からの信頼や業務の正確性に繋がり、自身のブランド価値を高めることに貢献します。経験が浅いうちだからこそ、基礎を固める時間と費用を惜しまず、しっかりとした実務力を身につけていくことが大切です。

相談できる先輩行政書士を見つける

行政書士として開業したばかりの頃は、分からないことや不安なことが次々と出てくるものです。そんな時に、気軽に相談できる先輩行政書士がいるかどうかは、実務のスムーズな習得だけでなく、精神的な支えという意味でも非常に大きな意味を持ちます。

先輩行政書士とのつながりを築くうえで有効なのが、地域の行政書士会やその支部の活動に参加することです。定期的に開催される集まりや勉強会、懇親会などに顔を出すことで、同業者とのネットワークを自然と広げていくことができます。

また、そうした場では、経験豊富な行政書士から実務上のアドバイスを得られるだけでなく、仕事上の連携や共同受任といった協力関係に発展することもあります。特に新人のうちは、謙虚な姿勢で接し、積極的に質問することで、「応援してあげたい」と感じてもらいやすくなります。

さらに、ベテランの行政書士は、他士業(弁護士、税理士、司法書士など)との広い人脈を持っていることが多く、そこから新たな業務の紹介や、連携による業務拡大につながる可能性もあります。

開業初期は孤独を感じやすい時期ですが、相談相手がいれば、行き詰まったときにも安心して進んでいくことができます。人とのつながりを大切にしながら、信頼できる「業界の先輩」を見つけておきましょう。

行政書士の独立開業準備

行政書士として独立開業するためには、資格を取得するだけでなく、実際の開業に向けたさまざまな準備が必要です。事務所の環境整備や登録手続き、税務署への届け出など、多岐にわたるタスクを一つひとつ丁寧に進めることが、安定したスタートに繋がります。

行政書士資格の取得

まずは、行政書士としての業務を行うために必要な国家資格を取得することが第一歩です。行政書士試験は例年11月に実施され、合格率はおおよそ10%前後。出題範囲は憲法・行政法・民法・商法といった法令科目のほか、一般知識まで幅広く、十分な学習時間が求められます。

特に、独学で合格を目指す場合は1,000時間以上の学習が必要とされることもあり、日々の学習計画と継続的な努力が不可欠です。資格取得はゴールではなく、開業へのスタートライン。合格後の準備を見据えて、早い段階から心構えを整えておきましょう。

事務所の準備

行政書士として開業する際、まず整えるべきなのが「事務所」の環境です。これは単なる作業スペースではなく、行政書士としての信頼性や法的要件を満たすためにも、非常に重要な役割を果たします。

行政書士法や日本行政書士会連合会の規定では、事務所にはいくつかの基準が設けられています。たとえば、業務上知り得た個人情報などを適切に管理できる構造であること、また、他人が自由に出入りできないような仕切りが設けられていることなどです。自宅の一室を活用する場合であっても、リビングや寝室との明確な区別、玄関から直接事務所に入れる導線の確保など、要件を満たす必要があります。

また、都道府県ごとに行政書士会が定める細かなガイドラインもあるため、開業前には必ず確認しておきましょう。

必要な備品としては、以下のようなものが一般的です:

  • 事務用デスク・椅子
  • パソコン・プリンター・コピー機
  • 電話・FAX・インターネット環境
  • 鍵付きの書類保管棚
  • 応接スペース(最低限のテーブルと椅子)

なお、自宅開業の場合は事務所の賃料や光熱費、人件費を大きく抑えることができるため、初期コストを低く抑えたい方には現実的な選択肢といえます。

行政書士としての登録手続き

行政書士試験に合格しただけでは、すぐに業務を始めることはできません。実際に行政書士として活動するには、所定の登録手続きを完了させる必要があります。

登録は、開業予定地を管轄する都道府県の行政書士会を通じて行います。必要書類としては、登録申請書、履歴書、誓約書、住民票や身分証明書、資格証明書などが求められます。また、行政書士会によっては、事務所の写真や図面の提出を求められる場合もあります。

登録にかかる費用は、おおむね以下のとおりです(地域によって異なります):

  • 登録手数料:約25,000円
  • 入会金:約200,000円前後
  • 登録免許税(収入印紙):30,000円
  • 年会費(3カ月分など):10,000〜20,000円
  • バッジ・職印・領収書などの備品:10,000〜15,000円程度

これらの費用は原則として一括払いで求められ、開業前にまとまった資金が必要となります。登録が完了すると、行政書士証票とバッジが交付され、正式に行政書士として活動を開始できます。

行政書士会への登録は単なる形式的な手続きにとどまらず、業界内のネットワークや研修制度、各種支援策を受けるための重要な入り口でもあります。開業を志す方は、必要書類や手続きの流れを事前に把握し、余裕を持って準備を進めましょう。

税務署への開業届提出

行政書士として登録を終えた後は、税務署への「開業届」の提出も忘れてはならない重要なステップです。これは、個人事業として行政書士業を営むことを税務署に届け出る手続きで、事業を開始した日から1カ月以内に提出することが義務付けられています。

この開業届を提出することで、確定申告時に「青色申告」の適用を受けることが可能となります。青色申告には、最大65万円の所得控除(※電子申告または電子帳簿保存が条件)が適用されるなど、大きな節税メリットがあります。

さらに、開業届には「屋号(事務所名)」を記載する欄があり、ここに記載すれば屋号付きの銀行口座を開設することもできます。これは、事業用とプライベートの資金を明確に分けるうえで非常に便利です。

また、家族に業務を手伝ってもらう場合は、「青色専従者給与に関する届出書」も併せて提出することで、家族への給与を必要経費として計上することができます。これは家計と事業の両面でメリットのある制度です。

なお、副業として行政書士業務を行う場合であっても、個人事業として収入を得る以上、開業届の提出は必須です。罰則はありませんが、提出しないことで税制上の恩恵を受けられなくなるため、早めに対応しておきましょう。

行政書士として独立するメリット

行政書士としての独立開業には、多くの魅力があります。特に、自分らしい働き方を追求したい方や、高収入を目指したい方にとって、行政書士は大きな可能性を秘めた資格です。ここでは、独立することの主なメリットについて解説します。

自由で柔軟な働き方ができる

行政書士として独立すれば、働く時間や場所を自分で決めることができます。会社員のように出勤時間や職場に縛られることはなく、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。

たとえば、子育てや介護といった家庭の事情に合わせてスケジュールを調整したり、趣味や副業と両立したりと、自分のペースで働けるのが大きな魅力です。また、自宅を事務所として開業すれば、通勤時間が不要になり、時間の有効活用にもつながります。

努力次第で高収入も目指せる

行政書士の収入には上限がなく、自身の営業力や専門性、実績によって大きく伸ばすことが可能です。実際、年収1,000万円を超える行政書士も珍しくなく、なかには2,000万円〜3,000万円の収入を得ている方もいます。

特定分野に特化して専門性を高めたり、他士業との連携を強化したりすることで、業務単価を上げることができ、効率よく収益を確保することが可能になります。さらに、ダブルライセンス(社労士・宅建士・司法書士など)を取得すれば、業務の幅を広げ、さらなる収入アップにもつながります。

定年のないキャリアを築ける

行政書士には定年がありません。体力と意欲が続く限り、何歳になっても現役として仕事を続けることができます。会社員であれば定年退職を迎えた後に再雇用や転職などを検討する必要がありますが、行政書士であれば自分の意志と努力次第で「生涯現役」が実現可能です。

また、長く業務を続けていく中で、顧客との信頼関係が深まり、紹介やリピートによって新たな仕事が生まれる機会も増えていきます。実績が積み重なれば、それがそのまま「信用」や「ブランド力」となり、安定した経営基盤を築くことができるでしょう。

行政書士として独立するデメリット

行政書士の独立開業には多くのメリットがある一方で、当然ながらリスクや課題も存在します。これらのデメリットを事前に理解し、適切な備えをしておくことが、長く安定した事業運営につながります。

事務所の設置に費用と手間がかかる

行政書士として活動するには、必ず事務所を構える必要があります。自宅開業も可能ですが、日本行政書士会連合会の定める要件を満たす必要があり、間取りの工夫や設備の準備が求められます。さらに、専用の事務所を借りる場合は、賃貸料・敷金礼金・内装費など、初期コストがかさむことになります。

加えて、事務所にはパソコン、プリンター、複合機、電話、FAX、応接セット、書類保管棚などの備品も必要で、これらの準備には手間とコストが伴います。開業初期は収入が安定しにくいため、この初期投資が経営の負担になる可能性もあります。

営業・集客活動が必須

独立すれば、仕事は自分で獲得するしかありません。資格を取って登録を済ませたからといって、顧客が自然に集まってくるわけではないのが現実です。特に開業当初は、自分の存在を知ってもらうための営業・広報活動が非常に重要です。

たとえば、WebサイトやSNSでの情報発信、Googleビジネスプロフィールの活用、異業種交流会への参加、セミナー開催、名刺交換など、あらゆる手段を使って認知度を高める努力が求められます。営業が苦手な方にとっては、この点が精神的な負担になるかもしれません。

収入が安定しないリスク

会社員と異なり、行政書士として独立した場合は毎月決まった給与が支払われるわけではありません。案件の有無や季節的な繁閑、顧客との契約単価によって、収入は大きく変動します。

開業当初は顧客がなかなかつかず、年収が100〜200万円台にとどまるケースも珍しくありません。一方で、継続的に営業を行い、専門性と信頼を積み上げることで、年収1,000万円以上に到達することも可能です。

また、「行政書士は廃業しやすい」という印象を持たれることもありますが、実際の統計では廃業率はおよそ4〜5%程度と、他の業種と比べて極端に高いわけではありません。とはいえ、資金不足や集客難などが廃業の原因になることは事実であり、綿密な開業計画と資金繰りが不可欠です。

独立開業に適した人物像とは

行政書士として独立を成功させるには、資格や知識だけでなく、業務や経営に必要な資質や姿勢も重要です。ここでは、独立開業に向いている人の特徴を紹介します。

コミュニケーション能力が高い人

行政書士の業務は、書類作成だけで完結するものではありません。顧客の要望を的確にヒアリングし、行政機関との調整ややり取りも日常的に行う必要があります。そのため、相手の意図を正確にくみ取り、わかりやすく説明できる「伝える力」は欠かせません。

特に、行政手続きに不慣れな依頼者に対しては、安心感を与える対応が信頼につながります。良好な人間関係を築くことで、リピーターや紹介につながる可能性も広がるでしょう。

柔軟な対応力がある人

行政書士の業務には、ひとつとして同じ案件はありません。法律の改正や行政の運用変更、顧客の事情など、さまざまな要素が絡み合うなかで、臨機応変に対応できる柔軟性が求められます。

マニュアル通りにいかない場面でも、冷静に状況を見極めて最適な判断ができる人ほど、信頼を集めやすく、結果的に業務の幅も広がります。

自己管理能力が高い人

独立すれば、自分自身が経営者であり責任者です。業務の遂行だけでなく、営業、会計、スケジュール管理など、すべてを自己管理しなければなりません。

時間の使い方やタスクの優先順位、経費の管理に至るまで、日々の行動を自律的にコントロールできることが、継続的な事業運営に欠かせない要素です。

正確で丁寧な事務処理ができる人

行政書士の主な仕事は、公的な書類の作成と提出です。ミスのない正確な書類作成は、業務品質の根幹であり、顧客からの信頼を左右します。

また、複雑な手続きを効率よくこなすには、ITツールを活用した効率化も重要です。事務処理能力の高さは、質の高いサービスを提供し、業務の回転率を上げるためにも大きな強みとなります。

開業資金にある程度の余裕がある人

独立初期は収入が安定しない時期が続くことが想定されます。登録費用や事務所の準備費用に加え、数カ月分の生活費や広告費なども必要となるため、一定の貯蓄があることは安心材料となります。

焦って顧客を獲得しようとすると、値下げや無理な契約につながる恐れもあるため、経済的な余裕があるほど、冷静かつ戦略的に開業準備を進めることができるでしょう。

独立開業に向かない人物像とは

行政書士として独立開業を検討する際、自分自身の性格や行動傾向が独立に適しているかどうかを見極めることも重要です。ここでは、開業後に苦労しやすいタイプや、独立に向かない可能性のある人物像について解説します。

人と話すことが苦手な人

行政書士の業務は、書類作成だけでなく「人」とのやり取りが中心です。依頼者の話を聞き、行政機関と調整し、ときには他士業と連携して業務を進める必要があります。そのため、基本的なコミュニケーション力は欠かせません。

人と接することに強い苦手意識があると、顧客対応や営業活動で消耗してしまい、業務の継続が難しくなる可能性があります。人と話すのが得意でなくても、最低限「相手の立場に立って丁寧に対応しよう」という姿勢が求められます。

指示がないと行動できない人

会社員であれば、上司の指示や業務マニュアルに従って動くことが一般的です。しかし独立後は、すべての判断と責任が自分自身に委ねられます。業務の優先順位の決定から、価格設定、営業方針まで、すべてを自分で決める必要があります。

「何をすればいいのかわからない」「自分で判断するのが怖い」と感じるタイプの人は、独立後の自由さに戸惑い、事業の方向性を見失うこともあるでしょう。自律的に行動できるかどうかは、独立開業における大きな分かれ目になります。

経済的な余裕がまったくない人

開業初期は、収入が不安定な期間が続く可能性が高くなります。行政書士会への登録費用、事務所の備品購入、広告・販促費、生活費など、初期投資や運転資金が一定期間必要となるため、手元資金に余裕がない状態での独立は非常にリスクが高いです。

経済的な不安が強いと、適切な業務価格を維持できず、無理な契約を結んでしまったり、精神的にも追い詰められやすくなります。まずはしっかりと資金計画を立て、十分な貯蓄ができてから独立を目指すのが安全です。

独立開業を成功させるための対策

行政書士としての独立開業を成功させるためには、資格取得後の計画的な行動と、実務・営業の両面での戦略が不可欠です。ここでは、具体的な成功へのアプローチを紹介します。

積極的な顧客獲得活動

開業直後に最も大きな課題となるのが「どうやって最初の顧客を獲得するか」です。待っていても仕事は来ません。だからこそ、自ら情報発信し、見込み客との接点をつくる行動が必要です。

現代では、ウェブサイトやSNS、ブログを活用した「オンライン集客」が非常に効果的です。専門性のある記事を発信することで信頼感を高め、地域名や業務内容を意識したSEO対策によって検索からの流入を狙うこともできます。

また、異業種交流会やセミナーに参加して名刺を配ったり、前職での人脈にアプローチしたりと、オフラインのネットワーク作りも欠かせません。特に紹介による受注は信頼性が高く、リピートにもつながりやすいため、人との関係構築を意識することが大切です。

副業から段階的にスタート

いきなり専業で独立することに不安を感じる場合は、まずは副業として行政書士業務を始めるのも有効な方法です。会社員としての安定収入を確保しつつ、業務の感覚や顧客対応の経験を積むことができます。

ただし、副業であっても開業届や行政書士会への登録は必要です。また、勤務先に副業の可否を確認しておくことも重要です。副業期間中に基盤を築くことで、専業に切り替えた際のリスクを大きく減らすことができるでしょう。

専門分野を絞る

行政書士の業務は非常に幅広いため、開業当初から全分野をカバーするのは現実的ではありません。むしろ、ある程度業務分野を絞り、「◯◯に強い行政書士」としてブランディングする方が、顧客に選ばれやすくなります。

たとえば、建設業許可、外国人在留資格、相続・遺言、風俗営業許可、農地転用、NPO法人設立など、業務ごとに必要な知識や書式が異なります。自分の関心や過去の経験と親和性が高い分野からスタートするのがおすすめです。

専門性が高まれば、業務効率が向上するだけでなく、紹介やリピートにもつながりやすく、業務単価を高めることも可能になります。

独立後の実務知識習得

行政書士として独立した後も、成長は止まりません。むしろ、開業後こそ「実務をどう深めるか」が、仕事の質と顧客満足度を左右します。知識とスキルを常にアップデートし続ける姿勢が、信頼される専門家としての基盤となります。

同業者の専門分野を調査する

自分がどの分野に注力するべきかを見極めるためには、他の行政書士がどんな業務に強みを持っているのかを調べることが大切です。たとえば、行政書士会の名簿や支部の勉強会、Webサイトやブログなどを参考に、同業者の活動領域や価格帯をリサーチしてみましょう。

同業者の事例を知ることで、自分の立ち位置や差別化ポイントが見えてきます。また、競合ではなく「協業」の視点で見れば、特定分野に強い行政書士との連携によって、業務範囲を広げることも可能になります。

人脈づくりと営業力の強化

開業後は、どれだけ人とつながれるかが仕事の幅を左右します。行政書士会の集まりや異業種交流会、商工会議所、地域イベントなどに積極的に参加し、顔を覚えてもらう努力が重要です。

また、同業者との交流は、情報交換の場であると同時に、共同受任や案件の紹介につながることもあります。他士業(弁護士、税理士、社労士など)との人脈も築いておくことで、業務の幅が格段に広がります。

オンラインでの情報発信(ブログ・SNS・YouTubeなど)も営業活動の一環として非常に有効です。日々の発信が信頼につながり、問い合わせや依頼の入口となるケースも少なくありません。

経営者としての視点を持つ

行政書士であると同時に、独立開業者は「経営者」です。事務所の運営には、経理、税務、マーケティング、業務フローの設計など、多岐にわたる管理スキルが必要です。

たとえば、収支バランスを考慮した価格設定や、費用対効果を見極めた広告戦略、業務効率を高めるITツールの導入などは、安定経営に直結する要素です。経営に関する知識も、セミナーや書籍、外部の専門家から積極的に学んでいきましょう。

実務経験を積む具体的な方法

開業後に実務経験を深めていくには、実際に案件を受任してこなすのが最も効果的です。初期は比較的シンプルな案件(例:内容証明作成、車庫証明、各種届出書類の作成など)から始めて、経験を重ねながら徐々に難易度の高い業務にも挑戦していくのが理想です。

疑問があれば役所に問い合わせたり、手引書を熟読したり、先輩行政書士に相談するなど、自己解決力を磨くことも大切です。行政書士会の研修制度や、民間の実務講座も積極的に活用するとよいでしょう。

他の行政書士と業務提携を組み、部分的に仕事を手伝わせてもらう形も有効です。自ら動いて経験の場を得る姿勢が、継続的な実務力の強化につながります。

行政書士の収入と費用

行政書士として開業する際には、「どのくらい稼げるのか」「開業にはいくらかかるのか」といった金銭面の現実を把握しておくことが重要です。この章では、行政書士の平均的な収入や、開業にかかる費用について詳しく解説します。

行政書士の年収の目安

行政書士の収入は、働き方や営業力、専門分野などによって大きく差が出ます。行政書士事務所に勤務する場合、年収はおおむね200万〜600万円程度が相場です。初年度は250万円前後からスタートするケースも少なくありません。

一方、独立開業した行政書士の場合、収入に上限はなく、自身の努力次第で高収入を実現できます。年収1,000万円を超えるケースも珍しくなく、なかには2,000万〜3,000万円に達する実力者もいます。

ただし現実には、すべての行政書士が高収入を得ているわけではありません。日本行政書士会の統計では、約8割の行政書士が年商500万円以下とも言われており、年収格差が非常に大きい業界です。特に開業初期は安定収入が得られにくいため、準備段階で十分な資金と戦略を持つことが必要です。

開業にかかる費用の内訳

行政書士として独立開業するには、一定の初期費用が発生します。以下は主な費用の内訳と目安です(地域によって若干異なります):

登録関連費用

  • 登録手数料:約25,000円
  • 入会金:約200,000円前後
  • 登録免許税(収入印紙):30,000円
  • 行政書士会の年会費(初回3カ月分など):10,000〜20,000円
  • バッジ・職印・領収書など備品代:10,000〜15,000円程度

これらを合計すると、登録関連だけで30〜35万円程度が必要となります。

事務所の整備費用

自宅開業であれば大幅にコストを抑えられますが、外部に事務所を借りる場合は賃料のほか、敷金・礼金、内装費なども加わります。立地によって大きく異なりますが、初期費用として数十万円単位の出費は見込んでおくべきです。

また、事務所には以下のような設備が必要です:

  • パソコン・プリンター・インターネット回線
  • 電話・FAX
  • 応接セット(テーブル・椅子)
  • 書類保管用キャビネット

これらを新品で揃えると、10〜20万円ほどかかることもあります。中古品や既存設備を活用すればコストは抑えられます。

人件費(任意)

業務が軌道に乗った後にスタッフを雇う場合は、給与や社会保険料、福利厚生費なども考慮が必要です。開業当初から人件費をかけるのはリスクが高いため、一定の売上規模に達してから検討するのが一般的です。

まとめ:未経験から行政書士として独立するために

行政書士は、実務経験がなくても国家資格さえ取得すれば開業できる数少ない士業のひとつです。その一方で、実務や経営に関する知識・スキルは、独立後に自ら積極的に学び、補っていく必要があります。

未経験からのスタートでも、学び続ける姿勢、営業への積極性、そして周囲との良好な関係構築ができれば、着実に実績を積み重ねることが可能です。自分に合った専門分野を見つけ、経験と信頼を蓄えていけば、高収入や長期的なキャリア形成も十分に実現できるでしょう。

行政書士としての独立は決して簡単な道ではありませんが、「自由」「専門性」「将来性」を兼ね備えた働き方でもあります。現実と向き合いながら、準備を整え、第一歩を踏み出してみてください。


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