売上総利益・営業利益・経常利益・当期純利益の違い——「どの利益」を見れば打ち手が決まる
「利益は利益でしょ?」
決算書の話になると、利益がひとまとめに語られがちです。しかし、損益計算書(PL)には複数の”利益”があり、それぞれ見ている世界が違います。
- 売上総利益(粗利)
- 営業利益
- 経常利益
- 当期純利益
名前が似ているため混同されやすいのですが、この4つは「同じ利益の言い換え」ではありません。
どの利益が弱いかによって、手を打つ場所が変わる——ここが本質です。
この記事では、4つの利益の違いを「実務で打ち手が決まる」形に整理します。
まず前提:利益は「段階」を追って積み上がります
PLは、売上から費用を段階的に差し引いていく構造です。利益も同じく”段階”で生まれます。
売上高
↓(売上原価を差し引く)
売上総利益(粗利)
↓(販売費・一般管理費を差し引く)
営業利益
↓(営業外損益を加味する)
経常利益
↓(特別損益を加味する)
税引前当期純利益
↓(法人税等を差し引く)
当期純利益
この順番を押さえるだけで、「利益がどこで削られたか」が追えるようになります。
① 売上総利益(粗利):商品・サービスそのものの稼ぐ力
売上総利益(粗利)= 売上高 − 売上原価
売上原価は、売上を生むために直接かかった費用です。
製造業なら材料費・製造労務費など、卸・小売なら仕入高、サービス業でも提供に直結する外注費等が該当します(どこまでを原価とするかは業種・管理方法で異なります)。
粗利は「売るもの自体に、どれだけ利益が乗っているか」を表します。
粗利が弱い会社は、現場でこう表れます。
- 「売上は前年比120%なのに、忙しさだけが増えた」
- 「人を2人増やしたのに、利益は変わらない」
- 「売上が伸びているのに、社長の通帳残高が増えない」
粗利は金額だけでなく、粗利率(粗利÷売上高)もセットで見ます。粗利率が下がるときは、たとえば次のような構造変化が起きやすいです。
- 値引き・ディスカウントが増えた
- 低粗利の商材・案件の比率が増えた
- 仕入価格が上がった
- 外注比率が上がった/外注単価が上がった
粗利を改善する主な打ち手
- 値決め(価格改定、値引きルールの見直し)
- 商品・サービスの構成見直し(利益率の高いものに寄せる)
- 仕入条件・外注条件の見直し
- 原価管理(ムダ、ロス、手戻り、歩留まりの改善)
- セット化、オプション化、標準化による収益性改善
粗利は、経営改善で最初に点検されやすい利益です。ここが薄いと、次の営業利益にも必ず響きます。
② 営業利益:本業の採算性(固定費をまかなえているか)
営業利益= 売上総利益(粗利) − 販売費・一般管理費(販管費)
販管費は、売上に直接ひもづかない費用です。
代表例は人件費、家賃、広告宣伝費、通信費、支払手数料、旅費交通費、システム利用料、減価償却費など。
(※減価償却費は業種や社内区分により製造原価側に入ることもあるため、実務では内訳確認が確実です。)
営業利益は「本業でどれだけ利益を残せているか」を見る中心指標です。
粗利が”商品力”なら、営業利益は会社の運営を含めた本業の実力です。
営業利益が弱いとき、原因は大きく2つに分かれます。
- 粗利が薄い(値決め・原価・構成の問題)
- 販管費が重い(固定費化・運用の問題)
ここを切り分けるだけで、改善策の方向がはっきりします。
営業利益を改善する主な打ち手
- 人員配置の最適化・業務効率化(残業・手戻りの削減)
- 固定費の見直し(家賃、サブスク、外注契約など)
- 広告宣伝費の投資対効果改善(媒体・クリエイティブ・導線の再設計)
- 生産性向上(同じ人数でより多くの粗利を生む体制づくり)
- 案件別・部門別の採算管理(KPI管理)
営業利益が安定してプラスの会社は、外部環境が変わっても崩れにくい傾向があります。経営の基礎体力を示す利益です。
③ 経常利益:金融取引も含めた”平常時の実力”
経常利益= 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
営業外収益には受取利息・配当金など、営業外費用には支払利息などが含まれます。
経常利益は、営業利益に「本業以外の”定常的な要素”」を加味した利益です。
金融機関が重視しやすいと言われるのは、返済原資としての安定性を見るためです。経常利益は、平常時にどれだけ利益が残る構造かを示すため、「この会社は借入を返せるか」を判断する際の基準になります。
たとえば、営業利益は出ているのに支払利息が大きく経常利益が伸びない場合、問題は「現場」ではなく「財務設計(借入構造)」側にある可能性が高まります。
一方で、受取利息や雑収入が多い場合、見かけ上は利益がよく見えることがあります。重要なのは、それが継続して出る要素かどうかです。
経常利益を改善する主な打ち手
- 金利負担の最適化(借換、返済計画、資金調達条件の見直し)
- 借入の目的整理(運転資金と投資資金を混同しない)
- 自己資本を厚くする(利益の積み上げによる信用力向上)
- 資金繰りの安定化(資金使途・返済能力の整合)
経常利益は、事業と金融の両方の視点で会社の実力を映す利益です。営業利益だけでは見えない論点が浮き彫りになりやすいのが特徴です。
④ 当期純利益:一時要因と税金まで含めた”最終結果”
当期純利益= 税引前当期純利益 − 法人税等
税引前当期純利益は、経常利益に特別損益(臨時の利益・損失)を加味したものです。
特別損益には、固定資産の売却益・売却損、災害損失、リストラ関連費用など、継続性が薄い要因が入り得ます。そのため当期純利益は、年度によってブレやすい利益でもあります。
当期純利益は会計上の最終着地であり、積み上がるとBSの利益剰余金として蓄積され、会社の体力になります。
ただし注意点があります。
- 当期純利益が大きいからといって、翌年も同じだけ出るとは限りません
- また、当期純利益が黒字でも、キャッシュが増えるとは限りません(売掛金の回収、投資、借入返済の影響で資金繰りは別の動きをします)
当期純利益の読み取りで意識したい点
- 特別損益の影響でブレていないか
- 税負担の水準は妥当か(利益の質・継続性の確認)
- それが”継続的に出せる利益”なのか
当期純利益は重要ですが、改善策を考えるときは「最終結果」から逆算するのではなく、粗利→営業利益→経常利益へ分解して原因を掘るのが実務的です。
4つの利益をどう使い分けるか——実務での考え方
4つの利益は、次の目的で使い分けると判断が速くなります。
| 利益の種類 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 粗利(売上総利益) | 商品・サービス単体の稼ぐ力を確認したい |
| 営業利益 | 本業の採算性、固定費を含めた運営の強さを見たい |
| 経常利益 | 金融コストまで含めた平常時の実力、資金調達との相性を見たい |
| 当期純利益 | 最終結果と蓄積(内部留保)を確認したい |
実務では、次の順が扱いやすいです。
- 営業利益を起点に「粗利の問題か/販管費の問題か」を切り分ける
- 経常利益で「金利負担・借入構造が圧迫していないか」を確認する
- 当期純利益で「特別要因と税金の影響」を整理し、継続性を見立てる
こうすると、「利益を増やしたい」が具体的な改善テーマに変わります。
まとめ:利益の種類が分かると、改善の打ち手が見える
- 売上総利益(粗利)は「売るものの稼ぐ力」
- 営業利益は「本業の採算性」
- 経常利益は「金融取引も含めた平常時の実力」
- 当期純利益は「一時要因と税金まで含めた最終結果」
同じ”利益”でも見ている範囲が違うため、課題の場所も打ち手も変わります。
利益の種類を整理して読めるようになると、決算書は”過去の報告書”ではなく、次の一手を決める地図になります。
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