補助金 助成金の違いとは?中小企業診断士がわかりやすく解説!
吉川 和明
中小企業診断士
大手製造機器メーカーにて、流通小売業向けPOSシステム、および決済システムの開発に従事。本業と中小企業診断士の二刀流で、商工会議所の経営相談員や補助金申請支援などの活動を実施中。
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中小企業や小規模事業者への資金面の支援として、国や地方自治体が提供しているものには助成金と補助金があります。どちらも返済不要ですが、管轄や目的、支給条件、公募期間など様々な点で違いがあります。今回は、助成金と補助金の違いや申請する際の注意点について解説します。
助成金と補助金の違いについて
助成金と補助金は管轄や目的、支給条件、公募期間などにおいて違いがあります。助成金と補助金の違いを以下にまとめました。
助成金 | 補助金 | |
管轄と目的 | 助成金の主な管轄は厚生労働省で、雇用の促進や労働環境の改善を目的としています。 | 補助金の主な管轄は経済産業省や中小企業庁で、新規事業や販路拡大、新技術の開発、設備投資などを支援することを目的としています。 |
支給条件 | 助成金は要件を満たしていれば、ほとんどの場合で支給されます。補助金と比べて資金繰りが比較的容易です。 | 補助金は厳密な審査を通過する必要があり、事業の独自性や成長性、収益性などが評価されます。 補助金は申請して採択されても、補助事業の実施後でないと支給されません。 |
公募期間 | 助成金は通年募集が行われることが多いです。 公募期間は短く、数週間〜1ヶ月程度です。 | 補助金は特定の期間にのみ公募されます。 公募期間は短く、数週間〜2ヶ月程度です。 |
申請の流れ | ①計画書の作成・提出 ②実施計画の実行 ③実施計画の完了 ④申請書の作成・提出 ⑤助成金の入金 | ①申請書類の提出 ②採択・交付決定 ③補助事業の実施 ④実績報告書の提出 ⑤補助金確定通知書 ⑥精算払請求 ⑦補助金の入金 ⑧事業効果報告 |
このように、補助金と助成金は目的や支給条件、申請の流れにおいて異なるため、事業者は自分のニーズに合った制度を選択することが重要です。
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助成金の概要
助成金とは主に厚生労働省が管轄しており、雇用の促進、能力開発、労働環境の整備など、労働環境の安定に向けた課題に取り組む事業者を対象に資金面のサポートを行うものです。主な助成金の例としては以下のものがあります。
助成金の例 | 制度概要 |
①雇用調整助成金 | 企業が経済的な困難に直面した際に、労働者の雇用を維持するための費用を助成する制度です。景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されます。 |
②キャリアアップ助成金 | 有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。労働者の雇用の安定を図るだけでなく、企業の人材育成にも寄与します。 |
③トライアル助成金 | 職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間試行雇用(トライアル雇用)を行う事業主に対して助成する制度です。求職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。 |
④地域雇用開発助成金 | 特に雇用情勢が厳しい地域において、雇用創出の促進を行う事業主に対して助成する制度です。雇用機会が特に不足している地域等の事業主が、事業所の設置・整備を行い、併せてその地域に居住する求職者等を雇い入れる場合、設置整備費用及び対象労働者の増加数に応じて助成されます。(1年毎に最大3回支給) |
⑤人材開発支援助成金 | 企業が社員のスキルアップを図るための研修を実施する際に、その費用を支援する制度です。雇用する被保険者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。 |
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補助金の概要
補助金とは主に経済産業省や地方自治体が管轄しており、新規事業や地域振興、地域創生などに取り組む事業者に対して資金面でのサポートを行うものです。主な補助金の例としては以下のものがあります。
補助金の例 | 制度概要 |
①小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者を対象として、販路開拓や生産性向上、業務の効率化を図るための支援を行います。持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助いたします。 |
②IT導入補助金 | 中小企業・小規模事業者等が労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)導入の支援を行います。対象となるITツールは、事前に事務局の審査を受けて補助金HPに公開(登録)されているものが対象となります。また、相談対応等のサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助対象に含まれます。 |
③ものづくり補助金 | 今後複数年にわたり直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う際の設備投資等の支援を行います。 |
④事業再構築補助金 | ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために、新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰、地域サプライチェーン維持・強靱化、またはこれらの取組みを通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を持つ中小企業等の挑戦を支援します。 |
⑤事業承継・M&A補助金 | 中小企業が事業承継を行う際の経営革新を促進するための支援制度です。中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて事業承継に際しての設備投資やM&A・PMIの専門家活用費用等を支援します。 |
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助成金・補助金活用時の注意点
助成金・補助金を申請する際に注意すべき内容を整理しました。事前に確認した上で申請することを心がけましょう。
1)事業に必要な資金は事前に確保すること
助成金・補助金は申請してから支給されるまでに時間がかかります。基本的には原則後払いであるため、事業に必要な費用は事前に自社で確保しておく必要があります。自己資金で賄う、または金融機関からの融資を依頼するといった資金計画を立てることが重要です。申請から支給まで1年以上かかることもありますので、実際に入金されるまで時間がかかることを想定した上で事業スケジュールを組むようにしましょう。
2)申請書類を作成して採択されること
助成金・補助金申請は申請期限が決まっていますので、期限内に不備のない書類を提出する必要があります。補助金は採択される件数や金額が決まっていることも多く、助成金に比べ審査も厳しいため、申請書類を作成する際には、審査する側にもわかりやすく、かつ他企業に勝る点をアピールすることが重要です。
3)助成金や補助金を受給できないケースもある
助成金や補助金は、申請時点で定められた支給条件や審査基準をクリアすることが重要です。補助金は事業期間終了後、一定期間内に報告書や支払証憑類を提出する必要があり、この書類に不備があったり、対象外経費が含まれていたりすると支給されないことがあります。特に事業期間外の支出は経費としては認められないため、支給対象外となります。
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補助金 助成金の違いとは?中小企業診断士がわかりやすく解説!のまとめ
中小企業や小規模事業者が新たな取り組みを行う際は相当な出費が必要となり、事業運営にも大きなインパクトを与えます。しかし、助成金や補助金を活用することで、その負担を軽減することが可能となります。有効に活用して事業拡大に役立てて下さい。
なお、助成金は要件を満たしていれば受け取れますが、補助金は採択件数が限られており、必ずしも受給できないことに留意する必要があります。申請する際は、これら助成金・補助金の特徴と違いなど基本事項を理解した上で申請することをおすすめします。
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