管理職が知っておきたい「組織が自然に崩れる理由」と、運営スタイル・永続性の考え方

売上も案件も伸びている。採用も進み、チームも拡大している。
それなのに、現場では不満が増え、会議は空回りし、管理職が疲弊し、離職がじわじわ出始める——。
管理職として「何かがおかしい」と感じたら、まず押さえたい前提があります。組織は“無策だと自然にダメになる”ということです。

本記事では、管理職向けに
・組織がダメになる代表的な理由
・運営スタイル(米国型/日本型)の違い
・組織の永続性をどう捉えるか
を、現場で使える形に整理します。

目次

組織に関する基礎知識:組織は「良い変化」が起点で崩れやすい

組織の問題は、赤字のときだけに起こるわけではありません。「人数が増えた」「儲かってきた」という“良い変化”の時にも問題は起こります。これを放置すると「組織リスク」が増えます。

社員が増えるにつれ、社内に不安・不信や不平等感(給与・評価・仕事・扱い)が増加していきます。価値観がバラバラになり、一体感が薄れる。さらに、経営の意図が現場に届かず、現場の実態も経営に戻らず、互いの不信が強まる——この流れは多くの会社で起きます。

管理職として大事なのは、「雰囲気が悪くなった」「最近まとまらない」という表面だけを追わないことです。組織は、人数や状況が変わるだけで“歪みが出る構造”を持っています。だからこそ、感情論ではなく設計と運用の視点で扱う必要があります。

組織がダメになる理由:大きな原因は2つ

人数が増えるだけで、組織はダメになる

採用が進むと組織は“勝手に”階層化し、管理職が置かれます。しかし、組織化の設計も指揮系統の定義も、管理職教育もないまま人だけ増えると、管理職は形骸化します。

よくあるパターンは、「仕事が増えたので人を増やした」「求める働き方や考え方を入社時に伝えていない」「実務ができる人/古株をリーダーにしたが、何をすべきか教えていない」「事業戦略と組織づくりが連動していない」などです。

この状態になると、管理職の仕事は実務の延長に吸い込まれます。「自分が手を動かしたほうが早い」「教える時間がない」「会議は増えるが決まらない」。結果として、管理職がボトルネックになり、現場は疲れ、組織はさらに回らなくなります。

管理職の打ち手はシンプルです。
「誰が、何を決め、何を伝え、何を育てるのか」を役割として言語化し、現場に浸透させること。役割が定義されるだけで、会議の質と現場の安心感が変わります。

儲かると、組織はダメになる(儲っちゃったリスク)

強い商品・サービス・ブランドなどが見つかり利益が出ると、会社は安定します。しかしその間、「本気を出さなくても儲かる」「管理職が機能しなくても儲かる」「社員がバラバラでも儲かる」状態が成立してしまいます。
育成も仕組み化も先送りされ、危機感が薄れます。

一方で、状況は必ず変わります。商品も商流もブランドも老い、環境が変わった瞬間に、弱くなった組織は踏ん張れません。
だから業績が良いときほど、管理職は「属人化」「育成の先送り」「変わらなくても回る空気」を点検し、手を打つ必要があります。

重要なのは、「儲かっている=正しい」ではないということです。儲かっている状態は、単に“今の勝ち筋が当たっている”だけであり、組織の基礎体力が強いとは限りません。勝ち筋が揺れたときに耐えられるかどうかは、日々の運営の積み重ねで決まります。

運営スタイル(米国型/日本型):ジョブ型か、メンバーシップ型か

ジョブ型/メンバーシップ型の議論は流行しがちですが、大事なのは「自社はどちらに重きを置くのか」を定義することです。表層の“良し悪し”で選ぶと混乱します。

整理すると、
・米国型(ジョブ型):仕組みで儲ける
・日本型(メンバーシップ型):人で儲ける
です。やること(採用・配置・評価・育成)は似ていますが、前提と力点が違います。

ジョブ型は職務を中心に役割・責任・成果を明確にし、適材適所で回します。前提の違う人が集まりやすい環境では、ジョブ(Job)を共通言語にした方が運営しやすい、という考え方です。

メンバーシップ型は関係性と育成を中心に設計します。「皆で協力して知恵を出し、稼ぐ」ことに意味があるという思想が軸になります。特に中小企業では、入ってきた人を育て、チームで生産性を上げる方が強くなりやすい、という視点が重要です。

そして一番危険なのは「定義しない」ことです。
メンバーシップを求めつつルールはジョブ、社員の中も両タイプが混在——この状態は不信と対立を生みやすい。管理職は、経営とすり合わせて「自社の運営の前提」を言語化し、評価・配置・育成の運用に一貫性を持たせることが重要です。

組織の永続性:目指す/目指さないは、最初の分岐点

「勝ち続ける組織を作る」ことは、経営の大きな目標のひとつです。しかし、小さな会社ほど“永続性”を明確に考えないまま走り続けてしまいがちです。管理職も同じで、日々の運営に追われると“次の世代まで持たせる”視点が後回しになります。

永続性を“積極的には”目指さない選択もあり得ます。ただし、その場合でも「何もしなくていい」わけではありません。少人数で止めるなら、給与を上げ続けられるか、年齢構成の変化で生産性は落ちないか、若手が魅力を感じるか、モチベーションは保てるか——といったリスクが残ります。

一方、永続性を目指すなら、一定規模の組織・仕組・文化が必要になります。具体的には、新規事業を生む余裕、継続採用、育成とチームワーク、高い生産性、次世代経営陣を生むための管理職強化、必要最低限のルールづくり、などです。
ここで鍵になるのが、管理職が“運営者”から“育成と仕組みの担い手”へ役割を広げられるかどうかです。

永続性を目指す会社では、管理職は「現場を回す人」であるだけでなく、「次に回る状態を作る人」でもあります。短期の成果だけでなく、組織の筋肉を増やす仕事が求められます。

管理職が今日からできる「崩れの予防策」

組織が揺れ始めると、つい「社員が育たない」「最近の若手は…」と原因を個人に寄せたくなります。しかし、個人攻撃に寄せるほど、現場の空気は悪化し、改善は遅れます。管理職に必要なのは、個人の問題に見える現象を“運営の問題”として再定義することです。

では、管理職は何から手をつけるべきか。おすすめは次の3点です。

まず「期待値の翻訳」。経営の狙い・優先順位を、現場の行動に落とし、言葉を揃えます(何を増やし、何を減らすかまで言う)。管理職が、経営戦略の翻訳者になることで、現場の迷いが減り、判断が揃います。

次に「指揮系統の整流化」。相談先・決裁者・責任範囲を明確にし、“誰に言えば動くのか”を曖昧にしない。曖昧さは、遠慮と不満を増やし、やがて対立になります。

最後に「育成の時間を先に押さえる」。忙しいほど、業務時間の数%でも部下に向き合う時間を“定義して確保する”ことが重要です。育成は“余った時間にやるもの”ではなく、“先に確保する仕事”です。ここを押さえられるかどうかで、半年後の現場の負担が変わります。

この3つが回り始めると、採用・評価・会議といった個別施策も効きやすくなります。逆に言えば、ここが曖昧なままだと、制度だけ導入しても現場は動きません。

まとめ:組織は“自然に崩れる”。だから管理職が設計する

人数が増えるだけで、形骸的な管理職が生まれ、指揮系統は曖昧になります。
儲かると、危機感が薄れ、育成と仕組み化が先送りされます。
この自然現象に抗うには、運営スタイルを定義し、役割を言語化し、育成と対話の時間を意図的に確保し、永続性の方針に合わせて仕組みを整えることが必要です。

管理職の手の届く範囲からで構いません。設計と運用を“仕事として”扱うことが、現場を救います。

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執筆者

中小企業診断士
(株)3Rマネジメント 代表取締役 https://3r-management.jp/
(株)IoTメイカーズ 代表取締役 https://www.iot-makers.co.jp/

約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。

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