銀行融資を成功させたい財務担当者必見!法人融資で重視される5つのポイント!

渡邊 賢司
中小企業診断士
株式会社3Rマネジメント 代表取締役
株式会社IoTメイカーズ 代表取締役
約15年にわたり、事業再生支援等に従事。100社以上の中堅・中小企業に対し、事業再生スキーム構築、経営改善計画作成支援、伴走支援、金融機関交渉等を行ってきた。東京都中小企業再生支援協議会での事業デューデリジェンス業務にも多数従事。金融機関向けや税理士向け研修講師等も多数実施。
2016年に小中学生向けプログラミング教室等を運営する(株)IoTメイカーズを設立し、中小企業経営者としての顔も持つ。同社では、6年間で5つの新規事業を立ち上げた。
銀行が融資をおこなうために重視するポイントを5点紹介させていただきます。
まず、1点目は「会社の信用度」です。
わかりやすく説明すると「この会社は信用できるから融資をしても回収できるだろう」との視点です。
2点目は「財務状況」です。
損益計算書だけでなく貸借対照表もしっかり見ます。
3点目は「事業計画」です。
事業計画とは「会社の方向性を誰が見てもわかる計画書」のことです。
4点目は「資金使途」、つまり「融資を何に使うか」です。
5点目は、「担保や連帯保証人」です。
例えば「この会社は不動産を所有しているから、不動産を担保に融資をする」ことです。
この5点を銀行は主に注視して審査をおこないます。各項目について詳しくご紹介させていただきます。
会社の信用度:債務者区分とは?銀行融資への影響
銀行では、企業の信用状態を評価するために「債務者区分」という評価基準が使われており、企業の財務状態や既存融資の返済状況などにより、5つにランク分けしています。そして、このランク分けによって、追加融資の可否も判断されることとなります。
債務者区分には下記の5つの区分があります。
- 正常先
- 要注意先(非要管理先と要管理先)
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
「要注意先」の企業は、さらに「非要管理先」と「要管理先」にランクが分けられており、「非要管理先」が上のランク、「要管理先」が下のランクとなっています。
銀行から追加融資を受けられるのは、「正常先」と「要注意先(非要管理先)」くらいまでであり、「要注意先(要管理先)」以下のランクに区分されてしまうと追加融資が受けにくくなり、また融資を受ける場合も、多くの説明資料や事業計画書の提出が必要となります。
銀行が、これ程までに債務者区分を重要視する理由は、「貸倒引当金」にあります。貸倒引当金とは、企業に融資した資金が回収できなくなることを想定して、あらかじめ回収不能分を予測して積み立てておくお金のことです(銀行にとっては費用となります)。
多額の貸倒引当金を積むことは、銀行の体力を奪ってしまい、最悪の場合、国の管理下におかれます。最近でも公的資金を注入された銀行のニュースを耳にします。
銀行も民間企業である限り利益を出す必要がありますが、昨今の低金利時代において、銀行が貸出によって設けられる金利は1~3%程度です。一方、貸出先企業の返済不能リスクのために、儲け以上の貸倒引当金を積まなければならないのでは採算が取れません。
したがって、銀行にとって債務者区分の低い企業との取引はリスクが高く、また利益にもなりにくいため、融資条件が悪くなったり、そもそも融資を断られたりすることに繋がるのです。
財務状況:銀行が見る自己資本比率と財務指標
貸借対照表の自己資本比率や損益計算書の営業利益・経常利益が重要です。
特に、自己資本比率が高いほど、企業の財務健全性が高いと評価されます。
銀行は損益計算書の利益だけではなく貸借対照表の中身を見ています。
特に注視するのが、「売掛金」「在庫」「貸付金」「固定資産」「簿外債務」です。
- 「売掛金」については、例えば以下の項目を見ています。
- 売上が伸びていないのに、売掛⾦が増⼤している。回収不能なものや架空計上はないか
- 期末に⼤きい売上が計上されている。期末に売上を押し込んでいる。架空の売上ではないか。
- 同業界の回転率等と比べ、⾦額が⼤きすぎないか
- 「在庫」については、以下の項目を見ています。
- 不良在庫や架空計上はないか。
- 同業界の回転率等と⽐べ、⾦額が⼤きすぎないか。
- 「貸付金」は特に銀行は気にするので注意してください
- 代表者やその⼀族等への貸付⾦等が多額、もしくは増加していないか。
- 「固定資産」は、減価償却不足など見ています。
- 減価償却不⾜はないか。
- 固定資産台帳、減価償却明細で内容をチェックしています。
- 時間が経ち過ぎており修繕や⼊替等が必要ないか
減価償却不足とは、本来であれば減価償却をすべきものを、決算書の数字をよく見せるためにあえて減価償却をしないことです。減価償却は利益をマイナスにする要素です。
ここで、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、「減価償却しなくて税務署から何か言われないか」という点です。結論から申し上げますと税務署からのお咎めはありません。税務署にとっては、より多く納税してくれた方が助かるとのスタンスだからです。
簿外債務:特徴について
簿外債務とは、本来であれば帳簿に記載すべき債務が記載されておらず、一見するだけでは決算書から読み取ることができない「隠れた債務」のことです。経理の専門人員がいなかったり、しっかりとした帳簿管理ができていなかったりする中小企業では、簿外債務が隠れているケースは珍しくありません。
よくある簿外債務の例としては以下の通りです。
- 税金、社会保険料の未納
- 仕入や費用の計上漏れ
- 未払残業代
- 未払賞与
- 退職給付債務
特に、税金、社会保険の未納は差し押さえの対象となっています。
一度差し押さえをされると銀行取引に大きな影響がでます。
事業計画:融資審査で重要な理由
事業計画書や資金繰り計画書の内容が審査されます。これにより、融資がどのように使われ、どのように返済されるかを確認します。
事業計画書とは、企業が達成したい目標や戦略を明確にし、それを実現するための具体的な計画をまとめた書類です。事業の概要、目標、市場分析、戦略、収支計画、資金調達方法などを記載し、投資家や銀行、関係者への説明材料として活用されます。
銀行や投資家は、事業の実現可能性や競争優位性を確認し、収益性や市場の成長性があるかを重視します。また、収支計画の具体性やリスク管理が適切かどうかも重要です。さらに、経営者やチームの実績やスキル、資金使途の透明性、返済能力や投資回収の可能性についても評価し、計画の整合性や現実性を判断します。
事業計画を作成するメリットは以下のとおりです。
何をやるかがはっきりする
事業計画を作成することで、取り組もうとしている事業の全体像を整理してイメージすることができます。「事業内容」「運営方法」「売上目標」「競合他社の状況(市場)」など、事業に関する多方面の情報を整理することで、やるべきことや方向性が明確になります。
会社と銀行双方で方向性が共有できる
事業計画は経営者の頭の中にあるため、その事業に融資する銀行からは見えません。そこで、事業計画書という形で事業計画を可視化することにより、経営者の考えていることを銀行と共有でき、双方で認識の齟齬なくコミュニケーションを取ることができます。
資金調達がしやすくなる
銀行から融資を受ける際には、銀行が融資判断に必要とする情報を、具体的かつ体系的に提示する必要があります。事業計画書には事業の目的や収益性、成長性、市場分析、資金の使途、返済計画を明確に記載し、これにより事業の実現可能性や返済能力を銀行に示します。
また、計画を立てることによって、さまざまな課題を事前把握することもできるため、リスクを減らす材料としての役割もあります。したがって、この事業計画が精緻であり、かつ実現性が高いほど銀行の納得感が増し、融資が受けやすくなるのです。
資金使途:融資審査で重要な資金使途の明確化
融資の使い道が明確であることが求められます。例えば、設備資金や運転資金など、具体的な用途が示されていることが重要です。
銀行融資で最も重要視されるのは「資金使途」と「返済財源」です。銀行で借入をした経験のある方は、詳しく質問された方もいらっしゃると思います。
ではなぜ、資金使途と返済財源が重要視される理由は、銀行が「確実に回収したい」からです。何に使うかも分からない資金や返済できるか分からない資金に融資をして回収できるでしょうか。難しいと思います。そのため銀行は根掘り葉掘り聞いてくる訳です。
資金使途を簡単に説明すると、「運転資金」と「設備資金」の2つに分けられます。
運転資金
運転資金とは、企業が日常の事業活動を維持するために必要な資金のことです。
具体的には、商品や原材料の仕入れ費用、従業員の給与、光熱費、家賃、広告費など、短期的な経費をまかなうための資金を指します。売上が発生してから実際に入金されるまでのタイムラグを埋める役割も果たします。
運転資金が不足すると事業運営が停滞する可能性があるため、常に必要な運転資金が確保できている財務状態を作っておくなど、適切な資金管理が求められます。
設備資金
設備資金とは、企業が事業を拡大・維持するために必要な設備を購入、修理、または改良するための資金のことです。
具体的には、工場や店舗の建設、機械や車両の購入、ITシステムの導入などに使われます。設備投資は事業の成長や効率向上に繋がる一方、初期費用が大きいため、長期的な計画や銀行融資を利用することが一般的です。
担保や連帯保証人:担保付き融資と無担保融資の違い
銀行は、融資金額や返済条件に加え、担保有無や保証人有無も融資の判断材料にします。担保や保証人に関する知識を持っていると、融資を受ける際の交渉材料にも使えるため、ぜひ覚えておいて欲しい知識のひとつです。
担保付き融資とは
担保付き融資とは、借入者が不動産や有価証券、機械設備などの資産を担保として提供し、資金を借りる方法です。
借入者が返済不能となった場合、銀行は担保を売却して貸付金を回収します。この仕組みにより、銀行はリスクを軽減し、借入者は信用力が不足していても融資を受けやすくなります。金利が低めに設定されることが多いのも特徴です。
連帯保証人とは
銀行の融資で信用保証協会の保証制度で、保証人なしでよいものもありますが、それは融資金額が小さいものであり、たいていの融資は、中小企業であれば、連帯保証人が必要となります。代表者が連帯保証人になるケースが多いです。代表者である以上、自分が経営している企業と一体となって、しっかり経営を行い、しっかり利益をあげ、しっかり返済してほしい、ということです。そして企業が返済できなくなったら、代表者は連帯保証人として、しっかり責任をとる、ということになります。
最近では、連帯保証なしでの融資も行われるようになっています。平成26年2月から適用されている「経営者保証に関するガイドライン」では、経営者保証なしでも融資を受けられる道が示されています。創業や新たな事業の開始、早期の事業再生、円滑な事業承継等の中小企業の各ライフステージにおける取組意欲の増進を図ることを目的としたものになります。
以上、5つのポイントをご紹介させていただきました。
これらのポイントを押さえておくことで、銀行からの融資を受けやすくなります。
自社で取組可能な項目からひとつずつ対応するのがお勧めです。
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銀行融資を成功させるために重要なポイントをご理解いただけたでしょうか。
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