「資金繰りが厳しい」の言い換えは?資金繰りが厳しい中小企業が今やるべきこと。受けるべき支援は?

執筆者
中小企業診断士 深町 一隆のプロフィール写真

深町 一隆
中小企業診断士 /
健康経営アドバイザー

地銀、信販会社、メガバンク、保証会社、にて法人、個人営業、融資業務に従事。
営業では融資業務を中心に中小企業約100社を支援、保証会社においては地銀、信金、信組約80行を担当し、金融機関向け営業支援を実施。

実家の小売業が廃業しその無念さから「廃業を減らしたい」と中小企業診断士の資格を取得。商売の苦労を理解し、困難に立ち向かう企業のサポートに情熱を注ぐ。「伴走型相談支援」を軸に経営者のパートナーとして取組む。

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目次

資金繰りとは?

資金繰りと聞いてなんか難しそうだなと感じる経営者の方は多いのではないでしょうか。
まずは、資金繰りについて説明します。

資金繰りとは、企業が日常的な運営や支払いに必要な資金を確保し、収入と支出のタイミングを調整しながらお金を回していく管理活動のことです。

例えば、商品やサービスの販売で売上が入るまでの間に、仕入れや従業員の給与、その他の経費を支払う必要があり、これらを適切に賄うための準備が求められます。資金が不足すると支払いが滞り、事業が停滞したり信用が損なわれたりするリスクがあるため、現金の流れを計画的に把握し、必要に応じて金融機関からの借入れや資産の売却を行うなど、安定した資金運営を維持することが重要です。

そのような資金繰りが厳しい時には、どのように取引会社に伝えるべきか下記に述べます。

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「資金繰りが厳しい」の言い換えは?

資金繰りが厳しい状況を取引先に伝える際には、直接的な表現を避けつつ、丁寧かつ誠実に状況を伝えることが大切です。以下のような表現を参考にしてみてください。

  1. 現在、当社の資金繰りに一部調整が必要な状況にございます。
    こちらは、資金繰りの問題を暗に示しつつ、解決に向けて対応していることを伝える表現です。
  2. 現在、一時的に資金面での調整が必要な状況ですが、最善の対応を進めております。
    こちらも一時的な問題であり、解決に向けて取り組んでいることを強調しています。
  3. 当社の資金運用において一時的に見直しが必要な状況となっておりますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
    こちらは、取引先の理解を求めつつ、慎重に資金の見直しを行っていることを示しています。

このような表現を用いて、相手に負担をかけないようにしながら、自社の現状を適切に伝えることができます。また、問題解決に向けた努力や具体的な計画がある場合は、それを併せて伝えるとより信頼感が得られるでしょう。

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資金繰りの重要性

「黒字倒産」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。

黒字倒産とは、企業が利益を出しているにもかかわらず、手元の資金不足で支払いができずに倒産してしまう現象です。売上が計上されていても、入金までに時間がかかることが多く、その間に給与や仕入れ費用などの支出が重なると、現金不足が発生する可能性があります。

このため、利益が出ていても、日々の資金繰りを適切に管理し、現金が不足しないように調整することが不可欠です。万が一の資金ショートを防ぐためには、資金の流れを見通して計画的に管理し、必要に応じて融資や資金調達を検討するなど、安定した運営を支える資金繰りの重要性が増します。

つまり「資金繰りが厳しい」とは、会社としてすぐに使えるお金が不足している状態をいいます。

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資金繰りが厳しい中小企業の特徴

資金繰りが厳しい中小企業の特徴として大きく3つあります。

  • 赤字体質が続いている
  • 資金調達ができない
  • 売り上げが大きく伸びた

上記について、説明いたします。

赤字体質が続いている

赤字体質が続く企業は、売上の不安定さと高い固定費が特徴的です。例えば、人件費や家賃といった固定費が多いと、収益が低い時期でも支出が重なり、赤字が慢性化しやすくなります。

また、価格設定が不適切で利益が出ないことや、過剰な在庫や無駄な設備投資が多いことも、赤字体質の要因です。さらに、財務管理が甘く資金繰りが見通せない場合や、市場ニーズに合わない商品・サービスで顧客が増えないと、収益の停滞が続きます。

要するに、「売上 < 経費」の状態が慢性的に続いている企業は赤字体質であり、資金繰り悪化の大きな原因となります。

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資金調達ができない

手元資金がなくても、銀行融資を受けることができ、資金繰りが回れば倒産リスクは回避できます。

しかし、既に債務超過に陥っている企業や自己資本比率が低い企業は、経営基盤が脆弱であり返済能力がないと判断され、銀行から融資を受けられる可能性が低くなります。また、業績が悪かったり、経営計画が不明瞭で将来の展望が見えなかったりする企業も、銀行からの信用を得にくくなります。

売上が大きく伸びた

売上が一時的に大きく伸びた際には、資金繰りとして次の点に注意する必要があります。

まず、売上が増えてもすぐに現金が手元に入るわけではないため、入金タイミングを見極め、支払期日とずれがないかを確認することが重要です。売上増加に伴い仕入れや人件費、物流コストも増加するため、これらの支払いに備えて資金を確保しておく必要があります。

また、増収を見込んで過剰な投資や設備拡張を行うと、売上が平常に戻った際に資金繰りが苦しくなるリスクがあるため、慎重な判断が求められます。

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資金繰りが厳しい中小企業が今やるべきこととは

事業を改善する

資金繰りの改善において最も効果的な取り組みは、事業を改善して利益を生み出すことです。利益を生み出すには「売上 > 経費」の状態を作り出すことが必要です。

まず、売上の向上には、商品やサービスの価格設定や提供方法を見直し、利益率の高い分野に集中することで収益性を向上させます。一方、経費の低減には、売上に対する固定費や変動費を分析し、特に無駄な固定費(人件費、家賃、通信費など)を削減することが重要です。

また、過剰な在庫は資金を圧迫するため、在庫回転率を高めるための販売促進や、発注サイクルの見直しを行い、必要最低限の在庫量を保つことが重要となります。 更に、売掛金回収の迅速化や、支払い条件の見直しにより、入金サイクルを短縮して現金化を早めることができます。取引条件を見直し、早期回収が可能な契約を増やすのも有効です。

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資金繰り表を作成し手元の資金を把握する

資金繰りを改善するには、まず自社の資金繰り状況を把握することが重要です。そして、そのために必要となるのが「資金繰り表」です。

資金繰り表は、毎月の収入・支出の動きを可視化し、手元資金の不足や過剰を予測できるツールです。特に、売上の入金タイミングと仕入れや人件費などの支出タイミングのズレを把握することで、資金ショートのリスクを回避できます。また、融資が必要な時期を事前に見極めることができ、計画的な資金調達が可能となります。

さらに、予測と実績を比較することで資金管理の精度を高め、経営判断に役立てることができます。資金繰り表は健全な経営基盤を維持するために欠かせない管理ツールです。

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遊休資産や不良在庫の見直し

企業が資金繰りを改善するためには、遊休資産や不良在庫の見直しが非常に重要です。

遊休資産とは、現在使用されていない設備や土地などの資産で、維持費や管理コストが発生するだけで収益を生んでいないものを指します。これらを売却することで、現金を得られるだけでなく、維持コストも削減でき、資金繰りが改善します。

また、不良在庫も、保管スペースを圧迫し、資金を滞留させてしまう原因です。在庫の流動化や値引き販売によって現金化することで、運転資金を増やせます。

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日本政策金融公庫による資金繰り支援制度一覧 

日本政策金融公庫による資金繰り支援制度は下記の3つあります。

  • 低利・無担保融資(コロナ対策)
  • 資本性劣後ローン(コロナ対策)
  • セーフティネット貸付(物価高対策)

順に説明していきます。

低利・無担保融資

低利・無担保融資は、当初3年間は基準金利から0.5%を引き下げた融資制度であり、2024年3月末まで実施が予定されています。概要は以下の通りです。

対象者新型コロナの影響で、売上が5%以上減少した者新型コロナの影響で、債務負担が重い事業者
融資額(中小企業事業)4億円(国民生活事業)6000万円
貸付期間20年以内
据置期間最大で5年

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資本性劣後ローン

資本性劣後ローンは、万が一、倒産した時にほかの負債より返済の順位が後回しになるため、金融機関からは自己資本とみなされるローンのことです。

概要は以下の通りです。

対象者新型コロナの影響により、キャッシュフローが不足する企業や一時的に財務状況が悪化したため企業再建等に取り組む企業
融資上限(中小企業事業)15億円 (国民生活事業)7200万円

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セーフティネット貸付

セーフティネット貸付は、ウクライナ情勢・原油価格上昇の影響で、利益率が減少した事業者に対し、基準金利から0.4%引き下げた融資制度です。2024年3月末まで継続予定です。概要は以下の通りです。

融資上限(中小企業事業)7億2千万円 (国民生活事業)4800万円
貸付期間設備資金15年以内運転資金8年以内

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経済産業省が認めた認定支援機関とは

認定支援機関とは、中小企業や小規模事業者が経営改善や事業計画の策定、資金調達などを支援するために認定された専門家集団のことです。正式名称は「経営革新等支援機関」であり、2012年に制定された中小企業経営力強化支援法に基づいて設立された制度です。

この機関は、経営のサポートを行うだけでなく、政府や地方自治体が提供する各種支援制度を利用する際の窓口としても機能します。具体的には、補助金の申請支援、事業再生計画の作成支援、融資の申請書類作成支援、税制遊具制度の活用支援などを行います。

認定を受けるためには、一定の資格や実績が求められるため、信頼性の高い支援を提供できる機関です。

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補助金支援

認定支援機関は補助金の申請支援が可能であり、具体的には「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」の申請支援ができます。

事業再構築補助金は、企業が新たな事業展開や業態転換を行う際に必要な経費を支援する政府の補助金です。コロナ禍などによる影響を受けた企業の再生・成長を促進する目的で提供されます。

ものづくり補助金は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と呼び、中小企業が新しい製品や技術の開発、設備導入などに必要な費用を支援する制度です。生産性向上や競争力強化を目的としています。

事業承継・引継ぎ補助金は、企業が後継者に事業を引き継ぎ、また後継者が引き継いだ経営資源を活用した経営革新を行うために発生する費用を支援する補助金です。補助対象となる費用は、人件費・設備費・原材料費・広告費など多岐に渡ります。後継者の選定や事業の再編を促進し、事業の継続性を高めることを目的としています。

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経営改善計画策定の支援

認定支援機関では、経営改善計画策定の支援も対応が可能です。

経営改善計画策定には「経営改善計画策定支援事業」と「早期経営改善計画策定支援事業」の2種類があり、以下のような違いがあります。

概要補助金上限
経営改善計画策定支援事業(通常枠)経営改善計画に関する費用のうち2/3の補助を受けられる。310万円
早期経営改善計画策定支援事業(通常枠)早期経営改善計画策定に関する費用のうち2/3の補助を受けられる。25万円

大きな違いは補助金上限であり、「経営改善計画策定支援事業」では310万円の上限に対し、「早期経営改善計画策定支援事業」では25万円の上限となっています。

また、対象事業者にも違いがあります。

「経営改善計画策定支援事業」は、借入金の返済に問題を抱えているなど、金融支援を伴う抜本的な経営改善支援が必要な中小企業・小規模事業者が対象です。

一方、「早期経営改善計画策定支援事業」は、資金繰りや採算管理の問題など、比較的軽微で基本的な経営改善が必要な中小企業・小規模事業者が対象となっています。

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資金調達

認定支援機関では、資金調達をする際の支援を受けることもできます。

例えば、日本政策金融公庫で融資を受ける場合、認定支援機関を利用することで「中小企業経営力強化資金」という融資制度を利用することができます。この融資制度は融資限度額が7.2億円と大きく、また一定の基準を満たすと優遇金利で資金調達をすることができます。

また、銀行で融資を受ける場合、「経営力強化保証制度」という制度を活用して認定支援機関の支援を受けることによって、信用保証協会の保証料の減免(概ね▲0.2%)を受けることもできます。

専門家の支援を受けながら金利や保証料が優遇される制度ですので、活用を検討してみるのも良いでしょう。

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税制優遇制度の利用

認定支援機関では税制優遇制度を利用でき、以下の税制優遇を受けられます。

  • 先端設備等導入計画
  • 事業承継税制

先端設備等導入計画

先端設備等導入計画は、中小企業が生産性向上のために先端設備を導入する際、自治体から認定を受けることで税制優遇や補助金などの支援を受けられる制度です。具体的には、生産性を高める設備投資に対して固定資産税の減免措置が受けられるほか、計画事業に必要な資金繰り支援を受けられます。

この制度を活用することで、企業は効率的な設備投資を通じて競争力を強化し、事業の成長を促進できます。計画策定には、認定支援機関の支援が必要となります。

事業承継税制

事業承継税制は、事業承継の際に2代目後継者が先代経営者から株式などを受け取った場合、一定の要件を満たすことで相続税や贈与税の納税を猶予する制度です。

注意すべき点としては、納税の「猶予」であり「免除」ではないため、2代目後継者が3代目後継者に事業を引き継ぐ際は、猶予されていた相続税・贈与税の納税義務が生じます。尚、事業承継税制の利用には、認定支援機関の支援が必要となります。

資金繰りが厳しい時は認定支援機関のビジネス処方箋(株式会社3Rマネジメント)へご相談ください

ビジネス処方箋では、100社以上の事業再生を成功に導いた実績があります。
資金繰りや財務戦略のプロフェッショナルが、あなたの会社に最適な解決策を提案し、事業の再生をサポートします。

無料相談を行なっておりますので、まずは気軽にご相談ください。

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執筆者

【保有資格】
・中小企業診断士
・健康経営アドバイザー
・リテールマーケティング(販売士)検定2級

【略歴】
地銀、信販会社、メガバンク、保証会社、にて法人、個人営業、融資業務に従事。
法人営業では融資業務を中心に中小企業約100社を支援。保証会社においては地銀、信金、信組約80行を担当し、金融機関向け営業支援を実施。
中小企業向け融資及び各金融機関別の融資方針等の内情を多く学ぶ。

実家が家族経営の小売店で、幼い頃から家業の手伝いをする等、「商売」が身近なものでした。幼い頃より両親の働く姿を目にし、「商売」の大変さを身に染みて感じ、両親の勧めもあり、会社員に落ち着きました。その後、実家は廃業しましたが、その時の無念さは今でも忘れられません。「廃業などを少しでも減らしたい」との思いから中小企業診断士を取得しました。
経営者様の大変さは十二分に認識しております。「伴走型相談支援」を軸に、経営者様の良きパートナーとして取り組んでいます。

練馬区在住 福岡県出身

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