中小企業の組織はなぜ崩れるのか?「人数増」と「儲かる」の二大要因と、管理職が最初に押さえるべきこと
組織はなぜダメになるのか(2大原因)
組織の不調は、誰か一人の性格や能力の問題に見えがちです。けれど実際には、もっと構造的で、そして「起きるべくして起きる」理由があります。組織が崩れる原因は大きく二つに整理できます。
一つは「人数が増えるだけで組織は崩れやすくなる」こと。もう一つは「儲かると組織がダメになっていく」ことです。
ここで重要なのは、これらが例外的な事故ではなく、無策であれば自然に起きる現象だという前提です。つまり「組織づくりをしなければ、いつか崩れる」のではなく、「組織づくりをしなければ、崩れるのが当然」という見取り図で捉える必要があります。
管理職にとって、この前提は非常に重要です。なぜなら、現場が荒れてから対処しようとしても、手遅れになりやすいからです。人数も利益も会社にとって本来ポジティブな変化です。しかし“良い変化”ほど問題は見えにくい形で進行します。だからこそ管理職は「悪くなってから頑張る」ではなく、「自然に崩れる前提で、先に手を打つ」姿勢が欠かせません。
「無策だと組織はダメになる」という前提
組織がうまく回っているように見える時期でも、放置すれば必ず歪みが溜まります。この前提を置くと、現場で起きる違和感の見え方が変わります。
たとえば「最近辞める人が増えた」「評価に納得していない」「部門間がギスギスする」「会議が増えたのに決まらない」「同じ問題が何度も起きる」など。こうした現象は、単発のトラブルとして処理されがちです。しかし「無策だと組織はダメになる」という前提で見ると、それらは“自然に崩れ始めたサイン”になります。
管理職がここでやるべきことは、単なる不満処理ではありません。現場の声や出来事を、「仕組み・役割・意思決定・伝達・育成」の問題として翻訳し、再発しない状態に整えていくことです。現場の火種を拾って消すだけでは、火種は次々と発生します。火が出る構造を変える視点が必要です。
原因① 人数が増えるだけで組織は崩れやすい(成長フェーズと必要能力)
人数が増えると仕事が増えます。仕事が増えると分業が進みます。分業が進むと連携・調整・優先順位付けが必要になります。つまり、人数増=マネジメント需要の増加です。
少人数のときは、社長や少数のキーマンが「目と手」で回せます。コミュニケーションも近く、意思決定も速い。多少の曖昧さがあっても、関係性で補えます。しかし人数が増えるほど、関係性では補えなくなります。情報量が増え、価値観も多様化し、暗黙の了解が通じなくなるからです。
成長フェーズが変われば、必要能力も変わります。創業期は、信頼・信用、営業力、ビジネスの基礎が強い推進力になります。ところが人が増える局面では、それだけでは組織は回りません。必要になるのは、組織づくり、マネジメント、人材育成の要素です。
管理職に直結するのは、20人前後を超えたあたりから「社長一人では見切れない領域が急増する」という点です。現場から見れば、社長の方針よりも「目の前の上司が何を許し、何を評価し、何を優先するか」が日々の現実になります。つまり、現場にとってのトップが、社長ではなく管理職(課長・リーダー)へと移っていくのです。
ここで管理職が機能しないと、現場はすぐに荒れます。なぜなら、現場の判断軸が揃わず、指示がぶれ、納得感が落ち、疑心暗鬼が生まれるからです。人が増えるだけで起きる崩れは、能力の高低だけではなく「管理職が機能する前提条件が整っていない」ことから生じます。
「20人を超えたら組織づくりが必要」:戦略なき増員の典型
組織戦略がない会社で起きがちな増員のパターンは、かなり共通しています。
仕事が増えたから人を増やす。入社時に求める働き方や考え方をきちんと伝えない。実務ができる人や古参をリーダーにする。けれどリーダーに何をすべきか教えない。結果としてリーダーは実務の延長のままになり、マネジメントの時間が取れない。将来を見据えた組織づくり・人づくりが進まず、場当たり的な対応が続く。
この状態で20人を超えると、組織は高確率で詰まり始めます。業務量は増え続けるのに、指示系統や意思決定のルールが曖昧なままだからです。さらに「管理職が置かれているのに、管理職が管理職として機能していない」状態が発生しやすくなります。
ここで重要なのは、「管理職がダメだから」と個人の問題にしないことです。管理職能力は、本人の資質だけで自然に育つものではありません。役割が定義され、任せる範囲(権限)が明確になり、求める行動が具体化され、育成と評価が揃って、初めて管理職は機能します。逆に言えば、それが無い状態で「現場を回して」と任せれば、疲弊するのは当然です。
管理職としては、まず「自分がやるべき管理の範囲」が曖昧になっていないかを確認し、曖昧なら上に整理を求めることが必要です。現場の混乱は、個人の頑張りで埋めるほど再発し、長期的にチームの基礎体力を削ります。
人数増に伴う症状(不安・不信、納得感の欠如、社長の“裸の王様”化 等)
人数が増えた組織で起きる症状は、現場で非常によく見られます。
社員が増えるにつれてトラブルが増える。社内に漠然とした不安・不信が広がる。不平等感や「やらされ感」が強まる。一体感がなくなる。会話の量は増えても、前に進む決定は減る。ルールがないから人によって判断が違い、「あの人はOKなのに私はダメ」といった不満が生まれる。
ここで厄介なのは、制度を整備しても納得感が上がらないケースです。評価や給与の仕組みを整えたとしても、前提となる方針共有が弱かったり、上司の運用の質が揃っていなかったりすると、制度が不満の増幅装置になります。「整えたのに荒れた」という現象は、制度の問題というより、土台(運用・対話・判断軸)が整っていないことから起きます。
さらに深刻なのが、社長と現場の断絶です。社長のビジョンや方針が現場に浸透しない一方で、現場の状況も社長に届かない。その結果、社長が“裸の王様”になっていきます。トップが現実を見失うというより、現実が上に上がらなくなるのです。
この断絶は、管理職が機能しない組織で起きやすい典型です。社長の意志を伝えられない、現場を上げられない、指示・指導ができない。こうなると、現場は「どうせ上は分かっていない」という諦めを抱え、声は愚痴になり、改善提案は消えていきます。
管理職がここで担うべきは、社長の代弁者になることだけではありません。現場の事実を、意思決定できる形に加工して上げることです。論点を整理し、選択肢を示し、リスクと優先順位を添え、必要なら自部門としての提案も合わせて上げる。現場の声を「通る情報」に変換できる管理職が増えるほど、社長が裸の王様になるリスクは下がります。
原因② 儲かると組織はダメになる
二つ目の原因は逆説的です。儲かるのは良いことなのに、なぜ組織がダメになるのか。ここには「儲かったことによって生じる組織リスク」があります。
儲かっている会社には、強い社長、強い商権・商流、強い商品・サービス、強いブランドなど、勝ちパターンが存在します。利益が出て、給料も払える。会社としては素晴らしい状態です。ところが、その状態が続くと、次のようなことが起きやすくなります。
本気を出さなくても儲かる。管理職が機能しなくても儲かる。社員がバラバラでも儲かる。組織が弱くても、勝ちパターンが会社を支えてしまうのです。
これは管理職から見ると怖い構造です。短期の業績が“組織の弱さ”を隠してしまうからです。問題意識が薄れ、「今は回っているから」という理由で改善が先送りされます。ところが状況は必ず変わります。商品も、商流も、ブランドも、いずれ老います。環境が変わった瞬間、組織の弱さが露呈し、そこで初めて「整えておけばよかった」と気づく。しかしその時には、人も疲弊し、信頼も落ち、改革のコストは跳ね上がっています。
だからこそ、儲かっている時期こそ、組織・人材・仕組みを強化するべきです。儲かったことは、組織づくりの免罪符ではなく、組織づくりに投資できる資源です。余力のある時期に、運用の歪みを直し、育成の型を作り、判断軸を揃え、情報の流れを整える。管理職がその視点を持てるかどうかが、次の局面を分けます。
まとめ:管理職が押さえるべき見取り図
組織がダメになるのは、特殊な会社だけの話ではありません。人数が増えるだけで崩れ、儲かるほど崩れる。無策なら自然に起きる現象です。
管理職の役割は、現場の不調を「誰が悪いか」ではなく、「何が設計されていないか」「どこで伝達が切れているか」「育成が機能する条件は何か」という構造に落とし込み、先に整えることです。火消しで終わらせず、火が出る構造を変える。その視点を持つだけで、組織の見え方は大きく変わります。
管理職として“組織が崩れる前”に手を打ちたい方へ
人数が増える局面、業績が伸びる局面は、現場の負荷が上がりやすく、管理職が最も揺さぶられるタイミングです。
「最近、チームの納得感が落ちている気がする」
「現場の不満が増え、経営との距離も広がっている」
「成果は出ているのに、組織がバラついてきた」
そんな兆候があるなら、今が“組織を強くする”着手点です。
無料セミナーでは、管理職が現場で使える視点に落とし込みながら、組織づくりの考え方を体系的に整理していきます。
ぜひ、無料セミナーにご参加ください。



