社員が増えるほど組織は“自然に”崩れる──20人の壁で起きる症状と、管理職が打つべき手

会社が伸びてきた。採用も進み、受注も増え、数字も悪くない。ところが、なぜか現場の空気が重い。退職が続き、会議は荒れ、方針は伝わらず、マネジメントが回らない。
この状況は、誰かが怠けたからでも、社長の人格が突然変わったからでもなく、**「人数が増えるだけで組織はダメになる」**という“自然現象”として起きうるものだ、という捉え方が重要です。

管理職の立場でこの「自然現象」を理解しているかどうかで、打ち手の質が変わります。原因探しや犯人探しに時間を使うのではなく、「成長の段階が変わった。運営システムを変えるタイミングに入った」と整理できるからです。

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会社成長のステップが変わると、経営課題も変わる

会社は概ね「創業期→発見期→拡大期→発展期」と進み、必要能力も経営テーマも変わります。規模感としては、創業期が5名程度、発見期が20名程度、拡大期が100名程度のイメージです。

創業期は、とにかく売る。全員が売上を作ることに注力するフェーズです。
発見期は、「当たり」を見つける。ヒット商品・勝ち筋の販路・ターゲット設定など、マーケティングの精度を上げて“楽に売れる構造”を作る段階です。

そして当たりが見つかると、会社は一気に拡大に向かいます。ここで社員数が20人を超え始める。20人を超えたところから「会社の組織化」が経営課題になり、教育も定義もない会社はここで成長が止まりやすくなります。

つまり、20人の壁とは「仕事が増えたから人を増やす」までは自然にできても、“組織を増やす(仕組み化する)”に切り替えない限り、成長が鈍化するポイントだと捉えると分かりやすいです。

20人を超えると表面化する“現場症状”

社員が増えるにつれて現場に起きがちな症状は、次のようなものです。

社内に広がる漠然とした不安・不信の増加。不平等感(給与・評価・仕事・扱い)。やらされ感が増え、ワクワクしない職場になる。価値観の違う人が増え、一体感がなくなる。ルール化を進めるほど「言われたこと以外できない」アルバイト的な動きになる。制度を整えても納得感が出ない。社長のビジョンが現場に伝わらず、現場の状況も経営に届かず、社長が裸の王様化する。相互不信が増大し、事業は個人任せになり、マネジメント不在でモラルが落ち、退職が増え、採用費だけが嵩み、売上・利益が踊り場に入る。

管理職として重要なのは、これらを「社員の質が落ちた」「最近の若手が…」で片付けないことです。むしろ、会社が次のフェーズに入ったことで、必要な“運営OS”が変わったのに、OSを入れ替えずに走り続けている状態、と捉える方が再現性のある対処ができます。

なぜ、人数が増えるだけで崩れるのか

組織戦略のない会社は、仕事が増えたから単に人を増やし、入社時に求める働き方や考え方を伝えず、実務ができる人・古参の人をリーダーにし、リーダーに何をすべきか教えず、リーダーも実務を続け、将来を考えた組織作り・人作りをせず、事業戦略と組織作りが連動しない。結果として、従業員は会社の将来も自分の将来も見えず不安になります。

言い換えると、20人を超えた瞬間に必要になるのは、「採用」そのものではなく、“会社の歩き方”を共有する仕組みです。
誰が何を判断し、何が評価され、何を優先し、どこで相談し、どう成長すればいいのか。これが曖昧なまま人だけ増えると、不安・不信・不平等感が自然に発生します。

また、中間管理職が形骸化すると問題の中心になりやすい点も見逃せません。社長の意思を伝えられない、現場の状況を上に上げられない、指示・指導ができない、厳しさ(甘さ)だけが目立つ、指揮系統が曖昧で立場が形骸化する、といった状態です。ここは管理職にとって耳が痛いところですが、責めるためではなく「設計し直すポイント」として見るのが建設的です。

管理職が最初に整えるべきことは「伝達」と「定義」

20人の壁では、現場に情報が届かず、現場の情報も上に届かない“断絶”が起点になります。だから管理職がまずやるべきは、制度を増やすことではなく、次の2つです。

会社としての“勝ち筋”を、現場の言葉に翻訳すること
戦略をそのまま説明しても、現場には刺さりません。現場が知りたいのは「何を優先すれば勝てるのか」「どう動けば評価されるのか」です。勝ち筋の翻訳ができると、やらされ感が減り、納得感が増えます。

役割と判断基準を、チーム単位で言語化すること
“誰が何を決めるのか”“どこまで任せるのか”“何を持ち帰るのか”が曖昧だと、指揮系統が崩れます。指揮系統が崩れると、ルールを増やしても「言われたこと以外できない」状態になります。

この2つが整うだけで、不安・不信の多くは減衰します。逆に言えば、ここが曖昧なまま評価制度や研修制度だけを入れても、納得感が生まれにくい、という順番の問題が起きます。

「プレイングのまま」は限界が来る。マネジメント時間を確保する

20人を超えた組織の壁は、結局「マネジメントの不在」に帰結します。
部下が増えたら“育てて任せる”前提で時間配分を設計する必要があります。

管理職向けに現実的な言い方をすると、次の状態を放置すると壁は突破できません。
・チームの稼働が「あなたの個人プレイ」に依存している
・部下の成長と生産性を上げる時間が、会議と実務で消える
・判断と情報があなたに集中し、あなたがボトルネックになる

20人を超えると、個人の頑張りではなく“部隊として勝つ”設計が必要になります。ここを乗り越える管理職の仕事は、優秀なプレイヤーでいることではなく、優秀なプレイヤーを増やすことです。

まとめ:20人の壁は「あなたの責任」ではなく「あなたの出番」

人数増で起きる不安・不信・納得感不足・裸の王様化は、誰かを責めるための材料ではなく、成長フェーズが切り替わったサインです。無策なら自然に崩れる、という前提で設計し直すことが肝になります。

管理職の出番はここからです。
現場の言葉で勝ち筋を翻訳し、役割と判断基準を定義し、情報の流れを作り、マネジメント時間を確保して育成に投資する。これらをやり切ると、退職は減り、納得感は増え、組織は再び伸びます。

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執筆者

中小企業診断士
(株)3Rマネジメント 代表取締役 https://3r-management.jp/
(株)IoTメイカーズ 代表取締役 https://www.iot-makers.co.jp/

約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。

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