中小企業の組織づくりは何から始める?「20人の壁」で組織が回らなくなる原因と、最初の設計ポイント
中小企業の「組織づくり」は、なぜ急に必要になるのか
「組織づくり」と聞くと、理念浸透や評価制度、研修設計などを思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど中小企業の現場では、組織づくりは“理想論”ではなく、ある日突然、待ったなしで必要になります。
典型的なのが、商売が回り始めて社員数が増えたタイミングです。売上が伸び、案件も増え、採用も進む。ここまでは勢いで乗り切れるのですが、一定の人数を超えたあたりで、社長1人の目と手だけでは統制が効かなくなります。これが、いわゆる「20人の壁」です。
この壁を越えると、現場ではこんな症状が増えます。
- 漠然とした不安・不信感が増える
- 不平等感や不満が蓄積する
- 「やらされ感」が強くなる
- 部門ごとにバラバラで一体感がない
- ビジョンが浸透せず、社長が“裸の王様”のようになる
ここで重要なのは、これらが“誰かが悪いから”起きるのではなく、設計をしない限り、自然に起きやすい現象だという点です。つまり、組織づくりは根性論ではなく、構造の問題として扱う必要があります。
1. 中小企業の困りごとは結局「商売」と「組織」に帰着する
中小企業の悩みは、資金繰り、採用、育成、評価、離職、営業の伸び悩みなど、一見するとバラバラに見えます。ところが支援の現場で整理していくと、多くは次のどちらか、あるいは両方に帰着します。
- 商売(稼ぐ仕組み)
- 組織(再現性高く回す仕組み)
会社は稼げなければ維持できません。最初のスタートは商売であり、儲かる仕組みがなければ続きません。そして多くの中小企業では、商売をつくる責任は社長に集中します。売上も利益も、結局は社長の意思決定と行動の延長線上で形づくられます。
一方で、商売が回り始め、人数が増えると次に立ちはだかるのが「組織」です。ここでつまずく会社が非常に多い。なぜなら、商売が伸びた“成功体験”の延長で、同じやり方を続けようとするからです。
しかし人数が増えた組織では、社長の目線よりも、現場の“フロント”が誰になっているかが決定的になります。多くの場合、現場のフロントは社長ではなく課長・リーダー層です。現場の納得感や不満、離職の引き金は、日々のマネジメント品質に直結します。
つまり、商売が伸びるほど、組織づくりは避けて通れません。
商売で勝つことと、勝ち続けるために組織を整えることはセットです。
2. 「20人の壁」で組織が回らない原因は、マネジメントの重心が変わるから
20人を超えたあたりから「社長1人では無理」になります。これは能力の問題ではなく、物理的に不可能になるという意味です。
人数が増えると、社長が見えている世界と、現場が感じている世界がズレていきます。現場から見ると、日々の仕事の相談相手は社長ではなく課長です。評価の納得感も、指示の明確さも、フォローの丁寧さも、課長の動きで決まります。
ところが、多くの中小企業では課長が「課長として機能するように設計されていない」状態で任命されがちです。
- プレイヤーとして優秀だったから昇格した
- 役割や権限が曖昧なまま“管理職”になった
- 育成や評価のルールがなく、現場対応が属人的
- 社長の価値観だけが基準になり、説明が足りない
この状態が続くと、社員側の体感はこうなります。
- 何を頑張れば評価されるか分からない(不信感)
- 人によって扱いが違う(不平等感)
- 指示が曖昧で、結局“指示待ち”が増える
- 目的が腹落ちせず、やらされ感が強まる
だからこそ、組織づくりの初手は「理念」でも「制度」でもなく、まずはマネジメントが回る前提条件の設計になります。
3. 組織づくりは何から始める?最初に整える「3つの設計ポイント」
「組織づくり 何から」と検索する方が求めているのは、難しい理論ではなく“最初の一歩”です。ここでは中小企業がつまずきやすい順に、初手の設計ポイントを3つに絞ります。
3-1. 役割の設計:課長・リーダーの“仕事”を定義する
まず必要なのは、管理職の役割定義です。
「課長とは何をする人か」が曖昧なままでは、現場の不満は消えません。
最低限、次の3つは言語化しておくと、現場の混乱が減ります。
- 現場の判断はどこまで任せるのか(権限)
- 何を成果として見るのか(成果責任)
- 部下に対して何を担うのか(育成・面談・フォロー)
ここが固まると、社長の負担が減るだけでなく、社員側の納得感が上がり、指示待ちが減りやすくなります。
3-2. 伝達の設計:社長の意図が“現場の言葉”に翻訳される回路を作る
20人を超えると、社長が全員に直接伝えるのは限界があります。
そこで必要なのが「伝達の回路」です。
ポイントは、社長の言葉をそのまま降ろすのではなく、課長が現場の言葉に翻訳し、現場の疑問を回収して戻すこと。ここがないと、ビジョンは“掲げているだけ”になり、社長が裸の王様化します。
会議体や1on1など、形式は何でも構いません。大事なのは「意図が翻訳され、疑問が回収される」仕組みがあることです。
3-3. 運用の設計:ルールは“作る”より“回す”が先
組織づくりというと、評価制度や行動指針づくりに入りたくなります。ただ中小企業では、制度を作っても回らなければ意味がありません。
最初は立派な制度よりも、次のような小さな運用から始めるほうが成功率が上がります。
- 週次で「進捗・詰まり・支援依頼」を確認する
- 役割ごとの“やること”をチェックリスト化する
- 判断基準を「例」で共有する(ケースで型化する)
組織づくりは、完成形を作るプロジェクトではなく、運用を回しながら改善していくプロセスです。最初から100点を狙おうとすると、上手く回りません。
4. もう一つの落とし穴:儲かると組織は弱くなる
組織づくりを後回しにしやすい会社ほど、実は危うい側面があります。それが「儲かると組織はダメになる」という逆説です。
ビジネスが当たり、強い商品・商流・ブランドができると、本気を出さなくても売上が立つ状態が生まれます。すると管理職が弱くても、社員がバラバラでも、問題が“表面化しにくい”。結果として、組織の筋肉が落ちていきます。
しかし環境は必ず変わります。商品も商流も老いたり、陳腐化します。
うまくいっている時こそ、組織・人材・仕組みを強化しなければなりません。
組織づくりは「困ってから」ではなく、「回っている時」に始めるほど、コストが安く、効果が大きいテーマです。
5. なぜ組織づくりを“丸ごと支援できる人”が少ないのか
中小企業の組織づくりは、必要性が高いのに担い手が増えにくい領域です。
- フレームワークがそのまま当てはまりにくい
- 個別事情が強く、伴走コストがかかる
- 教育だけ、制度だけでは解決しない
- そもそも現場に余裕がなく、腰を据えて取り組みにくい
さらに本質的には、組織づくりはコストであり、利益が出ていないと投資しづらい現実があります。だからこそ、「商売」と「組織」を同時に扱える支援が求められます。
まとめ:中小企業の組織づくりは「商売×組織」をセットで設計するところから
中小企業の悩みは、結局「商売」と「組織」に収れんします。
商売で勝つだけでは続かない。組織を整えるだけでも勝てない。両輪で回す必要があります。
そして、組織づくりの初手は、立派な制度づくりではありません。
20人の壁を越えた会社が最初に整えるべきは、次の3つです。
- 課長・リーダーの役割定義(権限・成果責任・育成責任)
- 伝達の回路(社長の意図が現場に翻訳され、疑問が回収される)
- 運用の仕組み(作るより回す。小さく始めて改善する)
組織が回らないのは、誰かの能力不足ではなく「設計不足」であることがほとんどです。だからこそ、構造として捉え直すことが、組織づくりの第一歩になります。
もし今、次のどれかに心当たりがあるなら、組織づくりの優先順位を見直すタイミングかもしれません。
- 社長が全部見ないと回らない
- 課長・リーダーの役割が曖昧
- 不満はあるのに、何を変えればいいか分からない
- 指示待ちが増え、現場が重くなってきた
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