最大5億円補助金、知らないと失敗します|中小企業成長加速化補助金の注意点

渡邊 賢司
中小企業診断士
株式会社3Rマネジメント 代表取締役
株式会社IoTメイカーズ 代表取締役
約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。
皆さんこんにちは。中小企業診断士の渡邊です。財務コンサルタント養成講座も開講しております。
本日は「これだけは知っておかないとまずい。最大5億円補助の『中小企業成長加速化補助金』の注意点」というテーマでお話しします。
この補助金は昨年から始まり、昨年6月に一度締め切りがありましたが、その後しばらく公募がありませんでした。ところが、令和8年(2026年)に入り、正確には1月末から公募が開始されています。大規模な補助金ですので、ぜひ押さえておいてください。中小企業の皆さまへ、財務コンサルタントとして適切にアドバイスできると非常に喜ばれる内容です。
1. 補助金の概要(目的・対象・補助内容)
この補助金の目的は「地域経済を牽引する100億企業の創出」です。応募できるのは、売上高10億円以上100億円未満の企業。補助上限は最大5億円、補助率は1/2です。
特徴的なのは、以前の事業再構築補助金のように「建物」が補助対象に含まれる点です。建物に加え、機械装置やソフトウェア等も対象となります。
ただし、投資の下限が「1億円以上」となっています。つまり、1億円以上の投資を行う企業でなければ、この補助金は活用できません。最終的には、売上高100億円企業を目指すことがゴールとして設定されている補助金です。
2. 必須要件は2つ:「100億宣言」と「賃上げ要件」
必須要件は大きく2つです。
(1)100億宣言
「100億宣言」とは、政府のホームページ上で「100億円を目指します」と経営者が公表する手続きです。ここは注意点があり、公表までに約3週間かかります。申請準備の初動で遅れると間に合わなくなる可能性があるため、早めに着手してください。
(2)賃上げ要件(未達だと返還リスク)
もう1つが賃上げ要件です。補助事業終了後の3年間にわたり、「従業員1人当たり給与支給総額」を年平均で最低4.5%以上引き上げる計画を策定し、実行する必要があります。これが達成できない場合、返還義務が発生します。国として賃上げを成長戦略の柱にしている流れがあり、この補助金にも賃上げが強く組み込まれています。
3. 賃上げ要件のルール整理(どこを目標にするか)
賃上げ要件には、運用上のポイントがあります。
- 必須:従業員1人当たり給与支給総額を、基準年度から最終年度(3年後)にかけて年平均4.5%以上引き上げる計画
- そのうえで、目標指標は次のどちらかを選択可能
- 給与支給総額(全体)
- 従業員1人当たり給与支給総額
- 給与支給総額(全体)
どちらか一方を達成すればよい、という設計ですが、「1人当たり4.5%以上」は必ず達成が必要です。返還リスクがあるため、最初の計画段階で無理のない設計・根拠づくりが重要になります。
また、今回の重要な変更点として「役員報酬は対象外」です。対象となるのは、給与・賞与・残業手当・休日出勤手当・職務手当など、給与所得として課税対象となる経費です。つまり“従業員の給与を上げる”ことが求められます。
さらに、目標を掲げた場合は、従業員や役員に対して「表明」する義務もあります。
4. 採択されやすい賃上げ水準の考え方(4.5%は実務上厳しい)
制度上は「4.5%以上」とありますが、実務感としては「4.5%ギリギリでは採択されにくい」と考えた方がよいです。
実際、類似制度である「大規模成長投資(最大50億円規模)」の申請支援を行った際には、年平均7〜8%程度の賃上げ計画で書類審査を通過した経験があります。要件ギリギリの数値に寄せるのではなく、成長の果実を従業員へ還元する“分配の好循環”を、計画として描けるかが分かれ目になります。
5. 一次公募の傾向(どんな企業が通っているか)
前回(昨年6月)の一次公募は採択率16.3%と狭き門でした。
採択企業の傾向としては、基準の4.5%を大きく上回る賃上げ計画を出している点が挙げられます。たとえば、従業員1人当たり給与支給総額の伸びでは、採択者平均が約5.9%で、申請全体平均(約4.8%)を上回っていました。
また、給与支給総額についても、採択者の中央値が高い水準となっており、単に要件を満たすだけでなく、積極性のある計画が評価されていることが読み取れます。
さらに、興味深い点として、採択企業の売上高は申請平均より小さいケースもありました。一方で、売上高に対する投資比率が高い(積極投資)企業が通っている傾向が見られます。つまり、規模の大小というより「大胆な投資」と「高い成長目標」が重要だと言えます。
6. 申請の形式と審査フロー(2次は社長プレゼン)
申請書類は、パワーポイントで事業計画を作成する形式で、目安は35ページ程度です。加えて、エクセルで数値計画書も提出します。一次(書類審査)では、この数値計画と事業計画(PPT)の整合性が非常に重要になります。
書類審査を通過すると二次審査があり、経営者自身によるプレゼンテーションと質疑応答で評価されます。ここではコンサルタントの同席はできないため、社長と事前に問答を練習して臨むことが重要です。
なお、金融機関は同席可能です。申請時に金融機関から「支援します」という確認書をもらう運用があり、さらに二次審査で金融機関が同席することで、計画の実効性を強くアピールできます。採択可能性を高めるためにも、金融機関の同席については早めに交渉し、合意を取っておくことをおすすめします。
以上、中小企業成長加速化補助金の注意点をお伝えしました。弊社では財務コンサルタント養成講座を開催しており、補助金・融資・M&A・事業承継といった領域のアドバイス力を学べる内容になっています。無料セミナーも毎週開催しておりますので、ぜひご参加ください
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