損益計算書(PL)の基本構造——「どこで儲けて、どこで減ったか」が一目でわかる

決算書の中でも損益計算書(PL)は、「一定期間の成績表」として最も直感的に読める資料です。売上がいくらで、費用がいくらかかり、最終的に利益がいくら残ったのか。これを段階的に整理して示してくれます。

【例】売上が前年比120%に伸びたのに、営業利益は前年割れ。調べると粗利率が5%下がっていた——

こうした“数字のズレ”は、PLの段階構造を読むことで、原因をかなりの精度で特定できます。売上の増減だけを追っている限り、同じ現象は何度でも起きます。

ただし、最初に押さえるべき前提があります。

PLは“利益の流れ”を示す資料であって、“現金の増減”をそのまま示す資料ではありません。売上計上と入金のタイミングは一致しないことが多く、設備投資や借入返済も、PLの利益とキャッシュの動きをズラします。

それでもPLが強力なのは、利益が生まれるまでのプロセスが分解されているからです。つまり、「どこで稼いだのか」「どこで削られたのか」「本業は強いのか」といった問いに、数字の構造として答えられます。

本記事では、PLの基本構造を押さえたうえで、実務で迷わない読み取りポイントまで整理します。

目次

PLは「売上→利益」を段階的に積み上げる構造

PLは大きく言うと、次の流れで構成されます。

  • 売上高
  • 売上原価
  • 売上総利益(粗利)
  • 販売費・一般管理費(販管費)
  • 営業利益
  • 営業外損益
  • 経常利益
  • 特別損益
  • 税引前当期純利益
  • 法人税等
  • 当期純利益

この「段階」が重要です。どの段階で利益が落ちているかが分かれば、打ち手が具体化します。逆に、段階を無視して「利益が少ない」とだけ捉えると、改善策がぼやけます。

① 売上高:最初に見るが、ここが全てではない

売上高は一定期間に提供した商品・サービスの対価で、分かりやすい指標です。

ただし売上が伸びていても、利益が残らなければ会社は強くなりません。PLは、売上の次に「利益が残る構造かどうか」を確認する資料だと捉えると読みやすくなります。

この段階で見ることは、売上の増減が「量」なのか「単価」なのか「構成」なのか、という分解です。まずは売上の変化を分解します。

  • 客数が増えたのか
  • 単価が上がったのか
  • 案件・商品の構成が変わったのか

売上の“中身”が分かると、次の粗利(稼ぐ力)の理解が一気に進みます。

② 売上原価:粗利を左右する「提供コスト」

売上原価は、売上を生み出すために直接かかった費用です。製造業なら材料費や製造にかかる労務費、卸・小売なら仕入高、サービス業でも提供に直接ひもづく外注費などが該当します(どこまでを原価とするかは業種・社内の管理方法で異なります)。

この段階で見ることは、原価が増えた理由が「仕入単価」なのか「ロス」なのか「外注設計」なのか、という原因の切り分けです。

押さえたいのは、「原価が増えた」こと自体が悪いのではなく、売上とのバランスで見るべきだという点です。

重要なのは粗利率(売上総利益÷売上高)であり、価格設定、仕入条件、原価管理、提供体制が数字に表れます。

③ 売上総利益(粗利):PLで最重要クラスの指標

粗利は、商品・サービスそのものの稼ぐ力を示します。

粗利が薄いと、どれだけ売っても「忙しいのに残らない」状態になりやすくなります。逆に粗利が厚いと、販管費(人件費・家賃・広告費など)を差し引いた後も利益が残りやすく、多少の売上変動があっても耐えられます。

この段階で見ることは、そのビジネスモデル自体に”稼ぐ力”があるか。商品・サービス単体で利益を生む構造になっているか。

また、粗利は、金額だけでなく「率」もセットで見ます。

  • 売上が増えているのに粗利率が下がっている

→値引き増、低粗利商品の比率増、仕入価格上昇、外注比率上昇などが潜みやすい

粗利は「現場の努力」よりも、実は値決め・商品構成・仕入条件といった“設計”で変わる領域です。たとえば低粗利商品の販売比率が高まれば、売上が伸びても粗利は減ります。

粗利はビジネスモデルの良し悪しを映す鏡です。同じ売上1億円でも、粗利率20%の会社は2,000万円、粗利率60%の会社は6,000万円残ります。

この差は「努力」ではなく「どんなビジネスモデルをしているか」という設計の差です。

ここが読めると、「売上を追うべきか、ビジネスモデルを変えるべきか」という改善の着手点が明確になります。

④ 販売費・一般管理費(販管費):本業を回すための「間接コスト」

販管費は、売上に直接ひもづかない費用の集合体です。人件費、家賃、広告宣伝費、通信費、旅費交通費、支払手数料、減価償却費(設備やシステム)などが代表例です。

なお減価償却費は会社や業種により、製造原価側に入ることもあります。どこに計上されているかは内訳で確認します。

販管費は一度増えると下がりにくく、固定費化しやすい特徴があります。売上が伸びているときに販管費も増えるのは自然ですが、伸びが止まった瞬間に利益が急落する原因になりやすい領域でもあります。

この段階で見ることは、費用が固定化して利益を押し潰していないか、です。

読むコツは、販管費を次の2種類に分けて整理することです。

  • 売上に連動して増えやすい費用(変動しやすい)
  • 売上に関係なく出ていく費用(固定化しやすい)

この整理ができると、営業利益の改善策が“設計”できます。

⑤ 営業利益:PLで「本業の実力」を見る中心

営業利益は、粗利から販管費を差し引いた利益で、事業そのものの採算性を示します。経営改善の現場では、まず営業利益を起点に課題を分解することが多いのはこのためです。

この段階で見ることは、本業で稼げているか、稼げていないか、です。

営業利益が弱いときは、次の切り分けが重要です。

  • 粗利の問題なのか(価格・原価・商品構成)
  • 販管費の問題なのか(人員配置・固定費・広告運用)

ここが明確になるだけで、打ち手の優先順位が決まります。

⑥ 営業外損益と経常利益:「本業以外」の影響を切り分ける

営業外損益には、受取利息・配当金、支払利息、為替差損益などが入ります。支払利息が大きいと、営業利益が出ていても経常利益が伸びません。経常利益は“平常時の実力”に近い利益として、金融機関との対話でも見られやすい指標です。

この段階で見ることは、利息負担などが“実力利益”を削っていないか、です。

なお、補助金・助成金などが損益として計上される場合もありますが、計上区分は内容・受給形態・会計方針で異なります。

たとえば、機械や設備を買うための補助金は、その設備を使う期間に合わせて、減価償却費と一緒に少しずつ利益として計上する処理が一般的です。一方、人件費や家賃など日常的な経費を補うための助成金は、受け取った年度に一括して営業外収益や特別利益に計上されることが多くなります。

また、補助金を返す必要がないことが確定しているか、使い道が限定されているかによっても、計上のタイミングや区分が変わります。

大事なことは、利益を押し上げている要因が「継続して出るものか、一時的なものか」を、内訳や注記も含めて確認することです。

⑦ 特別損益〜当期純利益:一時要因と税金を織り込んだ最終着地

特別損益は、固定資産の売却益・売却損、災害損失、組織再編・退職関連費用など、臨時的・特殊な要因が入ります。ここが大きいと、年度によって利益がブレます。

この段階で見ることは、今年だけの出来事で“見かけの利益”が動いていないか、です。

法人税等を差し引いたものが当期純利益です。当期純利益は会社に残る利益であり、積み上がると会社の体力(内部留保)につながります。ただし、当期純利益が黒字でも資金繰りが苦しいことはあり得ます。PLは“儲け”の構造を示しますが、現金の増減は別途、回収・投資・返済の動きと合わせて見る必要があります。

PLを読むときの基本チェックポイント(実務で迷わない順番)

PLの基本構造を理解したら、実務では次の順で確認すると整理しやすくなります。

  1. 粗利率:値決め・原価・構成に問題がないか
  2. 販管費:固定費化しすぎていないか(売上が落ちた瞬間に崩れないか)
  3. 営業利益:本業の採算性があるか
  4. 経常利益:利息負担などで削られていないか
  5. 特別損益:来期に再現できるか(一時要因で見かけが動いていないか)

まとめ:PLは「利益の出る仕組み」を見える化する地図

損益計算書(PL)は、売上から最終利益までを段階的に示し、「どこで稼ぎ、どこで削られたか」を明確にします。

売上だけでは見えない採算性や本業の実力、固定費の重さ、一時要因の影響まで整理できるため、経営の意思決定に直結します。

PLを“数字の羅列”ではなく、“利益が生まれる構造”として読めるようになると、改善の打ち手は一気に具体化します。

売上の増減に一喜一憂する前に、PL上のどこの段階で崩れているか。そこから手を付けるだけで、同じ努力量でも成果の出方が変わります。

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執筆者

中小企業診断士
(株)3Rマネジメント 代表取締役 https://3r-management.jp/
(株)IoTメイカーズ 代表取締役 https://www.iot-makers.co.jp/

約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。

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