企業の信用調査とは?必要な理由や方法、注意点について解説

執筆者/講師
株式会社Japan PI代表 バイリンガル探偵 小山悟郎のプロフィール写真

小山 悟郎
探偵

株式会社Japan PI代表
30年以上の経験を持つバイリンガル探偵。

1992年に東京都渋谷区の追跡調査センターで現場調査員およびケースマネージャーとして探偵キャリアをスタート。2002年にJapan PIを設立。探偵業務と外国語学習をライフワークとし、日本国内外で調査活動を行う。世界探偵協会(WAD)および国際調査協議会(CII)の会員。

企業の信用調査は、取引先や提携先の企業が信頼できるかどうかを確認するために不可欠なプロセスです。信用調査により、企業の財務状況や業界内の評判、過去の取引履歴などの情報を得ることで、企業間取引におけるリスクを軽減できます。

本記事では、企業の信用調査が必要とされる理由や具体的な調査方法、調査を行う際の注意点などについて詳しく解説します。

目次

企業の信用調査とは?

企業の信用調査とは、取引先の経済的な信頼性や支払い能力を事前に把握するための調査のことです。「企業調査」や「与信調査」とも呼ばれ、企業間取引におけるリスクを管理するために行われます。

近年では、財務状況だけでなく、コンプライアンスの適正や事業の健全性といった側面の確認も重視されています。信用調査を通じて、企業は信頼できる取引相手を見極め、自社の経営リスクを軽減することが可能です。

信用調査は、健全な取引環境の維持やリスク管理において、企業にとって欠かせないステップと言えます。

税務調査との違い

企業の信用調査と税務調査とでは、目的と手段が異なります。

税務調査とは、税務当局が企業の申告内容に不備がないかどうかを確認するための調査のことです。公的な調査であるため、企業に納品書や契約書、領収書、銀行取引明細などの提出を直接求めることができます。

一方で、企業の信用調査は、取引先の経済的信頼性や支払い能力を評価するために行われる民間の調査です。探偵や興信所などが実施する場合、税務調査のように書類の強制提出を求めることはできないため、情報収集に制約がかかります。

このように、税務調査が法的な強制力をもつのに対して、信用調査ではデータベースや公開情報、張り込みなどを通じて情報収集を行う必要がある点が特徴です。

企業の信用調査が必要な理由

企業の信用調査が必要な理由として、日本の企業間取引では、商品やサービスの提供後に支払いが行われる「掛取引」が一般的であることが挙げられます。

掛取引では、支払いまでに一定の猶予期間があるため、相手企業の支払い能力や経営状況を把握しておかないと、支払いが滞り、売掛金を回収できないリスクが生じる可能性があります。信用調査は、こうした未回収リスクを軽減し、自社の財務状況を安定させるための対策として機能します。

また、企業の信用調査は、取引相手が反社会的勢力に関わっていないかどうかを確認するためにも重要です。

万が一、反社会的勢力と知らずに取引を行ってしまうと、社会的信用を失うことで他の取引先からも契約を断られる可能性があります。反社チェックはトラブルを未然に防ぎ、自社を経営悪化などのリスクから守るために必要です。

さらに、信用調査は新規取引の開始時のみならず、既存の取引先についても定期的に実施し、最新の情報を把握することが大切です。取引先の信用に変化が生じることは珍しくないため、継続的に信用状況を確認することで、リスクを最小限に抑えることができます。

企業の信用調査の方法

企業の信用調査の一般的な手法を4つ紹介します。

  • 取引先から直接情報収集する
  • 公開情報をリサーチする
  • 関係者から情報収集する
  • 専門家(探偵・調査機関)に依頼する

取引先から直接情報収集する

取引先から直接情報を収集する方法は、企業の信用調査で最も信頼性が高いとされる手法の1つです。

取引先の担当者や経営幹部から直接話を聞くことで、財務状況や経営方針、今後の展望などを確認し、第三者を通さない確実な情報を得ることができます。特に、業績や取引条件に不安がある場合は、取引先に対して踏み込んだ質問をし、経営陣からの回答を確認することで、潜在的なリスクを洗い出すことも可能です。

また、訪問の際に企業の社内環境や従業員の様子も観察でき、経営状況を感じ取れる点も直接ヒアリングするメリットです。

しかし、取引先によっては、取引における力関係や信頼関係への影響を懸念して、状況の提供を拒まれたり十分な情報が得られなかったりするケースもあります。事前に十分な準備と質問内容を考慮しておくことが大切です

公開情報をリサーチする

企業のウェブサイトや官報、商業登記簿など、広く一般に公開されている情報をもとに企業の状況を調べる方法もあります。

商業登記簿や官報には、企業の登記情報や役員の変更履歴、資本構成など、基本的な企業情報が記載されています。また、ウェブサイトのIR情報やプレスリリースを確認することで、事業の動向や経営方針の変更についても知ることができます。

これらの公開情報は信頼性が高く、調査にかかるコストも低いため幅広く利用されています。しかし、企業側が都合悪い情報を公開していない可能性もあるため、情報の信ぴょう性には注意が必要です。

あくまで基礎的な情報収集として活用し、不明点があれば他の調査手法と組み合わせて情報の信頼性を補完できるといいでしょう。

関係者から情報収集する

関係者から情報を収集する手法は、取引銀行や同業者、仕入れ先など、対象企業に関連する第三者から間接的な情報を集める方法です。

たとえば、取引銀行を通じて対象企業の資金操りや与信情報を確認したり、同業者から評判や業績の安定性を伺ったりすることができます。第三者からの情報は、企業が表向きには隠している情報や、表面上だけではわからない経営状況を知る手がかりとなるため、信頼性が高いとされています。

また、インターネット上の口コミやSNSの書き込みなども含めて、企業のイメージや評判を補完することが可能です。

ただし、関係者の証言には主観や噂が含まれる場合もあるため、必ずしも事実とは限らないことを考慮し、慎重に判断する必要があります。

専門家(探偵・調査機関)に依頼する

企業の信用調査では、専門の調査期間や探偵事務所に依頼する方法もあります。専門家は、企業の財務状況や取引状況について専門的な分析を行い、信頼性の高いレポートを提供してくれるため、与信判断の参考として広く利用されています。

専門家による調査では、企業訪問や経営者インタビューを通じて収集した情報に加え、公的機関から取得したデータや業界の分析も含まれるため、包括的な情報が得られます

特に、企業の経営状況が不透明な場合や、自社での調査が困難な場合には、専門家の客観的な視点が役立ちます。

ただし、専門家に依頼する場合、調査の目的や予算に応じて信頼できる調査期間を選ぶことが大切です。

企業の信用調査を行う際の注意点

企業の信用調査を行うにあたって注意したいポイントを2つ紹介します。

  • 時間と手間がかかる
  • 集めた情報を精査する必要がある

時間と手間がかかる

企業の信用調査は、膨大な情報を収集・分析するプロセスを含むため、多くの時間と労力を必要とします。

特に、自社で調査を行う場合、取引先の基本情報から税務状況、過去の評判やトラブルの有無など、調査項目が多岐にわたります。定型化した調査項目をリスト化して優先順位をつけるなど、スムーズに調査を進めるための効率的な体制やツールの導入が効果的です。

状況によっては、外部の専門家に調査を依頼することも必要でしょう。

集めた情報を精査する必要がある

信用調査で集めた情報には、必ず精査のプロセスが必要です。インターネットや各種データベースには膨大な情報が存在しており、中には正確性に欠けるものや誤った情報も混在しています。

特に、インターネット上の情報は古いデータや出所が不明な信ぴょう性の低いデータも多いため、複数の情報源から裏付けを取ることが重要です。場合によっては、第三者の専門家に依頼してデータの信頼性を確認することも有効です。

調査の専門家であるJapan PIの小山氏にお話しをお伺いしました。

JapanPIは、法的リスクやコンプライアンスに関連する危機管理デューデリジェンスや身辺調査を専門とする、日本でも数少ない調査事務所です。

日本では危機管理デューデリジェンスの慣習がまだ浸透していないと感じていますが、その重要性を認識し、クライアントに高度な調査サービスを提供しています。

具体的な企業信用調査カテゴリーは以下のとおりです:

  • M&Aにおける法的デューデリジェンス
  • 買収先企業のデューデリジェンス
  • 法人・不動産投資先のデューデリジェンス
  • 役員や幹部候補者の身辺調査
  • 議員や政治的要職の候補者の身体検査
  • 団体の会員入会時の適格審査
  • 起用する広告塔の身体検査
  • 差押えのための資産調査
  • 法人の実質的支配者の背景調査
  • 反社会的勢力との関連調査
  • パワハラ・セクハラなどの職場内調査
  • 係争中の相手方の準備書面調査
  • 専門家証人の背景調査
  • 潜在的な詐欺会社や詐欺師の調査

当社の強みは、法人やその役員の沿革、経歴、ビジネス上の繋がりなどについて、綿密な危機管理デューデリジェンスを提供できる点です。

現代の複雑なビジネス環境では、潜在的なビジネスパートナーや買収対象企業について、財務情報以上の深い理解が必要です。たとえば、新しいパートナーや役員が企業のイメージや価値観を損なう可能性がないかを確認します。

具体的には:

  • 個人のビジネス上の関心や連絡先、職業上の関係、交友関係
  • 職業的・個人的な背景
  • 訴訟履歴、犯罪歴、処分歴、倒産歴
  • メディアでの発言内容の総合チェック
  • 実質的支配者や役員の背景調査
  • 企業内でのパワハラやセクハラ、その他労使問題の有無
  • 業界内での レピュテーションチェック

経験と専門知識を活かすだけでなく、高度なIT技術と情報ネットワークも組み合わせ、高精度なデューデリジェンスを提供しています。海外からのインバウンド調査案件を多数受注しており、西側諸国で一般的に行われている危機管理デューデリジェンスの手法を熟知しています。日本のグローバル化が進む中、こうしたデューデリジェンスのニーズは今後さらに増加すると考えています。

信頼できる情報をもとに企業の信用性を調査するためには、確認作業に時間をかけ、情報の正確性を確保することが大切です。

まとめ

本記事では、企業の信用調査について、必要性や具体的な方法、注意点などを解説しました。

信用調査は、取引先のリスクを事前に把握するための有効な手段であり、ビジネスをより安全に進めるために欠かせません。ただし、調査や情報の精査には多大な時間や労力を必要とするため、効率的な体制・ツールの導入や第三者の専門家への依頼なども状況に応じて検討する必要があります。

適切な信用調査を行うことで、取引先選びにおける失敗を未然に防ぎ、安定したビジネス関係を築くための基盤を整えていきましょう。

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執筆者

株式会社Japan PI代表。30年以上の経験を持つバイリンガル探偵。1992年に東京都渋谷区の追跡調査センターで現場調査員およびケースマネージャーとして探偵キャリアをスタート。2002年にJapan PIを設立。探偵業務と外国語学習をライフワークとし、日本国内外で調査活動を行う。世界探偵協会(WAD)および国際調査協議会(CII)の会員。

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