管理職研修で最初に教えるべきことは?経営者が押さえたい最重要テーマと育成の考え方

経営者や経営陣が管理職研修を考えるとき、多くの場合、最初に思い浮かべるのは、評価面談のやり方や部下指導の方法、会議の進め方、目標管理の手法といったマネジメントスキルではないでしょうか。もちろん、これらはどれも大切です。しかし、初めて管理職研修を行う会社で最初に扱うべきテーマは、そこではありません。

本当に最初に手をつけるべきなのは、管理職本人の頭の中にある思考のクセです。
たとえば、うまくいかない原因を部下や会社、上司、制度のせいにしてしまう姿勢。自分は環境の被害者であり、条件さえ整えば成果が出ると思い込んでいる状態。あるいは、管理職になってもなお「自分は言われたことを頑張る立場だ」と感じている感覚です。

こうした状態のままでは、どれだけマネジメントスキルを教えても、現場では機能しにくくなります。なぜなら、行動の土台となる仕事観が切り替わっていないからです。

経営者が管理職研修を設計するときに最初に考えるべきことは、何を足すかではなく、まず何を抜くべきかです。
他責の思考。
被害者意識。
指示待ちの姿勢。
これらを手放さない限り、管理職は本当の意味で組織を動かす側には回れません。

そして、そこから次に入れるべきなのが、
「会社を変えるのは管理職だ」という当事者意識です。
さらに、管理職の仕事は単なる数字管理ではなく、目標達成と組織づくりの両方を担うことだと明確に定義する必要があります。

この順番で考えると、管理職研修は単なる教育施策ではなくなります。
経営者の仕事を軽くし、組織で成長できる会社に変えていくための経営施策になります。

目次

管理職研修で最初に教えるべきことはスキルではなく思考の転換

管理職研修というと、どうしても「何を教えるか」という項目の整理から入りがちです。
1on1、フィードバック、評価、会議運営、部下育成、目標設定。どれも必要ですが、初めての管理職研修では、これらを最初のテーマにしない方がうまくいきやすくなります。

なぜなら、スキルは使う土台が整っていなければ機能しないからです。
たとえば、評価面談のやり方を知っていても、本人が「部下が悪い」としか考えていなければ、面談は単なる指摘の場になります。1on1の型を学んでも、「自分は現場を回すだけで精一杯」という感覚のままでは、部下の成長支援にはつながりません。

つまり、はじめての管理職研修で最初に起こすべき変化は、知識量の増加ではなく、立場の認識の変化です。

管理職になった以上、もう自分は会社に何かしてもらう側ではありません。
現場を良くする側であり、部下を育てる側であり、組織の成果に責任を持つ側です。
この認識に変わって初めて、マネジメントスキルが意味を持ちます。

経営者がここを飛ばしてしまうと、研修後によくある状態になります。
知識は覚えている。
言葉も知っている。
けれど、現場では何も変わらない。
この状態を防ぐには、最初のテーマ設定を間違えないことが重要です。

管理職研修の最重要テーマは何を“抜くか”で決まる

初めての管理職研修で最重要なのは、何を教えるか以上に、何を抜くかを決めることです。
ここが曖昧だと、研修全体が表面的な内容になりやすくなります。

最初に抜くべきものの代表が、他責の思考です。

他責の思考とは、問題の原因を常に外側に置く見方です。
部下が動かないのはやる気がないから。
上司の指示が悪いから現場が混乱する。
制度が整っていないから成果が出ない。
人が足りないから育成は無理。
もちろん、現実にはそうした事情もあるでしょう。ですが、管理職がそこにとどまる限り、組織は変わりません。

なぜなら、他責の思考には「では自分は何を変えるのか」という視点がないからです。
管理職に必要なのは、環境が完全であることではなく、不完全な環境の中でも成果を出すために、自分が打てる手を考えることです。

次に抜くべきものが、被害者意識です。
これは他責と似ていますが、より感情的な側面があります。
自分は理解されていない。
頑張っているのに報われない。
部下に恵まれていない。
会社のせいで動けない。
こうした感覚が強いままでは、役職が上がっても、発想はずっと受け身のままです。

管理職になるということは、立場として「会社をよくする側」に移ることです。
被害者の立場のままで管理職をやろうとすると、責任だけが重く感じられ、行動が伴いません。

さらに抜くべきなのが、指示待ちの姿勢です。
方針が出ないから動けない。
明確な指示がないから決められない。
上が何も言わないから様子を見る。
こうした姿勢が残っていると、管理職は組織のボトルネックになります。

だからこそ、初回の管理職研修では、スキル以前に次のような問いを投げる必要があります。
部下が動かないとき、自分は何を変えられるか。
部署の空気が悪いとき、自分は何を曖昧にしたままにしているか。
成果が出ないとき、チームの勝ち方を言葉にできているか。
会議が機能しないとき、自分はどんな基準を作れていないか。

こうした問いによって、管理職の視点を環境批判から自分の打ち手へ移していくことが、最初の研修テーマになります。

なぜ「会社を変えるのは管理職」という当事者意識が必要なのか

経営者が管理職研修で必ず入れるべきなのが、当事者意識です。
特に重要なのは、「会社を変えるのは管理職だ」という認識を本人に持たせることです。

現場では、経営者が思っている以上に、管理職本人がまだ“現場の一担当者”の感覚を引きずっていることがあります。
役職はついた。
責任も増えた。
けれど、内面では「自分はまだ言われたことをこなす立場だ」と感じている。
この状態では、組織づくりは進みません。

会社を実際に動かしているのは、毎日現場で判断し、部下に声をかけ、仕事の進め方を決めている管理職です。
経営者がどれだけ正しい方針を出しても、管理職がそれを自分事として受け止めなければ、現場は変わりません。

ここで経営者が伝えるべきなのは、次のメッセージです。

あなたはもう、会社に何かしてもらう側ではない。
あなたは、会社を良くする側に回った。
現場の成果も、チームの雰囲気も、部下の成長も、あなたの影響を大きく受ける。

このメッセージが入ると、管理職の視点が変わります。
上司への不満より、自分が何をできるかを考えるようになります。
部下への苛立ちより、どう育てるかを考えるようになります。
会社批判より、自部署をどう良くするかに意識が向くようになります。

経営者にとって管理職育成が重要なのは、ここにあります。
管理職が当事者として動き出すと、今まで経営者が拾っていた問題の多くが、現場で処理されるようになるからです。
つまり、管理職育成とは、人を育てるだけの話ではなく、経営者の負荷を軽くする仕組みを作ることでもあります。

管理職の仕事は「目標達成×組織づくり」のダブル達成である

初めての管理職研修では、管理職の仕事を明確に定義しておくことも欠かせません。
ここが曖昧だと、管理職は何を優先すべきか分からなくなります。

経営者が最初に伝えるべき定義は、シンプルです。
管理職の仕事は、“目標達成”と“組織づくり”のダブル達成である。

この両方を担うのが管理職です。
片方だけでは足りません。

目標達成だけを追わせると、短期的には数字が出ても、部下育成が止まり、雰囲気が悪くなり、退職が増え、再現性がなくなります。
一方で、組織づくりや人間関係ばかりを重視し、成果への責任が曖昧になると、やさしいけれど弱い組織になります。
このどちらにも偏らないことが、管理職の仕事です。

つまり、管理職はこう考えなければなりません。
今月の目標をどう達成するか。
同時に、来月も再現できるチームをどう作るか。
部下をどう動かすか。
同時に、その部下が次に伸びる機会をどう作るか。
目先の成果をどう出すか。
同時に、その成果が属人化しないようにどう仕組みにするか。

ここまで考えて初めて、管理職として機能し始めます。

経営者がこの定義を入れないまま管理職を任せると、現場ではよくあるズレが起きます。
数字だけを追い詰める管理職。
逆に、部下に遠慮しすぎて成果管理ができない管理職。
どちらも、管理職の役割定義が曖昧なことから起こります。

だからこそ、初回の研修で明確に言語化する必要があります。
「売上だけ見ればいいわけではない」
「部下と仲良くするだけでも足りない」
「成果を出しながら、成果を出せる組織を作ることが仕事だ」

この定義が入ると、管理職の判断軸が変わります。
自分で頑張るのではなく、チームで勝つ方法を考えるようになります。
部下の問題を面倒ごとではなく、育成テーマとして見るようになります。
短期成果と組織づくりを切り離さずに考えられるようになります。

初めての管理職研修は総花的にしない方がうまくいく

管理職研修を設計するとき、経営者・経営陣が陥りやすいのが、あれもこれも盛り込もうとすることです。
部下指導も必要。
面談も必要。
会議も必要。
評価も必要。
リーダーシップも必要。
たしかに全部必要です。ですが、最初から全部を並べると、受講者の頭には残りにくくなります。

初めての管理職研修では、テーマを絞る方が効果的です。
特に最初は、次の3つに絞るのがおすすめです。

他責・被害者意識を抜くこと。
会社を変えるのは管理職だという当事者意識を入れること。
管理職の仕事は“目標達成×組織”のダブル達成だと定義すること。

この3つが入るだけで、その後に学ぶ1on1や会議運営、部下育成、評価面談の吸収率は大きく変わります。
なぜなら、すべてのスキルがどこに向かって使われるものなのかが、はっきりするからです。

逆に、この前提がないままでは、どんなに良い内容を教えても「知っている」で終わりやすくなります。
現場が変わる研修にするためには、最初に“技術”ではなく“前提”を整えることが重要です。

管理職研修は経営者の仕事を楽にするための経営施策

ここまでお伝えしてきた内容を、経営者目線でまとめると、管理職研修の意味はとても明確です。
それは、単なる教育施策ではありません。
経営者の仕事を減らし、会社を組織で回る状態に変えるための経営施策です。

管理職が他責のままであれば、経営者が現場を拾い続けなければなりません。
管理職に当事者意識が入れば、経営者がやらなくても回ることが増えていきます。
管理職が“目標達成×組織”を担えるようになれば、成果と育成の両立がしやすくなります。
その結果、経営者は戦略や投資判断、事業の未来づくりに時間を使えるようになります。

つまり、管理職研修をどう設計するかは、将来の経営のしやすさを左右するテーマです。
最初に何を教えるか。
何を抜くか。
何を定義するか。
ここを間違えないだけで、研修の効果は大きく変わります。

初めて管理職研修を行うなら、スキルから入るのではなく、まず仕事観を変えること。
他責を抜くこと。
当事者意識を入れること。
管理職の役割をダブル達成として定義すること。

この順番で始めることで、管理職は“役職者”から“組織を動かす人”へ変わっていきます。
そして、管理職が変わった分だけ、経営者の仕事は確実に楽になり、会社はより強くなっていきます。

管理職研修を通じて経営を楽にしたい経営者の方へ

管理職が変わると、経営者が一人で抱え込む仕事は確実に減っていきます。
現場の問題を毎回経営者が拾わなくてもよくなり、実行管理や部下育成が組織の中で回り始めるからです。

「管理職研修をやりたいが、何から教えるべきかわからない」
「管理職が他責で、当事者意識を持てていない」
「経営者に実務も判断も集中していて、会社が組織で回っていない」

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管理職をどう育てれば経営者の仕事が楽になり、組織が成長するのか。組織の定義をどう作り、管理職をどう動かしていくのかを具体的に学べます。

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執筆者

中小企業診断士
(株)3Rマネジメント 代表取締役 https://3r-management.jp/
(株)IoTメイカーズ 代表取締役 https://www.iot-makers.co.jp/

約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。

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