躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?中小企業診断士が徹底解説

猪俣 友樹
中小企業診断士/
E資格
中小企業診断士/JDLA Deep Learning for Engineer(E資格)
ノンバンクでAI、データ分析を活用したマーケティング、リスク管理業務に従事。
データを駆使した課題解決や与信モデルの構築・運用を経験。
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東京都が実施する「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、都内中小企業の競争力強化や生産性向上を目的とした大型の助成金制度です。この助成金を活用したい中小企業にとって、2025年度の本制度はこれまで以上に大きなチャンスとなっています。この記事では、支援対象や助成内容の特徴から申請のポイントまで、制度の全体像を分かりやすく解説します。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業は、東京都が都内中小企業の「製品・サービスの質的向上」による競争力強化や「生産能力の拡大」のための生産性向上を目的とした設備投資を支援する制度です。
この事業の特徴は、試作・開発ではなく「量産フェーズ」の申請を対象としている点にあります。つまり、すでに製品やサービスの開発が完了し、本格的な生産や提供に向けた設備投資を行う段階の企業を支援する制度となっています。
近年、中小企業を取り巻く経営環境は、少子高齢化やデジタル化の進展など、大きく変化しています。そのような変化の激しい時代において、中小企業が持続的に成長していくためには、積極的な設備投資を行い、競争力強化やDX・イノベーションの推進をしていくことが不可欠です。
本事業は令和2年まで実施された「革新的事業展開設備投資支援事業」の後継事業として、「稼ぐ東京」をスローガンに令和3年に新設されました。
採択率
過去の採択企業数は以下の通りです。
応募数は公表されていませんが、東京都中小企業振興公社のWebサイトから採択事例の概要を確認することができます。
回数 | 採択数 |
---|---|
第1回 | 44 |
第2回 | 61 |
第3回 | 93 |
第4回 | 139 |
第5回 | 129 |
第6回 | 97 |
第7回 | 134 |
支援対象となる5つの事業区分
本助成事業では、以下の5つの事業区分に沿った取り組みが対象となります。
1. 競争力強化
生産工程の改善や省エネルギー対策、働き方改革への対応など、企業の競争力を高めるための機械設備導入を支援します。例えば、自動化設備や高精度加工機の導入による生産性向上が該当します。
2. DX推進
IoT、AI、ロボットなどデジタル技術を活用し、業務効率化や新たな価値創造を目指す設備投資が対象です。例えば、製造現場のIoT化や、サービス業のDX化などが含まれます。
3. イノベーション
新しい製品・サービスの開発や、都市課題の解決に資する事業での設備投資を支援します。市場拡大や新分野進出を目指す企業に適した区分です。
4. 後継者チャレンジ
事業承継を契機に新たな事業展開や多角化を図る際の設備導入が対象です。後継者による新規プロジェクトや経営革新のための投資を支援します。
5. アップグレード促進
地域経済の中心となるべく成長を目指す企業の大型投資を後押しします。2025年度はこの区分の上限が2億円に拡大され、より大規模な成長投資が可能となりました。
補助金の対象となる事業者
小規模事業者・中小企業の定義
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業の対象となるのは、基準日(令和7年4月1日)現在で東京都内に登記簿上の本店または支店があり、2年以上事業を継続している中小企業等です。
中小企業とは、中小企業基本法に基づき、資本金または従業員数が以下の基準を満たす企業です。
- 製造業・その他 :資本金3億円以下または従業員300人以下
- 卸売業 :資本金1億円以下または従業員100人以下
- 小売業 :資本金5,000万円以下または従業員50人以下
- サービス業 :資本金5,000万円以下または従業員100人以下
また、小規模企業は以下のように定義されます。
- 製造業・その他 :従業員20人以下
- 商業・サービス業 :従業員5人以下
業種ごとの対象例(製造業、サービス業、ITなど)
本助成事業はさまざまな業種の中小企業が対象となります。
- 製造業 :生産ラインの効率化、精密加工機の導入、自動化設備の導入などを行う企業
- 建設業:BIMソフトや測量用ドローンなどの導入を行う企業
- 物流業:配送管理システムや自動仕分け機などの導入を行う企業
- サービス業:顧客管理システムやデジタルマーケティングツールなどの導入を行う企業
- IT業:サーバーやソフトウェア開発環境の整備などを行う企業
法人・個人事業主も対象になるか?
本助成事業は、中小企業だけでなく、個人事業主も対象となります。ただし、いずれの場合も東京都内で実質的な事業活動を行っていることと、2年以上の事業継続実績が必要です。
補助金の上限金額と補助率
各枠の違い
2025年度の第9回公募では、事業区分によって助成率や上限額が異なります。
また、ゼロエミッション要件(省エネ効果が高い設備導入)や賃上げ要件(給与支給総額や最低賃金の引上げ)を満たす場合は、さらに助成率が優遇されます。
助成率や上限額は事業区分や要件によって異なります。内容は以下の通りです。

2025年度の大きな変更点として、アップグレード促進区分の助成限度額が最大2億円に引き上げられました。これは、昨年までの上限1億円から大幅に増額されています。
経費として認められるもの/認められないもの
助成対象となる経費は、「製品の製造」や「役務の提供」のために直接必要な機械設備の導入費用です。具体的には以下のものが対象となります。
助成対象となる経費
- 税法上の固定資産に該当する「機械装置」「器具備品」「ソフトウェア」
- 1基50万円(税抜)以上のもの
- 設置場所は東京都内及び近隣県(神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県)
助成対象とならない経費
- 消耗品(使用可能期間が1年未満のもの)
- 汎用性の高い備品(パソコン、タブレット端末、スマートフォンなど)
- 中古品
- 自社製品の調達費
- 運搬費、設置工事費
- 保守・メンテナンス費用
- 既存設備の撤去・移設費
- 消費税
申請スケジュールと公募要領
公募開始〜採択〜交付申請までの流れ
2025年度第9回の公募スケジュールは以下の通りです。
- 申請予約期間:2025年4月23日(水)~5月8日(木)17:00まで
- 申請受付期間:2025年4月30日(水)~5月13日(火)17:00まで
- 審査期間:2025年5月中旬~8月上旬
- 一次審査(書類審査):5月中旬~6月下旬
- 二次審査(面接審査):7月下旬~8月上旬
- 助成対象者決定:2025年9月下旬
- 助成事業開始:2025年10月1日~2027年3月31日
申請からプロジェクト完了までの流れは以下の通りです。
- 申請予約
- 申請書類提出
- 審査・採択
- 交付申請
- 助成事業の実施
- 実績報告
- 助成金の交付
jGrants(Jグランツ)の利用方法
申請には、国が提供する電子申請システム「Jグランツ」を利用します。利用にあたっては以下の手順が必要です。
- GビズIDプライムアカウントの取得
Jグランツを利用するには、事前にGビズIDプライムアカウントを取得する必要があります。取得には約2週間程度かかるため、早めの準備が重要です。 - Jグランツへのログイン
取得したGビズIDでJグランツにログインします。 - 申請情報の入力
必要事項を入力し、必要書類をアップロードします。 - 申請の提出
内容を確認後、電子申請を完了させます。
Jグランツの詳しい利用方法は補助金申請システム(jGrants) 事業者クイックマニュアルをご確認ください。
採択される事業計画書のポイント
審査基準の解説
採択されるためには、以下の審査基準を満たす事業計画書を作成することが重要です。
- 目的との適合性:助成事業の目的に合致しているか
- 優秀性:技術的・事業的な優位性があるか
- 実現性:事業計画の実現可能性が高いか
- 計画の妥当性:投資計画や資金計画が適切であるか
- 成長・発展性:持続的な成長が期待できるか
特に重視されるのは、単なる設備更新ではなく、競争力強化や生産性向上につながる戦略的な投資計画であることを明確に示すことです。
よくある不採択の事例
以下のような事例は不採択になりやすいため注意が必要です。
- 単なる設備更新:古い設備の更新だけで、競争力強化や生産性向上の観点が弱い計画
- 具体性の欠如:導入する設備と事業目標の関連性が不明確な計画
- 資金計画の不備:自己資金の準備状況が不明確な計画
- 市場分析の不足:市場ニーズや競合との差別化が不明確な計画
- 数値目標の曖昧さ:売上増加や生産性向上の数値目標が具体的でない計画
自社申請と専門家サポートの違い
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業は、申請に多大な手間と時間を要するうえ、自力で採択を勝ち取ることは容易ではありません。申請方法には自社で行う方法と専門家のサポートを受ける方法がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
自社申請の場合
自社で申請を行う場合、コスト面での負担が少なく、自社の状況を直接反映させることができるというメリットがあります。一方で、申請書作成に多大な時間を要し、審査のポイントを押さえづらいという難しさがあります。また、専門的な知識がないため、採択率が低くなる可能性があることも考慮する必要があります。
専門家サポートの場合
専門家のサポートを受ける場合、手間と時間を大幅に削減でき、不備のない質の高い申請書を作成できます。また、専門家の知見を活かすことで採択率向上が期待できます。ただし、サポートを受けるには費用が発生するというデメリットがあります。
中小企業診断士の活用
専門家による申請サポートでは、以下のようなサポートを提供します。
- 事業計画策定支援:競争力強化や生産性向上につながる戦略的な事業計画の策定をサポートします。中小企業診断士は経営戦略や市場分析に精通しているため、審査で評価される事業計画を立案できます。
- 申請書類作成支援:審査基準を踏まえた効果的な申請書類の作成をサポートします。過去の採択事例を熟知した中小企業診断士が、採択されやすい書類作成のポイントをアドバイスします。
- 面接対策:二次審査の面接に向けた準備や模擬面接の実施を行います。審査員からの質問を想定し、的確な回答方法を指導します。
よくある質問(FAQ)
どんな経費が補助されるの?
「製品の製造」や「役務の提供」のために直接必要な機械設備の導入費用が対象です。具体的には、税法上の固定資産である「機械装置」「器具備品」「ソフトウェア」が対象となります。ただし、1基50万円(税抜)以上のものに限ります。
赤字企業でも申請できる?
はい、申請できます。ただし、助成事業を実施するための十分な資金調達の見込みがあることを示す必要があります。また、財務状況は審査項目の一つとなるため、事業の実現可能性を示すことが重要です。
審査期間はどのくらい?
申請受付から助成対象者決定までは約4ヶ月程度かかります。具体的には、2025年5月の申請受付から、一次審査(書類審査)、二次審査(面接審査)を経て、9月下旬に助成対象者が決定される予定です。
まとめと無料相談のご案内
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業は、東京都内の中小企業が競争力強化や生産性向上を目指す際の強力な支援制度です。2025年度の第9回公募では、アップグレード促進区分の上限額が2億円に引き上げられるなど、さらに充実した内容となっています。
申請にあたっては、単なる設備更新ではなく、競争力強化や生産性向上につながる戦略的な投資計画を示すことが重要です。また、準備には時間がかかるため、早めに取り組むことをおすすめします。
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「自社が対象となるのか分からない」「どの区分で申請すべきか迷っている」「事業計画書の書き方が不安」など、どんな疑問やお悩みでもお気軽にご相談ください。最適な申請戦略を一緒に考えていきましょう。
申請予約期間は2025年4月23日から5月8日まで、申請受付期間は4月30日から5月13日までとなっています。この機会を逃さず、ぜひ検討してみてください。
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