事業再構築補助金申請前に必読!知っておくべきポイントと注意事項

菅野 翔
中小企業診断士
中小企業診断士
大学卒業後、ライター、映像編集、会計コンサルなどを経てIoTスタートアップ企業に創業メンバーとして参加。アパレル、飲食等の名だたる大手メーカーから新規受注し、IoTにより顧客の集客チャネルを拡大。
創業メンバーとして参画した経験から、何もないところから会社を運営していく大変さを実感し、同じような悩みを持つ経営者を助ける想いで中小企業の経営者に帆走する。
\認定支援機関!補助金のプロの中小企業診断士がサポート/
はじめに
事業再構築補助金は、中小企業等にとって事業再構築に挑戦する大きなチャンスとなるものです。しかし、申請にあたっては、多くの注意点や確認すべき事項が存在するのも事実です。
本記事では、事業再構築補助金の申請を検討している皆様が、申請を成功させるために必ず知っておくべき重要なポイントと注意事項を、分かりやすく解説します。
本記事で解説する具体的なポイントの一例として、
補助金交付候補者の採択後にも、交付申請における審査があることや、交付決定前に契約した経費は補助対象とならない点など、事前に把握しておくべき情報が満載です。
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金は、中小企業や中堅企業が、経済社会の変化に対応して事業再構築に挑戦することを支援する制度です。 新市場への進出、事業転換、業種転換などが対象で、事業計画は金融機関や認定支援機関と策定し確認を受ける必要があります。
通常類型の申請では、付加価値額を年平均4.0%以上増加させる計画が求められ、給与総額を年平均2%以上増加させる必要もあります。市場規模が拡大する分野への進出や、縮小する分野からの転換も要件となり、賃上げやコロナ借換の有無で加点があります。 電子申請のみで受付、交付決定前の経費は対象外です。
事業再構築補助金申請時の主な注意事項
申請スケジュールの管理
事業再構築補助金の申請におけるスケジュール管理は非常に重要です。公募期間は限られており、締切日を過ぎた申請は一切受け付けられません。申請は電子申請のみのため、操作に不慣れな場合は事前にマニュアルを確認し、余裕をもって準備を進めましょう。
特に、GビズIDプライムアカウントの取得には時間がかかるため、未取得の場合は早めに手続きを開始してください。
また、申請書類の準備や金融機関等との事前相談にも時間を要するため、公募開始と同時に申請準備を始め、締切日に間に合うよう余裕を持ったスケジュールを立てることが不可欠です。
締切間際での申請は、システムへのアクセス集中により、申請が完了できない可能性も考慮に入れる必要があります。
必要書類の不備
事業再構築補助金の申請では、必要書類の不備が原因で申請が却下される事例が多くあります。事業計画書は、事業再構築の具体的な内容、実施体制、スケジュール、収益計画などを詳細に記述する必要があり、不十分な記述や根拠のない数値は審査に不利に働きます。
見積書は、相見積もりが必要な場合があり、特に高額な機械装置やシステム構築費については、複数業者からの見積もりを添付する必要があります。これらの書類に不備や矛盾がある場合、審査で不利になるだけでなく、申請が却下される可能性があります。
また、提出書類は電子申請システムを通じて提出する必要があるため、ファイル形式やファイル名にも注意が必要です。申請前に、公募要領を熟読し、必要書類を全て揃えてから申請を行うようにしましょう。特に、添付書類のファイル名は指定されているため注意が必要です。
審査基準の理解不足
事業再構築補助金の申請において、審査基準の理解不足は不採択となる大きな要因です。審査では、事業計画の実現可能性、新規事業の有望度、公的補助の必要性などが評価されます。事業の独自性や社会的意義を明確に示すことは非常に重要で、単に既存事業を転換するだけでなく、市場のニーズに応え、競争優位性を確立できる事業計画であることが求められます。
事業計画書では、競合分析に基づいた自社の強みや差別化戦略を明確に記述し、具体的な数値目標や実現可能なスケジュールを示す必要があります。審査項目として、付加価値額の増加目標、市場規模の拡大、雇用への貢献なども重視されるため、これらの点を意識した事業計画書を作成することが重要です。
また、単に補助金を得るためだけでなく、企業の成長戦略に不可欠な事業であることを示す必要があります。事業計画の内容が審査基準を十分に満たしているか、事前に確認することが重要です。
事業計画の実現可能性
事業再構築補助金の申請において、事業計画の実現可能性は審査の重要なポイントです。計画が曖昧で具体性に欠ける場合、不採択となるリスクが高まります。計画は、実現可能なスケジュール、明確な数値目標、具体的な実施体制を示す必要があります。事業計画書では、事業の課題、リスク、その解決策を明確に示し、計画の妥当性を説明する必要があります。
また、事業に必要な資金調達の見込みや、人材、事務処理能力など、事業を遂行できる体制が整っているかも評価されます。実現可能性を示すためには、過去の財務状況、市場分析、競合分析、具体的なアクションプランを提示する必要があります。
計画が現実的で、企業の経営資源に見合ったものであるかを十分に検討し、過大な投資や非現実的な目標設定は避けるべきです。第三者に過度に依存した計画や、既存事業と重複するような計画は、実現可能性が低いと判断される可能性があります。
補助対象経費の明確化
補助対象となる経費は、建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費など、事業再構築に直接必要なものに限られます。人件費、汎用性のある設備、自動車、既存設備の置き換え費用などは原則として補助対象外となるため、注意が必要です。
補助対象となる経費であっても、事業計画との関連性が不明確な場合や、過大な金額が見込まれる場合は、補助対象外となる可能性があります。見積書は複数業者から取得し、価格の妥当性を示す必要があり、特に1件あたり50万円(税抜き)以上の経費については、3者以上の相見積もりが必要となります。
リース契約の場合、リース料から補助金相当額が減額されていることを示す証憑が必要です。補助対象経費であることを示す根拠資料(見積書、契約書、仕様書など)を明確に添付することが重要で、不明瞭な経費計上は不採択の原因となります。交付決定前に契約や購入を行った経費は、いかなる理由があっても補助対象外となる点にも注意が必要です。
採択後の対応
採択された後も、定期的な報告義務が発生するため、注意が必要です。補助事業者は、事業完了後30日以内、または補助事業完了期限日のいずれか早い日までに、補助事業実績報告書を提出する義務があります。
この報告書では、補助事業の実施状況、経費の使用状況、事業成果などを詳細に報告する必要があります。
経費報告書では、支出した経費が補助対象として認められるか、証拠書類に基づいて確認されるため、見積書、契約書、請求書、領収書などを適切に保管しておく必要があります。
事業終了後も、事業化状況報告書を5年間提出する義務があり、知的財産権の譲渡や実施権の設定等で収益が得られた場合は、補助金の一部または全額を返納する可能性があります。これらの報告義務を怠ったり、虚偽の報告を行った場合は、補助金の交付決定が取り消されたり、補助金の返還を求められる可能性があります。
補助金は、経理上、支払を受けた事業年度の収入として計上し、法人税等の課税対象となる点も留意する必要があります。
申請のトラブルを防ぐ方法
事業再構築補助金の申請におけるトラブルを防ぐためには、認定経営革新等支援機関や専門家への相談を積極的に活用することが推奨されます。
専門家は、事業計画の策定、必要書類の準備、審査基準の理解など、申請プロセス全般において的確なアドバイスを提供してくれます。特に、事業計画書の作成は、申請者自身で行う必要がありますが、専門家の助言を受けることで、計画の具体性や実現可能性を高めることができます。
また、申請前に、公募要領をよく読み、チェックリストを活用して、必要書類や要件を一つ一つ確認することも重要です。添付書類のファイル名や形式が指定されているため、電子申請システムの操作マニュアルを確認し、不備のないように準備する必要があります。
過去のトラブル事例を参考に、自社が同様の過ちを犯さないよう注意し、不確かな点は事務局に問い合わせることも重要です。申請書類の提出前に、複数回チェックを行い、万全の状態で申請することが、採択への近道となります.
申請を成功させるための専門家活用のヒント
認定経営革新等支援機関やコンサルタントは、事業計画の策定から申請書類の準備、そして審査対策まで、専門的な知識と経験に基づいたサポートを提供してくれます。特に、事業計画書は、審査において重要な役割を果たすため、専門家と連携することで、計画の実現可能性や独自性を高めることができます。
専門家は、市場分析や競合分析を行い、自社の強みを最大限に活かす戦略を立てる手助けをしてくれます。また、補助対象経費についても、適切なアドバイスを提供し、不備のない申請書類を作成することができます。
さらに、タイムマネジメントの徹底も重要です。申請準備は、早めに開始し、十分な時間を確保することが必要です。補助金の公募期間は限られているため、余裕を持って準備を進めることで、書類の不備や計画の不十分さを防ぐことができます。
申請書類は、内容が多岐にわたるため、締め切り直前になって慌てて作成するのではなく、計画的に進めることが重要です。
電子申請システムでの提出となるため、操作に慣れておくことも大切です。申請前に、公募要領を熟読し、必要書類を全て揃えてから、専門家に見てもらうことで、より確実に採択へと繋げることができます。
まとめ
事業再構築補助金は、企業の新たな挑戦を支援する魅力的な制度ですが、注意点を十分に理解していないと、不採択や交付取り消し等のリスクがあります。
審査基準の理解不足、事業計画の実現可能性の欠如、補助対象外経費の計上、採択後の報告義務の懈怠などが、主なトラブルの原因です。
申請を成功させるためには、事業の独自性や社会的意義を明確化し、具体的な数値目標やスケジュールを設定した実現可能な事業計画を作成することが重要です。また、補助対象経費を正しく理解し、根拠となる資料を添付する必要があります。
専門家を活用することで、事業計画のブラッシュアップや申請書類の不備を防ぐことができます。また、申請前に必ず公募要領を熟読し、チェックリストを活用することで、必要な書類や手続きの漏れをなくすことができます。採択後も、定期的な報告義務が発生することを理解し、適切な対応を行う必要があります。
本記事で解説した内容を参考に、専門家にも相談し、万全の準備をしてから申請に臨んでください。
\認定支援機関!補助金のプロの中小企業診断士がサポート/